もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
「ところで、レシマスってさ」
源蔵がそう言い掛けた途端、エリステリアは「知りたいですかっ!?」と目を輝かせた。
「い、いやそんなには――」
「ネフィアの迷宮群の一つレシマスは、パルミアの歴史と大きな関わりがあります」
エリステアは苦笑いする彼を無視し、嬉々として説明し始めた。
「エウダ―ナがレシマスの秘宝により繁栄を約束されたように、第三代の王ザシムとその従弟ゼームもレシマスの秘宝を求め、調査隊を繰り出していました」
「…………」
「そしてある日、ついに調査隊の朗報を受けた王と従弟は、レシマスの最下層に赴き、秘宝の眠る部屋へと足を踏み入れたのです……」
そこで溜めを作ってから、彼女は「しかし数刻の後、部屋から出て来たのはザシム王一人だけでした」と臨場感たっぷりに言った。
「ザシム王は側近にこう言ったと伝えられています。『それは強き者の手の内では決して輝くことはない。弱き者の手の内では黄金のごとくまばゆいが、その輝きを他の者に見せることはできない。この秘宝は、常闇の中で永遠に眠っているべきものなのだ。直ちに部屋を封印するがよい。従弟はもはや帰っては来るまい』」
「…………」
「秘宝が眠る部屋は魔術により封印され、封印の鍵となる三つの魔石は、それぞれ最も強大で邪悪な存在の元に送られたといいます。魔石の真の価値は知らさずに」
「…………」
「以来、パルミアの代々の王家は、ザシム王の意思を引き継ぎ、洞窟にはもう何もないかのように、他の国々の目を叛いてきたのです」
彼女の説明はヒートアップし、かなり熱を帯びた芝居がかったものだったのだが――。
「…………んがっ」
「……。もしかして、寝てました?」
「……んあっ? いいやぁ、寝てねぇよ?」
「もういいです」
拗ねたエリステアがそっぽを向いたので、源蔵はもう講義が終わったものとみてあくびをしながら図書室から出て行った。
城を出て準備をしようと商店を覗いていると、遠くで緑髪の男と緑がかった水色の髪の女という組み合わせの、二組のエレアが歩いているのを見掛けた。
その殊の外美しい女の顔に、どことなく見覚えがあった。
確か洞窟で介抱してくれたエレアではなかったか?
そう思った源蔵ではあったが、人違いだと恥ずかしいので声を掛けるのはやめておいた。
もし違っていなかったにしても、皮肉屋の男の方に何某かの嫌味を言われるに決まっている。
そう思うと余計に関わらないでおこうと彼は思った。
「さて、深く潜るんだったら食料と調理道具と寝袋と……」
色々覗いて見繕ったが希望の品が置いていない場合もあった。
その間魔物討伐依頼(もちろん殺さずに撫で回すだけ)を中心に受けて入荷を待っていたが、中々入って来ない。
「他の街も、当たってみるか……」
【ノースティリス地方】全体が載っている地図を見ると南の方に【ヨウィン】があり、そこが【パルミア】から一番近い街だという事が分かったが、東に足を延ばせば【ルミエスト】という島から橋で繋がっている場所がある事が分かった。
まだ行っていない街を見付けた源蔵は、そこへ行ってみようと思い立った。
二人のエレアはシナリオに絡んでは時々顔を出して来るのですが、源蔵さんとは重傷で倒れていた彼を捨て置けずに洞窟に運んで介抱した、という以外は(少なくともこの話の中では)直接関わりの無い人物達ではあるんですよ。
ですが、ゲーム上は重要人物になっておりますので、「すれ違う」程度に登場させようと思いました。