決行! お嬢様作戦!   作:鈴ノ風

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NO.5 お嬢様はM72 LAWとともに

 キュルケとタバサは回避し体勢を立て直すと、すぐさま杖を構えて魔法を放った。

 二人は既に理解していたのだ。散り散りになった五人を前に、ゴーレムが誰を狙うのかを。

「ルイズ! ダーリン! 早く逃げて!」

 叫びながらキュルケは何度も魔法を放つ。

 だが効かない。キュルケの魔法は決して弱くない。だがゴーレムがとにかく巨大すぎた。

 そしてゴーレムは二人の魔法などそよ風のように無視して残りの二人を、正確には『破壊の杖』を持つルイズを狙った。

「こちとら、ゼロのルイズの使い魔だっつうの!」

 叫び、サイトが駆けだす。

 その手には、ゲルマニアの錬金術師、シュペー卿が鍛えた絢爛なる剣。岩さえ切り裂くというその刃が、うねりをあげて巨大ゴーレムに襲い掛かる!

 斬撃はゴーレムの足の一部を斬る。だが浅い! 両断するには刃渡りが足りない。やはり巨大すぎる!

 そしてゴーレムが反撃する。『錬金』によって鋼鉄に変えられた巨大な拳が振り下ろされる。

 サイトは剣で受け止めた。そして業物はあっさりと折れた。

「ナマクラじゃねえか!」

 剣が悪いのか相手が悪いのか。

 とにかく折れた剣で勝てる相手ではない。サイトは攻撃の手段を失い、ただ回避することしかできなくなった。

 

 

 それを後方で見ていたルイズは、悔しさに舌打ちする。

 自分の呪文はあのゴーレムに歯が立たない。

 だが、手段は皆無ではない。

 手元を見る。

 小屋で見つけた『破壊の杖』だ。

「こいつで」

 ルイズは『破壊の杖』をゴーレムめがけて振るった。

 だが何も起こらない!

「ほんとに魔法の杖なの! これ!」

 

 

 ゴーレムの攻撃を避け続けるサイトは、ふと後ろで何かをしているルイズに気付いた。

「あのはねっかえり!」

 またもルイズはゴーレムを倒そうとしていた。今度は普通の杖ではなく、『破壊の杖』でだ。

 だが彼女のその行動が、サイトに勝機を与えた。

「あれなら!」

 サイトはルイズめがけて駆け寄ると、ルイズから『破壊の杖』を奪い取る。

 そして訓練を重ねた現役の兵隊がそうするように、安全ピンを外し、リアカバーを引き出し、インナーチューブをスライドさせる。

 そして肩に担ぐと、巨大ゴーレムに狙いを定めた。

 サイトは自身のあまりにも自然で不自然な動作を不思議に思うが、すぐ別のことに気を取られた。

(距離が近い……)

 安全装置が働き爆発しないのでは? そんな疑問が頭をよぎる。だがもはやこれしかない。サイトは強引にその疑問を振り払う。

「後ろに立つな! 噴射ガスがいく」

 ルイズに警告し、彼女がそれに従ったことを確認すると、サイトは『破壊の杖』改め『M72ロケットランチャー』のトリガーを押した。

 白煙を噴射しながら発射されたロケット弾頭は、迷いたがわずゴーレムに命中。強大な爆発とともに、モンロー/ノイマン効果が鋼鉄製のライナーを高速で射出する。秒速7kmで放たれるライナーは、ゴーレムを形成する土塊に液体状の振る舞いを強制した。

 対戦車用として開発された携帯火器は、ノエルの砲撃にも匹敵する爆発音とともに『土くれ』フーケの巨大ゴーレムを蹂躙し、その上半身を跡形もなく消し飛ばした。

 

 

 ゴーレムは撃破された。

 しばらく様子を見た四人であったが、次のゴーレムが来ないことを悟ると、彼ら彼女らは勝利を喜んだ。

「え? え? 終わった? ですわわ?」

 タバサに魔法で吹き飛ばされて以降気絶していたノエルは、タバサの手によってたたき起こされると、混乱したように周囲を見回す。

「ええ! ダーリンのおかげよ!」

 興奮したキュルケはサイトに抱きついたまま、ノエルの疑問に答えた。

「ふーむ。杖使ったんだな。ですわ」

「それしか手がなかったからな」

「ちょっと貸していただいても?」

「良いぜ」

 ノエルは『破壊の杖』をサイトから受け取ると、それを見分し始めた。

「ふーんふーんふーん。まあそうだよですわ。こういうものはそういうもの、ですわですわ」

「何が?」

「気にすんなですわ。それよりフーケはどうしたですわ?」

「さあ? でもゴーレムが出てこないってことは、逃げたんじゃないの?」

 

