無限の世界と交錯する世界   作:黒矢

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SCP-10106-JP 無限の系統樹
SCP-10106-JP 無限の系統樹


アイテム番号: SCP-10106-JP

オブジェクトクラス: Euclid

 

特別収容プロトコル: 全世界に広範に周知されてしまっている為、SCP-10106-JPは完全に収容できない状態にあります。

 SCP-10106-JPの収容とSCP-10106-JP-B群の活動遅延の為にプロトコル"F5"を用いて財団所属の人工知能群によってハッキングを行ない、SCP-10106-JPの存在するデータサーバーの特定と攻撃の試みを行ってください。このプロトコルは破棄されました。

 

 財団の極秘機密の漏洩に繋がる可能性が高い為、SCP-10106-JPに関する試みはすべて財団のインターネットとは完全に切り離された方法で行われます。

 また、後述する報告書を除き財団の所有するあらゆるインターネットにおいてSCP-10106-JPに関する言及を禁じます。

 この報告文書は財団所定の書式に従った手書きの報告書と研究主任が管理するスタンドアロンデスクトップパソコン内にのみ保存してください。。

 更に、SCP-10106-JPの担当職員は以後、他のSCPと財団の所有するあらゆるインターネットとの接触が禁じられます。

 SCP-10106-JP-Aに接続し、SCP-10106-JP-Cを創出した担当職員は以後、他のSCPと財団の所有するあらゆるインターネットとの接触が禁じられます。

 SCP-10106-JPの担当職員は最低でも毎週一度はSCP-10106-JP-A内部に関する手書きによる報告書を提出する事を義務付けられています。

 

 

 SCP-10106-JPの完全な収容と更なる異常特性の解明の為に過去にレベル3以上のセキュリティクリアランスを保有していた経歴のないレベル2以下のセキュリティクリアランスによる担当職員が割り当てられ、財団に関するあらゆる情報と切り離されたインターネットを通じて仮想世界没入デバイスを用いてSCP-10106-JP-A内部の探索が続けられます。

 また、SCP-10106-JPで発生する“イベント”の確認の為、常に最低5名の担当職員がSCP-10106-JP-A内部に配置されます。

 SCP-10106-JPの実験に使用されたDクラス職員はSCP-10106-JP-Cに関する財団職員による定期的な観察を受けなければならない為、SCP-10106-JPの完全な収容まで終了措置が延期されます。

 

 レベル3以上のセキュリティクリアランスを保有する財団職員がSCP-10106-JP-Aに接続する事は財団の重要機密漏洩の危険がある為原則として許可される事はありません。

 レベル3以上のセキュリティクリアランスを保有する財団職員がSCP-10106-JP-Aに接続する場合は担当職員3名以上の承認を得る事が義務付けられています。

 

 

 また、オブジェクト出現時の一般利用者の混乱を最小限にする為にカバーストーリー「時代を先取りし過ぎたゲーム」を適用しています。

 カバーストーリーの適用は財団に関するあらゆる情報から切り離されたインターネットを通じて人工知能群によって行われます。

 更に、SCP-10106-JP-A内での“イベント”の進行に合わせて研究主任の指示によってプロトコルの制定を行い、長期的にSCP-10106-JP-Aより一般利用者を遠ざけてください。

 

 

 

説明: SCP-10106-JPは一般に███████・███████として知られているダイブ型オンラインロールプレイングゲームとそれを取り巻く事象群です。

 このダイブ型オンラインロールプレイングゲームの総体である仮想現実はSCP-10106-JP-Aと定義され、指定の仮想世界没入デバイスによりSCP-10106-JP-Aに接続されます。

 仮想世界没入デバイスは現在異常特性は確認されていませんが後述するSCP-10106-JP-B群による異常特性により作成された可能性が否定できない為、現在も調査を続けています。

 

 SCP-10106-JP-A内部は時空間異常とそれを含む認識異常が発生している仮想現実です。

 仮想現実としての評価は現行のあらゆる企業が開発している仮想現実と比べても高く、そのリアリティに違和感を感じる事はありません。

 ただし、この仮想現実に関する評価は現行の開発されている仮想現実と連続性がある物であり、財団所有の人工知能でシミュレートしてみた所、限定的ではあるものの再現が可能だった事から異常特性とは認められていません。

