エクスカリバー作戦が成功を納めてグリフィンの上層部は私達を称えると同時に畏怖の視線を向けてくるようになった、大方少人数でエリート人形を始末しただけでなく基地を奪還しエクスカリバーのコアをしっかり回収してきたからだろう。
作戦に参加したメンバーはしばらくの休暇を与えられていた、AR小隊はペルシカさんのラボでメンテナンス、404小隊はふらっと何処かへ消えていた。そのうち戻ってくるだろうけど
そして私達は初めての休暇をどう使おうか迷っている最中だった。
「私達に休暇なんて…ホント間抜けな指揮官よね、94」
「そうかな…?折角頂いたんだし息抜きでもした方がいいんじゃないかな」
お互い見つめあっても答えは出てこない、当たり前だ。元々私達がいた正規軍は私達の事を勝手に産み出して勝手に捨てた。休暇なんか一回もなかった。
「そうね…貰ったものは有効活用しないとよね」
目線を自分の足元へと落として呟いた、吹き飛ばされたはずの右脚はすっかり元通りになっていた。指揮官が慌てて正規軍に連絡してパーツの予備を確保したのを覚えている
あのときの指揮官の慌てぶりは正直面白かった、私達が傷だらけで帰ってくるなり大騒ぎで誰よりも私達を心配してくれた。
「あの人だけは私達を大切にしてくれてる、でも私達には返せるものが何もない。」
どうすればいいのか?休暇を使うにしても人間と同じように大っぴらに休んでもいいのだろうか?そんな疑念がずっと頭の中を駆け巡っていた。
するとAN-94が口を開いた
「深く考えるより、やりたいことをやってみようよ。ね?」
「指揮官は私達を大切にしてくれてる、その感謝の気持ちを伝えるとか…どうかな?」
AN-94の言うとおりかもしれない、あの日みたいに指揮官の部屋に押し掛けてコーヒーでも作ってあげたら良いのかもしれない。そうしながら指揮官に色々とお話をしてみよう
「そうね、指揮官の部屋に行ってみない?今の時間ならいるはずだから」
「うん、行こっか!」
時刻は昼の12時、ちょうどお昼時だ
自室から出て指揮官の部屋に向かう途中エクスカリバー作戦で共同したSVDとすれ違った
「アンタ達はあのときの…AK-12とAN-94とかって言ったっけ?」
「あら、貴女はSVDじゃない…どうしてここに?」
そう聞くとSVDは悲しそうな顔を見せた後に話し始めた
「実はあの作戦が終わった後私達のチーム二人はKIA扱いになってたんだ…私達の指揮官は最初から私達を消すつもりで作戦に参加させてたらしいんだ」
「どうして?」
AN-94が素朴な疑問を投げ掛けた
「私達の指揮官は戦術人形を駒としか見てなかった、それは別にいい。でもある日M1919があのクズ指揮官に乱暴されてたのを見て思わず殴っちゃったんだよ」
ぽつりぽつりとSVDが言葉を紡いでいく、その度に表情が曇っていった。
「そうしたら私達二人は積極的に前線に飛ばされるようになった、自分に歯向かった人形ごときを消したかったんだ。それでこの様だよ」
「それでここの指揮官に拾われたの?あの人も物好きよね」
AK-12が励ますように言葉を投げる
「そうだ、あの指揮官に拾われた」
「あの人はとても優しいし、右目もしっかり直してくれた」
「そうみたいね…右目の調子はどう?」
「バッチリ、これで新しい指揮官の為に働けるんだけど…まだ実践には出してやれないって」
メンタルケアの為だろうか?とてもじゃないが本当に物好きな人間と言わざるを得ない
「彼にもきっと考えがあるのよ、またいつか実戦に出れる日は必ずあるはず」
「そう願ってるよ…今からランチなんだがアンタたち二人は?」
「あー…野暮用があってね、今すぐランチには行けないの」
「そっか…また会ったらゆっくり話そうじゃないか、またな」
SVDは食堂の方へと向かっていった、私たちも指揮官の部屋に向かわねばならない。
「指揮官、いるかしら?」
扉をノックして返事を待つ、これをやるのも2回目だ
しばらくして返事が帰ってきた
「いるぞ、入ってきて構わない」
相変わらず指揮官の部屋はデスク周り以外散らかっていた、片付けろと言ったのに
