もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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今回の話は、もしかしたら源蔵さんらしくないかもしれません。


下水道×清掃を使命とする者

 

 

 

 目的のものが買えたので、源蔵は【帰還の巻物】で直接レシマスへ向かおうとバックパックを漁った。

 ここはレシマスからかなりの距離が開いており、ここに向かうならば直接巻物で飛んだ方が良いと予め思っていたからである。

 というのもエリステアに今現在どこまでの階層に達したかという事を報告した時、「ではその場所に帰還ポイントを作りますので、次からはそこから調査を進めて下さい」と言われたからである。

 以後深層に潜る度に新しくその時点での帰還ポイントを作り直すので、常に今時点での階層を報告してくれと言われている。

 レシマスはとにかく深いためにいちいち入り口から潜り直す手間を省くのと、帰還ポイントは一ヶ所しか作れない関係で新しく作る度に今まで作っていたポイントが消えてしまうため、こういう仕組みにしているとの事。

 

 さて巻物を取り出していざ読もうと広げると、「待て待て待てーい!」とやたら威勢の良い声が掛かった。

 何事かと振り向くと、赤いティンガロンハットに派手なシャツ、ジーパンにウエスタンブーツといういかにもウエスタン映画に出て来そうな格好をした、金髪に緑の目の男がいた。 

 

「俺はルミエストの清掃を生涯の使命とし、この道十年のベテラン掃除屋バルザックだ。街道に落ちているどんな小さなゴミも見逃さないプロ魂を持つが、そんなプライドも傷つけられちまった。下水道にとんでもない化け物が住みついて、もう俺の手には負えないぜ」

 

 勢い込んで一方的に捲し立てる男に呆れ、鼻の下の八の字髭が口の動きに合わせてもにょもにょ動いているのを眺めていると、「お前なら、俺の気持ちを汲み取って、退治に出向いてくれるな?」と言われた。

 

「えー、面倒臭い」

 

 そう返すと「そうか……冷たい奴だな……」と、さっきの威勢はどこへやら、という程落ち込んだ。

 そのあまりの落ち込み様に、一応「そこに、ケモノはいるのか?」と聞いてみる。

 

「獣は見なかったが、顔の付いた茸はいたような……?」

 

 面白いと思った源蔵は、「いいだろう」と答えた。

 

「その言葉、待っていたぜ!」

 

 途端に顔を輝かせたバルザックは、「下水道は宿屋の近くにある。気をつけろ、奴らは手強いぞ!」と注意してくれた。

 

 

 

 下水道へと下りる階段が宿屋の前の方にあったので、そこを下りる。

 と、途端に悪臭が鼻を突き、源蔵は慌てて一旦外へ出た。

 咳込んだり深呼吸したりして落ち着くと、とにかく口を覆う布を……と店に行き、入ろうとして追い返された。

 あまりにも臭かったからである。

 

 仕方がないのでバルザックの家に行き、掃除用のマスクを譲って貰う。

 それでも完全に悪臭を防げるわけではなかったが、無いよりは全然マシだと思った。

 

 

 下水が通っている場所と通路になっている場所があり、なるべく通路を通って行く。

 と、緑色のゼリーの塊のようなものが蠢いているのを見付けた。

 【ヴェルニース】でプチ退治を頼まれた時にスライムに溶かされた事を思い出し、同じものだと遠くから石ころなどを投げてみる。

 するとスライムよりも広範囲に体液が飛び散った。

 

「うあっち!」

 

 大慌てで避けながら倒す。

 それが幾つもいてキリがないので、動きが緩慢なのを見て取り敢えず放置して先に進む事にする。

 

 すると今度はいきなり瓶を投げ付けられた。

 

 慌てて回避して投げた奴を見極めようときょろきょろしたが、見えない。

 見えないのにどこからか様々なポーションが飛んで来る。

 なので避けつつそれを受け止め、投げられたと思われる方向へ投げ返してみる。

 当たって中身が掛かった事で姿を現したのは、【ジャックオランタン】そっくりのカボチャのお化けだった。

 

「おい! それ以上悪戯すると食うからな!」

 

 再び投げようとしたお化けは、その言葉を聞いて大人しくなった。

 他にも何匹かいたようだったが、「お前ら食われてぇかぁ!?」と叫ぶと投げ付けが止んだ。

 

 次に見えたのは顔のある、紫色の大きな茸だった。

 

