もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作：沙希斗
「プチ退治」という一見駆け出し冒険者用の簡単なクエストかと思いきや、奥にやっかいな奴がいて、即殺されたりしてトラウマになるような目に遭わされたりします（苦笑）
【ヴェルニース】で生活していく内に街の住民とも顔なじみになって来たある日、見習い『ミシェス』がこんな相談を持ち掛けて来た。
「最近、朝起きると私のぬいぐるみがぼろぼろになっているの」
「ふむ」
「夜中に起きてこっそり見張ってたらね、なんと【プチ】……。プチがぬいぐるみを食べてるのよ！」
「プチ……♪」
「どうも隣の家の窓を伝って――」
切実な顔で訴えていたミシェスは、プチと聞いた途端ににへらぁ、と顔を緩めた源蔵を見て背筋がむずむずした。
「……。と、とにかくお願いだから、ちょっと行って退治して来てくれない？」
嫌悪顔さえ浮かべながら彼女が隣の家を示すと、「分かった。ありがとぉ♪」とにこにこしながら彼は向かって行った。
途中で気が付いたように戻って来てひろゆきを預けられたミシェスは、呆れ顔でそれを見送った。
隣の家は空き家なのか倉庫代わりになっており、坑道へと通じる階段があった。
下りてみると今は使われていない坑道らしく、こちらも地下倉庫として使われていた。
所々の岩壁にランタンが掛けられており、それに灯りをともしながら進む。
と、奥まった所で白い塊が蠢いた。
「あぶくちゃん、見っけ♪」
嬉しそうに言いながら近寄ると、それが何匹もいた。
しかも赤い体色のものもいる。
それは【ベスプチ】と呼ばれているプチの上位種だった。
「赤いあぶくちゃんもいるぅ♪」
源蔵はますます嬉しそうな顔になった。
彼を襲おうと群がって来た【彼ら】を満面の笑みで撫で回していたら、数匹違う種類のものが交じっているのに気が付いた。
それは青黒いゼリーのような生き物で、プルプルと揺れながら自由に形を変えている。
それが体に纏わりついて来た。
「あははぁ、くすぐったい♪」
体を覆うように形を変えた【それ】の感触に喜んでいると、急に体が溶け始めた。
「ぎゃああぁ！ 熱い熱い痛いぃ～～～!!!」
慌ててもがいたが既に遅く、彼は骨だけ残して溶かされた。
ふと気が付くと、彼は暗闇にいた。
死後の世界に来たと思ったら、体中が何かに覆われて重い。
そしてそれが土の感触だと分かった途端、彼は慌てたように手足をばたつかせ、地面に顔を出した。
どうやら埋められていたらしい。
「……。溶けたはずなのに……？」
困惑して這い上がり、全身を確かめる。
溶けた形跡どころか傷を負った形跡も無い。
「生き返った、という事か……？」
『死んでも生き返る』という世界であるという事はもう分かって来た彼ではあったが、まさか自分がそうなるとは思ってもみなかった。
気を取り直して再び坑道へ。
住民に「それは【スライム】である」と教わった彼はあまりにも怖かったので、手懐けるのを諦めて遠くから石や鉱石の欠片を投げて殺した。
その際飛び散った体液でプチが何匹か溶けてしまったのには物凄く悲しかったが。
その中に、溶けた鉛の塊が泡立ったような生き物が一匹だけいた。
最初は気が付かなかったのだが、一番奥が大きく拡張されて広間になっていて、そこの隅の暗がりに潜んでいた。
はじめ彼はまたスライムの類いかと怯えたが、体当たりして来ても金属の塊がぶつかって来た感じだったし、纏わりついて来ても体が溶けるような事にはならなかったため、こいつは手懐けようと思った。
偶然そいつにスライムの体液が掛った時、奇妙な現象が起こった。
なんと分裂したのだ。
どうやら攻撃を受けると分裂するらしいと理解した源蔵は、「わはは、面白い♪」とわざと殴って分裂を促した。
「あなた、何やってんの！？」
何時間経っても中々出て来ないのを心配して、また死んでいるのかと見に来たミシェスに呆れた口調で言われて気が付くと、広間全体にその生き物（【バブル】というらしい）が犇めいていた。
アニメでは源蔵さんが死んだり怪我を負ったりするような事は一切無かった（気絶はあった）んですが、elonaでは「死んでも生き返る」ため、こんなふうにしました。
トラウマになる感じを彼にも味わわせようと思って（笑）
一応「浮く防具」を身に付けるとスライムの出す酸で溶ける事はなくなるのですが、攻略サイトなどで調べない限り初心者がそんな事を知るはずもないので、必ずと言っても良い程引っ掛かる「elonaあるある」の一つです。
余談ですが「バブル」は数体ペットにしてある道具で縛り、殴り続ける（もしくはスウォームという技を使い続ける）と幸せになれます。