無限の世界と交錯する世界   作:黒矢

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頭にSCP-____-Jを受けてしまってな……SCP-____-J許せねぇ!
だがお前を殺すのは最後にしてやろう……


【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】/【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】

□■<黄河・商都> 【高位練体士】リン・コンロン【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】

 

 

 

「あかしけ やなげ 緋色の鳥よ くさはみ ねはみ けをのばせ」

「《練技・大熊筋》――よ、っとぉ!」

「よっしゃリン君、こっちの檻もよろしく頼むぜぇ!」

「任せといてー!」

 

 ここは商都――七大国が一つ、黄河の国内でも西側に位置する都市の一つで、その都の名前から見ても分かる通り、西に座する隣国、カルディナとの交易盛んな商業都市だ。

 砂漠の熱波と共に数多の商業品が日夜ここに届き、そして黄河中へ散らばっていく前段の中継地点なのだ。

 近頃は世界中で大なり小なり事件が続いて起きているこの世界であるが……そんな事関係がないとばかりに常と変わらぬ活気溢れる様が目立つ都市でもあった。 

 

「赤時化 夜薙げ 緋色の鳥よ 草食み 根食み 気を伸ばせ」

 

 ――尤も、実際は全く関係がないなんて事がある訳がない。

 黄河自体も近頃渦中の王国との関係があるし、隣国にしてこの商都としては重要な取引関係にあるカルディナだってグランバロアとの対立が激化しているのだ。

 少なからずこの黄河にも、この商都にも影響が出ているのは間違いない。

 ……だが、それも国として、そこに住む人々として見れば影響が出ているのは極々僅かな一部の上層部のみの事だ。

 所属する<マスター>を含む、殆どの一般人にとってそれらの他国の大事であっても話に聞く程度、全く実感は湧かない物なのだ。

 

「赤し毛 柳毛 緋色の鳥よ 草食み 根食み 毛を伸ばせ」

「それにしても、此処(黄河)は本当に変わらないですね。実は僕、他国の戦争とかテロの事とか聞いて結構皆怖がるもんだと思ったんですけど……まぁ、僕自身も実感なんてまるでないんだけど」

「そうは言っても、最近の大きな戦争なんて<マスター>の中の、更に上位陣(ランカー)の戦いだぜ? 俺達みたいなのにとっちゃ雲上人も良い所だろうよ? 俺達が慌てた所で何も変わりゃしないだろ?」

「それもそうですかねー?」

 

 ……その割にはカルディナを通した軍需品の売買が数年前と比べて明らかに増えているんだけどね。

 と、ティアンの中ではそこそこに才能のある青年は思うのだが――確かにそれも事実なのであった。

 合計レベルにして400……一昔前なら秀才や天才呼ばわりされるそのレベルであっても、<マスター>が増加した今の時代であっては雑兵も良い所だと言うのは彼自身が誰よりも自覚していた。

 カンスト(合計レベル500)には至れず、<エンブリオ>も持たず、不死性もなく……当然の如く超級職も特典武具も持っている筈がない、ビルドも際立って目立った物のない戦闘系である彼はだからこそ、その才能を生かす戦闘系ではなく今も単純肉体労働に汗を流している。

 ……黄河だって最近の他国とのゴタゴタに積極的に関わっている訳ではないとはいえ、モンスターによる被害は常と変わらず途絶える事はない。

 それでも彼がこうして呑気に街中で平穏に暮らしているのは――やはりそれも、<マスター>のお陰なのだ。

 

「阿傾け 矢投げ 緋色の鳥よ 九叉食み 音食み 卦を伸ばせ」

「まっ――何かあってもウチには<黄河四霊>の皆様がいらっしゃるからな。黄河はこれからも安泰だぜ」

「ええ、それは確かに。……カルディナとの協定に、王国との約定もある。…………後は、天地(東の修羅達)が大人しくしてくれるなら何も憂いる事はないと思うんだけど」

「はっはっは……そいつぁ中々難しいだろうなぁ」

「ですよねぇー…………」

 

「淦如け 野凪げ 緋色の鳥よ 苦鎖食み 子食み 化を伸ばせ」

 

 だが、そんな雑談していても内心では仮に天地が何かしらの行動を起こしたってこの国の<マスター>、それも最上位の<黄河四霊>達なら何とかしてくれるだろうと思っているのだった。

 何せ、此処は泰平の国、黄河。

 偉大なる古龍を祖とし皇として知と武を備え持ち、〈SUBM〉【四霊万象 スーリン】の襲撃も退け、それでいて内政も外交もまるで隙のない安寧を築き上げてきた唯一の大国なのだ。

 だからこそ、彼らは、この国に住む人々の心に未来への不安はない。

 変わらぬ日々が今日も、明日も、その先も続くと信じているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緋色の鳥よ 未だ発たぬ」

 

「…………は?」

 

 

 

 ――そして、何の前触れ前兆もないままに、唐突に……その平和は終わりを迎える事となった――――

 

