もしも、ケモナ―マスクがelonaの世界に転送されたら【完結】 作:沙希斗
少しでも親しくなった者に「ペットショップをつくる!」と豪語しては変人、時には変態扱いされていた源蔵も、この街に長く滞在するようになって多少は(本当に多少は、の話であったが)理解してくれる者も出始めた。
そしてそんな中に動物好きな者もいたと見えてペットの世話を手伝ってくれる者がいたため、彼らに世話を任せて多少遠出をしても大丈夫なようになってきた。
彼はもちろんそういう者を料理が出来る者、もしくは料理スキルを身に付けられる者に限定して選んでいたため、ペットの体調管理に関しても心配しなくて良くなった。
そこで彼は『魔物を探す旅』に出ようと思い付いた。
ただの洞窟である【わが家】を引き払い、このまま【ヴェルニース】に住んでペットショップの物件を探しても良いと思っていた彼ではあったが、ここの世界に馴染むにつれて他の街にも行ってみたくなったし、なんでも【ネフィア】と呼ばれている様々な地下建造物が地上に現れては地殻変動によって消える、という現象が繰り広げられているとの事だったため、そこにいる魔物やモンスターたちも見てみたくなったのだ。
数日間準備してから見送る人々をガン無視して名残惜しそうにペットたちとお別れした彼は、荷車を引きながら街道を進んで行った。
本当なら全部引き連れて行きたい所だったのだが多いため、泣く泣くひろゆきだけにしたのである。
何故なら【彼】は源蔵にとって長年苦楽を共にして来た相棒だし、盗難の憂き目に遭った事があるので人には任せられないと思ったからだった。
一応街の名前はいくつか聞いたがどの街に行こうかというあては無い。
とにかく街道に沿って行けばどこかの街には行けるだろうという魂胆で進む。
と、いきなり数人に取り囲まれた。
「おまえさん、ついてないな……」
髑髏マークの青いつば付き帽子と同じ青色で統一した幅広襟のシャツ、ガンベルトを履いた青いズボンという全身青ずくめの男が、そう言って髭面の小汚い顔を歪ませた。
その不敵な顔に嫌悪感をもよおしていると、男はこう続けた。
「自分達は泣く子も黙る冷血な盗賊団、その名も【呪いの土】チームさ……。命が惜しければ、おとなしく荷車の積荷と金貨2031枚を渡すがいい……」
抵抗しようとした源蔵だったが、「おっと」と一斉に銃を向けられた。
いかに彼でも銃には勝てない。しかも取り囲まれているため、下手をすればハチの巣にされてしまう。
「分かりゃ良いんだよ……」
悔し気に両手を上げた彼を見て、男はニヤニヤ笑いながら懐から財布を取り出した。
「カシラ、こいつ荷車に旅糧しか積んでませんぜ!」
その間に荷車を漁っていた手下の一人が報告する。
「ケッ、しけてんな」
舌打ちしたカシラは、それでも旅糧を全部盗って行った。
しかしこの世界の盗賊団は装備やバックパックにある食料、アイテムなどは盗らない主義があるらしく、丸裸にされて転がされる、という事は無かった。
ただし、抵抗しようとすれば命まで取られるようだ。
「良かったよおぉ~~!」
自分の事よりひろゆきが無事だったのを喜んだ源蔵は、しかしさて困った、と思い直す。
旅糧を全部盗られてしまったので、このまま旅を続ければ餓死してしまう恐れがあったからである。
「……。まあ、料理して【クーラーボックス】に入れてた物とパンがあるし、最悪アピの実と山菜でしのげばいっか」
それでも、楽観的な源蔵であった。
盗賊団は一度ではなく何度でも襲って来た。
その度に両手を上げていた源蔵だったが積荷が一切無くても金だけは盗って行く。
とうとう腹に据えかねた彼は、次に襲って来た輩のカシラの前に進み出た。
「命乞いなら聞く耳を――」
「いい加減にしろおぉ~~~っ!!!!」
キレた源蔵はカシラをぶん回し、投げ飛ばした。
手下共に当たってそのまま数人が吹っ飛んだのを見て、「てめぇ……!」と一応銃を向けた残りだったのだが、彼の気迫に気圧されてたじたじになる。
そうしている間に吠えながら向かって来たのを見て驚愕し、残りは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「ふうぅ……!」
気を吐いた源蔵は、「ごめんなぁひろゆきぃ、怖かったなあぁ」と胸元に入れていたひろゆきを取り出して愛撫するのであった。
実際(ゲーム内)では抵抗しようとしようものなら問答無用でハチの巣もしくは魔法攻撃でズタボロにされます。
強い者なら皆殺しに出来ますし、足に自身があるなら逃げきれますが、大抵は序盤の死因あるあるの中に入ってます。
ちなみに登場した盗賊団は、私がプレイ中に実際に出て来たものの一つです。
アニメではペットの世話などを全部人外の者にさせているようでしたが、転送前の世界では恐らく理解してくれる人に任せるのだろう(つまり全部人相手に仕事をするのだろう)と考えましたので、ケモノ要素のある者ではなくヒトに任せる方を採用しました。