隼人の相棒、江井君が地味に初登場
やや駆け足な部分はありますが、今回は重要な回のつもりです
どうぞ!
~次の月曜日~
放課後。3年生教室
江井「隼人~一緒に帰ろうぜ~」
隼人「おう!でも用事あるから下駄箱までな」
江井「なんて短距離!ってそうかスイーツか」
隼人「Exactly.」
月曜日。憂鬱になる方も多いかも知れないが、学校が好きな彼らには無縁の感情だ。増して、土日も練習があるため貴重な部活休みとなればテンションが上がる
そんなハイテンションな2人を見て、果南が声をかける
果南「2人ともいつも仲良いね♪ 今日は何かあるの?」
江井「あぁ、隼人がかわいい妹とデートするんだとよ」
「「!?!?」」
隼人「ちゃうわ!ってまぁ違わなくもないけど」
ダイヤ「どういうことですの!?」
果南「隼人君妹いたの!?」
鞠莉「マリーも会いたい!」
ダイヤ「妹は最高ですわ!!」
江井「まぁまぁ皆の衆落ち着いて」
隼人「原因は江井ちゃんだけどな……」
江井の爆弾発言?によってダイヤと鞠莉も加わり、場が混乱してしまった
ダイヤは"妹"というワードに強く反応し、鞠莉は何やら楽しそうで、果南何故か表情が曇り気味だ
そんな中、隼人がゆっくりと事情を説明していく
隼人「図書委員の後輩と出掛けるだけだ。その子が妹みたいだなってだけ」
ダイヤ「なんだそうでしたのね」
鞠莉「ビックリしたわ」
隼人「ハハッ、すまんすまん。いつだか元気がない時があったから、甘いものでも食べようぜ~って誘ったんだわ」
果南「デートだね」
ダイヤ「デートですわね」
鞠莉「Dateね♪」
江井「やるなお前」
隼人「恥ずかしいわ!」
果南「ねぇ……その"妹"ってもしかして……花丸ちゃん?」
隼人「Oh!よくわかったな!」
鞠莉「ふふっ。確かに花丸たち1年生は、マリーたちにとっても妹みたいにかわいいわね♪」
ダイヤ「えぇ、そうですわね♪」
果南「う~ん……」
隼人「って果南どした?」
江井「あ~あれだろ。甘いもの食べ過ぎて体型変わったらどうすんのー!?みたいな」
隼人「Oh!?」
ダイヤ「確かに、余りに体重が増えると日々の練習や本番のパフォーマンスにも影響が出ますわね」
鞠莉「それに、衣装の調整も必要になるわね」
果南「そ、そうだね!」
隼人「Oh……。やってもうたかな……?」
鞠莉「そんなに気にしなくても今日1日くらいなら大丈夫よ♪」
ダイヤ「えぇ、今後気を付けてくだされば結構ですわ。なので今日の処は楽しんでください♪」
果南「……練習メニューを改めて考えれば良いしね!」
江井「果南さんのメニューはキツそう……」
隼人「すまんな、気を付けるわ……。じゃあそろそろ行くわ!」
江井「みんなまた明日な~!」
果南「じゃあね!」
ダイヤ「ごきげんよう」
鞠莉「Ciao~☆」
女子としては体型や体重は気になる処だろうし、スクールアイドルならば尚更だ。いっぱい食っていっぱい練習だ!というアメフト部前衛とは当然ながら意識は違う
だがそれよりも、鞠莉とダイヤには気になることがあった
果南が隼人の広い背中を寂しそうに見つめているのだ
鞠莉「果南、やっぱりまだ……?」
果南「……なんのこと?」
視線を変えずに答える
ダイヤ「今更とぼけないでください。みんな、知っておりますわ」
果南「そっか……」ハハッ
「もう、諦めたハズなんだけどな……」
「果南……」
「果南さん……」
未だ果南は、彼が出て行った扉の向こうを見つめたまま動かない
━━━━
~同じ頃。1年生教室~
ルビィ「いよいよだね!花丸ちゃん、頑張ルビィだよ!」
善子「いや、特に頑張らなくても良いんじゃない?」