 

 

 

 

 

 

『KETERKETERKETERKETERKETER――――!』

 

 笑う。嗤う。哂う――瞬く間に大国の一都市を平らげた赤き魔鳥が、且つては“朱雀”とも呼ばれし緋色の神鳥がで染まった商都を空中から睥睨し、そして得られたリソースを知覚し、特大の喜悦の相を表して大笑していた。

 

 眼下の商都に残るはもはや血と肉と死と、そしてかの魔鳥、【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】にその精神を啄まれ喰われた憐れな被害者のみ。

 

 もっと、もっと、もっと、もっと――

 人の心の、血肉の味を知る魔鳥は、新たな獲物を求めて被害者達を操り――その歩を各々の知る多くの人間達(次の被害者)が集まっている場所へと向かわせる。

 そして、(獲物)を見つけたら暴れさせる……精神を支配した被害者に対しても簡単な命令しか下せないが、それで十分だ。

 それだけで十分なのだ。この恐るべき〈UBM〉――<イレギュラー>にとっては。

 今も滞空し続けている神話級〈UBM〉に相応しき基礎能力(ステータス)も、広域殲滅攻撃スキルも、被害者達の心から徴収した数多のスキルすらも、その恐るべき力の前では余禄と言う他ないのだから。

 

 

  

 精神世界(・・・・)に住まう赤き魔鳥は一時身を潜めていた仮初の宿主から飛び発ち、己の思うが儘に力を振るい始めた。

 それを止められる者は果たして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆旧ルニングス公爵領 【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】

 

 

 

 【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】。

 それは、長い、永い間〈UBM〉を司る者……かの管理AI(<無限級エンブリオ>)にも放置され半ば忘れ去られていたとある〈UBM〉の名だ。

 

 それはモンスター担当でさえ知らぬ間にその世界に発生した、正しい意味でのイレギュラー(想定外)とも言える突然変異と思われた一体のモンスター。

 ……自立して行動する一つの肉塊のモンスターだった。

 

 肉で構成されたスライム種、あるいは不定形で更により不安定なキメラとでも言うべきそのモンスターは考える脳もない筈の状態でありながら、他のモンスターと同様に活動を開始した。

 それこそ、発生時の想定外とは裏腹に通常のスライムやキメラ等のモンスターと変わらぬ生態のままで……そのモンスターは一見自然にその世界に根付いたのだ。

 自己の保全を第一とし、他の生物を取り込み捕食する――実にお手本通りのスライム種の様な行動だった。

 見逃していただけで普通に何らかの要因や実験で生まれただけのモンスターではないか? という説が有力視される程にモンスターをしていたそれは、しかし後に〈UBM〉に認定されている事からも分かる通りに、それは生まれの特異さ以上に〈UBM〉となるに相応しき特徴を有していた。

 

 一つ目は固有スキル。《神食の理》。

 その効果は【喰王(キング・オブ・イーター)】の固有スキルに酷似した生物を捕食し取り込む事による獲得経験値(リソース)の増加と対象のHPSPMPの全てを自身に最大値ごと足し込む物。

 ……際限なく自身を強化する事が出来る様になる固有スキル。

 肉のスライムの様な存在であるからか、他のスライムの様に消化を経る必要もなく直接己の力をしている事を表すかの様な固有スキルであった。

 

 だが、〈UBM〉担当が注目したのはそこではなく、もう一つの特徴だった。

 それは――かのモンスターが有する知性だ。

 

 蠢く肉塊のモンスター。しかし、その行動、活動には明らかにモンスターとしての習性としてもそぐわない高い知性が見え隠れするのだ。

 敵対者の少ない地中を主な活動場所にする等は序の口で、安全に狙える相手を選り好みする手腕であったり、獲物の最も油断する瞬間を狙って奇襲したり、自身の肉塊の極一部を切り離し罠として利用する事や、それどころか自然環境を利用し、時には工作までして機械的な罠を作り出す事すらあるほどだった。

 一介の肉塊とは思えぬ程の知性――果たして、当時ではスキルとしては規定されない物であったが、戯れに■■■■■を与えればそれに因んだ固有スキルでも生じるかもしれないと思い、〈UBM〉担当はそれを〈UBM〉として認定した。

 

 

 

 ――――しかし、結果としてその期待は失望に彩られる事となる。

 

 〈UBM〉となった【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】はしかし、確かに新たな固有スキルを発現した。

 しかし、それは《神食の理》で捕食した対象の特質を獲得すると言う物でしかなく、確かにそれで生じさせた精密な触腕や疑似餌を用いた狩りの精度は飛躍的に高まったが……総合的に見て、【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】は余りにも〈UBM〉として“微妙”と言う評価を下さずにはいられなかった。

 

 まずはその能力値(ステータス)。《神食の理》によってHPSPMPは際限なく強化されていくが、他のステータスは同レベル帯の他の〈UBM〉と比べてあまりにも貧弱だった。

