もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
私は去年(2019年12月18日)サービス終了した「MHFZ」をよくやっていたんですが、運営に嫌気が差して離れていた時期に「elona」というフリーゲームにはまっていた事があったんですよ。
で、たまたま「旗揚!けものみち」というアニメを見て、「これelonaの世界でやると面白いんじゃね?」と思ったんです。
本当は最後まで書いてから投稿するつもりでしたがアニメ自体が奇しくもMHFZが終了した同じ日(時刻は違いましたが2019年12月18日)に終わったものであるため、最後まで書いていると後どれぐらいかかるかも分からなかったのでその間に新鮮味が失われて行くと判断し、ついでにキリが良いので年度が替わった今日(2020年1月1日)から出していく事にしました。
というわけで、今年もよろしくお願いします!
いつも満員のここ、プロレス会場のボルテージは、今日はいつにも増して最高潮に達しようとしていた。
それもそのはずこの日のメインイベントは、デビュー戦から負け無しの覆面レスラー、【ケモナ―マスク】対【マカダミアンオーガ(通称
「因縁の対決、ついに決着か!? どのような試合を見せてくれるのでしょうか!」
そうアナウンスが流れる中で、【ケモナ―マスク】こと
「これに勝っちゃったらもう天辺以上は無いですよねぇ!」
興奮気味に捲し立てるマネージャーに「そう、そういう事だ……」と答えた彼は、次のように話し始めた。
「この試合を征した後に、俺の人生の第二章が始まる。それは――」
「おっとぉ、時間だよ~~」
途中で割り込んだマネージャーは、「んじゃ今日もよろしくお願いします~~」と言いながら出て行った。
マネージャーの忙しなさに溜息を付きつつ、言い掛けた自分の第二章を呟く彼。
「……愛する動物に囲まれて、動物と共に暮す事の素晴らしさを人々に伝える事……!」
リングに登場した二人を実況者が大袈裟な物言いで紹介し、試合のゴングが鳴った頃、とある異世界で姫君が〈勇者召喚の儀式〉を行っていた。
「異世界で最も強き者よ。願わくば、我が呼び声に応えたまえ……!」
宮殿の床に描かれた魔法陣が光り始めた。
同時刻、リングのポールに上がった【ケモナ―マスク】が技を仕掛けようと跳んだ。
そしてついでとばかりに一緒に跳んでいた【ひろゆき】と共に光に包まれ――。
「き、消えた!?」
実況者が驚愕の声を上げる。
何故か光に包まれた彼らは、その光が無くなったと同時に跡形も無く消え去ってしまったからである。
技を受けようと身構えていた【MAO】は、見上げた姿勢のままただ唖然と固まっていた。
光を強めた魔法陣の光が消えた。
が、そこには何も無く、儀式を行う前と何ら変わらない空間が残っていただけだった。
「……召喚、失敗か!?」
見守っていた大臣や近衛兵などが騒めく中で、姫君は「あぁ勇者様。わたくしの声には応えて下さらなかったのですね……!」と悲観に暮れた。
突然眩い光に包まれて思わず目を閉じていた源蔵は、気が付くとリングとは違う場所に立っていた。
どこだ、ここは?
面食らい、そう思いながら見回す。
あんなにライトで煌々と照らされた明るい場所にいたはずなのに、暗い場所にいる。
どうも夜らしい。
おまけに地面がゆうらりゆうらりと揺れている。
甲板だと気が付いた彼は、船、しかも帆船の上にいるのだと理解した。
乗組員か乗客かは分からないが異国の服を着ている者達が驚愕の表情で自分を遠巻きに見ているのが、月明かりで微かに見える。
そこでここはどこかを尋ねようとした矢先、船が軋みながら大きく傾いた。
皆と共に慌ててそこらの身を固定出来そうなものに掴まる。
悲鳴のような轟音と共に木々の裂ける音や船を揺さぶる振動、帆を引き千切る風の唸り。
まるで悪魔がもたらしたような突風が突然やって来た感じである。
「エーテルの風だ……!」
神を呪うように呟いたのは、年老いた水夫と見られる者。
そして船は、二度目の悲鳴を上げた。
波の重壁が何もかもを圧し潰し、人々が祈る間も無く船は夜の海に呑まれて行く。
彼は波間に放り出されてもがいた。
そして【クイーン・セドナ】と書かれた船名を見たのを最後に、意識が途切れた。
「……意識が、もう戻ったのか?」
誰かの話し声が聞こえた気がして身動ぎした彼は、間近でそう言われて目を開けた。
驚いたような顔で見下ろしていたのは、緑髪と先の尖った耳が特徴的な青年だった。
その背後には焚火で照らされた岩壁が見える。
表面が滑らかでてらてらと光っているのを見ると、そして氷柱のような細い石柱が何本も垂れ下がっているのを見ると、どうやらここは洞窟の中らしい。
