魂の行き着く先   作:しののめめ

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一難去ってまた一難

UMP45らの背中を見送る裏切り者の男に対して背後にいた人形が声を掛ける

 

 

「行かせてよかったんですか、キング」

 

 

「良いんだよウェルロッド、間違った道に踏み入ったのは俺達だ」

 

続けてキングと呼ばれた男が喋り続ける

 

 

 

「誰よりも正義を重んじてた君をこちら側に引き込んでしまってすまないと思っているよ」

 

 

その言葉にウェルロッドは悲しいような、嬉しいような顔で口を開く

 

 

「私は人形で、貴方は人間なんです。私達人形に優しくするのは間違ってますよ」

 

 

「間違ってなんかないさ、君達も俺達と同じなんだ。それを忘れないでほしい」

 

 

「わかりました…それで今後の予定は?どうするんですかキング」

 

 

話を戻すウェルロッドに対して男も表情を変えて言った

 

「とりあえず向こうの動きを観察するとするよ、君はしばらくお休みだウェルロッド」

 

 

「了解」

 

 

「さて…あいつは俺を止めてくれるかな……」

 

 

一方、基地を襲撃されている指揮官は自分の無力さを噛み締めていた

 

 

「指揮官、私達から離れないでください。必ずお守りしますから」

 

 

M4A1を先頭にし、指揮官を囲むようなフォーメーションを組んでAR小隊が安全を確保するために戦闘を行っている

 

 

「M4、そろそろ替えのマガジンも無くなりそうよ」

 

 

AR-15がマガジンを変えながらそう言う、替えのマガジンが無いのは四人とも同じ。他の基地で待機していた人形達は安全な場所にあらかじめ避難しているので増援は期待できない

 

 

「クソ…このままじゃジリ貧だ!高い酒を買ってきたばかりなのに死ぬわけにはいかないんだがな」

 

 

「私もマガジンがないよM4!」

 

 

各々がM4に言葉を投げ掛けているのでM4の思考は上手くまとまらない、そこに解決策を示したのは指揮官だった。

 

 

「ここから数ブロック先に保管庫がある、そこにいけば補給が可能だ」

 

 

「でかした指揮官、案内してくれ。」

 

 

M16の物言いにAR-15が少し毒を吐く

 

 

「指揮官に対する物言いじゃないわよ、それ」

 

 

「はは…性分なんだ、すまん」

 

 

「喋る時間は終わりよみんな、前から複数の敵がこちらに向かってきてる」

 

 

M4の言葉でAR小隊はしっかりと思考のリソースを戦闘に割いていく

 

 

「AR-15が右に展開、SOPは左に」

 

 

「私と16姉さんで指揮官をカバーしながら移動します、敵はまだこちらを認識していないので射撃は私の合図で」

 

 

「了解」

 

 

「りょ~かい!!」

 

 

M4の命令で二人がブロックを繋ぐ十字路のそれぞれ左右の角にポジションを置く、指揮官を横の休憩室に配置してM4とM16は通路の真ん中でプローんポジションを取った。

 

 

「敵を出来るだけ引き付けます、指揮官はそこから動かないように」

 

 

「何も出来なくてごめんな、四人とも」

 

 

「私達を大事にしてくれる、それだけでいいんです」

 

 

M4の言葉に全員が頷く

 

 

「私達は指揮官と会えてよかった、そう思ってるのよ?」

 

 

AR-15が気恥ずかしそうに口を開く

 

 

「お前は隠してるつもりかもしれんが、指揮官への恋心はだだ漏れだからな」

 

 

「まぁ、私もか」

 

 

M16は自爆したようだ、俯いて恥ずかしそうにしている

 

 

「そろそろ準備を!指揮官を失うわけには行かない」

 

 

M4が喝を入れる

 

 

「3カウントの後、各員発砲を許可します」

 

 

「3.2.1.射撃開始」

 

 

その言葉を皮切りに待ってましたと言わんばかりの銃声が鳴り響いた、勢いよく発射された弾丸は易々と鉄血の人形達をただの鉄屑へと変えていった

 

 

動くものが無くなりひとまず安心したのもつかの間、今ので全員の弾薬が尽きてしまったらしい

 

 

「状況報告、誰か弾薬が残ってる?」

 

 

「尽きたわ」

 

 

「私の財布みたいに空っぽさ…」

 

 

「これでやっと殴り合いできる?」

 

 

AR小隊では珍しい事だ、替えのマガジンが無くなるほど普段は戦闘が長引く事はないので混乱している

 

 

「ひとまず制圧したので休憩室に集合を」

 

 

「大丈夫でしたか?指揮官」

 

 

休憩室の中で座っていた指揮官に手を差し伸べる

 

 

「お陰さまで五体満足さ…一難去ったかな?」

 

 

「そうですね…窮地は乗りきったかと」

 

 

「それは何よりだ…みんなケガはないか?」

 

 

「えぇ、みんな無事です

 

 

その言葉を聞いて指揮官の顔に少し笑顔が戻った気がした

 

 

「良いわよねM4は、リーダーだから指揮官と触れ合えて」

 

 

「私達にも少し時間を頂戴よね、今度でいいから」

 

