指揮官の部屋を出た後UMP45は部隊の三人と合流し、AK-12達の部屋を訪れようとしていた。
「なんであんなクソ野郎とご飯なんか食べなきゃいけないの?死んでもごめんよUMP45、あんたの頼みでもね」
416が今にも激怒しそうな面持ちで突っ掛かってくる、その態度を改めさせてやろうと416の方に向き直って必殺の一言を放った。
「いいの?他でもない指揮官のお願いなのよ?」
そう言われた途端に416は青ざめた顔に豹変してUMP45に泣きついてきた、単純だけど指揮官が好きなのだ。仕方ない
「聞き間違いじゃないわよね…?お願いだから指揮官には言わないでよね」
「当たり前よ、指揮官を悲しませたりしないから。あんたも指揮官に振り向いてほしいなら少しは大人しくしてよね」
416は不満げな顔をしつつも怒っている様子はなさそうだった、私達は指揮官の為に生きて死ぬ。そう誓ったからだ
「さぁ、ついたわよ」
「AK-12、ご飯を食べに行くんだけど貴女たちもどう?」
彼女達は答えてくれるだろうか、UMP45は少し不安だったが思ったよりも早く答えは帰ってきてくれた。
「いいわよ、AN-94も行くって。外で待っててちょうだい」
「はーい、あんまり遅くならないでね」
「屈辱よ…でも指揮官の為だから…!」
「酷い顔よ416、笑顔でいなくちゃ」
416を茶化していると後ろのドアが開いてAK-12とAN-94が出てきた、AK-12は特に416を気にしていないようだ
「揃ったわね、じゃあ行きましょっか!」
「えぇ、404から誘われるとは思ってなかったから楽しみよ」
「うん…皆と食べるご飯は初めてだから」
正規軍では泥のようなレーションしか出てこなかったと聞くしここの食事はさぞかし美味しいだろう、そう思うと少し誇らしかった
「今日のメニューはなんだったっけ、覚えてる?G11」
UMP45がG11に問い掛ける、たぶん覚えてないだろうけど
「えーっと…たしか白身魚のムニエル?とかいうやつだった気がするよ」
「たまには役に立つんだ!さっすがG11!」
煽ってるようにしか聞こえないセリフをUMP9が発する、当のG11は慣れているので気にしていない。そうこうしているうちに食堂にたどり着いた6人は向かい合うような形でそれぞれ席を確保した
「配給のロボットが持ってきてくれるのは楽でいいよね~!」
「そうね、ちゃんと暖かいし私達には勿体ないくらいかも」
UMP9とAK-12が会話に花を咲かせている中416とAN-94が無言で見つめあっているのをUMP45はフォークで刺したムニエルを口に運びながら面白半分で眺めていた、先に無言の壁を破ったのはAN-94だ
「あの…私になにか?」
「あぁいや…なんでもないわ、気にしないで」
「そう…ですか、この前はごめんなさい」
416が面食らったような顔をして思わずフォークをお皿に置いた、なんと言おうか迷っているようだ
「いいのよ、私も言い過ぎちゃったし…これからは仲良くしましょうね」
「はい…!後でお話しましょうね」
「えぇ、もちろんよ」
その会話を聞いていたAK-12がおもむろに416に声をかけた
「私ともお話しましょうね、416」
「も…もちろんよ」
「俺も混ぜてくれないか、お腹が空いちゃってな」
指揮官が食堂に入ってきて彼女達の近くのテーブルに腰掛けて配給用ロボットが運んでくる食事を待っていた
「指揮官、仕事は終わったの?」
AK-12がそれとなく声をかける、それを見た416は先手を打たれて悔しそうな顔をしていた
「あー…後はブリーフィングをやるだけだな、食事が終わったらそのままブリーフィングを開くぞ」
「了解!」
G11以外の5人がしっかりと返事をして食事に戻った、G11はすでに完食しているようでテーブルに伏せて寝てしまっていた
「それと、今回の仕事は難しくなるから気を付けてくれ」
「お前達はブリーフィング開始までゆっくりしておいてくれ、俺は今から食べるところだからな」
ようやく運ばれてきた食事に向き直って指揮官はそこで会話を終わらせ、食べ終わった6人は先にブリーフィング室に向かうことにした。
「起きなさいよG11、これから仕事の説明なのよ!」
小声でそう言いながら416がそれなりの力で頭を叩いて引きずりながらG11を運んでいった。
それからほどなくして指揮官から召集がかかった、戦術人形全員がブリーフィング室に集まって指揮官の言葉を待っていた
「全員いるか?よし」
指揮官が手元の端末を操作して大きなスクリーンに情報を示し口を開いた、戦術人形達が息を飲んで次の言葉を待つ
