あの後、食事や入浴が終わり、ようやくルーシィ様は眠りにつき、今私は奥様と一緒にいる。
「あぁ、ミヤノ。そろそろ機嫌を直してくださいな。」
「…私は別に起こっていませんよ、奥様。」
「あら、ですがミヤノ?あなた、目がどんよりしてますよ?」
そう言って奥様はクスクス笑う。少しイラッときたが我慢だ私。
「もう、そんなに拗ねても良いことなんてありませんよ。」
「別に拗ねてません。」
「本当に?」
「はい。」
奥様は私の返事を聞くとそう、とだけ言って紅茶を飲み始める。すると、奥様は少し驚いたような顔をした。
「あら、美味しい。ミヤノ、あなた紅茶を入れるのが上手なんですね。」
「ありがとうございます。」
まぁ否定はしない。昔はよく紅茶の入れ方を練習したものだ。……それにしても、うん。奥様のような位が高い方に褒められて悪い気はしない。むしろ嬉しい。
私が喜んでいるのが伝わったのか、再び奥様はクスクス笑う。今更だが、何故奥様は私が何を考えているかがわかるのだろう。私は基本、表情は笑顔で固定しているはずなのだが。その奥様は現在紅茶を飲んでほっと一息をついている。
「まぁですが、あなたもみんなで話すことができて楽しかったでしょう?」
「…そうですね。」
はっきり言おう。全く楽しくなかった。いや、ルーシィ様だけに折り紙の折り方を教えるだけならいい。しかし、奥様と旦那様もいるんだぞ?雇い主に対して教えると言うのはさすがに無理だ。正直生きている心地がしなかった。
私がそう思った後、しばらく無言が続き、夜の静寂の中に心地よい虫の音が聞こえた。しばらくすると再び奥様が口を開いた。
「…ルーシィはね、あなたが来る前、よく窓の外を見ていたのですよ。」
「は、はぁ。」
いきなりルーシィ様の話になって少しうろたえる。窓の外?私もよく子供の頃は窓から雲を見ていたが。
「ルーシィは、この屋敷で働いている人たちとしか遊んだことがないのです。…そうですね、やはり取り除くことができない身分の差といったところでしょうか。」
まぁ、そりゃそうだ。ここでは身分の高いものと身分の低いものが一緒に遊んでいる姿をよく見ない。
「しかし、ルーシィは彼らと遊びたかったんでしょうね。よく窓から彼らが遊んでいる姿を見ていました。」
なるほど、お嬢様と言うのは案外窮屈なのだと感じた。
「だから、ミヤノ?あなたからルーシィにいろいろなことを教えてあげて下さい。あなたは若いから、私が外のことを話すよりも、きっとあなたから教えてもらったほうが楽しいと思うわ。ルーシィも。」
……あぁ、なるほど。ようやく納得した。だからルーシィ様は紙飛行機の折り方を知らず、逆にきれいな花の折り方は知っていたのだろう。だから私のようなものを選んだのか。奥様もかなりの娘思いらしい。
「分かりました。これからもルーシィ様と一緒に遊べば良いのですね?」
「はい、よろしくお願いしますよ?ミヤノ。」
「…仰せのままに。」
あぁ、なんだ。案外この仕事は楽しくてやりがいがありそうだ。
翌日
「ミヤノ、ミヤノ!私、たくさん、飛行機作ったの!だからこれから皆にプレゼントするの!ミヤノも来て!」
「わかりました。あぁ、ルーシィ様、そんなに走ってはころんてしまいますよ?」
賑やかな声がこの屋敷に響いていた。