レイシフトが終了し、アースに帰還した俺達を出迎えてくれたのは、ドクターとゴブリンスレイヤーだった。ただ彼は何故か瓶詰めにしたリムルを抱えて、さらには縄で縛られていたアルタイルを連れていた。
剣城
「これは・・・・どう言う状況なの?」
ゴブリンスレイヤー
「ルーラーに頼まれて二人を拘束するよう命じられた。」
剣城
「いつのまに?」
ゆめ
「ドクターがレイシフトの準備をしてくれてる間に念話でお願いしといたの。」
用意がいいな。
リムル
「助けてくれマスター!!こんなの横暴すぎる!!」
アルタイル
「己ゴブリンスレイヤー!!この私を嵌めたな!!」
剣城
「あれ?『殿』は付けないの?」
アルタイル
「この卑怯者に敬意を表す道理は無い!!この私を騙してコンゴウ殿にナノマテリアルでロープを生成して私を縛り付けたのだぞ!!」
剣城
「ナノマテリアルって?」
ゴブリンスレイヤー
「銀砂だ。
剣城
「じゃあ今のコンゴウの体って銀の砂で出来てるって事?」
ゴブリンスレイヤー
「そうだ。」
剣城
「じゃあそのロープも?」
ゴブリンスレイヤー
「そうだ。
剣城
「え?でもアルタイルの宝具やスキルならそのロープも無力化出来るんじゃないの?」
アルタイル
「登場人物や物語の設定が決まっているなら出来るが、製作途中の物語に介入する事は出来ない。特にサーヴァントになってからは、物語という物が存在しないから、その設定を変える事自体は難しい。コンゴウ殿のナノマテリアルをコントロールする設定を変更すれば可能ではあるが、生成した後ではまるで意味が無い。」
剣城
「そうなんだ。」
アルタイル
「それを教えてやったのにこの恩知らずは!!」
アルタイルはかなりご立腹のようだ。よっぽど理不尽だったようだな。
ゆめ
「ありがとうゴブリンスレイヤーさん。二人を捕まえるの大変だったでしょ?」
ゴブリンスレイヤー
「いいや。ゴブリンの方が手強い。」
リムル
「俺ゴブリン以下!?」
ゴブリンスレイヤー
「当たり前だ。お前はスライムだろ。」
アルタイル
「何故私もゴブリン以下?」
ゴブリンスレイヤー
「ゴブリンより動きが単純で捕まえやすかった。」
アルタイル
「それはそれで腹が立つ。」
やっぱりサーヴァントを相手にするよりゴブリンの方が手強いんだ。
ゆめ
「じゃあ早速行こうか。」
ゆめは瓶詰めにされたリムルを受け取って取調室に連行しようとしていた。
ゆめ
「二人共まとめて『おしおきタイム』だからね♡」
ゆめメチャクチャ怒ってるよね!?
リムル
「お仕置き!?お説教じゃ無くて!?」
ゆめ
「何言ってるの?ドクターの業務執行妨害に身体的ないじめ。これでお説教なんて流石に優しすぎだよ?」
リムル
「ウソぉぉぉぉ!?」
で、リリィもゴブリンスレイヤーからロープを受け取ってアルタイルを連行しようとしたが、彼女は涙目になってリリィを説得しようとしていた。
アルタイル
「リリィ殿!どうか落ち着かれよ!!」
リリィ
「安心して下さい。私はゆめさんと違ってただのお説教ですから。ですがちょっと体に寒気を感じるだけなので。」
アルタイル
「いやだぁぁぁ!!貴殿の固有スキルで凍死させられてたまるかぁぁぁ!!」
リリィ
「ではゆめさん!」
ゆめ
「うん!」
ゆめ、リリィ
「二人まとめておしおきターイム♡」
リムル、アルタイル
「やめてぇぇぇぇ!!」
二人共、どうか無事に帰ってきてくれ。
ロマニ
「さて、あっちはゆめに任せて、剣城君は僕と一緒にラボへ来てくれるかな。君に見せたい物がある。」
剣城
「報告は?」
ロマニ
「ゆめがあんな調子だし、後でいいよ。何れ報告書で提出して貰うから。」
剣城
「わかりました。じゃあセルべリア、ゆめの代わりに同行してもらえる。」
セルべリア
「わかりました。」
ロマニ
「じゃあ行こうか。」
剣城
「あいねとみおは食堂で待機してて!後で皆んなの部屋割りをするから!」
みお
「わかった!」
二人にそう言って俺とセルべリアはラボに向かった。その後の話だけど、あいねがゴブリンスレイヤーに何か相談していたらしい。
ゴブリンスレイヤー
「どうした。」
あいね
「剣城君の事がよくわからないんです。なんであそこまで無茶するのか。友達になった気でいたけど、まだまだ剣城君の事いろいろ知らない事ばかりだし、どうしたらいいのかなって。」
ゴブリンスレイヤー
「洞窟に入る前に、物陰に隠れて奴等の行動を伺う。見張りの交代、遠征部隊の帰還。どの時間でどのタイミングで行うのか、じっくり見る事だ。」
あいね
「はい?」
ゴブリンスレイヤー
「ゴブリンの話だ。」
あいね
「あの?私ゴブリンについて聞きたいわけじゃ?」
ゴブリンスレイヤー
「わかっている。お前の欠点は観察力が欠けている事だ。マスターの行動をさり気なく観察しろ。それから少しずつ接近すればいい。マスターとコミュニケーションを取りたいのなら先ずはそこからだ。」
無愛想かと思ったけど、実は面倒見がいいんだな。ちゃんとアドバイスしていたようだ。
あいね
「わかった!私頑張ってみます!!」
ゴブリンスレイヤー
「そうか。」
あいね
「それとゴブリンスレイヤーさん!」
ゴブリンスレイヤー
「何だ。」
あいね
「私と友達になって下さい!!」
ゴブリンスレイヤー
「そうか。」
みお
「これからよろしくお願いします!」
ゴブリンスレイヤー
「よろしく頼む。」
最初は色々あったけど、何だかんだで打ち解けたようだな。そんな事実を知らぬまま、ドクターに連れられてラボに着いた。そこにはクリスティーナさんの姿もあった。
紅莉栖
「あら?何でゆめじゃ無くてランサーの貴女が同行してるの?」
セルべリア
「ルーラーなら先に済ませたい用件があると言って、バーサーカーを連れて何処かに連行したが?」
紅莉栖
「何やってるのよあの子は。これじゃあ説明するの二度手間になるじゃない。」
ドクター
「まあまあ。ゆめは次回にするとして今は剣城君に『召喚台』を使わせよう。」
そう言えば、クリスティーナさんの後ろに巨大な盾が置かれた装置みたいなのがあるけどあれかな?
