俺はぜっぺ・・・雪ノ下に正座させられた。2時間。
「いつまで座っているの。早く行きなさい」
「へいへい」
「返事は1回」
「・・・はい」
奴隷が誕生した瞬間であった。
「で、どこ行けばいいんだ?」
「楔石に触れればデーモンのいるエリアに転送されるわ」
「え、家に帰れるんじゃねえの?」
「何言ってるの?デーモンを倒すまで帰れないわよ?」
「・・・は?」
「いいから行ってきなさい。ゆで卵あげるから」
いやこれおれのヨード卵・・
「わかったよ。ありがとさん」
ゆで卵1個もらった。
「で、楔石?いくつかあるけど、どこから行けばいいの?」
「私には、分からないわ・・・」
なんか悲しそう。走って階段上って行きそう。
「よく分からんが行ってくる」
「ええ。逝ってらっしゃい」
いい笑顔だ。なんか違う気がしたが。
「これが楔石とやらか」
ふと見ると、近くの階段にイケメン野郎が腰掛けていた。
「どうも。あんた何してんの?」
「ははは・・俺はここで座っているんだ」
「あ、さいで」
そうだな座ってるな。話しかけたのは失敗だった。
「ちょっと話さないか?」
やっぱりウザい奴だった。
「え、いや俺は今からアレがアレでして」
「俺は葉山隼人。ここに来て2年になるんだ・・・」
語りだした。
「あ、そうですか。大変ですね。それでは」
「ここはね、くさび」
「あ、それもう聞いたんで。じゃ」
悲しそうな顔でこちらを見ている。
「最低な気分だよ、二度としたくない」
そうですか。何したの?
「ずっと考えていたんだ。俺が壊してしまったものを取りもど」
「お察しします。それでは」
自分を壊してしまったようだ。お気の毒に。行こ。
「これに触ればいいのか?」
俺は一番近くにある楔石に触れた。身体が光に包まれる。
「おおーなんだこれ?」
気付いたら目の前に大きな城門があった。閉まっているな。
「ここがヨードランか」
「いや違うしボーレタリアだし。あとそれ卵だし」
なんか金髪ロングの怖そうなギャルが不機嫌そうに立っていた。
「うお!びっくりしたあ・・えっと・・・ボーノイタリア?卵出汁?」
変わった挨拶だな。
「は?なにナンパ?ウザいんですけど」
こんのアマ・・
「あ、はい。すいませんでした」
俺は奴隷だった。忘れてはいけない。
「で、あんたも城に行くわけ?」
「え?」
「だから城に行くのかって聞いてんの」
「え、あ、はい」
「ふーん。あっそ」
なんかよく分からんが行ってしまった。怖かった。城に行けばいいのか?
なんかいま、すごく大事なことを聞いた気がするんだけど。
とりあえず行くしかないな。門閉まってるけど行けるのか?
「なんかホームレス多いなここ。こええな。とっとと行くか」
城門に続く通路にはボロボロの服を着たオッサンがウロウロしている。
「やっぱり開いてないか。・・お?」
ガコン!ガラガラガラ・・
城門が開いた。ラッキーだ。
「あー!やっと開いたー!」
お団子髪のギャルがこっちに来た。
「は?・・・あ、ど、どうも」
「え?あ、え、えっと・・・どちらさまでしょうか?」
「ど、どうも比企谷です」
「ひきがや・・・うん!ヒッキーね!」
引きこもり奴隷が誕生した瞬間であった。
「お、おう・・・で、あんただれ?」
「あたし?あたしは由比ヶ浜結衣です!」
「そうか、じゃあな」
こいつはアホの子だ。間違いない。
「えー?一緒に行こうよーヒッキー、ねえー」
捕まった。柔らかい。
「いや、ちょっと今日はアレがアレでして」
これしか言えないのかよ、おれ。
「よし!じゃあレッツゴー!」
一緒に行くことになった。
城門の中に入ると夥しい数のスライムの集合体が槍と盾を構えていた。
「わー!なにあれキモーイ」
あいつだって一生懸命生きてんだ。
「でもカワイイかも!」
キモイと言われた時点でカワイイも何も無いんだよなぁ。
「あ!端っこ通って行けば向こうに行けるよヒッキー!」
「お、おう。あれ、相手しなくていいのか?」
何のために居るんだ、あのキモいのは。
「あたし、ズルいんだ。卑怯な子なんだ。」
「あ、そう・・・」
キモカワイイ謎のスライムよ、さようなら。
「うーん・・あ!あそこから行くのかな?」
城壁の上の通路を進むようだ。
「そうみたいだな。・・・・ん?」
脇に通路があった。
「ヒッキー!どうしたのー?」
「ああ、こっちにも通路がある」
「ホントだ!ちょっと行ってみようよ」
「おう」
行き止まりだった。
「行き止まりじゃんヒッキー!もう信じらんない!」
怒られた。・・・誰か居る?
「愚腐腐腐腐・・・」
ヤバい。近付いてはいけない。
「あー!姫菜!こんなところに居たの?」
「ん?あ、結衣。ハロハロー」
ガハマさんの知り合いだった。