バーンの娘(仮タイトル)   作:筆先文十郎

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再編成

 ??? 

 自称、大魔王バーンのバン子は自らの魔力で鬼岩城よりも一回り小さい新鬼岩城を作り上げた。

 その後バン子は新鬼岩城で復活したサボエラ、フレイザード、マクシマム、ザムザと共に円卓を囲っていた。

「本来ならばここで魔王軍の再興を祝って宴の一つでもするところであろうが。これからの新魔王軍にはやらなくてはならないことが山積みだからな。その代わりにはならないが、これで勘弁してほしい」

 そう言うとバン子はパチンッと指を鳴らす。次の瞬間、彼女が着ていたローブがフッと消えた。

 

 ……ッ!! 

 

 その姿に四人はハッと息をのむ。

 まず見る者の印象に残るのは切れ長の瞳。その目は研ぎ澄まされたナイフのようで尖った顎の細面がちょうど彫像めいた怜悧な美貌を際立たせいた。

 腰まで届く銀色の長い髪は(きらめ)いており、滑らかな色白の肌と引き立てあっていた。人間の平均よりも背が高く、漆黒の鎧からは手足がすらっと美しく伸びていた。胸元は砲弾を抱えているのではないかと疑いたくなるような成熟ぶり。腰も細く長い手足のしなやかさは野暮ったい鎧越しでも伺えた。

 胸の部分は、こんもりと丸みを帯びた膨らみを敢えて見せつけるかのようなひし形状に開いたデザインで、彼女の若さとセクシーさを象徴していた。太ももの半分くらいを隠し。脚線美にフィットした黒の革のブーツ姿は、まさに王の風格すら感じさせる高貴な王女の姿そのものだ。

 

「私が魔軍司令として指揮する。ザボエラ、フレイザード。お前たちは生前と同じ妖魔師団兼司令補佐と氷炎軍団に任命する」

「ハハッ!」

「了解ですぜ!」

 頭を下げる老人と半炎半氷の男を頼もしそうに見た後、バン子は残った二人に視線を合わせる。

「マキシマム、お前は百獣軍団を。ザムザは死霊軍団を指揮してもらいたい。なれないとは思うが、頑張ってほしい」

「ハッ!」

「了解しました」

 初めて担う重責にも怖気づく様子もなく受け入れる部下にバン子は満足そうに頷く。

「これより我らは人間どもに宣戦布告をするものとする。狙いは、ここだ」

 そう言ってバン子は指をパチンッと鳴らす。

 すると???に一番近い大陸の先端部分に当たる町が赤く点滅した。

「この戦いでは我らの力を人間どもに知らしめるために無血で、かつ電撃的に陥落させるものとする。こちらに大々的な被害が出なければいかなる被害は問わん」

「バン子様。よろしいでしょうか」

「なんだ、ザボエラ?」

「その侵攻戦の全権を、このザボエラに任せてもらえないでしょうか?」

「……。いいだろう」

 少し考えた後にバン子は了承する。

「あとバン子様。バン子様にも出陣をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「私に?」

 顎に手を置き、再び考えるバン子。

「わかった、私も出陣しよう」

(私の姿を見せて支配者としての恐怖を植え付けるのも一興か)

 そう自分に言い聞かせるとバン子は新生魔王軍に出撃するように号令を発した。

 

 数日後。

 ザボエラの策は見事に成功し魔王軍は一時間にも満たない時間で、無血で町を陥落。

 その後新生魔王軍が始めて占拠した町はバン子によって焦土と化すのであった。

 


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