数分前に指揮官からの招集があった、朝言っていたエクスカリバー作戦とやらのブリーフィングが始まるのだろう。AK-12とAN-94は足早に基地のロビーへと向かう。
他の戦術人形達は何事かと心配そうに指揮官を見つめていた。それを察したのか否か指揮官が口を開いた。
「君達に集まってもらったのは久しぶりの作戦行動が我々に発令されたからだ、コードネームはエクスカリバー。」
それを聞かされた戦術人形達は浮き足立つ者もいれば先ほどよりも不安そうな顔をする者もいた、AK-12達二人はどちらかと言えば不安だった。
「今回の作戦は鉄血の連中に占拠された軍事基地を奪還、基地に格納されている核弾頭の無力化だ。」
「この軍事基地を奪還出来れば新たなグリフィン傘下の基地に出来るので上層部の方々はどうしても成功させてほしいらしい。」
指揮官が嫌味を含めてそう言い放った。
「今回は他の基地から戦術人形を借りて基地の奪還を目指すんだが恐らく俺達の監視役としてだろう、当てにしないように。」
「ここまでで質問はあるか?」
指揮官の問いに戦術人形達が各々質問を投げ掛け、淡々と対応していた。その間私達二人はボーッとしてしまっていたようで。
「AK-12、AN-94?聞いてたか?」
そう言われハッと我に帰り指揮官に対して謝罪をした。
「ごめんなさい指揮官、少し考え事をしていて…」
指揮官は少しため息を吐いてもう一度説明をしてくれた。
「今回のメンバーはAR小隊、404小隊、そして君達の計10人で行ってもらう。大丈夫そうか?」
AK-12は運が悪いと思った、シミュレーターで不甲斐ない結果を残してしまった直後に自分達が抜擢されてしまったのだから。だが断るわけにもいかないので承諾をした。
「えぇ、私もAN-94も異論はないわ。」
そう言った後に小声でAN-94に謝罪していたのを指揮官は見逃していなかった。
「94、疲れてるようだし先に戻っていいわよ。」
「うん、また後でね12」
そう言うとAN-94は自室に戻っていった。
その後、指揮官がAR小隊と打ち合わせをしている時の出来事だった。
「さっきはボーッとしてたみたいだけど、何かあったの?」
ニヤニヤした顔でUMP45が話し掛けてきた。どこまでも癪に触る女だがここで問題を起こすわけにもいかず平静を装って言い返した。
「別になんでもないわ、貴女に言う筋合いもないでしょ?」
「酷いね~…励ましてあげようと思ったんだよ?」
依然としてニヤニヤした顔のままそう返されますますイライラしてきたのでつい、言ってしまった。
「喧嘩売ってるの?それとも今ここで撃ち殺してほしいのかしら。」
UMP45の顔が一瞬にして獲物を狩る目になったのを見て少しばかり後悔したが既に遅かった。
「知ってるのよ?シミュレーターでクソみたいな結果出したの。大方そんな結果出した後に実戦に抜擢されたから怖かったんでしょ?」
頭の中で何かが切れるような音がした後にUMP45の胸ぐらを掴んでいた、指揮官は打ち合わせに集中しており全く気付いていないようだった。
「もう一回言ってみなさい、首を飛ばすわよ。」
「指揮官の前で殺し合いでもするつもり?私の指揮官の前なのよ?」
「私の指揮官?気持ち悪いわね、人形と人間が釣り合うとでも?」
そう言いきる前に腹部を殴り付けられていた。
「っ…!?」
思わず胸ぐらを掴んでいた手の力が緩んでしまいUMP45を放してしまった。
「次言ったら撃ち殺すから、それと作戦中に邪魔しても殺す。それじゃあね?負け犬」
UMP45は自分の手をひらひらしながら去っていった。
「クソ女が…覚えとけよ。」
指揮官にバレないように服で口から吐いた血を拭って自室に戻るのだった。
その後間もなくAR小隊から招集がかけられ作戦のメンバーが集まった。
「AK-12、AN-94は?」
そうM4A1が問い掛けた。彼女とは過去の作戦で共闘しておりある程度進んで作戦に参加した要因でもある。
「色々あって部屋で休んでる、後で私が伝えておくから安心して。」
そう言うとAR小隊に見えない角度で404小隊のG11以外がこちらを見てニヤニヤしていた、ここが戦場なら今すぐにでも殺してるところだが今は我慢しなければならない。
「分かった、それじゃあ作戦の説明をします。よく聞いていてね。」
M4が淡々とではあるが分かりやすいように説明をしてくれた。
「まず私達AR小隊と別基地からの戦術人形でチームを組んで軍事基地を見おろせる山から偵察をします、こちらで基地の偵察を済ませた上で私が作戦開始の合図を出します。」
「次に404小隊とAK-12、AN-94の二人で軍事基地から1キロ離れた無人都市で潜伏してもらい作戦開始の合図を待ってもらいます。合図を出したらこちらの指示の元基地に侵入、地下の格納庫にある格納庫の無力化をしてもらいます。」
