時は少し遡り卒業式
充実した高校生活がついに、卒業の日を迎えた。校長先生からクラスの代表が卒業証書を受け取り、校長、卒業生代表、在校生代表がそれぞれ挨拶を行い、無事に式は終了した。その後一旦教室に戻り、担任教諭から生徒一人ひとりに卒業証書が渡される
そして解散となってからが本番とも言えるだろう。卒業アルバムに寄せ書きの時間が始まる。仲の良い友人同士が、今までの思い出や照れくさくて言えなかったことなどを書いていく。また、お世話になった先生に一言頂くために校内を巡る者も少なくない
「みんなは何て書いたの?」
「マリーよ、それは秘密にしておく方がRomanなのさ」
「Oh!2人のヒミツってことね!」
「なんか語弊がありますわね……」
こんなやりとりができるのも、今日が最後になる
「……色々、ゴメンね?」
「果南、それは言いっこなしよ。お互いにな」
「そうですわね」
「本当にたくさんのことがあったけれど、最っ高にキラキラシャイニーな日々だったわ!ありがとう、みんな……!」
「こちらこそ、みんなありがとう!!」
本人たちが言うように、良いことも悪いこともいっぱいあった。しかし今となっては、それら全てが青春の宝物だ
そして、これからそれぞれの道を進むことになる。国内組は大学が東京近辺なため、会おうと思えば会えるが、頻繁にとはいかないだろう。イタリアに行く鞠莉はさらに難しい
「でも、この空は繋がってる、どんなに遠くてもずっと」
「おう!そしてまたいつか、みんなで集まろう!」
1人が拳を突き出し、全員で合わせる。5人の目には、力強く計り知れない可能性が宿っていた
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その後は、生徒それぞれが思い入れの強い場所に行って高校生活を反芻し、想いを巡らせる。Aqoursは屋上、アメフト部はグラウンドに集まったようだ
さらにその後は打ち上げ等がある。その前の時間で、隼人はとあるお寺に向かっていた
「すまん、お待たせ!」
「あっ♪」
そう。花丸の家である。ここなら邪魔は入らないと、あらかじめ決めてあったようだ
「卒業、ですね……」
「おう。あっという間の3年間だったわ」
「「……」」
「その……第二ボタン、頂きたいです」
「おう」
「ありがとうございます」
隼人からボタンを受け取ってそっと胸に抱いた後、彼にギュッと抱き着く
「!」
「……やっぱり、寂しいです」
「そう、だな……」
そう言いながら無意識に花丸の頭を撫でる。寂しがる妹を宥めるようにゆっくりと優しく
「あっ……♪」
「ふふっ……♪」
「胸の中、あったかいずら……♡」
「長い休みには帰省するし、毎日連絡するよ」
「うん……。絶対だよ?」
「おう! そうだ!」
「?」
「花丸ちゃん、俺と同じ大学に来れば良いんじゃね?」
「あ!」
「そしたら向こうでも会いやすいかも!」
「うん!」
尤も、文系と理系ではキャンパスが違うのだが、同じ大学に通えるということが重要だ。少しでも近くにいたい
「でも、難しい大学でしょ?」
「まぁ今からなら、普通に授業を受けてれば焦んなくても大丈夫だと思う」
「マル、頑張ります!」
「あぁ、待ってるよ!」
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数日後。2人は花丸の部屋でまったり家デートだ。当初は読書デートの予定だったのだが、ぴったりと並んで手を繋いで座っている。特に何をする訳でもない。寄り添っているだけで幸せだ
しかし……
「もうすぐ、行っちゃうの……?」
「あぁ。明日の今頃は、もう向こうのアパートにいるかもな」
「そっか……」
そう。隼人は大学に進学するため、しばらく会えなくなってしまう。因みに今日の家デートのために、引っ越し準備はほぼ完了している
「お兄ちゃんは寂しくない? 一人暮らしで不安じゃない?」
「ん~まぁ不安はあるな。でもまぁ江井ちゃんも同じ大学だし、何とかなるだろ」
「うん……」
(やっぱり、お兄ちゃんも寂しいよね……)
心配させまいとしているのだろうが、心なしか声に元気がないように感じる
「えい!」
「!?」
突如、花丸が隼人に抱き着いた
「隼人さんが寂しくないように、マルがハグしてあげる!」
