もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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街道を歩いていると序盤でも行商人が声を掛けて来る事があるのですが、とても手が出せる金額ではないです。
私も良い装備を扱っているのに買えなくて、泣く泣く諦めた事がありました。


行商人×冒険者?

 

 

 

 気ままにてくてくと歩みを続けていた源蔵に、前から近付いて来た者が話し掛けて来た。

 どうやら行商人らしく、「武具を売っているので買わないか?」と言われた。

 武器を装備する気はさらさら無かった彼だが一応品揃えを見てみると、長槍、羽根付き帽子、防護外套、【スカルボウ】と呼ばれている骨を加工した弓を扱っていた。

 

「これは☆付きの上物ですよ」

 

 そんな事を言われて長槍と外套をすすめられる。

 が、いかんせん高い。

 彼が何も反応しないのを見て渋っていると思ったのか、行商人はこんな事を言って来た。

 

「もし高いと思って出しそびれているのなら、腕で勝負しても良いんですぜ?」

「ほぉ……」

 

 不敵に笑ったその顔に、源蔵はニヤリと笑って答えた。

 

「お、その顔はやる気ですな?」

「面白い。受けて立ってやろうじゃん」

 

 嬉しそうに指を鳴らしはじめた彼だが、相手が剣を構えたのを見て「おい待て待て!」と慌てる。

 

「丸腰相手に剣で挑むのは卑怯だと思わんか!?」

「……。それもそうだな」

 

 思い直したらしい相手は鞘に納めて素手で構えた。

 

「良し来いっ!」

「おりゃあぁ~~~っ‼」

 

 声を掛けた途端に吠えながら向かって来た相手を受ける。

 拳が思い切り頬に当たったが、彼はビクともしなかった。

 

「……ほぉ、良いパンチしてるじゃねぇか」

 

 吹っ飛ぶどころか怯みもせずにそう言って笑った彼を見て、相手は驚愕の表情になった。

 

「次はこっちだあぁっ!」

「ごふうぅっ!?」

 

 腹に拳を食い込ませると、相手は空気を吐き出しながら吹っ飛んだ。

 ちょっと飛び過ぎでないかい? などと思っていると、「なんのおぉっ!」と起き上がって向かって来た。

 

「ほれ胴ががら空きだぞ」

「ぐはあぁっ!?」

 

 体を低くして滑り込ませ、肩で押し上げながら相手を反転させて、担ぎ上げる。

 

「せ、背骨が折れるうぅ!」

「どうだ降参か?」

「な、なんのぃてててて! 分かった降参するごめんなさい放して死ぬぅぎゃあぁ~~」

 

 上で大騒ぎしているのをようやく下ろしてやると、相手は涙目で「もうお金いらないから好きな物をもってって……」と訴えた。

 

「いや買う気は最初から無いよ。良い試合だった。ありがとな♪」

 

 勝利のゴングが打ち鳴らされた空耳を聞きながら、源蔵は尻餅を付いた状態の相手に握手を求め、笑って去って行った。

 

 

 

 その後も行商人には度々会ったが先程の者のように〈試合〉をしてくれる者はいなかった。

 何故なら最初のパンチで相手が戦意を消失してしまう者の方が多かったからである。

 しかし一度応えてくれた者がいて――。

 

「ちょっと待て! 武器使うとか卑怯だろっ!」

「問答無用だあぁっ!!」

 

 なんとか躱していたが追い詰められ、後が無くなる。

 

「ほれほれ、止めを刺してやろうかぁ?」

「このおぉっ……!」

「ククッ、終わりだな。覚悟しろぉっ!!」

 

 そう言って振り被ったのを見た彼は、素早く屈みつつタックルした。

 そのまま持ち上げ、背中から倒れ込むようにして背後に落とす。相手は尻をしたたかに打ち付けた。

 

「ふうぅ、危なかった……」

 

 気絶してくれたのを見て、ようやく安堵の溜息を吐いた源蔵であった。  

 

 

 

 




実際はこんな生易しいものではなく、かなり鍛えてないと瞬殺されるぐらい行商人は強いです。

あ、ちなみに最初に会った行商人は、実際に私がゲーム内で会ったものを基にしています。
なので扱っていた武具もその時に見せてもらったものです。
もちろん買わずに別れましたともっ(涙)

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