もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
この男にかかれば……ってやつです。
この街即ち【ポートカプール】には「女の敵」と噂されている男がいた。
つまり女たらしで有名な男らしく、「もう並みの女には興奮しなくなった」などと豪語しているくらいなんだとか。
そんな男が、何故か源蔵に声を掛けて来た。
「おいそこのお前」
「……。誰だ?」
「俺を誰だか知らないだと?」
男は馬鹿にしたように鼻を鳴らすと勝手に自己紹介を始めた。
「この街で一番の色男、『ラファエロ』様だよ。俺が狙った女は、例えパルミアの王妃だろうとイチコロさ」
そういやどこかで【パルミア】という言葉を聞いた事があるな? などと考えている内にも話は進んで行く。
「だがな、最近はどうも恋の駆け引きみたいなのに、飽き飽きしちまった。本音をいや、無条件で俺に仕えてくれる女が欲しいんだよ」
男はそう言うと、「そこで話がある」と秘密めいた顔で彼がいつもたむろしている馴染みのバーに源蔵を連れ込んだ。
そうして傍らにいるひろゆきに向けて顎をしゃくると、耳元に口を寄せてこんな言葉を囁いた。
「で、お前の嫁を俺によこさないか? 礼はするぜ」
「ふざけるなあぁ!!!」
途端に吠えた源蔵は、男の背後に回り込んだ。
「まあそんなうまい話は無いよなぅえぇっ!?」
そんな事を呟いていた男は、途中で素っ頓狂な悲鳴を上げながら持ち上げられ、そのまま背後に落とされた。
彼が大抵同じ場所で飲むカウンターの、椅子の近くの床が轟音と共に沈む。
彼即ちラファエロは、割れた石床の中にめり込んだ。
「ふうぅ……」
息を吐いた源蔵は、そのまま尻を天にした状態で気絶している彼を無視してバーを出て行った。
その場にいた客とマスターは余りの事にしばし凍り付いた。
が、特に女性側から称賛の声が上がったのを見ると、やはり噂通りに相当敵を作っていたに違いない。
しかし彼はこれで懲りる事もなく、ペット連れの通りすがりや冒険者を捕まえては交渉しているという。
しかもそれは人間に及ばず、どの種族に対しても有効なのだという。
更には男女の性別すら関係なく募集しているのだとか。
ただし、「嫁でなくてはならない」という条件があるらしく、結婚せずにただのペットとして連れ回している程度だと納得しないとか。
その噂を嫌悪の眼差しで聞いていた彼ではあったが、この世界ではお互いに愛し合うなら性別どころか異種間に関係なく結婚が出来るという事を聞いた途端、ひろゆきと結婚しようかなどとよからぬ事を考えた。
「い、いやいや確かにひろゆきと俺は相思相愛の仲だが、いくらなんでも結婚はねぇだろう!」
この世界に馴染んで来たとはいえ、その線は超えてはならないと考え直した源蔵であった。
このサブクエストで「嫁」を渡してしまうと、どんなに愛していようが貴重な武具を身に着けさせていようが武具事取られて二度と戻って来なくなります。
しかも何度でも出来るクエストなので、知らずに渡してしまうとえらい事になります。
ですが貰えるアイテムが超貴重な物の一つだったりもするので、利用した冒険者は少なからずいるはず。
ちなみに種族(人間か否か)によって、カルマの変動があるそうです。