「君の回復を待つために、我々の急を要する旅がいつまで中断されるのか、気を揉んでいたのだが」
皮肉たっぷりにそう言った青年は、「君は重傷を負って川辺に倒れていた。宵闇が辺りを覆う前に、〈癒し手〉の力を持つ我々に発見されたのは、全くよく出来た偶然だ」と続けた。
なんか癪に障る物言いだな。
そう思いながら訝しい顔で見詰めていたら、「……そんな物珍し気な顔をするな」と言われた。
「君の察する通り、我々は【異形の森】の民だ」
そんな事を言われても、彼が知るはずもない。
が、知っているものと思っているのだろう、青年は更に続けた。
「【エレア】は……〈シエラ・テールの高潔なる異端者〉は、他種族の詮索に付き合う無駄な時間をあいにく持ち合わせていない。が、君は我々に拾われた幸運をもっと素直に喜ぶべきだな。瀕死の君を回復させる事は、ここにいる『ラーネイレ』以外の何者にも不可能だっただろう。なにせ彼女はエレアの――」
「『ロミアス』、喋り過ぎよ。たとえ意識の朦朧とした怪我人が相手だとしても」
自慢気にさえ思えるような長々とした喋りを窘めるように制したのは、緑がかった青い髪の美しい女性だった。
「……そうだな。私の悪い癖だ」
『ロミアス』と呼ばれた青年は「分かってはいる」と素直に応じ、「さて……」と未だに混乱の
「……【ケモナ―マスク】だ」
「……。それはもしかしたら〈通り名〉なのではないのか?」
何の事だ? と思いつつも恐らくここは本名を名乗れという事なのだろうと思い直し、ゆっくりと立ち上がりながら「源蔵だ」と答える。
「ゲンゾウ……と言ったか?」
「そうだ」
「では『ゲンゾウ』。見たところ君は【ノースティリス】の人間ではないようだ。余計な世話でなければ、我々が旅を再開する前に、この土地での生活の知恵を授ける程度の時間は割けるのだが」
回りくどい言い方だが、要するに「この地方での生活の仕方を教えてやる」という事なのだろう。
「……そうだな。頼む」
そう言うと「賢明な判断だな」と口の端を上げた彼は、「君の足元に食糧を置いた。まずは食べてみてくれ」と足元を指し示した。
言われるままに足元に目をやった彼は、途端に電気に当たったかのように飛び退った。
そこにあったものは、どう見ても人間の死体だったからである。
「……こ、これが【食糧】、だと……!?」
「そうだが? 何か問題でもあるのか?」
「いや人間なんぞ食えるかっ!!」
「おかしな事を言うな君は。もう既に顔と手足は獣に変わっているではないか」
「これはマスクだ! 素顔ではないっ!」
【ケモナ―マスク】として被ったままだったマスク(ひろゆきを模したもの)は、千切れたりして破損してはいなかったらしい。
それを取ると二人は驚いた顔をした。
「獣人の類いではなかったのか……」
「てっきり、〈エーテルの風〉に当たって変異したものとばかり思っていたわ」
〈エーテルの風〉とは言わば季節風のようなもので、三の倍数の月(三、六、九、十二)の月初めから十日の間に吹き始める可能性があるとの事。
それに当たり続けると【エーテル病】と呼ばれている突然変異をはじめとする様々な病を発症し、進行が進み過ぎると死に至るとか。
それを聞いて、あぁ恨みがましくあの老水夫が「エーテルの風だ」と呟いていたのはこういう訳かと彼は思った。
とにかくも【食糧】として人間の生肉を食べる事を頑として拒否した彼は、「ならば我々がここに来る前に保存されてあった【兵糧】を食べると良い」と言われていくらか安堵する。
「ではそうだな……。戦闘訓練をしようか」
聞くとここいらの地方は野の獣をはじめとした様々なモンスターが跋扈し、その依頼も絶えないという。
ケモノと聞いて目を輝かせた彼に不審な目を向けつつ、ロミアスは「古い弓だが譲るから装備して使ってみてくれ」と渡そうとした。
「ケモノに武器なんぞ使えるか!」
「ではどうするのだ? 武器を使わずにモンスターを――」
「もちろん素手でやる。でないと愛撫も出来ないからな」
呆気に取られたロミアスは、「と、とにかく訓練用のモンスターを召喚するぞ。危なくなった時のために、一応治療薬を渡して置こう」と【軽傷治療】のポーションを渡した。
彼が受け取ったのを確認すると何やら呪文を唱えた。
すると、源蔵を取り囲むように三匹の白いあぶく玉のようなものが現れた。
「あはぁ、あぶくちゃんだぁ♪」
彼は見るなりよだれを垂らさんばかりに喜んだ。
その様子を見て引いたロミアスだったが、「こいつらは【プチ】という下等モンスターでな。初心者の訓練用には持って来いだから倒して――」と言いかけ、いきなり彼が背後に回ったのを知って怖気立った。
直後、身動ぎするより早く胴を抱えられたまま持ち上げられ、背中側から地面に落とされた。
つまりプロレス技の一つである、〈ジャーマン・スープレックス〉というやつである。