紅莉栖
「じゃあ剣城君。これを渡しとくわ。」
クリスティーナさんから渡されたのは、七色の石のような物だった。ざっと見て150個くらいはあった。
紅莉栖
「これは『
剣城
「魔力を凝縮した石?これを使って何をするんですか。」
ドクター
「聖晶石と召喚台を使って、新たにサーヴァントを召喚して貰う。」
サーヴァントを・・・・召喚!?じゃあ儀式で行った召喚っていらなかったんじゃ!?
紅莉栖
「ようやく完成したところかしら。剣城君が実際に召喚するところを見せてくれたお陰で無事に完成したわ。」
意味はあったんだね。
ロマニ
「じゃあ、早速使ってみようか。」
召喚台の上に30個の聖晶石が置かれ、装置が動き出した。光の円が回りだし、突然光ったかと思ったら、中から巨大な石板?いやカードみたいな物が現れた。これは『クラスカード』と言って、サーヴァントを呼び出す時にまずどのクラスが呼ばれるのかが選定される。そして選ばれたクラスからサーヴァントがランダムで召喚されるのだ。この時出現したのは、バーサーカーのクラスカードと、セイバーのクラスカードが2枚だった。そして、バーサーカーのクラスカードから人が現れた。それは、俺が知っている人物だった。
杉元
「バーサーカー。杉元佐一だ。これからよろしくな。」
剣城
「杉元さん!!」
エベレストで別れた筈の杉元さんが来てくれたのだ。
ロマニ
「剣城君。わかってるとは思うけど、聖杯戦争に参加したサーヴァントにはその時の記憶が無い。君の事は残念ながら覚えていない筈だ。」
剣城
「そうでした。」
そうだ。聖杯戦争に参加したサーヴァントと再会しても、彼等はその時の記憶を失っている。あのシチューの味すらも、忘れ去れているのだ。
杉元
「あー・・・・やっぱりそうなんだ。だよな。あの後北海道戻ったらエベレストでの出来事が頭から消えていて、また召喚されたと思ったらまた思い出して、そんで今度は剣城が目の前にいるんだけど?」
杉元さん!?もしかして憶えているのか!?
剣城
「覚えているんですか!?」
杉元
「みたいだな。けどまさかお前のサーヴァントになるなんて思ってもみなかったな。」
剣城
「俺も!でもようこそ!アースへ!」
杉元
「こっちこそよろしくな!マスター!」
セルべリア
「歓迎するぞ。不死身の杉元。」
杉元
「こっちもだ。」
杉元さんとの再会を喜んでいた時に、今度はセイバーのクラスカードから杉元さん同様にサーヴァントが出現した。
殤
「セイバー。殤 不患。召喚に応じ参上した。何かと扱いづらいオッサンだが、これからよろしくな!」
剣城
「殤さん!!」
殤
「よお!坊主・・・・は流石に無礼だったな。これからよろしくな!マスター!」
剣城
「うん!よろしく!」
殤さんとの再会を喜び合ってる途中、もう一枚のセイバーのクラスカードからサーヴァントが出現した。もう一人はなんとあの人だった。
政宗
「ほう。こりゃ随分と賑やかな場所だな。」
剣城
「貴方は!!」
政宗
「ハッ!セイバー!奥州筆頭 伊達政宗!押して参る!!He aer we go!!let's party!!」
冬木で俺達に力を貸してくれた政宗さんが来てくれたからだ!
剣城
「政宗さん!!」
政宗
「よう坊主・・・・じゃ無かった。契約上今はアンタのサーヴァントだから大将って呼べばいいか?これから世話になるぜ。」
剣城
「こっちこそよろしく!」
杉元さん、殤さん、そして政宗さんとの再会で喜んでいた俺は、彼女の存在に気がつかなかった。
レベッカ
(なっ・・・・なっ!?何か増えてるぅ!?)
レベッカ・スカーレット・ティファニー。マスター候補の魔術師である彼女に焦りが見えて来た。そしてその翌日、彼女はとんでも無い事をしでかした。
ゴブリンスレイヤー
「何故お前達まで着いてくる。」
杉元
「いやだって出撃以外やる事なくて暇なんだよ。」
政宗
「今の所聖杯も現れねえみたいだし、しばらくはエンジョイさせて貰うぜ。」
ゴブリンスレイヤー
「好きにしろ。」
そんな静かな時間は、嵐のように訪れた。
オペレーター
「アース施設内に巨大な魔力反応を7つ確認!サーヴァントです!!」
ロマニ
「場所は!!」
オペレーター
「第三倉庫です!!」
第三倉庫に向かった俺に待ち受けたのは、レベッカが召喚した赤い七騎のサーヴァント達だった。