私達はエクスカリバー作戦のあとメンテナンスの為にペルシカさんのラボを訪れていた、私達AR小隊は16Labが手掛けた最新鋭の戦術人形で他の人形たちと違って破壊されてしまうとメンタルモデルの復旧が効かない。だからこうしてメンテナンスの際もわざわざ産みの親であるペルシカさんのラボに赴かないといけない
「ペルシカ博士、M4A1ならびに他三名到着しました。ロビーで待機させてますがどうしますか?」
研究員の一人が話し掛けてきた、ロビーで待たせるなんてとんでもない。機密保持もあるし早々に部屋に入れてあげねば
「私がコーヒーを飲み終わるまでにここの部屋に向かわせておいて、リペアポッドは準備できてるから」
「了解しました博士、それではまた後で」
M4たちAR小隊は白く無機質なロビーで待たされていた、受付の机と自販機くらいしか置かれてないのっぺりとした空間だ
「ね~M4…いつペルシカさんに会えるの?わたし待ちくたびれちゃったよ~!」
「もう少しだから待っててね…SOP」
M4がじゃれついてくるSOPの頭を撫でながらM16とAR-15の方を眺める。二人はどうやら自販機で何かを買おうとしているらしい
「なぁAR-15、あの二人は何を飲むと思う?」
「知らないわよ…なんで先に聞かなかったの?無難にコーヒーとかでいいんじゃない?貴女は酒が飲みたいんだろうけどね」
「あぁ…酒が飲みたいなぁ、一仕事終えた後の酒は最高なんだぞ?」
やれやれとAR-15が首を横に振っていると奥の扉から研究員が現れた
「お待たせしましたAR小隊の皆さん、ペルシカさんの指示でお部屋にお連れするよう頼まれました。今から案内するのでついてきてください」
「わかりました、行こうみんな」
M4の一声で他の三人がきっちりと集合する、四本のコーヒーを抱えたまま歩くM16はどこか不満そうな顔だった。たぶん冷たいからだろう
「こちらです、各リペアポッドに入ってリラックスしていて下さい。30分ほどでリペアが完了する予定なのでその後は指揮官の指示で動くようお願いします」
「了解しました、また後でねみんな」
AR-15がいの一番にリペアポッドに入り他の三人もそそくさとリペアポッドに入り込みそれぞれのポッドの扉が閉まる
「ペルシカ博士、リペアポッド1番から4番まで問題なく稼働しています。完了予定は30分後なのでその間はゆっくり出来ますよ」
「それがゆっくり出来ないんだな…指揮官から連絡が来たんだ」
「連絡ですか?一体どんな用件なんでしょうか」
研究員が思わずペルシカ博士に問い掛ける
「えーっとね…出来たばっかりのMDRとFNCが欲しいらしくてね」
「あの二人をですか!?大きな作戦でもあるんですかね…?でも我々には何も通達が来ていませんでしたよね」
「あそこの指揮官は嫌われてるからね…難度の高い作戦で失敗してほしいんだろう、失脚させたいから」
「グリフィン上層部は人形ごときって考えの奴等ばっかりだからね…私としてはあの指揮官の方が好きなんだけど」
「それは僕も賛同できます、ですが最新鋭のMDRを回すだなんて…FNCはともかくとして」
研究員の言うことはごもっともだ、つい先日完成したような戦術人形を秘密裏に配備させるのはこちらの責任問題にもなりかねないし作戦が失敗に終われば16Labとしても大きな痛手になる。しかしペルシカ本人はそういったリスクを加味しても彼にMDRとFNCを託したい個人的な思いがあった。
「だよねぇ…でもあそこの指揮官に新型を回すとみんな喜んでくれるんだよ。あの指揮官の基地に配属になったうちの子達はみんな人形らしからぬ感情を発露させてくれるからね」
