ノエル・ド・ヴァルロワは『砲煙』の二つ名を持つスクウェアメイジである!
彼女は前世の記憶と持って生まれた『土』魔法の才能を駆使し、自動装填機能を備えた優れた『大砲』を生み出すことが出来るのだ!
だが、成功には常に失敗が付きまとう!
あるとき彼女は自身が生み出した大砲の煙をまともに浴び、大衆の面前で盛大にせき込み、煤まみれになってしまった!
その情けない姿こそ『砲煙』の二つ名の由来である!
だがノエルは二つ名のそんな情けない真実を知らなかった!
だから今日も彼女は『砲煙』の名を掲げる! ともに掲げられる恥を知らぬまま!
「おーっほっほっほっげびゃっ!?」
がんばれノエル! 負けるなノエル! 馬車の中で叫ぶのは危険だぞ!
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『破壊の杖』、正式名称『M72 LAW』は、地球のアメリカ合衆国にて設計された使い捨て対戦車ロケット弾である。
発射機構は一列に繋がれた二本の筒で構成されており、携帯時は一本の筒にもう一本の筒が収納されている。
収納された筒を引き出し、安全装置を外すると発射可能となる。携帯時は防水性能を持つが、展開されるとそれは失われる。
口径は66㎜の成形炸薬弾。装甲の発展により現代の主力戦車の前では力不足となったが、その携帯性を活かし、軽車両や軟目標に目標を変えて今も使用され続けている兵器である。
さて、ミス・ロングビルが探し出した『土くれ』フーケの隠れ家と思しき小屋にやってきた一同。
ミス・ロングビルが見回り、ノエルが見張りをし、残りは安全を確認して中に突入した。
彼らはそこで『破壊の杖』を発見。だがその直後、フーケのゴーレムが一同に襲い掛かった。
30メイル(約30m)という巨体を誇るフーケのゴーレムは、タバサの竜巻もキュルケの炎もものともしない。
「退却」
いち早く不利を悟ったタバサが、それを見たキュルケが逃げ出す。
サイトもあとに続こうとする。だが待て、ルイズはどこだ?
いた。ゴーレムの背後だ! ルイズはタバサたちが応戦するのを見るや移動していたのだ。
しかも逃げるためではない! なんと彼女はそこから呪文を唱え、ゴーレムに放ったのだ!
『ゼロのルイズ』は魔法が使えない。というのは間違いである。彼女は魔法が使える。しかしその結果が『爆発』という結果に収束するだけで。
『破壊』のみを目的とするならば、彼女はれっきとしたメイジなのだ!
小さな体と非対称な勇敢なる決断と行動。だが、おお始祖ブリミルよ! 寝ているのか!
ゴーレムは表面がわずかに弾けたが、依然動作に変わりはなかった! ノーダメージだ!
「逃げろ! ルイズ!」
「いやよ!」
叫ぶサイト。拒否するルイズ。
ゴーレムは迷いなくルイズを睨む。『破壊の杖』を持っている以上それは当然の結果だった。
「ここで逃げたら、ゼロのルイズだから逃げたって言われるわ!」
「いいじゃねえかよ! 言わせとけ!」
「私は貴族よ。魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ」
ルイズの瞳には尊き光が宿っていた。偉大なる虚無の担い手としての片鱗が。
「敵に後ろを見せないものを、貴族と呼ぶのよ!」
ゴーレムがルイズを踏み潰そうとする。
ルイズが魔法を放つ。
ゴーレムは止まらない。やはりルイズの魔法はゴーレムには通じなかった。
踏み潰される! とっさに駈け出し、ルイズを抱きかかえるサイト。だが逃げ出すにはわずかに遅い!
「くそっ」
サイトはルイズを庇うように抱きしめ目をつぶる。
だがその時だ!
「おーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!」
響き渡る高笑い。そして森を振るわせる轟音! 轟音ッ! 轟音ッッ!
「な!?」
驚くサイトが見上げると、巨大なゴーレムは見るも無残なほどボロボロになっていた。
穴だらけにされたゴーレムは音を立てて崩れ落ちる。
サイトは耳鳴りに顔をしかめながら、轟音の方向に目を向ける。
それは輝く金髪! 孔雀の扇子! ピカピカと目を光らせるガーゴイル! そして燦然と並ぶ鋼の砲口!
ノエル・ド・ヴァルロワだ!
彼女はフーケのゴーレムを見るや魔法を使い、六門に及ぶ大砲を作っていたのだ!
そしてそれらが間一髪のところでサイトたちを救ったのである!
「無事かですわ二人とも! ですわ!」
「お、おう。これ、お前がやったのか?」
「ええ。ワタクシの二つ名は『砲煙』。ワタクシの大砲の前では図体ばかりの土人形など物の数ではない! ですわですわ!」
「すげー」
素直に感心するサイトだが、ルイズはそうでもなかった。
「本当にね…………これで頭ノエルじゃなかったらどれほどよかったか…………」
「ちょっとそれどういう意味だですわ!?」
騒ぐ三人。それを遠くから見つめる影があった。
ミス・ロングビル改め『土くれ』のフーケである。
フーケが彼らをここに連れてきて、あまつさえ見つけやすい場所に『破壊の杖』を置いたのは、『破壊の杖』の使い方を知るためだった。
『破壊の杖』はそもそもハルケギニアのものではなく、フーケにはその使用方法すら見当がつかなかった。そのままでは売り手もつかないだろう。
そこで一計を講じた。あえてフーケの居場所を教え、トリステイン魔法学院の者達をおびき寄せ、ゴーレムで襲い、彼らに『破壊の杖』を使わせる。
あとはミス・ロングビルとして油断させて『破壊の杖』を受け取り、始末して逃走する。もし捜索隊の誰も杖の使い方を知らないというなら、全員始末してまた学院の者達をおびき寄せる。
完璧な計画だった。途中までは上手くいっていた。
「あの小娘…………!」
デスワデスワと騒がしいヴァルロワ家の一人娘。アレのせいで歯車が狂った。ゴーレムは『破壊の杖』が用いられることなく撃破された。
フーケは森の中から忌々しい小娘と他の者達を睨む。
三人と二人は既に合流している。彼女らはまだ、ミス・ロングビルがフーケの正体だとは知らないだろう。それを利用すれば、『破壊の杖』を奪い取ること『だけ』は出来る。
だが杖の使い方を聞き出すことはできない。
そしてこのまま杖を盗まずにいれば、『破壊の杖』は再び学院の宝物庫に入れられ、今まで以上に厳重な管理がされるだろう。
もう一度盗むのは容易ではない。
「だったら…………」
フーケは呪文を唱えた。
いかにフーケと言えど巨大ゴーレムの連続作成は魔力を大量に消費する。
だがほかに方法はない。
フーケは二体目の巨大ゴーレムを生みだし、五人に襲わせた。
「トライアングルじゃスクウェアに真っ向から勝つことは出来やしない。でもね、私は『土くれ』のフーケなんだよ」
森の中、フーケは不敵に笑う。
「あんたみたいな力だけの素人に、負けはしないさ」