もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
普通は人間側の関与は一切出来ないのですが、源蔵さんの場合はこうなります(笑)
アリーナに入ったついでに見学していた源蔵に、「ペットを戦わせてみないか?」と声を掛けた人物がいた。
『ニノ』と名乗った彼を見るなり、源蔵はにへらぁ、と笑いながらいきなり抱き付いた。
何故なら彼が獣人だったからである。
「ちょっ! 何をする!?」
「もふもふぅ♪」
「もふもふではないっ! 私はこらやめろそんなとこ撫でるな! あ、あぁあ……」
まるで動物が服従をするかのようなポーズで弛緩してしまった彼を見て、堪能した源蔵はようやく口を開いた。
「……で、何だって?」
「だ、だからペットを戦わせてみないかってさっき……」
「ペットって、もしかしてひろゆきの事を言っているのか?」
「他に何がいる」
「ひろゆきは相棒だ。ペットではないっ」
「……。どうでも良いけどとにかくそいつを戦わせてみないか?」
「要するに、ペットを闘わせるアリーナがある、という事か?」
「そういう事だ。私はその【ペットアリーナ】の主催者だ」
ちなみに人間対モンスターで闘う普通の【アリーナ】がある街は多いが、ペット対モンスターで闘うペットアリーナというのはここ【ポートカプール】にしか無いとの事。
「そんなのペットが可哀想じゃん」
「おかしな事を言うな。鍛えたペットを闘わせる事は、結構盛り上がる催しなんだぞ? その証拠に普通のアリーナは闘う者の配慮として一日一回だけ、という制限があるが、ペットアリーナの場合は飼い主の気が済むまで何度でも闘わせる事が出来る」
「じゃあさ、俺が出るよ」
「話を聞いていたのか? このアリーナはペット専用で――」
言い掛けたニノは口を開けたまま固まった。
聞きながらバックパックをごそごそしていた源蔵が、ケモノを模したマスクを取り出して被ったからである。
「これなら文句はあるまい?」
「いやそういう問題じゃなくて――」
「ならば今から俺はペットだ。わんっ、わんわんっ」
そう言いながら四つん這いになって吠え始めた彼を見て、ニノは完全に引いた。
「わわ分かった! それで良いからやめろ恥ずかしい」
そうして彼は、ペットアリーナのモンスターと闘う事になった。
華々しくファンファーレが鳴り響き、溢れんばかりの観客席から声援が飛ぶ。
そんな喧噪を掻き消すように、実況者はこう絶叫した。
「赤ぁ~コーナーぁ。198ポンドぉ、ケモナーあぁ~マぁ~~スクぅ!!」
いつもと違う実況に最初は戸惑ったようにざわざわ言っていた観客たちだったが、源蔵が『ケモナ―マスク』として登場するや、割れんばかりの大声援を送った。
彼らは獣人だと思っているのか、それとも単なる変態だと思っているのか、とにかくガタイの良い男が構えたのを見て何か面白い事が起きると思っているらしい。
何故こんな実況になったかというと、源蔵が「こっちの方が盛り上がるから!」と無理矢理頼んで変えさせたからである。
「続いて青ぉ~コーナーぁ。レベル3相当ぉ。飛びいぃ~~がぁえぇ~るぅっ!!」
対面にやって来たのは【飛び蛙】と呼ばれている、蛙に翼の生えたようなモンスターであった。
「あはぁっ、空飛ぶカエルちゃんだぁ♪」
源蔵はマスクの下で涎を垂らさんばかりににやけた。
「始めっ!」
試合のゴング(これも空洞の金物を鳴らすように彼が頼んだ)が鳴り、観客のボルテージも最高潮になった。
が、決着は呆気なく付いた。
飛び付いて来た飛び蛙を組み敷いた源蔵が、撫で回してあっという間に手懐けてしまったからである。
「こんなのインチキだ! 殺せ!」
「そうだ血を見せろ!」
たちまち周囲や上からブーイングが降り注ぐ。
それでも彼は平然と、飛び蛙を愛撫しながらアリーナを出て行った。
だがどんなモンスターでも手懐けてしまうそのテクニックが評判になり、その内【ヴェルニース】で流行っていた『魔物殺し』の通り名を持ち込んで来た者がいたりして、源蔵はここでも『ケモナ―マスク』もしくは『魔物殺し』として話題になったのであった。
普通のアリーナでも参加すると、観客から「殺せ!」だの「血を見せろ!」だのと物騒な言葉を掛けられます。
一応ゲーム内でペット(犬)を闘わせてみて、「レベル3相当のモンスターだよ」と言われた時に出て来た「飛び蛙」を話の中に登場させております。
「前書き」にも書いた通り、実際には人間側は一切関与出来ませんので。
この時は勝てたんですが、「レベル7相当だよ」と言われたモンスターにはことごとく負けてました。
あ、実況者が紹介していた「198ポンド」というのは、アニメで言っていた彼の体重です。