決行! お嬢様作戦!   作:鈴ノ風

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NO.4 お嬢様は『土くれ』とともに

 ノエル・ド・ヴァルロワは戦闘の素人である!

 前世ではチンピラとして幾度か喧嘩を経験していた! だが転生して後は決闘すら行わない! 今では腕も勘も完全に錆びきっていた!

 だがそれは当然の結果である! なぜなら、ノエルは『お嬢様』なのだ!

 『お嬢様』である以上殴り合いの喧嘩などご法度である! むしろ華奢でひ弱なくらいが『お嬢様』らしいと、ノエルは喜んでさえいた。

 そのためノエルに戦闘能力は存在しない! その一点においては『青銅』のギーシュにさえ劣る! それがノエル・ド・ヴァルロワの実力なのだ!

 『大砲』の錬成? あれは趣味だ!

 そんなノエルと『土くれ』フーケの戦い! 緊張の第二幕がついに始まる!

 

「おーっほっほっほッゴホッゴホッゴホ!?」

 

 がんばれノエル! 負けるなノエル! 大砲の風下に立つ癖は直そう!

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 合流した五人が今後について話し合っていると、森の中から新たな巨大ゴーレムが現れた。

「またなの!?」

「フーケの奴、よっぽど俺たちを帰したくないらしいな!」

 ルイズは仰天し、サイトはキュルケにもらった剣を抜く。

「応戦」

 臨戦態勢を取る二人と違い、タバサは本を読む余裕すら見せた。

「そうね。さっきとは状況が違うんだから」

 杖を握るキュルケの顔も、タバサの態度と同じく余裕があった。

 二人のその行動の意味は明白だ。なぜならば!

 

「おーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!」

 

 輝くブロンド! 孔雀の扇子! ピーガピーガと煩いゴーレム! そして六門に及ぶ連射式大砲!

 ノエル・ド・ヴァルロワがそこにいるからであるッ!!

「まったく『土くれ』だか『土埃』だか知らないが、スクウェアたるワタクシに力で勝とうなど下策の極み! 格の違いというモノを見せてやる!」

 タバサがちらりと顔を上げる。

「語尾」

「あっ…………で、ですわ!」

 気を取り直して。

「ふ、ふん! それにしても、あっさり『破壊の杖』を奪われた挙句、癇癪起こしたみたいにゴーレムで責め立てるだなんて、『土くれ』のフーケも評判倒れ…………あら?」

 大砲たちに次の指示を飛ばそうとしていたノエルが、動きを止める。

「ちょっとノエル! あんた何やってんのよ!」

「早くあいつぶっ壊してくれよ!」

「……いやでも……『破壊の杖』の形状……そう考えると自然……つまりそういう事か……ですわっ!」

 何かに気付いたノエル。握っていた杖をゴーレムへ勢いよく向ける!

「見えたぜ! 『土くれ』フーケ! あなたの真の狙いがな! ですわ!」

「し、真の狙いぃ?」

 胡散臭そうな顔をしてサイトが聞き返す。

 ノエルはその声に、タバサの次くらいの胸を張る。

「そう! フーケが目撃されたのも! 『破壊の杖』がこんな辺鄙な小屋に無造作に置かれていたのも! すべては奴の策略の内! 奴の目的は我々から()ッタァッ!?」

 地球にて高名なる、かのシャーロックホームズもかくやな名推理を披露しようとするノエル。だがその推理を突然の激痛が遮った!

 全員がノエルの右腕を見る。するとなんという事だ! 地面から伸びた手のようなものが、ノエルの腕に巻き付き、ひじ関節を極めようとしているではないか!

「ギブギブギブギブギブギブッ! ですわギブぅッ!」

「『アース・ハンド』!?」

 その正体を即座に看破したキュルケはすぐに呪文を唱える。

「『ファイヤーボール』!」

 キュルケの放った火球が土の腕を難なく焼き切る。

 だが一瞬遅かった。フーケの狙いはノエルの腕などではなかったのだ。

「つ、杖が!」

 そう、フーケの狙いはノエルの杖だ。右腕を締め上げたのはついで。本命はその手に握られた杖をへし折ること!

 折れた杖はもはや魔法を発動させる道具としての機能を失っていた! 杖とともに六門に及ぶ大砲たちも崩れ去ってしまう!

「ちょ、ちょっとどうすんのよこれ!」

 へたり込みうなだれるノエルを指で指しながらルイズは叫ぶ。

「ど、どうしましょ?」

「…………」

 キュルケは焦りを隠しきれず、タバサは本を仕舞い杖を強く握る。

「他の奴の杖とかじゃダメなのかよ?」

 メイジに詳しくないサイトがそう言うが、他の全員が首を横に振った。

「メイジの杖は長い時間をかけて契約して、馴染ませるものよ。今からじゃとても間に合わない」

「他人の杖が使えないってわけじゃないけど、魔法が上手く扱えないわ。ノエルの魔法はただでさえ精密性が要求されるものだから、他人の杖なんか使ったら」

「危険」

「ワタクシ、契約してない杖じゃラインスペルも使えるかどうか……ですわ」

「つまり役立たずかよ」

 サイトの容赦ない言葉を否定できなかった三人は目をそらし、ノエルは盛大に泣き始めた。

「うわああああああああああ! これじゃ『究極のお嬢様』の野望がああああああああ! ですわあああああああああ!」

「こいつ何言ってんだ?」

「気にしたら負けよ」

 ノエルがあまりにも大げさに泣くからか、四人は変に冷静になっていた。冷静なので誰もノエルに同情しなかった。

「『破壊の杖』もあるんだし、タバサのシルフィードでいったん逃げて――っ!?」

 キュルケ達の周りに影が差す。ゴーレムが間近に迫っていた、

 ゴーレムは拳を繰り出す。

 ルイズを抱えてサイト、キュルケ、タバサ、タバサの魔法で吹っ飛ばされたノエルはそれぞれ回避に成功する。だがそれぞれ離れてしまった。

「まったくしつこいわね!」

 悪態をつくキュルケと、無言でゴーレムを睨むタバサ。

 その頬には冷たい汗が流れていた。

 

 

 戦闘経験で言えばこの五人の中でトップとトップ2の二人であったが、30メイルに及ぶ巨体を前にしては、勝機を見いだせずにいた。

 

 

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