翌日の朝、久々に静かな朝を迎えた俺は近くの川で洗顔を行っていた。
.....八雲が起こさないだけでこんなに違う気分で朝を迎えるんだな俺って。そりゃそうか、一年以上起こされて来たもんな。
そんなことを思いながら顔についた水滴を拭き取る為に手で顔をごしごししてると、急に肌寒くなってきた。
何かいるのか?と思って顔を上げて見ると.....
「ばあっ!!」
「うおっと、ととととうわあっ!!」
ほぼゼロ距離で驚かされ、そのまま体制を崩して川の中に落っこちてしまった。
「アッハハハハ!!」
「あわわわ.....すみません!すみません!」
川から体を起こすと、目の前で俺より一回り小さな妖精が二人飛んでいた。
青い方は俺を見て笑っていて、もう片方の緑の方は俺に謝罪している。
「ああ、いいぞ別に。いい眠気覚ましになった。」
「本当ですか!そう言って貰えると助かります~。ほら、チルノちゃんも!」
「え~、怒ってないしいいじゃん!それよりおにーさん面白いね~!アタイ気に入ったよ!」
「そうか。」
何だろう、デジャブを感じる。
「おにーさんもっと遊ぼうよー!あ!そうだ!弾幕ごっこしようよ!」
「ちょっとチルノちゃん!!」
「.....弾幕ごっこ?んだそれ?」
「知らないの!?スペルカード使って戦うゲームだぞ~!」
うん、まずスペルカードって何?って所からだな俺の場合。
だけど名前からしてロクなゲームでは無さそうだ。
「止めとくわ、めんどくさそうだしな。」
「え~、ケチ。」
「ケチって何だケチって!」
「ブッ、アハハ!!やっぱり面白いなぁー!」
あ~、変な子に気に入られてしまった。困るのは俺なのに、流されるのも悪い癖だよなぁ.....。
「おにーさん名前は?アタイはチルノだよ!でこっちは大ちゃん!」
「大ちゃんじゃ分からないよ~.....あっ私は大妖精です」
「.....環だ。」
「タマキ?聞いたこと無い名前だな~.....大ちゃん聞いたことある?」
「私も.....無いと思う。」
ま、だろうな。知ってたら逆に驚きだ。
「まあ、一つ言わせて貰うなら.....命が惜しければ俺には関わるな。さもなくば.....」
俺は片腕の手袋を外し、近くの木に触れる。緑が生い茂っていたその木は一瞬にして葉を落とし、枯れていった。
「.....こうなるぞ?」
これ以上話すと余計な感情を持ってしまう。そうなる前に引き剥がさねば.....
「ヒィ!!」
大妖精はビビってくれたがチルノは無反応だった。それどころかチルノは懐からカードを取り出してこう叫んだ。
「凍符『パーフェクトフリーズ』ッ!!」
俺は人魂を出して構えたが、その技の矛先は俺ではなかった。
俺が腐らせた木だったのだ。
「ほら、腐ってもキレーだよ!アタイはサイキョーだからどんな能力でもモノでもキレーに出来るんだよ!」
「ちょっ!?チルノちゃん!?何ワケわかんないこと言ってるの!?!?」
「.....フッ、ハハハハハ!そう来たかぁ.....」
改めて氷付けにされた木を見る。彼女の言ってた通り、それはまるで芸術作品の様に美しかった。
腐る能力を見ても一歩も引くことなく寧ろ寄り添おうとするこの子は、コミュニケーション能力に秀でたやつか馬鹿かの二択だろう。こういう手合いの処理は面倒くさい。
「.....じゃあこうするしかないな」
発生させた人魂を一点に集中させ、それをチルノ目掛けて放つ。
思ったより彼女は反射神経があるようで右ほほをかする程度に治めていた。
「痛った~!!!」
「大丈夫!!?チルノちゃん!!!」
「痛がる暇なんてないぞ。」
指を鳴らし凝縮させた人魂を解放。
それらはあっという間に彼女等を覆い混み、逃げ道を無くさせた。
「さて、分かり易く言おうか、死にたくなければ立ち去れ」
「.....なんで、なんでこんな酷いことが出来るんですか!!!」
「それが妖怪ってヤツだ」
「私の知ってる方達はそんなことしませんよ!!!」
「生温いなソイツ等は、ぬるま湯に浸かって生きてきたのか?」
「ぬるま湯ってのが何だか知らないけどさ、アタイの周りにいる人達はみんな優しいよ?」
.....五月蠅いな
「.....今なら見逃してやる、とっとと帰れ!!」
人魂を操作し、彼女等の後ろ方面に逃げ道を作ってやる。
「.....行こっ、チルノちゃん」
「え、あ、ちょっ!?大ちゃん!?」
俺が作った逃げ道を通り、彼女等はどこか遠くへと飛んで行ってしまった。
.....これでいいんだ。これで..........
