もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】   作:沙希斗

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サブタイトルにある「子犬の洞窟」は駆け出しの冒険者がレベル上げをするのに持って来いのネフィア(他の世界で言うダンジョン)なんですが、初見殺しのモンスターも多いため、早速詰まる人もいます。


ポピー×子犬の洞窟

 

 

 

 金策として荷物運びやら他の街へ行くための護衛やらは目もくれず、ほぼ魔物やモンスターの依頼ばかり受ける源蔵。

 そのせいもあってか名声がどんどん上がって行き、同時に【魔物殺し】という彼にとっては非常に不本意な通り名も広まってしまっていた。

 

 そんな中、いつものように(魔物殺し呼ばわりした)相手をぶん投げ、憤慨しながら街の通りを歩いていると、可愛らしい少女の声がした。

 

「ポピー! ポピーどこに行ったのぉ?」

 

 悲痛感さえ漂うような声の雰囲気が気になってその方向へ行こうとすると、ショートカットの子供がぶつかって来た。

 

「あいてっ!?」

「あ、ごめんなさいっ!」

 

 一見男の子に見えたが、服装からして女の子なのだろう。

 

「はうっ。ポピーがいなくなっちゃった……」

 

 そう言って涙を浮かべている様子を見るに、この子が【ポピー】とかいうものを捜しているのだと分かった。

 

「どうしよう、お父さんは今いそがしくて相手にしてもらえないし……」

 

 悩んでいる様子の女の子は、ダメ元だというように「冒険者さん、ポピーを探して来てよ~」と彼を見上げた。

 

「その前にポピーって何だ?」

「ポピー? ポピーは子犬だよ。私の一番のお友達なの」

「それは是非とも見付け出さないとなぁ」

 

 子犬と聞いて断る理由が無くなった彼である。

 

「よかったぁ!」

 

 途端にパッと顔を輝かせた女の子は、「ポピーは、きっといつもの洞窟で迷っちゃったの」と、街を出てすぐ東にある洞窟を示した。

 

 

 その場所にあったのは【洞窟】というよりは【塔】と言った方が良く、レンガで出来た古めかしいその中に入って行くと、地下に降りる階段があった。

 入り口付近や階段を下りてすぐぐらいの辺りは女の子(リリアンと名乗った)も遊び場にしている程だったのだが、もっと地下に降りる階段もあって、そこへポピーが行ってしまうともう怖くて下りられないのだと街を出る前に話してくれた。

 なので迷ったというのならば、もっと地下に下りて行く必要があるのだろう。

 

 リリアンに預けておこうとしたひろゆきが付いて来てしまったので、逸れるのを心配して紐で繋いでいる。

 店で教えてもらったこの紐には魔法が掛けられているらしく、紐自体は短いくらいなのに繋がれたものは自由に出来、なのに遠く離れ過ぎると引き寄せられるという効果があった。

 しかも一本で複数繋いでも同じ効果があるのだとか。

 

 試しに了承を得て売り子の娘を繋いでみたら、「アン……♪」と吐息を吐いたのには少々引いたが。

 なんでも女性には快感で、それは魔物などどの種族でもそうなるのだとか。

 

 

 さて、地下への階段を捜している最中にも様々な魔物やモンスターが襲って来る。

 

「おっきなリスちゃんに熊ちゃん。うわぁ飛んでるカエルちゃんもいるぅ。ここはケモノの宝庫だなぁ♪」

 

 などと言いながらケモノならば手懐け、人型ならば無視するか拳で語り合いながら進んで行くと、地下四階辺りで急にひろゆきが先導し始めた。

 何事かと思いつつ付いて行くと、そこに小さな茶色い塊が蹲っていた。

 完全に怯えてクンクン鳴いているそれを優しく抱き上げる。

 やはり子犬で、この子が恐らく【ポピー】なのだろうと思われた。

 

「よちよち、怖かったでちゅね~~」

 

 まるで赤子をあやすようにしながら再び階段を上り、地上へ。

 帰るとリリアンは大喜びでポピーを抱き締め、「これあげる~」とお礼の品物を渡して来た。

 

 それは青い蓋の付いた冷たい仕掛け箱で、つまりは源蔵のいた世界では【クーラーボックス】という物だった。

 

「これはありがたい!」

 

 源蔵は重宝した。

 何故ならこの世界の生もの(食材)は非常に腐りやすく、雨や水溜まりなどで濡れると更にそれが加速していたからである。

 一応(かなり丈夫な腹の持ち主ならば)腐っていても食べられない事は無いのだが、大抵は吐き出してしまい、その際にせっかく胃の中にあった食べ物まで吐いてしまうせいで余計に腹が減るのだ。

 食べ物を買うお金さえ無かった頃は、彼も空腹に耐えかねて街に植わっている果物の木から実を拝借して食べたり、そういう者のために無償でパン屋が配ってくれる売れ残りのパンなどで飢えをしのいでいたのだが、時折腐っていたりしてよく吐いていた。

 

 掲示板には「〇×を食べたい」などという料理の依頼も貼られている事があり、腐ったものをうっかり渡してしまうと吐き過ぎて死んでしまう事がある。

 他の冒険者がそれをやらかして死んだのを見た時は流石に戦慄した源蔵だったが、この世界には『死の概念』というものがどうも無いらしく、どう見ても完全に死んだはずなのに罪に問われないどころか、なんと数日経てば何事も無かったように生き返って来る。

 最初は混乱した源蔵だったが、今はもうそんなものだと自分に言い聞かせて無理矢理納得する事にしている。

 

 もっとも、食べ物にも事欠くような現状の彼は他人まで養う余裕は無いため、専ら自分の食材及び料理したものを入れて置くつもりで持ち歩く事にした。 

 愛するペットたちの分のため、というのももちろんある。

 しかしパンなどこの世界では何故か腐らない食べ物もあったため、もっぱらその食べ物を中心に彼とペットは生活していた。

 

 

 

 

 




これは「サブクエスト」と呼ばれているメインとは別に起こるイベントです。
町民に話し掛けていく内に発生するものの一つなんですが、せっかく苦労して「ポピー」を助けても、そのままでは自由に歩き回っては魔物に殺されてしまうため、このように「紐」で管理した方が地上まで連れて行きやすいです。
しかし殺されないように気を付けながらようやく街まで帰れても、リリアンの家の前に井戸があり、そこに落ちて死んでしまう事があります。

私も何度も洞窟内で殺されてはやり直して苛々した上に、成功目前でこうなって唖然となったものです。
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