もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
なんせ推奨レベル50、名声二万以上ですからね。並大抵の腕ではクリア出来ません。
ですが、そんなものでも彼ならこうなってしまいます。
「おい、ちょっと待て」
ある日源蔵は【ヴェルニース】で、珍しくある男に声を掛けられた。
彼の名は『ロイター』。戦闘においては右に出る者はいないとまで言われている強者で、ザナンの兵士で赤髪である、という特徴から、「ザナンの紅血」「ザナンの紅の英雄」などという通り名を持つ。
いつも酒場にたむろしており、そこの看板娘シーナの尻を撫でてはからかったり、下手な吟遊詩人に石を投げてミンチにする、という剛腕を発揮して周囲の者を震え上がらせたりしていた。
そんな彼が、いつもならば近くを通りかかるだけで「邪魔だ」だの「話しかけるな」だのと邪険に扱う源蔵に、自分から声を掛けて来た。
なので珍しい事もあるもんだと立ち止まり、振り向く。
「貴様の面には見覚えがある……魔物殺し、といったか?」
途端に源蔵は背後に回り、ジャーマンスープレックスをかまそうとした。
が、既にそうされる事を見切っていたかのようにするりと躱された。
ムキになった源蔵がラリアットをお見舞いしようとするも、腕を取られてその勢いで投げ落された。
「やるなぁコラァ!」
「おぉよ! 貴様なんぞ屁でも無いわぁ!!」
その後は何故か組み合い、投げ合いの嵐になった。
一応本人達は殴り合いをしているつもりなのだが、拮抗して組んだり投げたりの形になってしまうのである。
しばらくしてお互いに気が済んで、「久しぶりに良い汗かいたなぁ!」「良い試合だったなぁ!」などと肩を組んで豪快に笑い、「んじゃまた!」と源蔵が帰りかけると――。
「おうまた! ……って待て待て!」
当初の目的を思い出したらしいロイターが慌てて追い掛けた。
「最近、このティリスの地で名を上げているそうじゃないか。だが、金に困っていると聞いたぞ」
生活費は問題無いのだが、気が付くと税金を滞納している事がまだあった。
それに、ペットショップへの資金も貯めたいと思っていた。
そんな事を知っていたのか、彼は「貴様に金になる仕事をやろう」と持ち掛けて来た。
「ザナンのある機関からの要望で、実験のデータをとるために被験者が必要なのだ。俺に言わせれば、被験者というより『生贄』だがな。生き延びて戻ってくれば、老後を遊んで暮らせるだけの報酬はくれてやる。どうするかこの場で決めろ」
一応「止めておこう」と言ってみる。
「骨のないやつだ。うせろ」
その態度にムッとして、「やるよ!」と答える。
「いいだろう。死ぬ準備ができたら、声をかけろ。実験場まで案内してやろう」
「ちなみにだがな、そこにケモノはいるのか?」
「そんな事は知らん。貴様はただ準備して俺に付いて来るだけだ。まだなら早くしろ」
そんなこんなで、ロイターに連れて来られたのは地下にある実験場だった。
入るとドアを閉められ、鍵をかけられた。
つまり実験のデータが取れるまでは出て来れない仕組みになっているらしい。
そこは区切りの無い幾つかの部屋に分かれており、そこここに「実験体」がいた。
それらは「ガグ」と呼ばれている醜い鬼の姿をしているようなものだったり、毒々しい色の大蜘蛛がいたり、「シュブ=ニグラス」という強力な幻惑魔法を使う、植物と触手の塊が融合したようなものがいたりした。
どれも胸が悪くなるような異形の化け物ばかりだったのだが、何より悍ましかったのは、一番奥の部屋に一体だけいた「螺旋の王」と呼ばれている化け物だった。
それは辛うじて人の顔と分かるようなものを持ってはいた。
そして、愛おしそうに赤子らしきものを抱えてはいた。
が、それ以外は灰色の触手で覆われ、その名の通りに螺旋を描いたり崩れたりして蠢き続けていた。
そもそも何のための実験なのかも知らされていなかったので、とにかくそれらの実験体を相手にする。
襲って来たものを次から次へと倒し――。ではなく手懐け、一階に上がる階段を見付けた源蔵は、サッサとそこから出て行った。
「驚いた。この実験から生きて帰って来た冒険者は、貴様がはじめてだ」
もし生きて帰れたら報告するように言われていたのでロイターに会いに行くと、彼はそう言って心底驚いた顔をした。
「これで、ザナンの上層部が、研究を見直してくれるといいが。あんな不細工な化け物を率いて戦場を駆け回るのは、御免だからな」
報酬としてルビナス製の素材槌、金貨100000枚、プラチナ硬貨5枚を貰いながら、「そもそも何の実験だったんだ?」と聞いてみる。
「言ってなかったか? あいつらをコントロールして使役し、戦場で闘わせられるかの生体兵器の実験だよ。そうすれば失う兵の数を少なく出来るからとかで、上層部から研究を言い渡されてたんだと」
「酷い話だ……」
「だな。率いる俺らの事も考えて――」
「あんな子たちを戦場に駆り出すとは、許せえぇ~~~ん!!!」
「そっちかよっ!」
突然憤った源蔵の理由に対し、常に冷静なはずのロイターは思わず思い切り突っ込んでしまったのだった。
源蔵さんのせいでロイターの性格まで変わってしまった件について。
私が感じたイメージでは、常に冷静沈着で、冷たい印象を受けるような人だったはずなのになぁ。
ここでは確実に「螺旋の王」が出るので、ペットにしたい人はこのサブクエに挑んでみるのも良いかもしれません。