花丸「でも、くれぐれも粗相のないようにしなければならないずら!」
善子「まぁ、アンタがそれで良いならいいわ。楽しんできなさい!」
ルビィ「それじゃあ行ってらっしゃい!感想聞かせてね!」
善子「ヨハネが食すに値するか確かめてきなさいよね!」
花丸「もちろんずら~。美味しかったら今度は3人で行きたいな♪」
そんなピュアな3人のやり取り
"友人が心配だから様子を見守りに行く"こともなさそうだ
花丸「えへへ、お兄ちゃんとのスイーツ、楽しみずら~♪」
「「お兄ちゃん!?」」
花丸「ずら!?」
善子「ずら丸……アンタ、先輩のこと"お兄ちゃん"って呼んでるの?」
ルビィ「はわわ……!」
花丸「その、Aqoursの上級生が"お姉ちゃん"みたいだから、隼人さんは"お兄ちゃん"みたいだなって……」
善子「なんだそうだったのね。まぁ、わからなくはないけど」
ルビィ「お兄ちゃんかぁ……」
……
ルビィ、兄の妄想
兄「よっしゃ取れた!」
ルビィ「凄い!お兄ちゃんってクレーンゲーム上手なんだね!」
兄「まぁな!はいよ、これあげる」
ルビィ「えっ!?良いの!?」
兄「おう!元々そのつもりだったからな!」
ルビィ「うわぁ、お兄ちゃんありがとう♪大好き!!」
兄「ハッハッハ、ルビィはかわいいなぁ!」ナデナデ
ルビィ「えへへ~♪」
……
ヨハネver.
ヨハネ「兄様、その翼は……!」
兄様「うむ。この光と闇の翼こそ、余が
ヨハネ「では、刻が満ちたということですね!」
兄様「如何にも。さぁヨハネよ、今こそこの世界を宵闇に染め上げようぞ!!」
ヨハネ「御意にございます、兄様!!」
「「さぁ、復讐劇の始まりだ!!」」
……
ルビィ「お兄ちゃんって良いね!」
善子「兄様って良いわね!」
花丸「??」
━━━━
~バス停~
2人は駅方面のバス停で待ち合わせすることになっている
最後尾に並んでいる花丸を見付け、到着した隼人が声をかける
隼人「お、花丸ちゃんお待たせ~!」
花丸「あ、隼人さんこんにちは♪」
隼人「おう!すまんね遅くなって」
花丸「バスはまだですし大丈夫ですよ」
と言っているうちにバスが到着し、他の生徒に続いて乗り込む
2人掛けの席に並んで座ったのだが……
((近い!))
隼人「大丈夫?狭くない?」
花丸「だ、大丈夫です!」
当然といえば当然だろう
小柄な花丸だが、隼人の体格はかなり大きいため2人の距離は近い。もちろん男同士で座ればもっと狭いのだが、それとこれとでは事情が違う
隼人(あ~、なんかちょいと緊張するな)
花丸(なんかちょっと緊張するずら……)
花丸「あっあの、部活の方はどうですか?」
隼人「ん?あぁそうだな~。受験勉強しながらだと……」
腕が触れ合うような距離に、初心な2人は互いを少しばかり意識しつつ、他愛のない話をしながらバスに揺られる
……
~喫茶店~
店員「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
隼人「2人です」
店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」
店員に案内され、2人用のテーブル席に座る。因みに全面禁煙のお店なのでその点は安心だ
店員「ご注文が決まりましたらお呼びください」
隼人「は~い。……さて、新作は確定で良いよね?他には何か頼む?」
花丸「うぅ、どれも美味しそうで迷うけど……次回のお楽しみにします!」
隼人「了解だ!それか持ち帰りでも良いかもな」
花丸「そうですね!」
花丸(お土産を忘れる処だったずら!)
