幻想の退魔録〜幻想郷の世界へと誘われて 外伝〜 作: 白黒魂粉
それから俺は妖怪の山をすこしいった、河童の集落へと赴いた。
そして……
「あんたが…これを作った河童か?」
「そ、そうだけど……なんでこんな夜遅くに?」
遂に八雲の言っていた河童を見つけることができた。
「……まぁ、聞きたいことは山ほどあるんだけど……とりあえず上がりなよ。」
「すまないな、感謝する。」
そして、河童の子(名前はにとりという)に付いていき彼女の工房へと向かう。
その間、河童の子は何か考えていてブツブツと何かを唱えていた。
そしてついに…
「着いたよ。ここが私の工房さ!」
そこはとても広いとは言えないが、そこには大量の工具やらがそこらかしこに置いてあった。
「普段はここで作業をしているんだね。」
「まぁ、そんなとこだよ…それじゃあ早いことそれの説明をしてしまおうか。」
「あぁ、よろしく頼む。」
「まず……それは人間の力…例えば霊力とかを引き上げる力がある特別な石が埋め込まれている。
そしてそれを持ってきたのは…過去の退魔師と八雲紫の2人さ。」
「そうなのか」
人間の力を引き出すという事は…おそらくあの時先代の剣術を越えたのはこれの力のお陰だってことだったのか……
「でもそれはもうひとつ致命的な欠陥があるんだ。」
「欠陥?」
俺が尋ねると、彼女はうんと頷き
「そう、これは使えば使用者の生命力を大きく消費してしまうということ。つまりは寿命を縮めてしまうんだ。
……過去にこれを使って障害を退けた退魔師はその副作用で長く生きられない体になってしまっていた。」
「そんなものなのか……」
「君は……」
そう言ってジロジロとこちらを見るにとり。そして安心したようにホッと息を着いた。
「どうしたんだ?」
「いや、君はまだその石の力は使っていないってわかってね。それは使うと使用した後が残るから。」
「なるほど。」
俺は腕の腕輪を見る。
確かにこいつは八雲紫から渡された時のままの姿だった。
つまり……
「これはまだ使用出来るということだな?」
「え?……まぁそうだけど……」
何故か濁す感じで言うにとり。そこが気にかかり、俺はにとりに尋ねる。
「けど……?何かあるのか?」
「いや……それの石が力を発揮する条件があってね……実はその発動条件がハッキリとわかっていないんだよ。」
「何……?!じゃあ肝心な時にこいつが使えなければ……」
「いや、何とかなるはず……それにこういうことはあの隙間妖怪がよーくしってるはずだからそこは彼女に頼んでみてくれ。」
「なるほどな……わかった。有益な情報をありがとう。」
「あぁ、気にしないでくれ。それよりも……盟友……」
「どうした?」
何かを言おうとするにとり。俺はなんの事かと彼女を見る。
「……死ぬなよ。退魔師だって人間なんだから。」
「…………わかってるよ…。」
そうして俺は後ろを向き直し、そのまま八雲紫の隙間を出現させる。
「また……会うことができれば…また会おう。お礼がしたい。」
「待ってるよ。また……」
そうして俺は隙間に入り込み、その場を後にした。
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〜自宅〜
隙間から出て、足場に着地する。
横を見れば懐かしい我が家。
ここで俺は彼女と少ない時間だが、共に暮らした家。
俺にとってはどうでも良かった家でその内装もまともな物がないような場所だったが、彼女がきたおかげでその生活も劇的に変わったのだ。
「……ただいま。」
そこには誰もいない。
蘭が来る以前の家の風景。
俺はそのまま部屋の方へと向かい、そこで彼女との思い出を振り返る。
(……思えば、俺の生活が……俺の生きる意味が変わったのは蘭と一緒にいるようになってからだな……。俺はただ妖怪を殺すために生きていて、それだけの存在だった。でも今は……)
その時、玄関がバンっと大きな音を立てて開いた。
「…………?」
何だ……?と思い、玄関へ向かうと、そこには
慧音が居て……その後ろに……蘭がいた。
「なっ……なんで…」
「1人で寂しく行くつもりか?……ちゃんと私にも訳を話してくれ。」
「蘭……。」
「……私は席を外そう。2人で話してこい。終わったら言ってくれ。」
そして慧音はそのまま外に残り、俺と蘭は部屋へと入る。
「……さて、」
「どうして私がまたここに戻ることができたのか、と言うとな……八雲紫という妖怪に言われたんだ。」
「紫に……?」
そう。と肯定して、蘭は続ける。
「彼女からは私が久國の力のトリガーになるとだけ言われた。そして次に会う時が久國と話せる最後の時とも。」
「…………。」
「久國。久國はこの戦いで死ぬのか?」
「そうかもしれない。今回の敵は今までとは格が違いすぎる。できて相討ち。出来なければ俺1人死ぬことになる。」
それを聞いた蘭は悲しそうな顔をして、「そうか……」とだけ小さく言った。
「……それでも、それでも久國は戦うんだろ?……そんな馬鹿みたいに大きな敵にだって、久國は挑み続けてきた。何度も…何度も……。そうして久國はこの幻想郷を守り続けてきたんだ。」
「……そうなのかもな。」
そう言うと、俺はこれまでの戦いを思い出す。
そう、俺は過去に勝てないと確信する程に強い妖怪と何度も対峙している。
そしてその度に人の知恵と技で乗り越えたのだ。
それは先代から引き継がれてきた退魔師の力。
そして今、これまでの歴史を全てぶつけて戦う相手が現れた。こいつから逃げることは出来ないし、そんなことはしない。
勝つのだ。 蘭のために。
退魔師ではなく、君の明日のために。
「蘭。俺は君のことが好きだ。だから君の為に……君と明日を迎える為にに…俺はやつにかつ。」
「……私も…私も久國の事が好きだよ…。でも……あなたのいない世界なんて私は考えられない…。
だから約束して……絶対に帰ってくるって。」
俺は蘭の手を握り、宣言するかのように彼女に告げた。
「……約束する。俺は必ず……君の元へ帰ってくる…!」
中盤の話はおわり。
のこるは次回からの最終パートのみとなりました。
それでは次回もお楽しみに