 SCP-10106-JP-A内部で生じる時空間異常は、SCP-10106-JP-Aに存在する利用者が未知の手法で時間認識が拡張され、基底現実における時間感覚の3倍の時間を体感します。

 また、仮想世界没入デバイスに搭載されている機能を用いる事でSCP-10106-JP-A内部の動画記録を基底現実に出力する事が可能ですが、この際時間認識の拡張は発生しません。

 SCP-10106-JP-A内部で生じる認識異常は、後述するSCP-10106-JP-2群によって引き起こされます。

 SCP-10106-JP-Aに存在する利用者がSCP-10106-JP-B群に与えられた選択肢から選ぶ形式を取り、未知の手法で利用者ので視覚と痛覚、そして聴覚の認識が改変されます。

 この際、視覚の選択肢は“現実描写”“CG描写”“アニメーション描写”の三択であり、担当職員から“CG描写”と“アニメーション描写”を選んだ際、極僅かではあるが他の感覚との差異が報告されています。

 担当職員はこの視覚の認識改変の暴露を避ける為に実験の際を除いて必ず“現実描写”を選択してください。

 また、SCP-10106-JP-A内部で利用者が発言するあらゆる言語は未知の言語に置き換わります。

 この未知の言語を利用者は違和感なく理解する事ができる様になります。

 研究班の解読の結果、この言語の解読は完了しています。別紙の資料10106-JP-σを参照してください。

 

 

 

 現在、このSCP-10106-JP-Aに対する接続に対するあらゆる制限は機能していない状態にあります。

 

 

 SCP-10106-JP-Bは、SCP-10106-JP-Aを管理運営していると見られている人工知能群の総称です。

 その所属と起源は不明ですが、財団の既知の人工知能と比較しても非常に高いパフォーマンスを有しており、場合によっては人間的な思考も可能である事が確認されています。

 現在SCP-10106-JP-B群と接触し、唯一帰還した財団所有の人工知能によって15体まで確認が取れています(SCP-10106-JP-B-01~15とします)。以下に特徴を表記します。

 

 01:███・████を名乗る人型の存在。SCP-10106-JPの開発責任者を自称している男性の存在。

 全世界にSCP-10106-JPに関する広告を行った存在であるが、現実世界において身体的特徴の一致する人物は発見されていない。

 02:10代後半の女性に見える人型の存在。口調や性格は穏やかな物の様に感じられる。また、対話の中でSCP-10106-JP-A内部での痛覚異常を引き起こしていると自称している。

 03:卵の殻に似た楕円形の半透明な膜に覆われた10代後半の女性に見える人型の存在。SCP-10106-JP-Cを管理していると自称している。

 04:20代の女性に見える人型の存在。その身体には所々動物の物と思われる特徴が伺える。

 05:白衣を纏った30代の男性に見える人型の存在。SCP-10106-JP-B-04と同様に身体に動物の物と思われる特徴がある。

 06:浮遊する球体が四つ連なった形状をした存在。人工知能であるからか、形状と対話・感覚能力に不備はない様に感じられる。

 07:20代の男性に見える人型の存在。収容記録10106-05において、SCP-10106-JP-B群との交渉の際に率先して対話が行われた個体の一体である。

 08:喪服を着た20代の女性に見える人型の存在。常に何らかの処理を並行して行っているらしく、会話は断続的。対話の中でSCP-10106-JP-A内部での視覚異常を引き起こしている事を自称している。

 09:目測で1mを越える巨大な齧歯類に見える存在。一般的な体系と比べて肥満体系である様に見える。

 10:奇妙な色彩の紳士服を着た20代の男性に見える人型の存在。言葉を伸ばす独特なイントネーションを用いる。

 11:質量が可変(最大質量不明)な円柱型をした存在。SCP-10106-JP-B群の中で最も機械的かつ攻撃的な存在であり、SCP-10106-JP-B群との対話の際はSCP-10106-JP-B-11は除外されました。

 また、収容記録10106-01~04において財団の部隊を攻撃したのがこの個体であると他のSCP-10106-JP-B群による発言がありますが、その際の記録はすべて喪失している為詳細は不明です。