ペルシカがにっこりと微笑みながら他の研究員いわく泥水にしか思えないと言わせたコーヒーを啜る
「そうですね…あの指揮官は僕たち16Labの求めている人形の形をしっかりと引き出してくれる。そう考えるとMDRを回すのも吝かではないかもしれませんね」
「だろう?私の次に偉い君の承諾があれば書類も偽造できるだろうし…準備しておいてくれ。私はAR小隊の方を見てくるからさ」
「了解しました博士、いつも通りにきっちり偽造しておきますよ!」
そうした話をしている内に30分が経過したようだ、AR小隊の方は博士が見に行くらしいし自分は書類を用意しよう。そう思って書類の作成に向かった、16Labの人間としてだけでなく自分が手掛けてきた人形達を託す里親の気持ちで。
「やぁやぁ…ボディの調子はどうかなAR小隊のみんな」
「ペルシカさん!会いたかったよ~!!」
リペアポッドから出たところで博士を見掛けたSOPがすごい勢いで博士にハグをした。
「おや、今日も元気だねSOP…他のみんなも元気そうでよかったよ」
博士がSOPの頭を撫でながら三人の姿を順繰りに眺めていく
「ご無沙汰してますペルシカ博士、AR-15もM16姉さんも元気でしたよ」
「おう!私はいつでも元気だからな!それはそうとそろそろコーヒーを飲んでくれないか、あそこの机で放置してたからさっきよりも冷えちまってる」
「買うタイミング考えなさいよね…まぁ飲むけどさ」
AR-15が毒を吐きながらコーヒーのプルタブを開けるとカシュっという気持ちのいい音が聞こえた
「それはよかったよ、リペアの間にデータも取らせてもらったから基地に戻ってくれても構わないんだが連れていってほしい人形がいてね。もう少し待ってておくれ」
「それとSOPはそろそろ離れてくれないかな、ヨレヨレの白衣がもっとヨレヨレになっちゃうよ」
SOPがなんとも不服そうな顔をしてペルシカ博士から離れてAR-15と同じくコーヒーの缶に手を伸ばした
「ありがとねSOP、また来たらハグしてもいいから今日はもう勘弁してくれ」
「ぶ~…」
「我慢しなさいよSOP、帰ったら私のデザート分けてあげるから」
AR-15がしぶしぶSOPを懐柔するべく自分の大事なデザートを犠牲にした。後で指揮官に同じデザートを買ってもらえばいい
「ホント!?ありがとうAR-15!!」
途端にSOPの目が輝き始めた、単純で助かったが指揮官には後で謝っておかないと。
「良かったねSOP、それで連れていってほしい人形って?」
「今にわかるよ、ちょうど来たみたいだ」
「失礼しまーす…ってAR小隊!?マジ?」
少しばかりブロンドがかった銀髪にピンクのメッシュが入った人形が入ってくるなりこちらを見てすっとんきょうな反応を見せた。嫌な予感がするとAR-15は思った
「嘘じゃん…本物だよ本物!これでフォロワーうなぎ登り間違いないっしょ!!」
嫌な予感はどうやら的中してしまったらしい、AR-15は頭を抱えた。こんな噂好きそうな人形が指揮官を見たらこれを上回りリアクションを取ることだろう
「いいから入っておいでMDR、ご存知AR小隊だけど機密保持が必要なことを忘れないようにね」
流石のペルシカ博士も釘を刺した、これで落ち着くといいが落ち着かないだろう。
「マジ…?だったら写真撮ってフォルダーに入れとくのもダメ?」
「ダメじゃないけどそれを掲示板にあげたら君は…たぶん解体だろうね」
ペルシカ博士が少し冗談めかしてMDRに答えを返すとMDRは大人しく手に抱えていた携帯を閉まってこちらに向き直ってきた
「ごめんなさい…思わずテンション上がっちゃって。」
「いえ、気にしないで。写真なら後で撮ってあげるから。指揮官の許しが出ればだけど…」
