もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
これがあるから冒険者たちは、寄生されようが毒が仕込まれてようが水を飲みたがるのです。
エイリアン騒動があってから、源蔵は井戸水や泉など街で喉を潤わせる時は細心の注意を払う事にしていた。
今日も井戸水から汲んだ桶の中にエイリアンの卵が入ってないか、よくよく注意して飲んだのだが――。
『一つだけ願いを叶えてやろう』
唐突に、そんな言葉が頭に響いて彼はギョッとして辺りを見回した。
「お兄ちゃん、どうしたのにゃ?」
「兄」のただならない様子にマールは心配気に声を掛けた。
「……。いや、気のせいだろう」
そう言って再び水を飲もうとしたが、同じような声がまた聞こえた。
「マール、この声聞こえるか?」
「なんにゃ?」
「願いを叶えてやるとかなんとか……」
「聞こえないにゃ。でもそれはきっと、何でも願いを叶えてくれる神様の声にゃ」
「何でも……」
「そうにゃ、一つだけだけど、その神様が声を掛けてくれたら何でも願いを叶えてもらえるのにゃ」
「ふぅむ……」
そう言われても特に叶えたい願いは無かった(強いて言えばペットショップだが、これは自力でなんとかするものと思っていた)ので、彼はジョークのつもりでこう叫んだ。
「ギャルのパンティーおくれっ!」
『承った。その願い叶えて進ぜよう』
「えぇ!? ちょっとまっ――」
慌てて訂正しようとしたが、もう遅い。
上からひらひらと革製のパンティーが降って来た。
「……。お兄ちゃん、サイテーにゃ」
「いやマジで冗談だったんだよっ!」
マールにジト目で見られて言い繕い、「と、取り敢えず、お前履いとけ」と渡す。
「こんな派手なものいらないにゃっ!」
投げ返されて顔に当たり、源蔵はにへらぁ、と笑った。
「もふもふのギャルが一杯いるぅ♪ でへへぇ……」
「しまったにゃ、幻覚見てるにゃ」
この世界の「ギャルのパンティー」は下着ではなく、れっきとした投擲武器である。
それにはどの素材であろうが関係なく「幻惑*****+」のエンチャントが付いており、そんじょそこらの武器より強かったりもする。
更に〈素材変化の巻物〉などでルビナスやエーテルなどに変化させ、武器強化させたものは、もはや愛用しても良い程の業物に育つ。
「お兄ちゃん、目を覚ますにゃっ!」
放って置いたら通りすがりに抱き付こうとしたのを見たマールは、殴って「兄」の目を覚まさせた。
「……あれぇ、獣人ギャルは?」
「なに寝惚けてるにゃっ!!」
「ぐべっ!?」
再度殴られようやく源蔵は正気に戻った。
マールにパンティーの効果を聞いて「そうだったのかぁ」と納得した源蔵だったが、「俺は使わねぇなぁ」と謙遜した。
「私は使ってあげてもいいのにゃ。でも履かないにゃよ?」
「う~~ん、でも攻撃するような相手いねぇしなぁ……ってこら!」
そんな事を話していたら、ひろゆきが手からパンティーを奪って逃げて行った。
「待てひろゆき!」
遊んでもらえると思ったのだろう。追い掛けたら広場でパンティーをぶん回し始めた。
「おいこらそれは玩具じゃ――」
「あらヤダ、この子パンティーを玩具にしてるわ」
「ホントだぁ。どこから取って来たのかしら」
「この子、たしかゲンゾウさんといつもいるひろゆきよね?」
「そうよ。まさかゲンゾウさんが下着泥棒して……」
「そんな訳ねぇですっ! お騒がせしましたっ!!」
源蔵は慌ててひろゆきを掻っ攫い、逃げるようにその場を離れた。
それでも背中に刺さる、疑いの目がとても痛かった。
「水を飲む行為をすると発生する事がある」というこの出来事のために、Elonaではなんとトイレの水すら飲むのが普通になっている程なんです。
ですが運が良ければ何度も発生するため、叶える願いが無くなる場合も。
ただしこの神様は言語解析能力が皆無なようでとんちんかんな叶え方をして来る事があるため、せっかく願ってもその通りに叶えてもらえないという事も起きたりします。
「ギャルのパンティー」は冗談抜きで使える投擲武器であり、素材やエンチャントによっては最強クラスの業物に育つ事もあります。
特に早い攻撃が出来る者やペットに渡せば何度も幻惑状態を引き起こせるため、愛用している人も多いかもしれません。