よりにもよって面倒な方か…とAK-12は内心毒づいた。
UMP45が質問を投げ掛けた。
「味方が負傷した場合はどうすればいいの?この作戦はスピードが命だろうし。」
至極真っ当な質問だが依然としてこちらを見てニヤニヤしているので恐らくだが誤射でも装って私を殺すつもりなのだろう。
「味方が負傷した場合はすぐに私達に報告して、別基地からの戦術人形を救助に向かわせます。スピードが命とはいえ失っていい命は1つもありません。」
M4がマトモな人形で良かったと心底思った。こんな404小隊とかいうクソみたいな連中と組むのもM4のおかげで少しばかり気楽になった気がした。
「出発は1時間後、しっかりと準備をしておくように。別基地からの戦術人形とは現地で集合します。それでは解散」
足早にAR小隊は行ってしまいその場に私と404小隊だけが取り残された。空気が重たいので私も部屋に戻ろうとすると404小隊のHK416に呼び止められた。
「貴女みたいな野蛮な銃より私みたいな完璧な銃の方が指揮官も気に入ってくれるはずよ、貴女がどれだけ活躍しようと指揮官は私を選ぶはずだから。精々完璧な私の邪魔をしないでね?」
なんで404小隊はどいつもこいつも私に喧嘩腰なのか、不思議で仕方なかったがそんなことより作戦前に気持ちを落ち着かせたかったので無視して部屋に戻ることにした
「無視ですって…?いい度胸じゃない。ぽっと出の女が私達の指揮官を奪えると思わないことね負け犬の人形風情が!」
後ろで何か吠えていたがどうでもいい、どうせ寒冷地で動作しなくなるようなポンコツがベースのクローンなのだ。精々吠えさせておけばいい。
歩きながらシミュレーターの結果を改めて思いだしてげんなりした、あんな成果で上手く出来るのだろうか?正規軍の実験として生まれた私達は戦場でも嫌われものだった。そして作戦が終わった後に唐突に捨てられた私達はAR小隊と出会い今の指揮官に拾われた。
拾われた以上恩義に報いたい、そんな気持ちが少なからず胸のどこかにあった。嫌われものだった私達を暖かく迎えてくれたあの指揮官に報いたい気持ちが。
そのチャンスが今回やってきたにもかかわらず、気分は落ち込んだままだった。そんなもどかしさを抱えているうちに部屋についた。扉を開けて部屋に入るとAN-94が笑顔で出迎えてくれた。
「お帰り12!作戦の決行はいつ?」
AK-12は先ほどのブリーフィングの内容を全てAN-94に話、一時間後に出発することも伝えた。
「うん、わかった…不安だけど一緒に頑張ろうね。」
AN-94の表情が少しばかり曇った気がした、気のせいではなく確実に。先程のシミュレーターの結果を引きずっているのだろう。
「安心して、不安なのは私も同じ。」
そう言ってAN-94を優しく抱き締めてやった。それからどれくらい立っただろうか。扉をノックされてからようやく時間がかなり経過したことに気がついた。
「AK-12?そろそろ武器庫で準備して出発するから貴方達も急いでね。」
扉の前でM4がそう言って武器庫に向かっていった、私達も向かわなければ。
「行きましょうか94、準備しに。」
AN-94が頷く、覚悟は決まったようだ。扉を開けて武器庫に向かう道中指揮官とすれ違い言葉をかけられた。
「404の連中から話を聞いたよ、シミュレーターで上手くいかなかったんだって?」
指揮官にもその話をされて少しばかり苛ついたが相手は指揮官だ、抑えなければならない。
「苛ついてるのは分かってる、すまない。だがあんまり気負わないでほしいんだ。君達二人ならきっと出来るからね。」
そう言うと指揮官は端末を手渡してきた、これはなんだろうか?
「その端末で俺と連絡が取れるようになっている、404や君達に危機的状況が起きたらすぐにそれで連絡してくれ。それじゃあ作戦の成功を期待しているよ。」
指揮官はそう言うと執務室へと消えていった、先ほどまでの苛つきはとうに失くなっていた。あの程度で苛ついてしまっていた自分が恥ずかしく思えてきたので足早に武器庫へと向かい準備を進め格納庫のヘリへと向かった。
「全員揃ったわね、それじゃあ私達AR小隊が1番機のヘリに、貴女達404小隊とAK-12、AN-94の二人で二番機のヘリで出発します。無人都市で着陸した後は手はず通りにそちらのチームは無人都市に潜伏、私達は山に向かいます。」
「今回のコードネームは私達AR小隊がウォッチャー、404がブラボー、貴女達二人がエコーとします。忘れないように割り振りをしておいてください。それでは出発します。」
それぞれが違う気持ちを抱えたままヘリコプターが出発する、私達の安い命を載せて。