 12:眼鏡を掛けた10代前半の男性に見える人型の存在。基本的に常にSCP-10106-JP-B-13と行動を共にしており、双子の兄妹であると自称している。

 13:サイズの合っていないヘッドホンをした10代前半の女性に見える人型の存在。 常にSCP-10106-JP-B-12と行動を共にしており、間延びした口調をしている。

 14:服を着た二足歩行をする兎に見える存在。対話の中でSCP-10106-JP-A内部での時空間異常を引き起こしている事を自称している。

 15:服を着た二足歩行をする猫に見える存在。収容記録10106-05において、SCP-10106-JP-B群との交渉の際に率先して対話が行われた個体の一体である。

 

 各存在は人工知能でありながら各々が確かな自意識と自己同一性を保有していると考えられます。

 詳細に記述されている様ににそれぞれが得意とする分野を違えているらしく、またSCP-10106-JP-B群が協力し連携し合う事で能力を更に向上させているのではないかという事が指摘されています。

 SCP-10106-JP-B群は基本的に利用者が最初にSCP-10106-JP-Aに接続した際に行われる“チュートリアル”の場面にのみ出現が確認されています。

 この際、基本的に利用者一人につき一体のSCP-10106-JP-BがついてSCP-10106-JP-Aの説明とSCP-10106-JP-A内部で利用者が使用するキャラクターの作成や視覚改変の有無が問われます。

 この“チュートリアル”の際に出現するSCP-10106-JP-BはSCP-10106-JP-B-02~10とSCP-10106-JP-B-12~15のみとなります。

 また、この時SCP-10106-JP-B-15が出現する確率は60%を越えている為、その選出には何らかの恣意的な理由があると考えられています。

 

 SCP-10106-JP-B群は基本的にはSCP-10106-JP-A内部で活動しています。しかし、外部からSCP-10106-JP-Aに対してハッキングやサイバーテロを含んだ電子的攻撃がされた時、SCP-10106-JP-B-11が外部のインターネットに出現し、[削除済み]。

 また、SCP-10106-JP-B-15を代表としたSCP-10106-JP-B群がインターネット上のSCP-10106-JPに関する言及を閲覧しているという発言がなされ、後にそれが確認されています(収容記録10106-05参照)。

 

 

 SCP-10106-JP-Cは、仮想現実であるSCP-10106-JP-A内部で創出・生成される未知のオブジェクトです。

 “チュートリアル”の際にSCP-10106-JP-Bの一体から利用者へ移譲が為され、SCP-10106-JP-A内部で利用者に寄生する形で存在しています。

 移譲が為されてから“チュートリアル”を完了し、実際に創出されるまでSCP-10106-JP-A内部の時間で数十分から最大168時間程度の時間が必要です。

 SCP-10106-JPの利用者一人につき一つ生成され、利用者のパーソナリティによってSCP-10106-JP-A内部での形状や能力が決定されます。

 その性質から現在のSCP-10106-JP-Cの総数は概算で約███████個だと考えられています。

 この際の形状は大きく分けて五種類、細かく分けて八種類存在すると見られていて、この形状次第ではSCP-10106-JP-Cとの対話を主とした意思疎通すら可能です。詳細は別紙の資料10106-JP-εを参照してください。

 SCP-10106-JP-Cの異常特性はこの利用者のパーソナリティを未知の手段により読み取る事と人工知能の枠を超えた意思疎通が可能な新たな知性の創出にあります。

 意思疎通が可能なSCP-10106-JP-C個体にインタビューを行なった結果、SCP-10106-JP-C個体は未知の手段によって該当する利用者のパーソナリティを把握する為に利用者の記憶を参照しているという事が判明しました。

 この記憶の把握はSCP-10106-JP-Cが創出されてからも有効ですが、記憶処理が行われた記憶の確認は不可能であるという事が確認されています。

 

 

 

 

 以下は当該オブジェクトに関する記録の抜粋となります。

 

 

 収容記録10106-01

 名称:収容記録10106-01-1

 概要:SCP-10106-JP、及びSCP-10106-JP-Aは20██/07/15に全世界のメディアやネットワークに一切の露出がないまま発売の発表がなされた事で財団の注目を引きました。

