もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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ここからいよいよゲーム本編のシナリオに絡んで来ます。


レシマス×運命の鼓動

 

 

 

 そこは、灰色の岩肌が特徴の洞窟だった。

 その入り口に立った源蔵は、何故か運命の鼓動を感じた。

 

 

 【ネフィア】探索の一環として訪れたその洞窟は、【レシマス】と呼ばれていた。

 なんでも地殻変動でも地中に消えずにずっと昔からその場所に有り続け、階層も相当深いのではないかと言われていた。

 その特徴からか「ここには神器にあたる程のお宝が沢山眠っているに違いない」という噂が立ち、数多の冒険者が訪れる事でも有名なんだとか。

 だが意気揚々と潜ったきりそのまま行方知れずになる、という事も珍しくないのだという。

 

 一応覚悟を決めて入った彼であったが、出て来る魔物たちは今までで他のネフィアで出会って来たものと変わらない。

 どんな特殊な奴がいるんだろうと少しだけ怖がっていたのに、なんだか拍子抜けだなと思った。

 

 

 

 それは、地下三層あたりに潜った頃だったろうか。

 

「……そこの御人……頼みが……頼みがある……」

 

 そう言って苦し気な様子でよろめきながら、奥の方から向かって来た男がいた。

 途中で倒れた彼に慌てて駆け寄り、助け起こす。

 『パルミアの影スラン』と名乗った男は、素人目でももう助からないだろうと思われる程全身血塗れになっていた。

 それでも彼は、喘ぎながらも必死でこう訴えた。

 

「……私はパルミアの斥候……王の命令でレシマスに潜んでいた者だ……。詳しく説明する体力は……私には……もう残っていない……」

 

 スランは息を継ぎ、続けた。

 

「……ジャビ王に……この書簡を……届けて頂きたい……二つの大国の衝突を……シエラ・テールの……危機を……防ぐために……」

 

 呻いたスランは、それでも力を振り絞った。

 

「貴方を……信じる以外にもう希望はない……私の所持品は……自由にして構わない……どうか……この知らせを……パルミアに……」

 

 そうして、それを最期に静かに息絶えた。

 

 

 源蔵は、沈痛な面持ちのまま彼を抱え、【脱出の巻物】を読んだ。

 このまま放って置いて、魔物に食われるのだけは阻止しようと思ったのだ。

 ここはどの街からも遠いため、抱えたまま旅をする訳にはいかない。

 ネフィアの近くで埋葬しなければならなくなったのは口惜しかったが、なるべく柔らかく、かつ魔物に見付かりにくい場所を選んで掘り、埋めた。

 所持品は好きにしろと言われたが、他人、しかも死人の所持品を漁る気にはなれないので、一緒に埋める。

 しばらくの間瞑し、その場に留まった彼は意を決したように顔を上げ、【パルミア】を目指して歩き始めた。

 

 いかにヒトには興味の無い彼であっても、死に際に望んだ者の願いは叶えさせようと思った。

 

 

 

 王都パルミアは、高い外壁に周囲を囲まれた堅固な街だった。

 今まで見て来たどの街よりも広く、こんな広大な街を囲む程の壁を造らせる程の財力を、ジャビ王は持っているんだなと思われた。

 だが通りを歩くと市民よりもむしろ貴族と思われる立派ないで立ちの者が多く、商店も数多く品物が取り揃えられてあって賑わっている事を考えると、自身の権力に物を言わせて庶民から無理矢理税金をむしり取る、というような独裁政治をしているようには思えなかった。

 

 

 立派な門構えの城の前で躊躇していると、門兵に呼び止められた。

 理由を話すと「ではこちらで吟味する。しばし待たれよ」と書簡を持って城の中に入って行った。

 

 一時間程待ったろうか。

 門兵よりも立派な鎧を着た兵士が出て来てこう言った。

 

「王自らの謁見を賜るとの事。ついてまいれ」

 

