もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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出発前に、一仕事頼まれたようです。


少将×困り事

 

 

 

 王都を出る前に、源蔵は「そこのおぬし、良いところに来た」とある者に呼び止められた。

 

「実は困ったことになっておってな」

 

 困り顔で彼を呼び止めたのは『コネリー』という、ハゲ頭だが髭だけは立派に蓄えている、強面の人物。

 彼は少将の位に就いており、城でもエリステアや部下と思われる兵士と話しをしているのを見掛けていた。

 

「実はヨウィンがミノタウロスの軍による侵攻の危機にさらされておるのだ。ヨウィンの村長とは親しくしておって、一軍を討伐に向かわせたいのだが、今は何やら不穏な空気がパルミアを包んでいる。城から離れるわけにはいかないのだ」

 

 彼は一旦言葉を切ると、信頼を託すというような目をして源蔵を見、こう続けた。

 

「そこで、冒険者のおぬしに依頼したい。ミノタウロスを退治してきてはくれぬか? 報酬はもちろん用意しよう」

「【ミノタウロス】って、要するに牛頭の獣人の事だよな?」

「そうだ」

「牛……」

 

 小さく呟いた彼を見て、コネリー少将は「どうした、牛は苦手か?」とやや心配そうに聞いた。

 だが彼の杞憂は直後に砕かれた。

 

「角はおっかないけどぉ、つぶらな瞳をしてるんだろうなぁ♪」

 

 よだれを垂らさんばかりのにやけ顔を見て、彼はダメだコイツと思った。

 

「……。この話は、無かった事に――」

「いいや俺に任せてくれ!」

「おぬしはこれからルミエストに行くのだろうが。そこの売り子が言うておったぞ」

「すぐ近くだからあんたも頼もうと思ったんだろぉ?」

「そうだが、命懸けの仕事をそんな顔で受けられてもだな……」

「だいじょーぶ! ミノタウロスなんぞ俺の手に掛かればちょちょいのちょいってね♪」

「……そ、それは頼もしい。では、よろしく頼む」

「おうっ! 任せな」

 

 

 

 ヨウィンの南に巣があると聞いたのだが、実際はすぐ南ではなく半島から橋を渡って回り込んだような地形の所だった。

 外見が塔のようになっているそこへ入ると狭い通路が入り組み、暗いのもあってかなり見通しが悪い。

 そしてその暗がりや通路の死角から、主にミノタウロスの仲間が次々に襲い掛かって来た。

 

「牛ちゃん、やんちゃはメッ! ですよぉ」

 

 源蔵は襲われる度に躱し、牛の急所(弛緩する所)を撫でては移動した。

 複雑に入り組んだ地形は迷い、地下に下りる階段を探すだけでも一苦労だった。 

 

 

 五層あたりまで潜った頃、重低音の吠え声を響かせながら、通路を破壊しつつ真っ直ぐ向かって来た奴がいた。

 そいつは朱色の体色のミノタウロスで、今までに見て来たどのミノタウロスよりも大きく、筋肉質な体躯をしていた。

 

『ブモオォ~~~!!!』

 

 手に持っていたのは巨大な戦斧。柄の両側に幅広の斧が二つ付いたような物を振りかざし、愚直に切り掛かって来る。

 その威力は絶大で、躱しても余波だけで吹き飛ばされた。

 しかも手下であるはずの他のミノタウロスを巻き込んでもお構いなしに突き進んで来る。

 通路も含め、まるで我が前には障壁など一切無いとでも言いたげに。

 

「かっけぇなぁお前!」

 

 源蔵は素直に感動した。

 

「すげぇ! こんなに強ぇから屈強なミノタウロス軍の頭やれてんだなぁ!」

『……ブモ?』

 

 怖がるどころか逆に感激して近付いて来る源蔵に、「彼」は困惑した。

 思わずたじろぐと、彼はこう言った。

 

「今度さ、一緒にアリーナに出てくれよ。タッグマッチしようぜ!」

『ブ、ブモ……』

「おぉ、良い筋肉してんなぁ! やっぱ俺とタメ張る奴はこんくれぇじゃなくちゃなぁ」

 

 無遠慮に体を触りまくる源蔵。だが褒められて悪い気はしないのか、「彼」は照れ臭そうな顔になった。

 

「お前、名前なんだ? 言葉分かるか?」

『……ウンガガ』

「よしウンガガ。俺とタイマンで勝負しろ!」

『モ?』

「お前らヨウィンで悪さしようとしてたんだろ? だから俺に勝ったら好きにして良い。だが負けたら今後一切人間には悪さしない事」

『ゥモ……』

 

 低く呟いたウンガガは、巨大戦斧を振り回して通路を壊し、わざわざ場所を作ってくれた。

 

「良し来い!」

『ブモォッ!!』

 

 気合と共に正面からぶつかり合う両者。

 鈍い音と共に力比べが始まった。

 

「ほれほれどうした。押されているぞ?」

『モモ……ッ!』

 

 組手のままずるずると押されて行くウンガガ。

 だが手下の声援を受けて盛り返した。

 

「おぉやるなぁ。んじゃこれはどうだ?」

『ウモ!?』

 

 組手から体を返して移動しつつ後ろへ。背後から胴を抱え――。

 

「どぅりゃあぁ~~~!!!」

『グゥモオォ~~~!!!』 

 

 踏ん張っていたウンガガだったがとうとう持ち上げられ、後頭部から落とされた。

 

「俺の勝ちだなっ!」

『グ、グモ……』

 

 項垂れながら立ち上がったウンガガを見て、手下たちは心底残念そうな顔をした。

 

 

 

「おぬしか、待っておったぞ」

 

 パルミアに帰ると嬉しそうに迎えてくれたコネリー少将は、「報告はいい」と制しながらこう言った。

 

「すでに、ミノタウロスの王を倒した英雄のことは、この耳に伝わっておるわい。わしの感謝の印だ、受け取ってくれ」

 報酬として渡されたのは金50000枚とプラチナ硬貨4枚。そしてアダマンタイトという素材になる素材鎚だった。

 

「アダマンタイトは武器に使うと最高峰の威力になると言われている。《神器》の物を持っているならこれで変化させるといい」

「ふぅん」

 

 武器を持つ気はさらさらなかった彼ではあったが、せっかくなので貰って置く事にした。

 気を良くした少将に「どうだ、わしの部下になる気はないか?」とまで言われたが、丁寧に断ってルミエストに出発する。

 

 彼は残念そうな顔をしたが、快く送り出してくれた。

 

 

 

 

 




話の中では簡単そうに倒してますが、そもそも手下のミノタウロス自体が強敵であり、狭い通路で挟まれたり魔術士の魔法や呪いで攻められたりして攻略自体が一苦労になるサブクエストです。
しかもそんな苦戦が必須のミノタウロス軍に囲まれた上で「ウンガガ」と対峙しなければなりません。
「彼」の武器★《破壊の斧》はクリティカル率に優れ、(彼自身の技量もあって)当たるとクリティカルになる、という程バンバン高ダメージを叩き出す代物なので、出会ったが最後即死させられる、という事も珍しくありません。
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