もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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最近「長く書きたいのに短くしか書けない病」が私の中に派生しておりまして、大した事書いて無いのに超短くてごめんなさい。


依頼×魔物殺し

 

 

 

 依頼主の畑に案内された源蔵は、魔物は畑の奥からやって来るというので奥にある林へ続く、雑草だらけの茂みを調べる事にした。

 依頼主に「自分も心配だから見張り小屋で見張る」と言われたので、彼に【ひろゆき】を預ってもらって茂みを調べる。

 

 確かに獣道らしきものがそこここにあり、どうやらここを通って畑を荒らしに来るのだろうと思われた。

 調べている最中に茂みが音を立てたので、攻撃性の高いものが現れたのだと身構える。

 

 現れたのは野ネズミや野ウサギだったのだが……。

 

「うわぁ♪ おっきなモフモフちゃんだぁ」

 

 今まで元の世界で見慣れていた、要するにペットに出来るような掌サイズや小さな子供が胸に抱えられるようなサイズではとてもなく、化け物染みた小さいものでも大型犬サイズぐらいなものたちだったのだ。

 しかし彼は一目見るなり恐れるどころか目を輝かせ、満面の笑みを浮かべながら近付いて行く。

 

 依頼主は恐怖した。

 なぜならどうやら武器すら持っていない様子だったからである。

 

 丸腰で無防備に近付こうものなら一噛みで殺されてしまう。

 ここらの野生動物は、それ程攻撃力が強いのだ。

 駆け出しの冒険者がそれ故に、武器を使ってさえも成すすべも無く殺されて行くのを日常のように彼は見ているのだ。

 

 だから、彼もそうなるのだろうなと暗澹した気持ちになった。

 

 ところが嬉しそうに近付いて行った彼は、襲い掛かろうとした【彼ら】を上手い具合に躱しつつ、なんと撫で始めたのである。

 そしてツボを心得ているかのように、始め抵抗していた相手が撫でられている内にうっとりと目を細め、何と成すが儘になったではないか!

 

 これには度肝を抜かされた。

 武器を用いず、しかも一切傷付ける事無く彼は手懐けてしまった。

 

 そうやってはこの日に襲い掛かって来た、恐らく今まで散々畑を荒らして来たであろう全ての魔物を彼は自分の手中に収めてしまった。

 

 そう。まるで女共を虜にしてはべらせるかのように。

 

「あれは女殺しのテクニックと同じだ……。いや、相手は魔物なんだからさしずめ【魔物殺し】というところだな」

 

 依頼主はそう呟いた。

 

 

 

 それからどうやってその噂が流れたのか、彼は何故か【魔物殺し】と呼ばれるようになってしまった。

 だが本人は『殺した』事など一切無く、現に手懐けては【我が家】に連れ帰っているのを依頼者も町民も見ているのだが、その女を口説くかのようにどんな魔物でも手中に収めてしまう鮮やかなテクニックからその異名(この世界では『通り名』というらしい)が消える事は無かった。

 

 彼自身はその通り名が甚だ不満であり、なのでこういう事がしばしば見られた。

 

 

「この近くにモンスターが出現したんだってよ!」

「それも、かなり強敵らしい」

「討伐を頼むにしても、冒険者の中でも相当腕の立つ奴じゃねぇと返り討ちにされるな」

「アイツはどうだ? ほらここの所よく噂が立ってる……」

「あぁ魔物ごろ――」

 

「だあぁれが魔物殺しだとおぉ!?」

「いや嘘ですごめんなさい許しぐべっ!?」

「お前もかあぁ!?」

「いいいえ決して魔物殺しなどとのぎゃあぁ!?」

 

「はあぁ、『また』犠牲者が出たよ……」

「これで〈プロレス技〉とかいう妙な技を掛けられたり、振り回されて投げられたり、家の壁にめり込んだりした奴何人目だよ……」

「オレもう、数えるの諦めたよ」

「俺もぉ。てか、数えるだけ無駄じゃね?」

「だよなぁ……」

 

 とか言ってる傍から、また誰かが悲鳴と共に宙を舞う。

 

「騒がしいと思ったら、またお前か魔物ごろ――」

「なんだとおぉ!?」

「げげゲンゾーさん【ガード】はヤバいって!」

「がるるるぅ……!」

 

 もう見慣れ始めている光景ながら、これではどちらが魔物か分からないなと住民は思うのだった。 

   

 

 

 

 

 




アニメで呼ばれるようになるのは「魔獣殺し」という異名なんですが、「elona」には「魔物」「モンスター」という呼び方はあっても「魔獣」という呼び方はありませんので、「魔獣」に近い呼び方である「魔物」の方を採用しました。

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