もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
このゲームではこういう事もおきますよって事で。
相変わらず目ぼしい文献が見付からないのでネフィア探索を続けていたら、ある日不審な本を見付けた。
それは「本」というよりは「ノート」に近いというのだろうか? とにかく私物化していて可愛らしい飾り付けなどが施されており、不特定多数の者が見るというよりは小さな女の子が好みの飾り付けをして自由に使っている、というように見える。
持ち主が猫好きなのか猫の飾り付けがしてあるそれが何故こんな所に落ちているんだろう? と訝しがりながら、一応どんな本なのか調べてみようと源蔵は開いた。
たぶん子供が使っているのだろう。それなら簡単な字で書かれてあるだろうと思ったので、自分でも読めるかもしれないと考えたのだ。
『〇月×日
これは秘密の日記なのにゃ。私のお兄ちゃんに早く会いたいのにゃ。お兄ちゃんお兄ちゃん――』
それは全面に「お兄ちゃん」を求める内容の日記だった。
これ程「お兄ちゃん」の事を綴るのは恐らく「妹」なのだろう、と思いつつ、その本を閉じたその時、何やら目の前の空間が歪んだ気がした。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんなのにゃ?」
直後に可愛らしい声が聞こえたので、キョロキョロしてから視線を落とす。
何も無かったはずのそこには猫耳と尻尾を持つ女の子がいて、首を傾げた状態で見上げていた。
「でえぇっ!?」
腰を抜かさんばかりに驚いた彼に構わずキラキラと目を輝かせ、「お兄ちゃんにゃ、ずっと捜してたのにゃ!」と抱き付く女の子。
「ま、待て、待て待てっ!」
困惑した彼は、とにかく現状を把握しようと落ち着く努力をした。
「お、俺には妹は……」
「いるのにゃ、私はずっと聞かされてたのにゃ、『お前には血のつながらない兄がいる』って」
「……。それ、他人じゃねぇのか?」
「違うのにゃ、生き別れたって言われてたのにゃ!」
一生懸命に話す度に、猫耳と尻尾がくるくる動く。
ケモノならば獣人でも良い源蔵にはそれが堪らなく愛しく、顔がにやけそうになるのだが、ここで感情のままに抱き締めたらロリコンになる気がした。
「その話、誰から聞かされてた?」
「妹がいっぱいいるとこにゃ。そこでみんなでお兄ちゃんを待ってたのにゃ」
「この日記はお前のか?」
「にゃ、そうにゃ。想いを込めて書いてたらお兄ちゃんに会えるって言われたのにゃ」
つまりは「妹」たちがまだ見ぬ「兄」に対して綴った日記を拾うかどうかして手に入れ、それを読むとその「妹」を召喚する仕組みになっているらしい。
「……と、言ってもなぁ」
「なんにゃ?」
「『妹です』って言われて『ハイそうですか』ってな風には、普通ならんぞ」
「なってもらわにゃいと困るのにゃ」
「獣人連れて『妹です』って紹介すんのか? 俺とは似ても似つかんのに?」
「お兄ちゃん知らにゃいのにゃ? 獣人とカオスシェイプのきょうだいとか、いっぱいいるにゃ」
カオスシェイプというのは辛うじて人の姿を保った状態で生まれるが、成長するに従って手が増えたり足が増えたりしてどんどん異形になる種族の事である。
この世界は同性どころか異種間婚も普通に行われているために、まったく姿が似ていないきょうだいが出来るのも珍しくないのだろう。
「と、いう事で、これからよろしくにゃ、お兄ちゃん♪」
「……。いくらそう言われても、お前が獣人でなければこの場で放り出す所なんだが……」
「えぇ? それひどくにゃい?」
「うるせぇ。獣人である事に感謝しろ」
「にゃ、ありがとにゃ♪」
「……。ゲンゾー、いつの間にこんな子供を作ったのですか?」
「いや話飛び過ぎだろっ!?」
「私はお兄ちゃんの妹なのにゃ」
「妹さん……。世間にはそう見せているんですね?」
「違うし! なんか日記見たら勝手に召喚されただけだっつのっ!」
「そうなのにゃ♪」
「言い訳下手ですね、ゲンゾー」
「いや嘘じゃねぇし! てかジト目で見るなエリステア」
「いくらケモノが好きだからって、こんな年端も行かない獣人を囲うだなんて……」
「んな訳ねぇだろっ! 話聞けや!!」
こうしてエリステアだけでなく、彼を知る者に会う度に似たようなやり取りを繰り返さねばならなくなった源蔵であった。
これは「妹の秘密の日記」を見付けて読んだ時に仲間になる「妹猫」の事なんですが、他に「妹の日記」というものもあって、それを読むとただの「妹」が仲間になります。
今回は主人公が源蔵さんなので「妹猫」の方を召喚する話にしました。
どちらもレア本ではあるのですが、見付かる時にはアッサリと何冊も見付かる事もあります。