……
店員「お待たせいたしました」
花丸「未来ずら~♪」
隼人「おぉ!これはハラショー!」
春の新作スイーツ・いちごと抹茶のパフェが2人の前に現れた
サクサクのフレーク、抹茶スポンジケーキ、ホイップクリームなどの層の上に、中央の抹茶ソフトクリームを取り囲むように真っ赤ないちごが花びらのように並べられている
ネットに投稿されている写真で姿形は知っているが、やはり実物を目の前にすると感動する。またメニューの写真とイメージが違うということもなく、ちゃんとしたサイズでなかなかに食べ応えがありそうだ
「「頂きます!」」
花丸「んん~♡ いちごの甘酸っぱさと、抹茶のほのかな苦みがマッチしてて最高ずら~♪」
隼人「ただ甘いだけじゃなくて、なんかこう上品な感じだな~。フレークもかさ増しじゃなくてちゃんとアクセントになってるし」
一口食べて感想を漏らす
その後も味わいながらも夢中になって食べていく
花丸「ふぅ、ご馳走様でした♪美味しかったずら~♪」
隼人「ご馳走様でした!っと……」フフッ
予想以上に美味だったパフェに大満足の2人
だが何やら隼人は花丸を見つめて微笑んでいる
花丸「どうしましたか? あ!オラの顔にクリームが付いてるとか!?」
隼人「あぁいやそれは大丈夫。なんつーか、幸せそうに食べる花丸ちゃんを見てると、こっちまで嬉しくなるな~って思ってさ」
花丸「うぅ~、もっと恥ずかしいずら……」
隼人「ハハッ、すまんすまん」
……
隼人「さて、一息ついたしそろそろ出るかね~。折角だしこの後ちょっと寄り道しようか。何処か行きたい処はある?」
花丸「それなら本屋さんに行きたいです♪」
隼人「了解!」
花丸「よろしくお願いします♪ あ、そうだお金お金……」
隼人「フフフ、今日は俺の奢りだ!」
花丸「えぇっ!?それは申し訳ないずら!」
隼人「良いの良いの。先輩を立てると思って、な」
花丸「じゃあ、お言葉に甘えて……。ありがとうございます、お兄ちゃん♪」
隼人「ッ!///……おう!」
━━━━
~本屋ダイジェスト~
花丸「ん~、やっぱり本に囲まれるのは幸せずら~♪」
隼人(嬉しそうに本を選ぶ花丸ちゃんかわいいなぁ……。お兄さん、何でも買ってあげたくなっちゃうよ!)
花丸は探していた本や目について気に入った本などを、目を輝かせながら躊躇いもなく買っていく
隼人は久々の本屋。妹を見守りながら適当に回っていたが、ウナギ研究で世界を駆け巡る若い研究者のエッセイを買った
……
隼人「本屋をじっくり回るのも、なかなか楽しいもんだねぇ」
花丸「その通りです!本を読むのも選ぶのも、あっという間に時間が経っちゃうずら♪」
隼人「ふふっ。しかしいっぱい買ったね。重いなら俺が運ぶよ?」
花丸「大丈夫ですよ。慣れてますから♪」
隼人「ん~なら良いけど気を付けてな。でも風呂敷ってのも乙だねぇ」
花丸「えへへ。とっても便利なんですよ♪」
花丸は大きな風呂敷包みを抱えている。中身は全て本であるため、相当な重量がある。運動は得意ではない花丸にはかなりの重労働なハズだが、本関係なら無問題ということだろうか
しかし、背負おうとした瞬間にバランスを崩し……
花丸「あ……」
隼人「!!」
ぼふっ……
花丸「ッ!!……あ、あれ?」
隼人「……大丈夫?」
花丸「!?……は、はい……」
そんな彼女を、彼が抱き止めた
転んではいないし、足をくじいてもいないようだ。風呂敷包みは地面に転がってしまっているが、中の本は散らばっていない
それを持ち上げながら、彼が言う
隼人「やっぱり俺が持つよ。良ければ家まで送って行くけど?」
花丸「あ、あの~、えっと……」
隼人「あ~、やっぱ迷惑かな?」
花丸「そんなことないです! じゃあその、お願いします……」
隼人「おう!おまかせあれ」
花丸「あと、その……。抱き止めてくれて、ありがとうございます……///」
隼人「ッ!/// お、おう……」
隼人(これは、ヤバいかもな……)
━━━━
~帰り道~
「……」
「……」
駅からのバスに乗り、花丸の家に向かう
行きの時と同じく並んで座っているのだが、その時に増してドキドキしている2人の口数は少ない
隼人(しかしまぁ、女の子って柔らかいんだな……って別に変な意味じゃなくて!)