 バルザックが見たのはこいつだなと珍しがって近付こうとすると、胞子を飛ばして来た。

 近くにも何匹か「生えていた」ため、これは避け切れずに幾つか被る。

 と、彼は混沌状態に陥った。

 すなわち麻痺し、盲目になり、眠くなり、毒になり、混乱した。

 ただし意識はあったため、闇雲に動いて暴れる。

 幾つか悲鳴が上がり、どうやら何匹か吹っ飛ばされたか気絶したかしたようだった。

 そうやってやっつけられたお陰でどうにか状態異常が治まった源蔵は、残った奴も茸狩りのように抜いて放り投げた。

 

 

 バルザックが言ってたように中々手強いなと思いながら進んで行くと、更に手強い奴が現れた。

 

 そいつはヘドロの塊のような奴で、スライムよりも速く近付いて来た。

 スライムの仲間だろうかと石ころを投げてみると、分裂した。

 という事はバブルの仲間か? と今度はそれよりも重い鉱石の破片を投げてみる。

 そうやって逃げながら重い物を投げ付けている内に、増えはしたがどうにかやっつける事に成功した。

 とにかく大きいので狭い通路では逃げられずに挟まれたりしたのだが、直接殴ると取り込まれそうになるので下水に落ちていた棒きれや金属パイプなどの、なるべく素手を使わない方法で倒すしか無かった。

 

 緑のスライムは混沌状態になって暴れ回った時や、ヘドロの塊に投げた物が当たったりして巻き添えになったらしく、それと自身の体液(酸)で溶けたものもいたりしたようで、いつの間にかいなくなっていた。

 

 残ったものは動物のフンや藁、使い捨てのタルなど。

 だがこれらは清掃のベテランである彼に任せようと、外へ出る。

 一刻も早く出たかった彼は、マスクを外すや否や開口一番「くっせえぇっ!!!」と思い切り叫んでから、その吐き出した分の息を取り返すように深呼吸した。

 

 

 歩く先々で顔を顰められ、鼻を摘まんで避けていく人々を恨みがましく見ながら、井戸の水で臭いが落ちるかな? と泣きそうな気分で報告に行く。

 やはり受けなければ良かったと後悔していると、家から出て来たバルザックは心底驚いた顔をした。

 

「なんだってー! あの下水道をほんとに浄化したというのか?」

 

 そして体中から悪臭を漂わせている彼を嫌がりもせずに抱き寄せた。

 

「さすがに、お前を選んだ俺の目は確かだったということか……」

 

 感激して何度も背中を叩き、苦笑いしている源蔵に「ともかく礼をいうぞ! この報酬を受け取ってくれ」と渡して来たのは金15000枚とプラチナ硬貨4枚。

 それと【モンスターボール】という魔物を捕まえるアイテムと【癒しの女神ジュア】の像。

 

「モンスターボールのレベルは30だから、そのレベルまでの魔物なら何でも捕まえられるぜ。それとジュア像はその前で祈ると狂気を無くしてくれる優れものだ。どっちもあって損は無いものだろう?」

 

 得意気に話す彼を見ながら、どっちも飾りとしては使えるかななどと源蔵は考えていた。

 

 

 

 

 




これも「ルミエスト」でのサブクエストの一つなんですが、ケモノ(獣)要素のあるものが全く出て来ないんですよ。
なのでこんな形になってしまいました。

このサブクエはとにかく「南瓜の怪物」「混沌キノコ」「塊の怪物」がやっかいで、見えない南瓜から様々なポーションを投げ付けられて酔ったりステータスを下げられたりしている間にキノコの胞子で混沌にさせられ、混乱しまくっている間に分裂した塊たちに圧し潰されたり広範囲に体液を飛ばす「弱酸性スライム」の酸に焼かれたりしてあっという間に死ぬ、という散々な目に遭わされます。
スライム系も「浮く装備」を身に着けていないと攻撃した際に地面に広がった体液を踏んで溶け死にますし、酸で溶けない武具の無い者は錆びさせられて特に武器を弱体化させられます。

なので、このサブクエに挑戦したければ「錆びない武具」「浮く装備」「透明視のある武具」が必要です。

ですがあまりにもやっかいな魔物が数多く犇めいているため、いちいちそれらを撃破するのが面倒臭いという人は、「ダルフィ」で秘密裏に売られている「核爆弾」を使うという手もあります。
これは普通にやると確実に自分も死にますが、死なない方法(バグ利用ではなく地形を掘って端に設置して反対側の端に逃げるだけ)があるのでレベルが足りなかったり腕に自信が無い人はこの方法で手っ取り早くクリア出来ます。
(ただしカルマが下がるため、低すぎると犯罪者にされますが)

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