「ハハッ、ありがとう……♪」
「うん……♪」
……
1つ、花丸にはどうしても聞いておきたいことがあった
「その、果南ちゃんとは……ちゃんとお別れできたの?」
「……あぁ、おかげさまで。ありがとうな」
「それなら良かった♪ けど……」
「?」
「どんなこと、したのかなって……」
「Oh……」
正直言いづらいが、答える義務があるだろう
「すまん、最後にちょっとだけハグした……」
「うん……」
「ゴメン……」
「ううん、マルが良いって言ったんだし。でも、ちょっと妬けちゃうな……」
「うむ……。でも、俺が好きなのは花丸ちゃんだけだから、安心してくれ」
安心させるようにギュッと抱きしめる
「うん♪ でも、その……うぅ///」
「?」
「ち、チューしてくれたら!許してあげるずら!……なんて///」
「!?」
「///」
「マジっすか……」
女の子にそう言わせてしまった以上、引く訳にはいかない
「じゃあ、こっちを向いてくれる……?」
「うん……」
数瞬見つめ合った後、隼人が花丸の小さな頬にそっと手を添えると、彼女はゆっくりと瞳を閉じる。そして徐々に顔を寄せ……
「///」
「///」
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時は流れて2年後
「合格発表、ドキドキするずら……」
「ルビィも緊張してきた……」
「結果なんて、堕天使の魔眼de」
「ページ、開くよ?」
「うん……」
「ちょっと!聞きなさいよ!」
「善子ちゃんはお気楽ずらね~」
「ヨハネ!」
「でも緊張がほぐれたずら。ありがとう、善子ちゃん」
「なら、良かったけど……」
いつものやり取りをしながら、部室のパソコンで合格発表を見る
合格者の受験番号の中に……
「あった!」
「ホントに!?ずら丸の番号!?」
「間違いないずら!!」
「ホントだ!やったね花丸ちゃん!!」
「よくやったわ!リトルデーモンずら丸!!」
「うん!ありがとう!!」
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4月
花丸は無事にM大学に合格し、今日が初の登校日だ。元々は明治時代に法律学校として設立され、関東ではそこそこ有名で人気がある総合私立大学である。レベルとしては難関と中堅の間と言った処で、国立大学や難関私立大学の滑り止めで受験する者も多い
さらに、自由な校風で部活動等が盛んである。ラグビー部は"重戦車"が有名で、卓球・柔道・馬術などではオリンピック選手もいるほどだ
「これが、東京の大学……。未来ずら……」
このキャンパスすぐそばの大きな国道の上に高速道路が走っており、地元の内浦とは別の世界に来てしまったようである。文系学部は1・2年生の間はこの校舎に通い、3・4年生になると更に都心の校舎に通うことになる。因みに農学部と理工学部が4年間同じ校舎だ
そしてこの時期は、部活やサークルの勧誘が盛んに行われる。運動部・文化系問わず新入生の手にはチラシがいっぱいだ。もちろん花丸も両手いっぱいにチラシを持っている
「其処の1年生、アメフトに興味はないかい?」
「あの、マルは……。あっ!」
これ以上荷物が増えるのは辛いなぁ……と思いながらも律儀に振り返ると
「花丸ちゃん!」
「あっ!隼人さん!」
「良かった。会えた!」
「うん♪ でもビックリずら!なんでこっちに?」
「あぁ。この後に勧誘を兼ねて練習があるからな」
体育会用のグラウンドはこちらのキャンパスからの方が近い。ということもあるが、それは建て前で……
「やっぱりこう……早く会いたくてな」
「うん。マルも……♡」
「ふふっ……♪ 改めて……入学、おめでとう!」
「はい、ありがとうございます!」
晴れて同じ大学に通うことになった2人。どんなキャンパスライフが待っているのだろうか
ここから始まる、2人の新しい物語
おしまい
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丸恋日和。これにて本編完結です。時間がかかってしまいましたが何とか完結できたのは読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!