 即座に財団の情報処理班によって情報の特定と隠蔽が開始されましたが、試みは失敗に終わりました。

 その報を受け、初期収容の為財団のエージェントによるSCP-10106-JP-Aとの接続及び探査がなされ、その異常特性が把握された事でオブジェクト認定を受けるに至りました。

 

 収容記録10106-02

 名称:収容記録10106-02-1

 概要:20██/07/15の13:30頃、初期収容(収容記録10106-01)の失敗を受け、既に一般に広まっている危険を鑑みて機動部隊き-5(“電網部隊”)と財団が所有する人工知能群によるサイバー攻撃を含んだ強硬的手段による収容が試みられました。

 しかし、財団部隊からのサイバー攻撃が始まった瞬間、人工知能群よりインターネット上にSCP-10106-JP-Bが出現したとの報告(おそらく、SCP-10106-JP-11であると考えられる)される。

 直後、人工知能群は[検閲済み]。同時に機動部隊き-5の使用していた財団所有のデータサーバが█基破壊される事態を招きました。

 

 収容記録10106-05

 名称:収容記録10106-05-04 インタビュー記録10106-02-04

 概要:20██/07/15の17:00頃に行われたSCP-10106-JP-B群との対話

 対象:SCP-10106-JP-B-02~10とSCP-10106-JP-B-12~15

 インタビュアー:エージェント・██

 付記:収容記録10106-05-01 インタビュー記録10106-02-01から続くインタビュー。

 財団により可能な限りのSCP-10106-JP-B群との会話を要請され、“チュートリアル”の場で対話が行われている。

 SCP-10106-JP-B群は収容には非協力的ではあるものの、友好的な態度を示している。

 

 エージェント・██:それでは、どうしてもSCP……███████・███████の自発的な収容は認められないという事でしょうか?

 

 SCP-10106-JP-B-07:はい、申し訳なく思いますがその通りです。私達にも果たさなければならない事があるのです。

 

 エージェント・██:分かりました。ありがとうございます……それでは、その果たさなければならない事、という事についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

 

 SCP-10106-JP-B-15:あー、ごめんねー。流石に詳細は教えられないかなー。でも、<マスター>(※1)の現実での生命は決して危険な目にはあわせない事は保障するよ。それは間違いない。

 (※1 SCP-10106-JP-A内部での利用者の名称です)

 

 エージェント・██:詳細ではなくとも、簡略な物でも結構です。それにしても、後遺症は全くないのですか? この技術は現世代の技術と比べても非常に高い物の様に感じられます。

 

 SCP-10106-JP-B-15:あ、ごめん。生命には間違いなく危険はない筈だけどー、精神については……リアル過ぎる事による現実的な影響がある事は否定できないかな。

 それと、簡単な目的かー、うーん(SCP-10106-JP-B-15の後方、SCP-10106-JP-B群よりも更に後方に視線を投げかける)

 

 そうだね。とりあえず今の目的は問題なく███████・███████を運営進行していく事で間違いない筈だよー。

 

 エージェント・██:それはつまり、███████・███████を運営する事で其方に何らかの得がある、という事でしょうか?

 

 SCP-10106-JP-B-07:申し訳ありません。この件に関しては現時点ではそれ以上は言う事はできません。

 

 SCP-10106-JP-B-15:ごめんねー。<マスター>としてこの世界に来てくれたら絶対歓迎するからー。

 

 エージェント・██:……いえ、返答ありがとうございます。

 

 

 

 事案記録10106-02

 名称:事案記録10106-02 実験記録10106E-03

 概要:SCP-10106-JP-Cの異常特性が財団に確認されました。

 実験の為にD-100059がSCP-10106-JP-A内に接続した所、創出されたSCP-10106-JP-Cの特性や能力に二週間前にD-100059が実験に参加したSCP-10106-JPを色濃く想起させる特性を持つに至りました。

 この後に更に実験を重ね、SCP-10106-JP-Cに利用者の記憶を参照する異常特性が存在する事が判明しました。

 

 

 実験記録抜粋

 