「ぐえっ!?」
蛙が潰されたような声で後頭部を打ち付け、そのまま尻を天にした無様な格好で気絶したロミアス。
それを見たラーネイレは、「あ、貴方なんて事をするの!?」と慌てた。
「こいつらを倒せなどと言うからだ!」
鼻息荒く言い放った彼は、「あぶくちゃん、良い子でちゅね~~♪」と満面の笑みでプチに駆け寄った。
「いきなり近寄ったら危な――」
彼女の制止も聞かずに抱き付くようにして一匹に飛び付いた源蔵は、相手が暴れるのもお構いなしにあちこち撫で回し始めた。
面食らった相手は逃れようとしたが、愛撫するかのように撫でられている内に、仕舞いにはうっとりと身を委ねるようになってしまった。
「……。驚いたな」
ラーネイレに介抱されて気が付いたロミアスは、他の二匹もそうなったのを見て驚愕を通り越して呆れていた。
「俺の夢は、ペットショップをつくる事だからな!」
「ペットショップ……。何だそれは?」
愛おしそうに三匹を撫でながらそう言った彼に、ロミアスは困惑した表情で聞いた。
「動物と共に暮す事の素晴らしさを人々に伝えて、共感した者にうちで飼い馴らした動物たちを売る職業の事だ」
「確かに、『ペット』と称してモンスターを連れ回す冒険者は多いけれど……」
「なにぃ!? ここにもペットを飼っている者がいるのか!?」
ラーネイレの言葉に、嬉しそうにそう返す彼。
「あの状態が貴方の言うものと同じなのなら。でもあくまでも戦闘でのサポートや、個人の趣味での事よ。中には壁としてわざと犠牲にする者も――」
「許せえぇ~~~ん!!!!」
源蔵はいきなり叫んで憤った。
「愛する動物たちを犠牲にするだとぉっ! そんな輩はジャイアントスイングだっ!!」
何の事だか分からなかったが、二人はこの人物がかなりの動物好きなのだという事だけは理解した。
「……まあ、無事に意識が戻って良かったわ。貴方を最初に見た時は、もう手遅れかと思った程だもの」
「あぁ、それについては礼を言う。助けてくれてありがとう」
「私達は【ヴィンデールの森】からの使者。公正なる【ジャビ王】と謁見し、森と【エレアの民】に降りかかる疑惑を晴らすために、【王都パルミア】に向かっているの。でも貴方の目的が決まっていないのなら、南の炭鉱街【ヴェルニース】に行くといいわ。貴方の探しているものが、見付かるかもしれない」
そう告げた彼女はロミアスを促すと、彼を介抱していた洞窟から去って行った。
洞窟内をくまなく調査してみた彼は、壁を掘って拡張したらかなり広く出来るのではないかと考えた。
ならば当分の間はここで暮らし、資金の目途が付いたら人通りの多い場所で店を構えようと決めた。
丁度恐らく死体になっていた元の住人が自分で住みやすいように壁の一部を加工したり、家具などを置いたりしていたため、少し後ろめたかったがそれを使う事にした。
「あぶくちゃんたち、良い子にしてるんでちゅよ~~」
死体を埋葬していざ外に出ようとすると、どこからか鈴の音のような音が聞こえ――。
「やあ、君が新しくやって来た冒険者だね。【イルヴァ】の世界、〈シエラ・テールの時代〉にようこそ!」
唐突にそう言いながら目の前に現れたのは、ポケットに入るような小さな人の背中に、透明な虫の羽根が付いているような生き物。
俗に言う【妖精】というものである。
「……俺は【冒険者】とかいうものではない。レスラーだ」
面食らいつつもそう答えると、相手は不思議そうに首を傾げてからこう言った。
「ボクは案内人、ガイドの【ノルン】。君の旅の手助けをするのがボクの役目だ。必要な時には助言をするよ。よろしくね」
無邪気そうな顔で笑った相手をじろじろ見ていた彼は、それきり興味を無くして歩き出した。
「あ、無視しないでよぉ~~」
慌てて付いて行こうとしたノルンに対し、「付いて来るな!」と脅す。
「だってお前ケモノ要素が全く無ぇじゃん。そんな奴に付き纏われるの嫌なんだよねぇ。だから付いて来ないでくれるかなぁ」
「そんなぁ……」
スタスタと歩いて行く背中を見ながらしょぼんとなったノエルは、取り敢えず今の所は消える事にした。
冒頭の部分はアニメの第一話、後はelonaのシナリオに基いております。
話(アニメ)にある通り源蔵の夢はペットショップをつくる事なんですが、elonaにも「ペットシステム」というものがあり、「支配」の魔法や「支配の杖」などを使うと(自分の魅力次第ですが)どんなに手強いモンスターやストーリーに絡む登場人物までをも「ペット」として連れ回す事が出来ます。
このペットシステムを私もよく利用していましたので「面白いんじゃね?」と思ったんです。
なお、この話を書くためにelonaで「源蔵」を作成し、実際にプレイして内容を確かめながら書いています。
おまけ↓
【挿絵表示】
今年書いた年賀状。