「私もついに前線に送られちゃうの?でも掲示板がバズるかも…?いや待て逆に晒されるかも…?」
「面倒な人形ね…こういうタイプは苦手よ」
毒づいているともう一人の人形が部屋に入ってきた、今度こそまともであってくれとAR-15は心の底から願ってやまなかった
「FNCです、言われた通り来ましたよ博士」
「ご苦労だったねFNC、AR小隊達に付いていって新しい指揮官の元に配属になる」
「了解です、チョコバーを出してくれる指揮官だといいけどなぁ…!」
「出してくれると思うわよ、連れていってほしい人形はこの二人なの?博士」
AR-15がコーヒーの缶を机に置いて問い掛ける
「あぁ、そうだよ。迎えのヘリコプターも来たようだし今回はこれでお別れになりそうだ」
「また会おうね!ペルシカ博士!!」
SOPがペルシカ博士に向かって手をぶんぶん振り回して先に部屋から出ていった、さっさと帰りたいのだろうか?せめて自分の飲んだ缶くらい捨てていってほしいものだが
「気が早いんだから…ゴミ箱に捨てる私の気持ちにもなりなさいよねホント、残りの2本はあんた達で飲んでよね。」
「もちろんだ、ミルクでも足して飲むとするよ」
「そうしなさい、私はSOPと先に外で待ってるから」
AR-15も足早に自分の銃を抱えて部屋から出ていった
「私達も行きましょうかM16姉さん、それと貴女達二人もね」
「貴女達の指揮官ってもしかしてあの物好き指揮官?もしそうなら掲示板がめちゃくちゃバズってくれそうなんだけど!」
「掲示板…?はわからないけど貴女の思ってる通りだと思うよ。ただ他の人形の前で言わない方が良いとだけ言っておくわ」
「…?わかった、とりあえず指揮官とツーショットかな」
MDRは意味がわからないといった面持ちで首を傾げながらM4らと部屋を出た
「あの指揮官ならきっとMDRもうまく使いこなしてくれるはず…とりあえず今日のお仕事はこれで終わりかな」
「後は頼んだよみんな、私は書類を受け取って送付しないといけないからね」
リペアポッドのある部屋からペルシカ博士も退出し元々の静けさを取り戻した室内ではポッドの稼働音だけが響くのだった
AR小隊より一足先に基地に帰投していたUMP45は足早に指揮官の部屋で報告をしていた、他のメンバーは先にメンテナンスに向かわせた
「以上が基地の詳細だよ指揮官、今回のメンバーはどうするの?」
「それなんだがな、お前らと新入り二人だ。」
「AK-12とAN-94は?」
「お前らこの前食堂でケンカしかけてただろ、それもあるしまだあの二人はメンタルケアが必要かと思ってな。出そうか迷ってるとこなんだ」
「あー…反省してるよ、ごめんなさい指揮官」
指揮官は謝罪を聞きながらとあるアイデアを思い付いた。
「気にするな、謝罪するくらいならあの二人とは関係を修復したいんだよな?」
「勿論だよ、416はしばらく修復出来なそうだけど…どうしたらいいかな」
「今回の作戦に彼女達も加えよう、お前ら404の指揮下に加えてもらう。一緒に行動しながら打ち解けていってくれ」
「わかったよ指揮官、416にも言っておくね」
「頼んだ、そろそろAR小隊も帰ってくるだろうしな、さっきAK-12達は部屋に戻っていったし全員で食事でも行ったらどうだ」
「良いかもそれ、それじゃあまた後でね指揮官!」
指揮官は部屋を出ていくUMP45を見送った後格納庫に目を向ける、そこにはちょうどヘリコプターから降りたAR小隊と新入り二人の姿があった。
「今回も生き残れるといいけどな…もう犠牲は出したくない」
指揮官は呟きながらデータを纏めるためにパソコンに向き直った。