???の日記
?月×日 雨
この世界に転生して何年たっただろう。アリスたちとの繋がりがいまだに感じられない。そんなことを考えながら、町の中を駆ける。あいつらに追いつかれないようにと祈りながら。ああしかし、もう体力も限界だ。少しでも長く身を隠せるように、路地に逃げ込もうとしたが、入ってすぐのところで足をもつれさせ、倒れてしまった。ただ、きっとこれは幸運だったのだろう。だって、そのおかげで僕は、大切な少女と出会ったのだから。
~???宅~
体の痛みで目が覚める。自分の住んでいた家と同じ様な天井。しかし、明らかに自身の住んでいた家ではないことがわかるのは、きっとこの暖かく感じられる空間が原因だろう。というより、そもそもあそこであれば治療されることもなく庭にでも転がされていたことだろう。そう思いながら起き上がり、周辺を見渡すと、襖が少し開いておりそこからこちらを覗く子供が目に入った。ここがどこなのか聞こうと声をかけようとすると、子供はびくりと体を震わせ、
「姉ちゃんが拾ってきたやつが起きた!」
と言って、どたどたと音を立てながら走り去っていく。直後、ゴスっという音とともに、少年のうめき声が聞こえた。
「もう少し静かにせい。やっとこさ金太郎のやつが寝たのに、起きたらどうするんだよ」
「いや、起きたら教えろって言ったの姉ちゃんじゃん・・・」
「教えろと入ったが、うるさくしろといった覚えはないぞ?」
だんだんと近づいてくる声の主は、聞こえた会話の内容からして、僕を拾ってくれた人物の声だろう。襖が開き、そこから少女が現れる。
「あー、弟がごめんな?悪い奴じゃないんだけど、ちょっと元気が有り余っててさ」
謝罪してくる彼女の顔に、疲労があるように思えた。それを隠すように苦笑を浮かべる彼女に、どう返事を返すべきか悩むうちに、彼女が再び口を開く。
「あたしの名前は三ノ輪銀っていうんだ。そっちは?」
「えっと、星野識です」
「なら識でいいな?それで識。お前、何であんなところに倒れてたんだ?全身の傷といい、普通に考えたら病院とかで治療を受けてるような状況だったぞ?それに、」
心底不思議様にそういう彼女に、思わず返答に詰まってしまう。助けてくれた上に治療してくれたであろう彼女に、嘘をつくというのは問題があるだろう。そうでなくとも、最低限見せるべき誠意のようなものはある。
「えっと、全部は説明できないけれど、それでもいい?」
彼女に確認をとるようにそういうと、了承してくれたので、僕は自分の今までの出来事を話せる限りで話すことにしたのだった。