 

「えぇ、ここを乗りきったらね」

 

 

そんな雑談も交えつつ基地の見取り図を確認しているとどうやらこの先のブロックに保管庫があるらしい、指揮官を護衛しても五分とかからない距離だろう

 

 

「よし、移動しましょう」

 

 

「ここからは狭くなるので指揮官を囲うような護衛は出来なくなります、指揮官を最後尾に配置して進みましょう」

 

 

「了解」

 

 

M4を先頭に休憩室から退出し、4人がそれぞれ見えていない角度をカバーしながら進んでいく

 

 

先のブロックに繋がっている扉の前でM4が停止、後続にも停止のハンドサインを出した

 

 

「扉が開かない…AR-15、お願い」

 

 

「了解よ、五分もあれば開くはず」

 

 

「俺の後ろには鉄屑に成り果てた鉄血の人形…頼むから動かないでくれよ」

 

 

AR-15が扉のパネルにアクセスした瞬間、上半身だけになっていた鉄血の人形が指揮官に向かって飛び付いてきた

 

 

「冗談だろ!勘弁してくれよ!!」

 

 

誰もが油断していた、AR小隊は仕事を完璧にこなしていたし、指揮官だってそれを見ていた。上半身だけになった人形を見れば動かないだろうと思うのも無理はない

 

 

「指揮官!すぐに助けますから!!」

 

 

異変に気付いたM4が指揮官の右腕にしがみついた人形を引き剥がそうとするも、離れない

 

「クソ…腕の一本くらいくれてやる!!俺に構わず思いっきり引っ張ってくれ!」

 

「こんの…なんで離れないのよ!!!こんな力はそのモーターじゃ出来ないはずなのに!」

 

 

「M16姉さん、手を貸して!」

 

 

「任せろ!」

 

「あぁ…痛ぇな畜生!指揮官がこんくらい我慢できなくてどうする!?」

 

二人が協力して力の限りしがみついた人形を引き剥がしにかかる、指揮官はとてつもない痛みを受けて苦悶の表情をしている

 

 

最新の人形二人がしがみついた人形を全力で引き剥そうとすればどうなるか、その結果は目に見えていた

 

 

「離れろ!!!」

 

 

次の瞬間、二人の顔を赤い鮮血が染め上げた

 

 

二人が引き剥がした人形を見つめる、見覚えのないパーツを握りしめているのを見て二人は自分達が何をしたのかを悟った

 

 

鉄血の人形が握りしめていたのは指揮官の右腕だ

 

 

すぐに鉄血の人形から右腕を回収して鉄血の人形を投げ捨てる

 

 

二人の顔がどうしたら良いかわからない、そんな表情をしていた

 

「ごめんなさい…指揮官」

さすがの指揮官も気を失ってしまっていた

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、早く止血しないと!」

 

AR-15の言葉でM4が我に帰る

 

「そうね…でも私達は医療キットなんて持っていないし、手近な布なんてもっとない」

 

「上着でもスカートでも千切ればいいでしょ、何のための服よ」

 

 

AR-15がすぐに上着を一部千切って指揮官の右腕の出血部分に巻きつけ、指揮官を背負った

 

 

「私が運ぶわ、三人の真ん中に入るから保管庫まで急ぎましょう」

 

 

「…了解」

 

 

まだM4は罪悪感に苛まれているようだった、さすがのM16も何も言えないでいた

 

 

保管庫に到着し、指揮官を安全な場所に降ろした所で目が覚めたらしい

 

 

「ん…ここは保管庫か?」

 

 

「指揮官…大丈夫?」

 

 

SOPが水を持って駆け寄って来てくれた

 

 

「ありがとう…悪いがキャップを開けてくれないか」

 

 

右腕があった筈の空間を眺めて指揮官が言う

 

 

「一難去ってまた一難…ってか、大事な腕が一本失くなっちまったよ」

 

 

「あれは仕方のない事だった、M4やM16が気にすることじゃない」

 

 

そんな指揮官の気遣いでさえ、今の彼女達には鋭利なナイフのようだった

 

 

「UMP達が戻ってくるまでここで待機しよう、M4はペルシカ博士に連絡しといてくれ」

 

 

「ペルシカ博士に…?わかりました」

 

 

「それと、ありがとなAR-15」

 

 

「良いのよ…それより大丈夫なの?」

 

 

「あぁ…お前がくれた上着のおかげでな」

 

 

指揮官が右腕に巻かれた上着の一部を撫でる

 

 

「新しい上着、用意しておくから大目に見てくれないか?」

 

 

「新しい上着なんていいの…指揮官が無事ならそれでいい」

 

 

それを聞いて指揮官は嬉しそうな、申し訳なさそうな顔をしていた

 

 

「なんてザマだ…あいつらに見せる顔なんか今の私達にはありゃしない」

 

 

「ごめんね…SOPが指揮官の横にいたら無事だったかもしれないのに」

 

 

「良いんだよ、何も気にすることじゃない」

 

 

そう言ってSOPの頭を撫でる指揮官の表情はとても柔らかく、今の彼女達に余計に重く現実を見せる結果となってしまった。

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