魂の行き着く先   作:しののめめ

14 / 14
初仕事

基地の人形達が作戦室に集められてから数分後、何やらダンボール箱を抱えた指揮官とMDRが部屋に入ってきた。モニターの横にダンボールを置くと指揮官がモニターの電源を入れる

 

「ありがとなMDR、後できっちりお礼するから」

 

「活きの良いネタ、期待してますからね!」

 

短く言葉を交わすとMDRはそそくさと出ていってしまう

 

「さて、急に召集を掛けてごめんね。実はここに所属不明の兵士達が来てるらしくて」

 

ほとんどの人形は初耳の事なので作戦室の空気が慌ただしくなる、指揮官がきっちり戦闘を行えるように準備しているのも拍車をかけているだろう。

 

「奴等は警備の薄い格納庫側から侵入しようとしてる辺り…多分この基地の警備状況を把握してると思う」

 

指揮官がモニターに基地の見取り図を出し、格納庫の奥、居住ブロックを指した。

 

「今回はあえて格納庫に奴等を招き入れる、警備ロボットに対応してもらう」

 

「俺達は先の居住ブロックからしか入れない格納庫を見下ろせるエリアで奴等を待ち構える」

 

指揮官のしっかりとした作戦に椅子に座って話を聞いている人形達も興味津々。

 

「もしかして…あの居住ブロックにあった開かずの扉の事?」

「大正解だ、あそこはセーフルームに繋がってる。もしもの時はセーフルームからラペリング降下で格納庫に出られるようになっててね」

 

「そんな部屋があったのね…知らなかったわ」

 

12が感心しながら指揮官に質問する。

 

「そんな部屋からどうやって奴等を攻撃するつもりなの?射角も取りにくそうだし」

 

「そこでこれだ、ダンボールの中身を見てみてくれ」

 

指揮官に促された12がダンボールの蓋を開くと、中には大量のガスマスクが入っていた。その横には催涙ガスグレネードも添えてある

 

「俺と選抜した何人かでセーフルームに向かいタイミングを見計らって上から催涙ガスを投入、無力化が確認出来た時点でラペリング降下して先に奴等を抑える」

 

「後から増援として君達に来てもらう、今回殺すのは無しだ」

 

「もし、抵抗された場合は?」

 

12の声色が変わる、指揮官にその覚悟があるのかを確かめるように。

 

「その時は殺す、俺達だって死ぬために行く訳じゃない」

 

「成長したのね…ホントに」

 

12の顔がいつもの何を考えているか分からない表情に戻る、ブリーフィングもそろそろ済ませなければ間に合わなくなりそうだ。

 

「すまないが時間がないので選抜を始める、選抜されなかった子達は各自で動けるように準備だけしておいてくれ」

 

「それじゃあまず12と94、次に45と9を」

 

「他の子達は各自待機、指示は移動中に出す」

 

「ガスマスクを忘れずにな、作戦開始だ」

 

指揮官がガスマスクと催涙ガスグレネードを持って部屋から出ていくと選抜された人形達を皮切りにどんどんマスクを準備して部屋を出ていった。

 

居住ブロックの開かずの扉を開き、セーフルームに向かう道すがら少しばかりの他愛ない会話が広がる。その内容は年齢相応の女の子らしい会話だ

 

「ねぇ94、指揮官のことどう思ってるの?愛しの12を奪われそうになってもう大変~って感じ?」

 

45がいつもの調子で94に話し掛けると少し迷ったように94が返答を始める

 

「確かに指揮官はいい人だ…でもそれ以上に12が指揮官の所に行ってしまいそうで、私はとても不安で…仕方ないんだ」

 

前方の12と指揮官には恐らく聞こえていないであろう、恋する乙女の悩みが聞けた45と9はニヤニヤしつつ更にまくし立てていく

 

「いっそのこと指揮官を狙ってみたら?そうすれば12も貴女の事構ってくれるかもよ?」

 

「なぜ指揮官を狙う必要が?彼は関係ないだろう」

 

「貴女が指揮官を狙えば12にとってはライバルよ、私達ともライバル関係になっちゃうかもね」

 

94がいまいち言葉の意図が理解できず困っていると前方の指揮官と12が立ち止まりセーフルームの鍵を開けていた。

 

「よし、部屋に入って準備しよう。警備ロボットを動かしてくれ12」

 

「任せて頂戴、いつもの倍はしっかり動かしてあげるから」

 

12の目が開くと格納庫でスリープモードになっていた警備ロボット達が動き出し、自律モードへと変更させる

 

「流石だ12…やっぱりかっこいいな」

 

94が目を輝かせながら12を褒め称える、しかし余り嬉しそうではない12を見て指揮官は不思議に思う。

 

「どうしたんだ?いつもみたいに笑顔を見せてくれないのか」

 

「やっぱり、指揮官の事が…?」

 

「そろそろ一人立ち出来るように頑張ってよね、94」

 

初めて冷たく突き放すような口調で12が94に促す

 

「ど…どうしてそんな事を言うんだ?私はただ……」

 

「今はもう状況が違うのよ、今の指揮官は私じゃなくて彼なんだから。私が好きなのは分かるけどその私情で彼を手に掛けるような事があれば容赦しないからね」

その言葉にショックを受けた94は地面に座り込み、俯いてしまった。

 

「12…私はどうすればいいんだ…?私には12しかいなかったのに、指揮官に引き取られてから12は指揮官との時間が増えて私との時間は減っていった。」

 

「話を遮ってすまないが…あと5分もすれば奴等が来るはずだ、それと…すまない94」

 

「君への配慮が足りてなかったようだ…少し考える時間をくれないか?きっと今よりもいい環境になるはずだから…」

 

「そうだ!!指揮官が身を引けばいいんだ…12は貴方なんかに渡さない…」

 

「癇癪はそこまでにしたら?12もそうだけど私達だっているのよ

?」

 

「アンタが12にどんだけ負担かけてんのかがよーく分かった、今のアンタは指揮官にも12にも相応しくない」

 

45が間髪入れずに鋭い言葉を投げ掛ける

 

「うるさい!!!!お前に私の何が分かるんだ!?」

 

 

作戦中にも関わらずセーフルームには重苦しい雰囲気が漂い始め、渦中の指揮官が話し始める前に12が我慢できずに爆発した。

 

「じゃあ私がこの作戦を降りれば良いのかしら94、なんとか言ったらどう?」

 

「この作戦どころか貴女を連れてどこか廃墟にでも逃げた方がいい?」

 

いつになく12は不機嫌そうで、流石の指揮官も助け船を94に出すことは出来なかった。

 

「違う!私は12が離れていくのが耐えられないんだ…どんな時も12が側にいて私を光で照らしてくれた、それが私の生きる理由だった」

 

地面に座り込み俯いたままの94が掠れた声で必死に言葉を紡ぐ

 

「私を照らしてくれる12はとても優しくて…暖かかった、今の12にはそれがなくて…もう分からないんだ」

 

「12、94を連れて部屋に戻ってくれ…今の俺じゃ解決出来そうにない」

 

「そうね…ごめんなさい指揮官、迷惑を掛けて」

 

「行くわよ94、さっさと立ちなさい」

 

12に促されて渋々と94が立ち上がり、後ろについて部屋を後にした。

 

「気に病むことは無いよ指揮官、指揮官が悪いんじゃないからさ!」

 

すかさず9もフォローを入れるが一向に重苦しい雰囲気が晴れることはなく、その雰囲気を嫌でも晴らしてくれたのは皮肉にも格納庫に到達した侵入者達の銃声だった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。