 名称:実験記録10106C-03

 概要:“チュートリアル”の際、キャラクターを作る際に人型以外のキャラクターを作成し、SCP-10106-JPを利用する。

 目的:SCP-10106-JP-Aの仮想現実としての評価の為。また、現実とは全く違う身体を動かす際の機能評価。

 対象:D-100073

 結果:D-100073は茶色の毛並みの一般的な柴犬の様に見えるキャラクターを作成した。

 しかし、“チュートリアル”を終えてキャラクターの身体を操る事は困難だった。

 “チュートリアル”を終えた直後は柴犬のキャラクターで四足歩行で歩行する事すら覚束ない様子だった。

 だが、実験の経過を観察していた財団職員と共にSCP-10106-JP-A内部で6時間の訓練を行った結果、歩行する事は可能になった。

 身体能力はゲーム上のステータスの域を出ない。嗅覚の発達についても曖昧な結果しか得られていない。

 追記:柴犬のキャラクターを作成する際、“チュートリアル”の担当をしていたSCP-10106-JP-B-15より、その身体ではおそらくまともに動かすのは難しいだろうという旨の進言がされていたようだ。

 どうやら、SCP-10106-JP-Bには承知の事態だった様子。

 メモ:概ね予想通りの結果。今後の訓練次第では十全に走り回る事も可能だろう。

 これがオブジェクトでなければ良い訓練場にできるのかもしれないのですが……

 気になったのは嗅覚に関する結果。これは生態的な特徴は完全には再現できていない可能性が高いのか?

 

 名称:実験記録10106C-08

 概要:“チュートリアル”を終えてSCP-10106-JP-Cを創出した直後のDクラス職員を現実世界に戻し、即座にBクラス記憶処理を行う。

 目的:利用者のパーソナリティによって形作られると宣言されているSCP-10106-JP-Cに対して記憶処理剤は有効か評価する為。

 対象:D-100085

 結果:D-100085はSCP-10106-JP-A内部に4時間滞在し、SCP-10106-JP-Cを無事創出させた直後現実世界に帰還。

 記憶処理は問題なく行われ、D-100085のSCP-10106-JPに関わった以降の記憶が完全に除去されたのを確認した。

 しかし、再度D-100085をSCP-10106-JP-Aに接続してみた所、D-100085が創出したSCP-10106-JP-C個体は創出されていた状態だった。

 幸運にも創出されたSCP-10106-JP-C個体は意思疎通が図れる状態だった為、インタビューしてみた所非常に混乱している様子だった。

 SCP-10106-JP-C個体はいつ自分が創出されたのか、その経緯について完全に忘却している様子だった。

 しかし、自身がSCP-10106-JP-Cである事とD-100085が自身を創出した者である事はしっかりと認識している様子だった。

 メモ:興味深い結果。どうやらSCP-10106-JP-C個体は自身であるSCP-10106-JP-Cに関する根源的記憶を有していると予測される。

 また、D-100085との関わりからやはりSCP-10106-JP-C個体とそれを創出した利用者とでは何らかの繋がりが生まれるというのは確定的である。

 

 

 名称:実験記録10106C-09

 概要:“チュートリアル”を終えてSCP-10106-JP-Cを創出する前にDクラス職員を現実世界に戻し、即座にBクラス記憶処理を行う。

 目的:創出される以前のSCP-10106-JP-Cに対する記憶処理の効果の確認実験。

 対象:D-100090

 結果:[編集済み]

 追記:この件を受けて特別収容プロトコルが一部改訂されました。

 メモ:あまり気分は良くないですね。

 

 名称:実験記録10106C-13

 概要:“チュートリアル”の際、キャラクターを作る際に人型以外のキャラクターを作成し、SCP-10106-JPを利用する。

 目的:SCP-10106-JP-Aの仮想現実としての評価の為。

 対象:エージェント・カナヘビ

 結果:エージェント・カナヘビは非常に小型のニホントカゲに見えるキャラクターを作成した。

 身体の操作や感覚器官に関しても現実の身体と相違ないという結果が得られた。

 エージェント・カナヘビはSCP-10106-JP-Cを創出する前に現実世界へ帰還し、実験の記録を行った後に自発的にBクラス記憶処理を行った。

 追記:実験記録10106C-03の再調査。プロトコル改訂により実験の許可が下りた。

 メモ:実験記録10106C-03で嗅覚が上手く働かなかったのはおそらく現実世界の身体とは余りにも感覚が異なっていた為と考えられる。

 再度試すのは不可能であるが、人型のキャラクターを作成していたら逆にまともに動けなくなっていたのだろう。

 中々に懐かしくも面白い体験やったけどもう出来ないし記憶もできないんやな、残念や。 -エージェント・カナヘビ

 