「今回の作戦は新たに発見された鉄血の基地を無力化する、森の奥深くに上手いこと秘匿されていて発見がおくれてしまったものだ」
「極めて小規模の警備態勢であることが確認されているが万が一に備えてバックアップのチームと先行して向かうチームに別れてもらう」
先行して向かうチームになりたい半面、スケアクロウとまた対峙するかもしれない恐怖心でよく分からないメンタルの異常をきたしているAK-12の姿があった。
「先行して向かうチームには404小隊、それとMDR」
「バックアップのチームが反逆小隊の二人とFNCだ」
胸を撫で下ろしたにも関わらず気持ちに靄がかかって晴れようとしてくれない、この気持ちはなんなんだろうか?言葉に出せないままブリーフィング終了となり指揮官と反逆小隊の二人だけが残された
「大丈夫か?AK-12」
「心配だよ…」
AN-94は側にある自販機で買った缶コーヒーを、指揮官は気遣って椅子を持ってきてくれた
椅子に座ってコーヒーのプルタブに手を掛けながら消え入ってしまいそうな声で呟いた
「大丈夫…でも気持ちが悪いのよ、前線に行きたかったのに後方に回されてホッとしてる私がいる」
今まで前線に駆り出されてはボロ雑巾の様に使われた、無くなったパーツは数知れない。それでも戦い抜けたのは人形だったからだ
「無理しなくていいんだ、ダメそうなら他のメンバーを選抜するぞ」
「エリート人形ってさ、怖いよな」
指揮官の言葉をじっと聞いて心を落ち着かせようとした、AN-94はさっきから優しく側に寄り添ってくれている
「俺は基地でふんぞり帰ってることしか出来ないけどさ、一回だけ奴らに会ったことがあるんだ」
指揮官が私の頭を優しく撫でながら続けて言葉を切り出した
「俺がまだ兵士だった頃、戦場を蹂躙していったのが鉄血のエリートだったんだ。あのときは本当に死を覚悟したよ…だから本当はずっと基地で幸せに暮らしていてほしいんだ」
「でもグリフィンの上層部は俺が気に入らないからって難しい任務しか与えてくれない」
「同じ人じゃないか、それなのに人形だからって痛め付けたりしてもいいと思ってる…それが嫌いなんだ」
指揮官の目には涙が溢れていた、私だけ辛い思いをしてた訳じゃなかったらしい。そう感じた
「ごめんなさい…人形が怖いなんていう感情を持ってしまって」
「謝らなくていい、怖いものは怖いんだ」
AK-12は指揮官の事を必ず守り抜こうと、彼の話を聞いて心に誓った。AN-94にもその決意は伝わっていたようで
「指揮官の事は私達二人が必ずお守りします、だから指揮官は私達を使ってください」
AN-94もしっかり覚悟を決めたらしい
「そう…か、頼りにしてるからな二人とも」
指揮官が私達二人を優しく、それぞれ抱きしめてくれた。それなりの時間が経過して恥ずかしくなった指揮官が口を開いた
「恥ずかしいな…これじゃあお前らに渡すものも渡しにくいな」
「渡すもの?それはなんなんですか?指揮官」
AN-94が首をかしげながら問いかける、指揮官の座っていた椅子に二つのヘルメットが用意してあった
「あのヘルメットをお前らに用意しておいた、今回の作戦は夜間だからな。ちゃんと最新のNVG《暗視ゴーグル》がついてる」
「なるほど…404とMDRの分は?」
指揮官がにっこり微笑んで答えを教えてくれた
「404、MDRやFNC用のNVGはペルシカ博士に用意してもらってる。お前らに用意した奴は特別製だよ」
特別製…?一体なにが特別製なんだろうか?
「そのヘルメット、傷だらけだろ?俺が昔に使ってたんだ」
「二つとも指揮官の…?」
「あぁ、予備の分も残ってたからな。ちゃんと綺麗にしてあるから安心してくれ」
「それは良いんだけど、どうして私達に?」
最新鋭の人形であるAK-12とAN-94には最初から高精度の暗視センサーが内蔵されているので必要ない筈なのだが
「秘匿されていただけあってジャミングが周囲一体に特定の周波数で流されてる、それに引っ掛からないための処置だよ」
「確かにジャミングに引っ掛かれば内蔵のセンサーは役に立たない…理解したわ。さすがね指揮官」
「褒めてもなにもでないぞ、AK-12」
「別に褒めてないわ、ヘルメット大事に使わせてもらうから」
「壊さないでくれよ?思い出の品なんだからな!」
指揮官は茶化しながら二人に休むよう促した
「作戦の決行は3日後だからな、詳細はまた1日前になったら展開する。辛くなったらまた俺のところに来い」
そう言って指揮官は部屋を出ていく、指揮官の為に戦う。そう考えると不思議と力が湧いてくる感覚に陥っていた。