「休暇について聞きたくて来たの、コーヒー入れましょうか?」
「あぁ、頼むよ。AN-94は飲むか?」
AN-94は自分も飲んでいいのか、といった顔でこちらを見てきた。こういう経験をしたことが無かったのだろう
「いいんだよAN-94、ここでは皆平等なんだ」
「ありがとうございます…でしたら私もコーヒーを頂きます」
「二人ともブラックで良いわよね、そもそもミルクと砂糖を切らしてるみたいだし?」
「しまった…買い足すのを忘れてた」
指揮官が苦笑いを溢すのを見て思わずAK-12は笑ってしまった
「バカね、大事なものを買い足してないなんて…諦めてブラックで飲みなさい」
指揮官とAN-94にそれぞれコーヒーの入ったカップを手渡して94と同じソファに腰を掛けた
「それで休暇の話だったか、何かしたいのか?」
「いえ、逆に何をしたらいいのか分からないのよ」
続けてAK-12が言葉を紡いでいった
「ここに来てから私達二人は人間と同様の扱いを受けてる、休暇だって貰えてるし破損した部品はすぐに新しいのが届く」
「人形なのに、よ」
指揮官が少しムッとしたような顔で言い返してきた
「人間と人形に壁なんかない、人間達は偉そうに人形をこき下ろすがその人形達が俺達を守ってくれてるのを見ようともしない。人形の方が優れているのにだ」
「だからこそ俺の基地にいる以上、俺達は同類だ。休暇もやるしケガをしたらすぐに直してやる」
今まで黙っていたAN-94が指揮官に声をかけた
「なんで指揮官は…そんなに私達に優しいんですか?」
「さっきも言った通りだよ、俺は元々兵士だったけど適正があってグリフィンの指揮官として引き抜かれたんだ。前線にいる恐怖も知ってる」
「前線に…指揮官が?」
AN-94がさらに質問を投げ掛ける
「かなり昔の話だよ、人形のプロトタイプがまだ完成すらしてない時の話」
「ふーん…そうなのね」
熱々のコーヒーで舌を痛めたであろうAK-12がどうにか平静を保って納得した
「水なら冷蔵庫だぞAK-12、そんな訳で休暇はしたい事をするといい」
「外出申請なら俺に出せば承諾してやる」
「そう、機会があれば外出させてもらうわね。コーヒーごちそうさま」
「帰りましょう94、私達の家に」
「うん、帰ろう」
AK-12の手を嬉しそうに握ってAN-94が立ち上がる
「ありがとうございました指揮官、また来てもいいですか?」
「んー…程々にな?俺も仕事があるんでな」
「わかりました、それでは」
二人が部屋を出ていく、指揮官はコーヒーを啜りながらどこかに連絡をかけ始めた
「あー聞こえてるか416、作戦の首尾はどうだ?」
「聞こえてますよ指揮官、鉄血の新しい基地を割り出した所です。どうですか?私の働きぶりは」
416が褒めてくれと言わんばかりに捲し立てる、こういう子は褒めれば伸びる子だから褒めるのが吉だ
「流石だな416、割り出したデータは俺のラップトップに送っておいてくれ。帰ってきたらお前ら404にボーナスを出してやる」
「ボーナス!?本当ですか指揮官!」
無線を盗み聞きしていたのかUMP9が割り込んできた、相変わらず元気な奴だ
「ホントだよ、まだあの二人にはさせられない危険な仕事をさせてるんだ。ボーナスくらい出すよ」
「帰ってきたら個別で欲しいものをリストアップしておけ、用意しておくから」
「ありがとね指揮官、いつも」
「気にするなUMP45、データは受け取ったから帰投してきてくれ」
「了解、帰投するよあんた達」
「また後でね?指揮官?」
「はいはい、無事に戻ってこいよ」
指揮官が連絡を終えて胸を撫で下ろす、次の作戦もあの二人に参加してもらうことになる。今度こそ生きて帰ってこれないかもしれないような作戦だ
「出来れば二人には待っていてもらいたいが、戦力の整ってない元々のメンバーだと無理だろうしなぁ…しかたない」
「ペルシカさんに力を借りるとしよう、お金のことはどうとでもなる」
「もしもし、ペルシカさん。頼みがあるんです」
指揮官は不安そうな顔をしながらもどこか決意に満ちた顔で連絡を取っていた。