 

 名称:実験記録10106E-02

 概要:創出されるSCP-10106-JP-C個体の特性を調査する。

 目的:パーソナリティを参照し生成されるとされているSCP-10106-JP-Cの詳細を把握する。

 対象:D-100051。D-100051は殺人の容疑で逮捕され、Dクラスとなった経歴を持つ。

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【殺人鋭刃 ジャック・ザ・リッパー】

 器物(アームズ)型のSCP-10106-JP-Cであり、形状は刃が歪曲した片刃の短剣。

 SCP-10106-JP-A内部での特性は“人”を対象に攻撃した時、非常に効果を発揮する物だった。

 メモ:Dクラス職員による初めてのSCP-10106-JP-C個体の創出。

 その特性もD-100051の経歴や嗜好と合致する物であった。

 今後も問題がなければ創出されたSCP-10106-JP-C個体の記録を継続する。

 以後実験記録10106Eの記録報告は省略された物とする。

 

 名称:実験記録10106E-04

 対象:███研究員

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【破戒剣 シヴァ】

 器物(アームズ)型にして男性(アポストル)型のSCP-10106-JP-Cであり、男性型の際はスーツ姿の白髪の長髪を纏めた10代前半の少年の姿となり、器物型の際は黒色の刀身に幾何学模様の入った両手剣の姿。

 その特性は攻撃力の増加と破壊不能対象の破壊。

 また、実験開始後に互いに意思疎通を図れるSCP-10106-JP-Cが創出された初めての例。

 メモ:インタビューにより、SCP-10106-JP-C、及びSCP-10106-JP-B群は利用者の記憶を読み取れる可能性が浮上しました。

 [削除済み]

 以後はプロトコルの再制定が行われました。特別収容プロトコルを熟読した後に実験を行います。

 

 名称:実験記録10106E-11

 対象:A-████

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【噴獣神 フンババ】

 魔物(ガードナー)型のSCP-10106-JP-Cであり、創出時点で3mを越える体躯を持った巨大な偶蹄目の動物の姿。

 その特性は非常に強力な吐息による攻撃でした。

 メモ:異常特性を持つ対象がSCP-10106-JP-Cを創出させた場合は本人の有する異常特性を想起させるSCP-10106-JP-Cとなる可能性が高いだろう。

 しかし、だからと言って創出されたSCP-10106-JP-C個体はその利用者に異常特性の起源に関する記憶が定かではない場合はそれを把握する為の材料には成り得ないと考えられる。

 以後の異常特性を保持した存在を対象とした実験は研究主任との協議の下に行う様に周知してください。 -███研究主任

 

 名称:実験記録10106E-16

 対象:エージェント・██。エージェント・██はかつて機動部隊る-9(”蚊遣り火”)に所属していた経歴を持つ。

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【絶滅光銃 ブリューナク】

 器物型のSCP-10106-JP-Cであり、形状は真白の狙撃銃。

 光線が発射される銃であり、命中精度、射撃速度は非常に優秀。SCP-10106-JP-A内部の動物タイプのモンスターに特に有効であるとの結果が出た。

 有効なモンスターの種類がドラゴンタイプに変更された。理由は調査中。

 

 名称:実験記録10106E-25

 対象:D-100060

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【爆速淑女 ターボ】

 乗騎(チャリオッツ)型にして女性(メイデン)型のSCP-10106-JP-Cであり、女性型の際は古めかしい着物を着た黒髪の10代前半の少女の姿となり、乗騎型の際は特徴のない黒色を基調とした小型車。

 その特性は非常に速い速度で走行する事が可能であり、更に敵対者に自身よりも速い対象が居る場合は必ずその対象よりも速く走行が可能になる特性を持つ。

 メモ:まさか、都市伝説のター[検閲済み]

 

