もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
エーテル病の進行で悍ましい姿に変わってしまった事で娘が嫌われるのではと気に病み、死を選ぼうとしたリリィだったが、その姿で生き続ける事には納得出来ないまでも「殺して」とはもう言わなくなった。
というのも、病が進行して行く過程で見舞いに来るようになっていた事で友達が増えたのもあってか、彼女が自ら死を選ぼうとする程恐れていた我が子が嫌われる、という事にはならなかったからである。
容体が落ち着いたと聞いていたにもかかわらず頑なに会おうとしない彼女を不審がった子供たちが「どうしても」とパエルに頼み込んで会いに行った時、やはり最初は怖がったり泣き出したりした子もいたそうだ。
「おばちゃんがお化けになっちゃったぁ」
「わーん! 怖いよぉ……」
「お化けじゃないもんっ! 顔が変わっただけだもんっ!」
だがリリィが幼子のように「ごめんなさい、こんな姿になってごめんなさい。私は良いからこの子を嫌わないで……」と泣きじゃくった様子を見て、逆に子供たちは心配になったらしい。
「おばちゃんごめんねぇ、怖がってごめんねぇ」
「大丈夫だよ。パエルもおばちゃんも嫌ったりしないよ。だから泣かないで」
「本当……?」
「うんっ。約束する。ほらみんなで指切りげんまんしようよ♪」
「いいねやろう!」
「♪ゆ~びきぃりげんまん嘘付いたら針千本のぉ~ますっ。ゆぅび切ったっ♪」
そんな出来事があった日から、リリィも明るくなった。
始めは近所に住む大人たちが「あの家へは行ったらいけません!」と子供を叱っているのをそれでも隠れて通っている。という風情だったのも、徐々に嫌悪せずに病気になる前と同じように付き合うようになった。
元々朗らかな性格で親子共に慕われていたというのもあり、一度忌むべき存在ではなくなると、元の関係に戻るのも早かったようだ。
実は、源蔵は密かに残念に思っていた。
彼女が元のように人々に受け入れられて生活出来るようになったのは、それは喜ばしかった。
だが、本音を言うといつか自分のペットショップを持った時に、看板娘(娘とは言わないかもしれないが)として雇おうと思っていたのだ。
一応、一度打診してみた事はあった。
しかし返事は「そうねぇ。考えておくわ」というものだった。
そのまま嫌われたままになっていたら少しは考えてくれたのかな。
楽しそうに子供たちと雪だるまを作ったり、雪合戦に興じているのを眺めながら、源蔵はそんな事を考えたりした。
ちなみにあれ程怖がっていたマールも、今では一緒に来て遊ぶようになっている。
「ゲンゾウさんも見ていないでいらっしゃいよ」
「おじさんも一緒にやろう」
「誰がおじさんだあぁっ!」
「うわっぷいきなり雪の塊を投げるのは卑怯――」
「黙れぇっ!」
1人を抱き上げてぶん回し、放り投げたが雪が深いので怪我一つしない。
それを分かってわざとやっているので逆に大はしゃぎして「もっとやって!」と何度もせがまれる。
その内次々に来るようになって、雪合戦が放り投げ大会みたいになった。
子供の体力は無尽蔵である。
レスラーである源蔵自身もそうだと思っていたが、彼らはそれに勝っていた。
というよりも先に源蔵の方が飽きた。
「そろそろお茶にしましょうか」
リリィのその一言で助けられた彼は、「まだやりたいぃ」などとぶー垂れている彼らを無視してリリィの家に上がって行った。
「殺して」と言われるのをそのまま放置して「生かす」方法を選ぶと、何度もその選択を迫られます。
会う度にそれを無視してその場しのぎのエーテル抗体を押し付けるのが辛いので、せめてこういう事になって人目を忍んで生活しているのではなく、住民たちにも受け入れられていると思いたかったんです。
どうでも良い話ですが、指切りげんまんの歌の「針千本飲ます」という部分、あれを「(魚の)ハリセンボン」の事かと思っていた時期がありました。
なので「膨らんだハリセンボンを飲むと死ぬ思いをするからこんな歌が出来たのかな」などとアホな事を考えて納得してました。