前々から書こうと考えていましたが、発表するのがこんなに遅くなってしまいました。それでも投稿したのは、このお話を閲覧してくださる読者の皆さまにぜひ皆守ひいろちゃんを好きになっていただきたく、また私自身がひいろちゃんへの愛を忘れずにいたいがためです。
もしこの小説を読んで、ひいろちゃんを好きになってくれるのなら、私は本望です。
皆守ひいろの朝
少女――皆守ひいろは駆ける。
走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って―—。
なんのために?
どこで、だれに、どんな意味で問いかけられたのか、少女はすべて忘れてしまったが、走っている彼女の脳裏にどうしても浮かび上がる言葉。それに対する正しい答えを少女は持たない。
ただ、そう、唯一答えられるとすれば――――――。
「遅刻だああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
皆守ひいろはここ――バーチャル睡蓮町の通学路をなりふり構わず全力ダッシュしている。すべては教師のお説教を免れるために。ただ通学路なのに彼女と同じ制服姿の学生が誰一人姿を見ない時点で彼女の遅刻具合をある程度察することができるだろう。
すべてはせっかく目覚まし時計かけて一旦起きたのにまだ5分あると二度寝してしまった皆守ひいろという奴が悪いと少女は悪態を吐く。結局悪いのは自分なのだが。
「こうなったら、近道するしかない」
もう時間がない。そう確信したひいろはいつもの通学路を逸れて商店街へと入る。本当はいけないことなのだが、ここからの方が学校には近いのである。
平日なので人通りがほとんどない商店街の朝は絶好のランニング日和。このまま走り抜ければ朝のホームルームにギリギリ間に合うか間に合わないかのグレーゾーンくらいにはなるだろう。
しかし、走っているひいろの目に、ある光景が飛び込んできた。
商店街を走り切った先の少し遠い十字路。ひいろから見て左側の通路から恐らく通学中である女子小学生が青信号の横断歩道を渡っている。それだけならばなんてことはないのだが――問題は赤信号を無視して走る自動車である。このままいけば、車は間違いなく横断歩道上の少女を轢いてしまうだろう。
――あぶない!
そう思ったひいろの行動は半分無意識、もう半分はおおよそ職業病と言ってもいいくらい反射的だった。
“決意”を固め、“変わる意志”を持ち、“新しい自分”になる。そうして彼女は――超人(ヒーロー)になるのだ。
走る足はそのままに、一気に加速し大地を蹴り、どこからかやってきた『人型の光』と一体化し空を駆ける。
少女がトラックに激突する直前、両者の間に空色の光が割り込み、すさまじい衝突音が響く。
その場にへたり込み、頭を抱えて座り込む少女は、いつまで経っても衝撃が来ないことを不思議に思ったのか、顔を上げて前を見る。
「――大丈夫?」
青い髪に、胸に輝くVマーク。特徴的な瞳をこちらに向けて、鼻に絆創膏を張ったヒーローは笑いかける。――トラックを片手で止めながら。
バーチャルヒーロー見習い皆守ひいろ。
それが彼女の正体だった。彼女はこの街で、学生でありながらヒーロー活動を生業としているのだ。
「怪我はないか?次はもうちょっと周りを見てから横断歩道を歩くんだよ」
少女に背を向け首だけ振り返る形で話しかけるひいろ。次いで、今止めたトラックの運転手にも話しかける。
「あんたも、もう赤信号無視しちゃダメだよ?人轢いたら取り返しのつかないことになるからね」
ごめんね、今急いでいるから、また後でね。
そう早口に言い、ヒーロー見習いは自分の目的地へ向け走り去っていく。
この時、もしも彼女が今後の運命を知っていれば、たとえ1日学校をさぼるハメになってでも、彼らに付き合っただろう。
もっとも、これが遠因となって将来の大事件が起きるなどと、誰が予想できようか。
ちなみに、学校は普通に遅刻して怒られた。