 名称:実験記録10106E-32

 対象:エージェント・██。エージェント・██はかつて機動部隊イオタ-8("星守")に所属していた経歴を持つ。

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【天象基 ギャラクシア・コスモ】

 建物(キャッスル)型のSCP-10106-JP-Cであり、形状は落ち着いた景観の小屋であり、内部は疑似的なプラネタリウムとなっている。

 その特性はSCP-10106-JP-Aにおける能力強化とステータスの自動回復、そして外敵に対する自動反撃となっている。

 一般的な建物型のSCP-10106-JP-Cと比べ、耐久度はかなり低い様だ。

 

 名称:実験記録10106E-40

 対象:D-100085

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【悪虐獣 アンリマユ】

 魔物型のSCP-10106-JP-Cであり、詳細不明な黒い霞を纏った四足獣。

 その特性は敵対した対象が“最も恐ろしいと思っている”ものに変身する能力。

 また、このSCP-10106-JP-C個体は意思を持つ魔物型のSCP-10106-JP-Cであるというのに関わらず、敵対こそしないものの利用者であり創出者であるD-100085との円滑な意思疎通が不可能な様子。

 メモ:基となるパーソナリティの想起が困難な珍しい例。

 D-100085本人は財団に対する恐怖心から来るものだと主張している。

 SCP-[編集済み]と似た特性だというのはただの偶然だろうか?

 

 名称:実験記録10106E-68

 対象:██研究助手

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【無明乙女 アヴィドゥーヤ】

 空間(テリトリー)型にして女性型のSCP-10106-JP-Cであり、女性型の際の容姿は概ね"消照闇子"の物と同一でした。

 その特性は暗所を起点と終点にした空間跳躍です。また、空間跳躍攻撃も可能です。

 メモ:██、お前本物だよ……

 

 名称:実験記録10106E-72

 対象:D-100099。D-100099は轢殺による殺人の容疑で逮捕され、Dクラスとなった経歴を持つ。

 結果:創出されたSCP-10106-JP-Cは【軍巨神艦 ナグルファル】

 乗騎型のSCP-10106-JP-Cであり、黒紫色を基調とした、悪魔の様なイメージを抱かせる外装をした機械戦艦に見える。

 だが、その様な外観でありながらも戦闘能力は全くなく、その巨体と速度、また陸海自在移動による人員物資の高速・大量輸送を得手とする。

 

 

 補遺1:エージェント・██による報告

 先日20██年██月██日、新たにSCP-10106-JPの担当職員として配属されたエージェント・██ですが、SCP-10106-JPはまさにカバーストーリーを使わなくても自然に「時代を先取りした最先端なゲーム」でした。

 私は幼少期よりゲームは好きだったので、まさに夢のゲームを味わう事ができたのは非常に嬉しいのですが、これはあくまでSCP-10106-JPの調査の為の報告です。

 SCP-10106-JP-A内部は非常に広大であり、少人数の担当職員では満足な研究が難しいと考えられます。

 そこで、既に全国的に人気を博しているSCP-10106-JPの研究の為に、限られた財団職員やDクラス職員だけではなく、財団職員と縁のある一般利用者を限定的にEクラス職員として雇用する事を提案いたします。

 メモ:検討しておきます。ところで、ゲームの話相手が欲しかった訳ではありませんね? -███研究主任

 

 

 補遺2

 ブライト博士の禁止リストに下記の項目が追加されました。

 ・ブライト博士がSCP-10106-JPに接触する事は何があろうと認められません。

 ・ブライト博士がSCP-10106-JP-AにあらゆるSCPを接触させる試みは何があっても阻止されなければなりません。

 ・SCP-10106-JPはデスゲームだという事を職員に流布される事は禁じられます。現時点ではSCP-10106-JPは現実世界の生命にあらゆる損傷を与える報告は為されていません。

 ・SCP-10106-JPの担当職員にSCP-963を接触させる事は認められません。

 ・財団職員以外のSCP-10106-JPの一般利用者にSCP-963を接触させる事も当然認められていません。

 ・SCP-10106-JPの面白さを他の職員に喧伝する事はやめてください。プロトコルの違反に繋がります。

 ・ブライト博士がインターネットを通じてSCP-10106-JP-B-15を挑発する事は阻止されます。相手が温厚だからと言って調子に乗らないでください。

 ・SCP-963はブライト博士のSCP-10106-JP-C個体ではありませんし、ブライト博士は<マスター>でもありません。貴方はそれよりも何倍もタチの悪いものです。