自分の中の思考であるのに、誰に向けた訳でもない言い訳をする
先ほど花丸を抱き止めた時のことが頭から離れないようだ
隼人(でも、ケガとかなくて良かったよホント)
隼人「花丸ちゃん家ってお寺だったよね?」
花丸「そうです。あと3つくらいのバス停です」
隼人「OK」
隼人(お寺ねぇ。俺の煩悩をどうにかした方が良いかもな……なんて)
やがて最寄りバス停に到着し、徒歩でお寺に向かう
距離は遠くないのだが階段が多い
花丸「隼人さん、階段は辛いと思うからもうマルが……」
隼人「ん~まぁだからこそ俺が持たなきゃな!」
花丸「でも……」
隼人「好きでやってるから良いの!トレーニングにもなるし」
実際に強がっている訳でもない。部活の遠征ではアメフトの防具一式を運ばなくてはならないため、重い荷物を運ぶのは慣れている
何より、かわいい妹のためならばこの程度のことは苦でもなんでもない
花丸「優しいずらね……」ボソッ
隼人「ん?」
花丸「あぁいえ、助かります……」
隼人「それは何より!」
……
そんなやり取りをしつつ、花丸の自宅たるお寺に到着
花丸「このお寺です」
隼人「おぉ、なかなか立派な!っと本は何処に置けば良いかな?」
花丸「縁側に置いてもらえれば大丈夫です」
隼人「OK!じゃあこれでタッチダウン……っと」
花丸「ありがとうございます!」
隼人「どういたしまして!そしたら任務完了したし、帰ろうかな」
花丸「あっ、えっと、その……」
隼人「?」
花丸「折角だから、お茶くらいは飲んでいってください♪」
隼人「んじゃあ、頂こう」
……
花丸「お待たせしました~」
隼人「ありがとう~。頂きます」
花丸「お隣、お邪魔します♪」
隼人「おう、いらっしゃい!って花丸ちゃん家だけどな」ハハッ
縁側に2人並んでお茶を飲む。ゆっくりと優しい時間が流れている
新緑から深緑へと移り行く季節。風に揺れる木の葉がサラサラと心地良い音を奏で、その向こうには海が見える。深呼吸すると日頃の煩悩が浄化されるようだ
隼人「ふぅ~……」フフッ
花丸「どうされました?」
隼人「あ~普段さ、部活やら受験勉強でそれなりに忙しいから、こういう時間って……良いなぁって思ってな」
花丸「それは良かったです♪ あ!でも……」
隼人「?」
花丸「おに……隼人さんは」
隼人「ん~、2人の時は"お兄ちゃん"で良いぞ。その、俺も嬉しいし……」
花丸「あ、はい! それで、お兄ちゃんはもう、今年で卒業だなって思ってしまって……」
折角仲良くなれたのに、この時間は長くは続かないのかも知れない。そう思うと、少し寂しい
隼人「確かになぁ……。でもまぁまだ何ヶ月も先だし、その分今を楽しもう!うん」
それは自分に言い聞かせているようにも見える。どうやら、気持ちは一緒のようだ
花丸「仰る通りずら♪」
隼人「まぁだからって訳じゃないけど、またこうやって遊びに行ったり、ゆっくりお茶飲んだりしたいって思うんだけど、どうかな?」
花丸「是非お願いします♪」
隼人「ふふっ、良かった!……っとじゃあ、そろそろいい時間だしお暇するかな。今日はホントにありがとう!めっちゃ楽しかったわ」
花丸「こちらこそ、ありがとうございました!」
隼人「また、学校でな!」
花丸「はい!」
今日の"デート"は2人にとって予想外に充実し、特別な日になった
━━━━
~その夜~
花丸自室
「えへへ、今日は楽しかったずら~♪」
満月を見上げながら、今日一日を振り返る
一緒にスイーツを食べ、本屋に行った。そして……
「転びそうになってギュッとしてくれた時は、力強くて優しくて……///」
一瞬ではあったが、抱き止められたあの感触は鮮明に覚えている
「お兄ちゃん……。お兄ちゃん?」
半ば無意識に、口にしていた
彼に最初に会ったのは委員会の時。とても優しい先輩で、自分でも驚くほどすぐに打ち解けた
自分は隼人を兄のように慕っているし、彼も自分をかわいい妹みたいだと言ってくれた。だが自分の想いは本当にそれだけだろうか?
仲の良い兄妹のような関係になれたのは素直に嬉しい。だがそこに、違和感を覚えたのだ
「今日のお月さまはいつもより綺麗に見えるけど、なんとなく寂しい感じがするな……」
この気持ちは何だろうか?
恋愛小説を読んだ時のような、キュンと切ない感覚……
「もしかして、マルは……///」
それは……気持ちのフタを取ってみたら、あふれだした
- 月夜に芽生えた恋心 -
つづく
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