作戦開始の一日前、再び集められたメンバーに作戦の詳細が知らされた。
「改めて作戦の説明をするぞ、今回の作戦名は特に決まってない。いちいち命名するのも面倒だからな」
指揮官のジョークを聞き流しながら次の言葉を待つ。
「それは置いておくとして部隊のコールサインを割り振る、404率いる主力チームがデルタ、AK-12率いるバックアップチームがエコーとする」
「作戦の目的は新たに発見された鉄血基地の偵察、可能であれば制圧だ。何か質問は?」
最初に質問を投げ掛けたのは416だ。
「以前基地の警備体制はごく少数とのことでしたが、エリート人形は含まれていますか?含まれていないのなら不自然なのですが…」
「偵察の時点でエリート人形は確認できていない、こんな不鮮明な作戦やりたくないんだが上からの圧力が強くてな…すまない」
「そうですか…それで主要戦力の私たちに矢面が立った、と」
416の言葉に申し訳ないといった顔で指揮官が頷いた
「分かりました、指揮官の為に全力を尽くしますね。」
「指揮官、私も質問していい?」
次に質問を投げ掛けたのはFNCだった。
「答えられる範囲であれば」
「それじゃあ聞くね、私たちは今回バックアップとしての参加だけど具体的には何をするの?」
「UMP45達が苦戦していたり、撤退になった場合それらの行動を円滑にサポート出来るように立ち回ってもらう。ある意味大事な役目だな」
「なるほど…了解したよ指揮官」
「よし、質問がなければ作戦の準備に入ってくれ。」
その言葉を最後に作戦に参加する人形たちは一夜を過ごし、今格納庫で黙々と準備を進めていた。
「何か怪しい気がするのよね、指揮官が言っていた通り」
自分の分身であるHK416のマガジンに弾を込めながら416が言葉を漏らす
「きっと当たるわ、でも私達なら成功させられるはずよ」
416の言葉を肯定しつつも指揮官の為に全力を尽くそうとするAK-12が横槍を刺す
「アンタは今回バックアップなの、私達にも指揮官にも迷惑掛けないでよね」
嫌味を込めた発言だったのだろうが小さく頼りにしていると言っていったのを彼女は聞き逃していなかった。
それから程なくしてメンバー全員の準備が終わり、指揮官の号令のもとヘリで現場へと向かっていった。
そして時は過ぎて今に至る。
薄暗い森の中を二つのチームが重なるようにして奥深くの目的地へと足を進める、以前のような派手な戦闘は行えない。それを知っているメンバーは普段よりも集中して作戦に望んでいた。ただ一人を除いて
「余計なことしたらすぐにでも殺して捨ててくからね、新入り」
「余計なことってなんですか…怖いこと言うの止めましょう?」
UMP45がリーダーを任されている主力チームの真ん中に配置されたMDRに対して殿の416が早速毒を吐く、指揮官以外の前で強気なのはいつもの事だ。他のメンバーは誰も気にしていない
「アンタが指揮官に迷惑かけてからずっとこの手で殺してやりたいと思ってたのよ、余計なことしてくれた方がいいんだけど」
「あの指揮官じゃなかったらアンタはとっくに鉄屑のスクラップに早変わりだったのを理解してないの?」
まくし立てる416に見かねたUMP45が口を挟む
「そこら辺にしときなよ416、指揮官に無線聞かれてたら怒られるのはアンタなんだからね?」
そういうと416は大きな舌打ちをして周囲の索敵に力を入れてしまった。
「あの…なんかすいません、先輩」
MDRが先頭のUMP45に感謝を述べる、それに対し笑顔でUMP45も言葉を返す
「いいのよ、私たちはみんな指揮官に助けられたから。みんな指揮官の事が好きでたまらないのよ」
「だからこそ、これ以上余計なことで皆を巻き込まないでね」
その後の言葉は容易に想像できてしまった、ここから先の余計なことは容赦しないという厳しさが垣間見えた
「わかりました、私も頑張ります」
それ以上の言葉は無く、主力チームの5人は喋らなくなってしまった。それを後方から見ていたAK-12率いるバックアップチームはその話を無線越しに聞きながらも表現のしようが無い嫌な予感に悩まされていた。
「ジャミングまで施してあるような基地の警備がごく少数だなんて有り得るの…?嫌な予感がするわ」
「私もだよAK-12、こういうときってだいたい当たっちゃうんだよね…」
FNCが溜め息混じりに呟く、そうこうしている間に目的地に部隊は目的の基地を見下ろせる高台まで接近していた。
「どうするのUMP45、私たちは指示待ちよ」
AK-12からの無線にUMP45が指示を出す。
「そのまま待機、ソナーで索敵するから」
「了解よ、それと嫌な予感がする」
「私もよ、何も起きないといいけど」
索敵をしていくと作戦の説明でもあったように敵の警備は数少なく、形容しがたいような不気味さがそこには広がっている。
「ジャミングまで施しといてこれ…?ホントに怪しい」
「ちょっと待って45姉、あそこの窓にいる人ってもしかして…」
UMP9が基地の二階、灯りがついている部屋を指差す
「あの赤いコート…グリフィンの?」
UMP9に促されて窓から部屋をチェックしたUMP45が見たのは見慣れた赤いコートだった。
「今すぐ指揮官に連絡しないと、罠にかかった可能性も捨てきれない」
「416、指揮官に連絡して」
指示を受けてすぐに416が無線で指揮官に連絡を飛ばす
「指揮官聞こえてる?416よ」
「目標の基地にグリフィンの人間がいるみたいなの、映像を送るわ」
「グリフィンの人間が?そんなバカな…」
疑いつつも届いた映像を確認すると指揮官がため息を吐いた
「撤退しろ、そこは危険だ…」
「どういうこと?説明して指揮官」
「そこの赤いコートの男はグリフィンの裏切り者だよ、今は鉄血側にいる」
その言葉を聞いて一同は静まり返り、間髪いれずに指揮官が話を続ける
「うちの主力をそこに集めたい理由があったんだろうな、もう侵入してるのはバレてるはずだ」
「そうかもね…事実目の前に敵がいるんだもの」
UMP45の前には既に敵のドローンが彼女の心臓に向けてレーザーを光らせていた、でも撃つ気配がない。
「どうして撃たないの?何かあるわけ?」
UMP45の言葉を遮ったのは裏切り者の声、スピーカーを通している
「君達をここに集めたのはね、君達の指揮官を手薄にするためさ!悪いことは言わないから早く戻った方がいいよ」
「ここは見逃してあげるからさ、ね?」
そう言うと男はスピーカーのスイッチを切り、基地の中へと消えていった。
「416、指揮官との連絡は通じる?それとそこで寝てるG11を
起こして」
「さっさと起きなさいよこのポンコツが、指揮官聞こえてますか!」
G11をマガジンで殴打しながら指揮官に無線を送るも通じない。本当に何かあったようだ
「通じない…撤退よUMP45、急がないと指揮官が危ない」
「了解、全チーム聞いて。指揮官を助けにいくわよ」
「先頭はあんたよAK-12、頼んだからね」
「任せなさいよ、私達が助けてみせるから」
先頭に立ったAK-12が各員にハンドサインを出す
「デルタ並びにエコーチーム、移動するわよ」
その背中を裏切り者の男が見送りながら呟いた。
「あいつならきっと、俺を正してくれるはずさ…」
その言葉を聞くものは誰もいなかった