東方永魂録   作:よつやれおん

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第七話

東方永魂録 第七話

 

「そこの団子屋さん?」

 

 紅夢に訊かれ、笑顔で答えた。

 

「そうそう、好きなの買ってきてねー」

 

 私は団子屋さんに足を踏み入れる紅夢を後ろから見ていた。

 すると、紅夢の身体から霊魂のようなものがチラチラと浮かんだり身体に戻ったりを繰り返すのが見えた。私は心底驚いた。妹紅が永遠亭で言っていたことは正しかったのだ。彼は紛れもなく、神躰人だったのだ。

 

「はーい、買ってきたよー!」

 

「うん、じゃあ月でも見ながら屋敷で食べますか!」

 

 そう声を掛け、私は紅夢に何と言うか考えながら、白玉楼への道を再び戻っていった。

 

 私と紅夢はふたり月の下で、白玉楼の縁側に座っていた。

 

「じゃあ、早速食べよう!」

 

 笑顔で封を開けて団子を頬張る紅夢を見ながら、私は声を掛けた。

 

「今からとても大事な話をするからしっかり聞いてね、私の言うことがあなたにとってとても衝撃的なことかもしれないけれど、あなたが知っていなければならないことなんだ。どうかそこだけは許してね」

 

 紅夢は何のことかさっぱり分からないと言う顔をしていたが、やがて落ち着いた声で返事した。

 

「分かった、しっかり聞くよ」

 

 私は頷き、大きく息を吐いて、話し始めた。

 

「まず端的に言うよ、あなたは半人半霊なの。半人半霊というのは、人間と幽霊のハーフなの。人間の姿をしているけれど、心には霊の一面もあるの。実際私はそうよ。でもただの半人半霊。あなたは多分、『神躰人』という人なの。この神躰人ってのはとても希少で、霊魂という、半人半霊の持つ意思のある霊の魂を、本来身体の外か中にしかおいておけないのに、どちらにも置くことができる特別な半人半霊なのよ、ここまで一気に難しいこと言ったけど分かる?」

 

 紅夢はまだ理解が追いつかないようだが、私に訊いてくる。

 

「その、霊魂?ってやつは、悪いものなの?」

 

「いや、違うよ、あなた自身の意思で霊魂を操ることもできるよ」

 

 続けて紅夢は訊く。

 

「動かすには、どうすればいいの?」

 

 私はにこやかに笑いながら答えた。

 

「それは人それぞれだと思うよ、けれど私は一番最初、願った気がする」

 

「願う?」

 

「そう、願う。動いてください!ってね」

 

 私は実際に願うような姿勢をとって言った。

 

「意外と簡単そうだね」

 

 紅夢の顔から不安そうな感じが少しなくなったように思った。

 

「やってみる?」

 

「うん、やってみる」

 

 そう言って紅夢は目を瞑り、ぶつぶつと願い始めた。すると、紅夢の身体からポンと霊魂が出てきた。

 

「すごいよ、紅夢、出たよ!動いてってお願いしてみたら?」

 

「え、出たの?じゃあ...前に出てって願ってみるよ」

 

 紅夢はまた目を瞑り、何やらぶつぶつと呟くと、霊魂がずっと前に動いた。

 

「...すごい」

 

 紅夢は呆然とその霊魂を見ていた。その霊魂は、紅夢の眼と同じ黄色の光を発していた。

 私も当然、神躰人を見るのは初めてなので、声も出さずに見ていた。

 

「...僕、この子...もう一人の僕と仲良くなれるよう頑張るね」

 

「うん、頑張れ」

 

 二人は笑いながら、その霊魂を見つめていた。

 

「僕、もう眠いや」

 

 しばらくして、紅夢は声を上げた。

 

「じゃあ、寝ようか」

 

 そう言って私は紅夢を自分の部屋へと連れていった。

 

「ここが私の部屋で、あなたは私の横で寝るってことで大丈夫?」

 

「うん、おやすみ」

 

 紅夢は目を擦りながら布団に入り、すぐに寝てしまった。すやすやと寝息を立てて寝る紅夢を見ながら私は一人呟いた。

 

「片付けて私も寝るか、今日は色々忙しかったな」

 

 そう言って、私は夕食を片付けて布団へ入った。

 

 次の日、朝早くに私は目が覚めた。まだ紅夢は横で寝ている。私は大きく伸びをして、一人静かに掃除を始めた。

 

「朝から掃除、凄いな」

 

誰の声かと思って振り返ると、そこには右手を腰に置いて立っている妹紅がいた。

 

「こんな朝早くから、妹紅の方こそどうしたの?」

 

「どうしたのって、紅夢のことを聞きにきたんだよ、朝じゃないと他の奴に聞かれる可能性上がるからな。初日だったし沢山知ったことあったろ?」

 

 たしかにそうだ。真っ昼間に話していると誰かに聞かれるということを考えていなかった。やはり私一人では紅夢を匿うことはできないと痛感した。

 

「う、うん。そうだよね」

 

 そう言って、私は昨日知ったこと、彼が『神躰人』であることなどを妹紅に話した。

 

「...で、妹紅のいう通りだったというわけだね」

 

「だから言ったろ?まあそんなことは良くて、彼奴の年は幾つなんだろうな」

 

「え、突然...?」

 

 たしかに気になるところだ。年によっては...まさか...

 

「慧音に世話になるかどうかってところなんだよ」

 

 やはりそうだった。年によっては勉強をしなければならないのだ。彼は見た目だと10歳くらいのように見えなくもない。

 

「今日起きたらちょっと訊いてみるね」

 

 私はそう言って妹紅と別れた。帰り際に、何かあったらすぐ来るからなと言ってくれたのがとても嬉しかった。

 掃除を終え部屋に戻ると、紅夢はいなかった。布団は片付けてあり、灯籠も消えていた。もしかすると思い、ある場所へ行くと、紅夢は一人で突っ立っていた。

 

「やっぱりここで”あれ“してたのね」

 

 ここは、昨日団子を食べた場所、そして”あれ“とは、霊魂を動かす練習だ。

 

「お...おはよう、何も言わずに部屋から出て行ってごめんなさい」

 

 私は微笑んで答えた。

 

「いいのよ、次やらなければ怒られないと思うよ。ところで、何か上達したの?」

 

 紅夢は即答した。

 

「カクカク動かすんじゃなくて、なめらかに動かせるようになった...くらいかな」

 

「すごい進歩じゃないの?」

 

 私は心から感心していた。昨日まで、前後にしか動かせないような状態だったのにもうなめらかに動かせるとは...私は別段努力した記憶もないからそれが果たして難しいことなのかは分からない...

 

「ありがとう」

 

 紅夢は顔を少し赤くして照れながら続けて言った。

 

「今日の朝ご飯も手伝うよ」

 

 私は少し戸惑いながらも答えた。

 

「え、ありがとう、じゃあ幽々子様が目覚める前に作っちゃいましょう」

 

 紅夢は笑顔で頷いた。

 

「うん!」

 

 二人は並んで台所へと歩いていく。大きい影と小さい影、新しい朝の日の光に照らされていた。




今回も読んでくださりありがとうございます!
かなり前に予め書いておいたものなので少し文が変かもしれませんが耐えていただければ(((
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