「…本当に来てしまいました。」
1人の少女が列車から降りる。その少女は一言で表すのならば「不思議」だった。少女の割には身長が高く、17または18歳だと考えられる。髪は黒く、後ろで一つに纏めていた。そして何より目を引くのは、彼女の表情だった。彼女は笑っていた。これだけ聞くと「それの何が不思議なの?」と思うことだろう。まぁ、表すのならば、『営業スマイル』といったところだろうか。まるで貼り付けたような笑み。そこに彼女自身が持っている美貌が合わさっているためか、結果的に不思議な雰囲気を醸し出していた。
「さて、これからは気合いを入れましょう。」
元から綺麗な姿勢が更に綺麗になる。そして彼女はコツコツと足音を響かせながら、駅を去っていった。
3日後
「ミヤノ!ミヤノ!一緒に遊ぼ!」
「はい。ルーシィ様。…何をなさいますか?」
「折り紙!」
折り紙なら自分1人でも出来るのでは、と思ったが、これも仕事だと思い直し、ルーシィ様に近づく。
「ミヤノ、立ってないでこっち来て座って!」
「…ありがとうございます。」
正直、執事が一緒に座るなんてどうかと思うが、まぁお嬢様がおっしゃったのだ。問題ないだろう。だが、これといってやることがない。暇である。
「ミヤノも一緒に折ろう?」
「はい。」
まぁ、暇つぶしにはなるなと思い、私はルーシィ様から折り紙を受け取る。……なにこの仕事。
そもそもおかしいと思う。まるで遊ぶことが私の仕事みたいではないか。私は子供じゃないんだぞ。確かに依頼書には、お嬢様の世話役と書かれていた。あぁ、そういえば護衛役とも書かれていた。だが、私はこの三日間、遊んでしかいない。え、本当に何?この仕事。
私はそう思いながらも、折り紙を折っていく。
「…こんな感じでしょうか。」
折り紙なんてもう随分と折っていなかったが上手く折ることができた。うん、よくできているではないか。
「……。」
「…どうかされましたか?」
ルーシィ様がずっとこちらを見てくる。いや、正確には私の手元?…ということは折り紙だろうか。
「ミヤノ、なにソレ。」
…まさか、分からない?…いやいや、紙飛行機だぞ?こんなの庶民でも分かる。それにルーシィ様の周りには、折り紙の花が散らばっている。
中には、どうやって作ったのか私の方が尋ねたいものもある。そんな素晴らしい手先を持っているルーシィ様が、紙飛行機が分からない?そんなはずはない。
…まさか、私がただ単に下手くそ?自分自身は紙飛行機だと思っていたが、周りから見れば私が作ったものは謎の物体Xにでも見えるのか?もしそうなら泣ける。
「えと、紙飛行機ですが…」
恐る恐る言ってみると、ルーシィ様はコテンと首を傾げた。あ、もしかしてご存じない?良かった。ここで「え!?これが?見えなーい!」なんて言われたら死んでいたかもしれない。
「ふむ。では飛ばしてみましょう。」
私は紙飛行機を飛ばす。すると、それは真っ直ぐ進み、部屋の壁でコツンとぶつかり地面に落ちた。
「わぁ〜!!すっごい!ミヤノ、私もアレ作る!」
どうやらお気に召したらしい。まぁ、それなら結果オーライだろう。
「はい。分かりました。しかし、それならば折り紙よりもA4サイズの紙のほうが良いかと。」
「A4?」
「サイズのことです。折り紙よりも大きい紙ですね。」
「それで折るとどうなるの?」
「更に飛びやすくなります。」
「じゃあ、それにする!」
「かしこまりました。では少々お待ちを。」
私はそう告げ、紙を取ってくるために部屋から出ようとする。
「私も行く!」
…まさかのルーシィ様と一緒。くそ、ワザと休憩するために遅く戻る予定が…。まぁいいか。しかし、
「ルーシィ様?抱きつかれてはミヤノは動けません。離れていただくとうれ「じゃあ、手ぇ繋ぐー。」…はい。」
…なにこのお嬢様。
バンッ!
「パパー!エーヨーの紙ちょうだーい!」
「ルーシィ様。
ちょうど旦那様と奥様は2人でお茶をしていたらしい。申し訳ない。
「あぁ、いいのよ。ミヤノ。それでルーシィ?どうしたの?」
「ママ!私エーヨーの紙が欲しいの!」
「A4の紙?何故だい?ルーシィ?」
再び私はルーシィ様の間違いを直そうとしたが、旦那様は分かってくれていたのでならいいかと思い、口を閉じる。
「あのね、あのね!ミヤノと一緒に紙飛行機作るの!」
「ほう。」
ルーシィ様が楽しそうに答えたことで、旦那様の口が緩む。やはり、自分の娘は可愛いのだろうか。
「あら、なら私たちにも教えて欲しいわ。ねぇ、貴方?」
「うむ。そうだな。」
おい、待てやコラ。そう口から出そうになったが抑える。何故だ。奥様。後、旦那様も うむ。そうだな、じゃねぇよ。こちらの気持ちも考えて欲しいのだが。
「みんなと遊べるの!?やったー!」
そう言ってルーシィ様は奥様の隣の席に座る。
待ってください。ルーシィ様。そんなに素早く決めて良いのですか?
そして、私に向かい側に座るように指示するのはやめてください。死んでしまいます。(プレッシャーで)
「…従者がそちらに座るのは流石に…」
私が暗に嫌だと言うも、
「あら、私達は気にしないわよ?それに、あなたがここに座ったほうが皆があなたの手元を見ることが出来るわ。」
うっ。
「それに美味しいお菓子もあるよ。」
…。
「…分かりました。」
別にお菓子に吊られたわけではない。断じて。
だから旦那様がた、素直になれない娘を見るような目はやめてほしい。あなた方の娘さんはあっちです。