 豪奢な造りの謁見室で畏まっていると、少し経ってからジャビ王が現れた。

 

「面を上げよ」

 

 厳格な声がして少しだけ顔を上げる。

 王妃と思われる女性も、隣の椅子に座っていた。

 

「源蔵とやら、大儀であった」

「ははぁっ!」

 

 かしづくと家来が褒美を持って来た。

 恭しく受け取ると、王は満足そうに頷きながらこう言った。

 

「今の時制、信頼に足る者の剣を遊ばせておくのは惜しい。もしパルミアの元で働く意志があるのなら、城の図書室にいるエリステアを訪ねるがよい。十分な報酬と名誉を約束しよう」

 

 深々と礼をして下がった源蔵は、考えあぐねた。

 というのも報酬は美味しいと思ったが、名誉なんぞはまったく望んでいなかったからである。

 しかし一応話だけでも聞いてみようと図書室を訪ねる。

 城内が広過ぎて迷ったが、観音開きの大きな扉に《図書室》と書いてある所をようやく見付け、やれやれと押す。

 

 本に囲まれて難しい顔でブツブツ独り言を言っている女性に遠慮がちに声を掛けてみると、ビックリしたように顔を上げてから「あなたがゲンゾーですね」と明るい顔になった。

 

「使いの者から聞いています。私はエリステア、ネフィア迷宮群の研究に携わって来ました。今は王の命によりレシマス調査隊の副長を務めていますが、洞窟に眠る多くの謎と危険な魔物の存在のために、調査は思わしく進んでいません。あなたのような冒険者に力になってもらえると心強いです」

「……その『危険な魔物』というものの中には、ケモノも沢山いるのか?」

「? 心意がよく分かりませんが、毛の生えたものも多く確認されています」

「そうかぁ、そうなのかぁ♪」

 

 途端ににやけ顔になった彼を見て、彼女は引いた。

 

「……。それで、お力になってもらえるのでしょうか?」

「良いとも。力になろうではないか!」

 

 ホッとした顔で「よかった」と言った彼女は、「こんなことを言っては悪いけれど」と少し声を潜め、こんな風に続けた。

 

「城の兵士達は機転に欠けていて、調査にはあまり役に立ってくれなかったの」

 

 それから事務的な顔になり、説明し始めた。

 

「私達の目的は、レシマスを探索し、最下層にあるといわれる《秘宝》を持ち帰ることです。《秘宝》の正体とレシマスについての研究はある程度進んでいます。一度に言っても覚えられないでしょうから、必要があればその度に聞いてください」

「分かった」

「最初の仕事として、あなたにはある人物の探索をお願いします」

「人探しなら他所の冒険者に――」

「男の名は《カラム》。あなたと同じように、彼もレシマス探索の協力を買って出た屈指の冒険者です。調査隊の情報源として少なからず貢献をしていました。しかし――」

 

 源蔵の発言を無視して話を続けていた彼女は、急に顔を曇らせて「彼からの音沙汰がこの数週間まったくないのです」と零した。

 そう言われるとスランを看取った手前、断れなくなった。

 

「あなたの任務は、レシマスに赴き、《カラム》との接触を試みることです。彼から最後に連絡があったのは、レシマスの16階。おそらくは、より深層に探索の手を広げているでしょう。彼の足取りをつかみ、私に報告してください」

 

 こうして彼は、レシマスのより深層に潜らなければならなくなってしまった。

 

 

 

 

 




「Elona」というゲームは自由度がとても高く、従って「レシマス? なにそれおいしいの?」と本編そっちのけでゲーム世界を楽しんでいる冒険者も多いのですが、一応シナリオがある以上は本編に関わらせなければと思いまして。
なので「真面目な話」になってしまいました。

あ、話の中では「城内が広い」という事になってますが、実際のパルミア城は王都と一体化したような造りになっているので小ぢんまりとしています。
なので迷う事は無いです(笑)
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