◯◯◯◯
魔理沙side
「霊夢ー!!いるかー!!」
見慣れた神社の前で大声を出して親友の名前を呼ぶ。
「うるっさいわねぇ...こんな朝っぱらから何か用?」
「いやちょっと用があってな」
「何よ、また面倒事引っ張って来たんなら嫌だけど。」
「まあそう言わずにさ、栗持って来たから上がらせろって」
「さあ上がって、どんな話でも聞いてやるわ!」
相変わらず現金なヤツだなと思いながら、私は神社の中に入る。
「.....で?話って何よ。」
「霊夢、タマキって妖怪知ってるか?」
霊夢に相談しに来た理由は当然、昨日のおっさんのことである。博霊の巫女の霊夢なら何か知ってることがあるのではと思いやって来たのだ。
「知らないわよそんなの、何?ソイツが異変起こしたワケ?」
「そう言うワケじゃないぜ、十年も前から魔法の森に居たらしいんだがそこに住んでる私ですら知らなかったんだぜ?だからアイツについて知りたいんだよ!」
「.....へぇ」
「今タマキについて分かってるのが人魂を操ることと、後“触れたモノを腐らせる程度の能力”を持つってこ「ブフッ!!!」.....?」
何だ?突然霊夢が吹き出したんだが.....
「...アンタ今、“触れたモノを腐らせる程度の能力”って言った!?」
「.....言ったぜ?」
それを確認するや否や神社の奥の方に飛び込んでいってしまった。目の色変えて。
暫くすると霊夢は一つの巻物を持って戻って来た。そしてそれをちゃぷ台の上に勢いよく広げる。
「.....大妖怪“オドロギ”..........え!?!?」
そこに書かれていたのはこの幻想卿全てを腐食している巨大な妖怪と、一人の人間の絵。更には“触れたモノを全て腐食する大妖怪”と言う文字まで振られていた。
「.....どういうことだぜ?霊夢..........」
「私の始祖の時代の話よ、幻想卿が出来て間もないころ、突如として妖怪の山に現れた化け物よ.....!!」
「け、けど! おっさんは優しい人だぜ!?」
「だけど能力は全く同じなんでしょ!?妖怪は二人として同じ能力を持たないからそのタマキって人がこの妖怪である可能性は.....」
「その話、詳しく聞かせてもらえるかしら」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
「.....ずっと聞いてたでしょ、アンタ。」
「悪かったわね、だけどあの妖怪については今最優先事項だからね、少しでも情報が欲しいのよ。」
そう言いながらスキマから紫が出てきた。
「本来なら退治するべきなんでしょうが、今は見逃してあげるわよ、確かにコレが存在するとなると幻想卿が危ういからね。」
「それはどうも。」
相変わらずお二人の仲はイマイチな様で。
「.....あ!紫ならこの妖怪について知ってるんじゃないか!?紫ってほら、幻想卿の創造に関わった妖怪って言われてるし!」
「..........確かに私は幻想卿が始まったときからいるけど、
「「え.....」」
知らないっておかしくないか?年代的にも紫は生きてるし、霊夢の神社の巻物に残る位なら相当な妖怪の筈なんだが。
「あれは私が連れ込んだワケでもないし、自然沸きであんな力を持てるワケがない...かといってその大妖怪とは能力が同じと言えど見た目が全然違う..........分からないわね。」
「一度本人に話を伺うしかない。」
「..........。」
アイツの言ってた罪って、本当にこれなのかな。
「さあ、いくわよ。」
モヤモヤした気持ちのまま、私は紫のスキマの中へと足を運んだ。