「そうかもしれませんね」

 

 彼らの背後から声がした。

 振り返ると、そこにいたのはミス・ロングビルであった。

「ミス・ロングビル! フーケの姿は見かけませんでした?」

 いいえ。と首を振ってこたえると、ミス・ロングビルはノエルから『破壊の杖』を取り上げた。

「…………あー、ですわですわ」

 非力なノエルはろくな抵抗もできず、ただ何かを確信したようにミス・ロングビルを見つめる。

 ミス・ロングビルは距離を置くと、そのまま『破壊の杖』を構えた。

「ご苦労様」

「ミス・ロングビル! どういうつもりですか!」

 キュルケが叫ぶ。

「どーいうつもりもなにもないぜ。ですわー。つまりあなたが『土くれ』のフーケなんでわね、ミス・ロングビル」

「ご名答」

「な! 彼女が?」

 ノエルの言葉を聞いたルイズは驚き、タバサは無言で杖を構える。

「おっと、動かないで?」

 フーケはワザとらしく構えられた『破壊の杖』に視線を向ける。

 この場にいる全員が、その威力を知っていた。

「全員、杖を遠くに投げなさい」

 その場にいたメイジ全員がその言葉に従う。従わないのは、既に杖を破壊されたノエルだけだった。

「おーっほっほっほ。おかしいとは思ってたですわ。かの高名な『土くれ』が、盗み出した戦利品を簡単に奪い返されるのも、自慢のゴーレムを一撃で破壊されて、その上で再びゴーレムで挑みかかったのも。つまりあなたはその杖の使い方が分からなかったんで、我々に使わせたかったのでしょう?」

「ふん。ウザったいくせに勘だけは良いみたいね」

「当然ですわ。ワタクシ『お嬢様』でしてよ」

「……それのどこが答えなんだか」

 会話する二人の隙を窺うように、サイトが剣を握る手を強める。

「おっと。そこのすばしっこい使い魔くんは、その折れた剣を投げなさい」

「その必要はありませんわ」

「……なに?」

 怪訝な顔をするフーケは、『破壊の杖』の砲口をノエルに向ける。

 だが彼女は顔色一つ変えることなく、孔雀の扇子で優雅に顔を仰いでいた。

「まったく、最近のお嬢様ときたらどいつもこいつも、ですわ。三人も貴族令嬢がいて、どうして誰も『それ』を持ち合わせていないんだですわ」

「……あんたのくだらないたわ言は聞き飽きたんだけど?」

「ワタクシはいつでも真剣だですわ……そうだろう『セバスチャン』!」

 

「ピガガー!」

 

「何!?」

 フーケの背後から、とても生命体が発するとは思えない、甲高い音声が鳴り響く!

 慌てて振り返るフーケの眼前には、金属の箱を組み合わせたガーゴイルの姿!

 そう、彼こそノエルの使い魔、『セバスチャン』である!

「ちぃっ!」

 驚いたフーケは『破壊の杖』の引き金を押す……より先に、接近していたノエルを振り向くことなく蹴り飛ばした。

「ですわっ!?」

「ピピガガーッ!!」

「ふん」

 ふざけた外見をしていようが使い魔は使い魔。主人に害が及べば冷静ではいられなくなる。

 ご主人(ノエル)を蹴り飛ばされた『セバスチャン』は明らかに狼狽し、フーケへの攻撃を中断してしまった。

「もらったよ!」

 そして今度こそ『破壊の杖』の引き金を押す。

「な、どうして!」

 だが何も起こらない!

「そいつは単発なんだよ。魔法なんか出やしない」

 背中を見せ、狼狽し隙を晒すフーケ。

 それを見過ごすサイトではなかった。

 彼は電光石火でフーケに駆け寄る。接近に気付いたフーケは自分の杖を取り出す。

 だがサイトのほうが速い! フーケが呪文を唱える間もなく、その腹に剣をめり込ませた。

 

 

 腹部を殴打され、気絶したフーケに、ノエルが小さくつぶやく。

「『銃砲火器を知っていたか否か』……それがお前の敗因で……『オレたち』の勝因だ……で……す……わ……」

 フーケに腹部を蹴り飛ばされたノエルは痛みに耐えきれず、そのまま顔から地面に崩れ落ちた。

「……ですわ!?」

 そしてその痛みでたたき起こされた。

 

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