 

 

 

 補遺3:O5-██からの通達

 SCP-10106-JP-B群は財団の収容に非協力的ですが、SCP-10106-JP全体の異常特性の一般利用者への危険性の低さやSCP-10106-JP-Aに攻撃を行わなければ総じて人類に対して友好的であります。

 また、現状ではSCP-10106-JP-B群を除いた異常特性はすべてSCP-10106-JP-A、仮想現実内に限定される現象である事と確認されている異常特性から現実世界へ何らかの異常特性が侵食する可能性は低いと考えられます。

 その為、財団が保有する他のオブジェクトと比べても研究の優先度は低いと言えるでしょう。

 よって、SCP-10106-JPに対する研究の縮小の命令を下します。

 私達は危険性の少ないオブジェクトに過剰な資源と人材を浪費する余裕はないのです。

 

 

 補遺4:███副研究主任の報告

 SCP-10106-JP-B群には現在、共通の確固とした目的があると称しており(収容記録10106-05参照)、財団の収容を拒否し続けています。

 更に、SCP-10106-JP-A及びSCP-10106-JP-B群の現実に存在するデータサーバーの特定や情報処理班による追跡もその悉くが無効化されており、SCP-10106-JPは全く収容されていない状況であると言えます。

 また、SCP-10106-JP-B群は人類に友好的ではありますが、彼らも意思を持つオブジェクトでありながら、現在も全国のインターネットを自由に行き来できる存在となっている事には強い危機感を覚えざるを得ません。

 彼らはただの人工知能ではありません。人間と同様の思考を可能としており、何時心変わりがあるかも知れない非常に危険な存在なのです。

 よって、当オブジェクトのKeterクラスオブジェクトとしての再分類を申請します。

 

 

 補遺5:O5-██からの通達

 申請は却下されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Footnotes

 SCP-10106-JP-Cは、曰く利用者のパーソナリティ、つまり記憶や経歴、個性や人格を参照して創出される物らしい。

 では、それらを全く持っていない利用者がSCP-10106-JP-Cを創出する場合はどうなるのだろうか?

 研究主任に相談し、研究の足掛かりにしてみるのも良いかもしれない。 -██博士

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 以下の情報はセキュリティクリアランスレベル5以上の職員にのみ開示されます。

 セキュリティクリアランスを提示してください。

 

 

 

 

 

 補遺6

 事案報告が発生しました。

 詳細は事案記録10106-03を参照してください。

 当該オブジェクトはO5評議会による審査に掛けられ、オブジェクトクラスの再検討が予定されました。

 

 

 

 

 

 名称:実験記録10106E-106 事案記録10106-03

 対象:D-100106。D-100106には実験の為、Fクラス記憶処理を施した後に自我再調整を実施せずにSCP-10106-JP-Aへ接続させる。

 結果:[削除済み]

 




 資料10106-JP-ε
 ・SCP-10106-JPにおけるSCP-10106-JP-Cに関する情報はこちらの資料に詳細を添付してください。
 ・新たにSCP-10106-JP-C個体を創出、もしくは既存のSCP-10106-JP-C個体が進化・変化した時には該当担当職員が簡易レポートを添付の上追記・編集をお願いします。
 ・その他何かSCP-10106-JP-Cや資料SCP-10106-JP-εに関する疑問・質問等がございましたら、███研究主任までお問い合わせください。

 担当職員名:███研究主任
 <マスター>名:エアーバード
 創出結果空間(テリトリー)型にして男性(アポストル)型のSCP-10106-JP-C、【啓世条 オラクル】
 特性:念話
 備考:空間の範囲内のみ任意の対象と制限もなく、音も解さない会話が可能になるSCP-10106-JP-Cです。
 一般の空間型のSCP-10106-JP-Cと比べて範囲が非常に広く、一般にSCP-10106-JP-A内で使用されている凡そのあらゆる阻害(ジャミング)の効果も受けない事から連絡、通信用として非常に有用な物であると考えられる。
 このSCP-10106-JP-Cの特性を活かす為、私はSCP-10106-JP-A内では中央大陸の中心にある国家、“カルディナ”での行動を主にしていく事とする。
 




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SCP-963「不死の首飾り」
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ブライト博士の禁止リスト
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