 獲物を抑え付け捕食する為かSTRこそそこそこある物の、〈UBM〉として要肝心なENDやAGIは形態故か悲しい程に低い物があった。

 これではいくらHPを無尽蔵に近いレベルまで強化できるとは言え、一度相応の実力者に補足されたら何も対応できずに遠距離から削られ続け討伐される未来しかあり得ないだろう。

 

 また、〈UBM〉最大の特徴である筈の固有スキル、《神食の理》とその派生スキルも……やはり、高い評価は下せなかった。

 まず捕食し取り込む事を前提としている為、後に【アビスシェルダー】と呼ばれる事になるとある〈UBM〉と同じ問題を抱えつつ、更にスキルの学習(ラーニング)ができる訳でもないその捕食スキルは固有スキルとして見ても強力な物ではなかったのだ。

 その制約から、捕食取り込みが可能なのはティアンか、あるいはモンスターですらない動物や昆虫群のみ……動物類の場合一体辺り、HPが数十から数百程度しか増やせず、SPやMPに至っては相応のサイズを持つ獲物でなければ全く得られない場合も少なくない。

 そして、返り討ちと討伐の危険性を理解してかティアンを獲物にするのは万全を期して半年に一度あるかないか程度の体たらく――

 

 そもそも、ティアンに対しても、生態系に対しても殆ど被害を与えていない事から管理AI以外に対してはその存在を知覚されてすら居ない始末なのは、もしかしたらその知性による物か……は、流石の管理AIでも分からない。

 が、それでもあれが〈UBM〉としての基本理念――後に来たるべき<マスター>と<エンブリオ>の進化を促す為の障害(・・)となれる事はないだろう。そう見切られ長い間放置される事となり……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は進み、西暦2045年5月某日。

 

 【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】は――まだ、生き残っていた。

 何かから逃げる様に人目を避け、地中を進み、地中の小動物や昆虫類を食み僅かずつ、僅かずつ――――そして、それを千年単位で繰り返し続け、神話級の〈UBM〉になってもまだ変わらずに在り続けていた。

 HPは数百億を優に越え、上限(レベル100)に達したその実力は絶望的に低かったAGIとENDすらも五千に届く程となり、STRに至っては神話級モンスターの標準に至る五万にもなる非常に強力な〈UBM〉に――――!

 

 ……否。

 能力値こそその通りではあるが――〈UBM〉としては、強力と言うには程遠い物があった。

 それは、そうだろう。

 何せ、神話級に至って尚【アルコーン】は新たな固有スキルの獲得にも固有スキルの強化もされておらず、その戦法は〈UBM〉になる以前の物から全く進歩していなかったのだから。

 その戦闘力の脅威は隠蔽系統スキルすら習得していない原始的な奇襲と、五千程度しかないAGIから成る戦闘力……正直に言って、大抵の伝説級〈UBM〉の方がまだ厄介であると言える程に、神話級〈UBM〉としては貧弱も良い所であった。

 それでも生き残っているのは偏に、今まで一度も<マスター>に遭遇しておらず、特異な<エンブリオ>の固有スキルによっても補足されていないからに他ならず、仮に補足されればボーナスモンスターとして嬉々として狩られるであろう事は想像に難くないだろう――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――果たして、本当にそうだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、知恵持つ悪()。とある主神に付き従いその糧を掠め取る悪しき従属神。

 且つてとある大戦と計略によって生み出された七番目のアルコーン(アルコーン・セプテム)

 ――そして、力を大幅に減じられ異世界(・・・)に放逐された無様な敗北者、その末路だった。

 

 蠢く肉塊はその内心を悔恨と憎悪を悪意に染め上げて――それでも己が知性と理性でもってそれを抑え込み、永い間その力を蓄え続けてきた。

 下等な魔物にその身を扮し、人を欺き他の魔物達を欺き……そして、この世界の管理者すらも欺きながら。

 

 絶対に元の世界に戻って自身を追放した彼奴等を()()()()()()にして貪り食ってやるのだと誓いを立てて……しかし、それももう難しくなっている事も理解していた。

 既に管理者の中にも疑心を持たれている事を察していたし――管理者に非ずともこの身を危険視して地中に潜んでいるそれを見つけ出し始末する為の刺客が送られている事を知覚していた。

 

 ……ならば、是非もなし。

 準備は未だ足りないが人々も魔物も刺客も、そして果てには管理者すらも喰らって糧にして、凱旋するしかないという事だ。

 

 

 ……実力で言えば伝説級〈UBM〉にも劣る存在が何を、と思う者も居るかもしれない。

 確かに、かの〈UBM〉の能力は上述した物以外にも《神食の理》によって副次的に増幅し続け、数十億にもなる数値となったSPとMPがあるが……しかし、ただの肉塊の〈UBM〉にそれを使用して行使するスキルはない。

 完全に宝の持ち腐れなのだ。

 

 

 ――――()()()()()()その筈だった。

 実際に〈UBM〉担当の管理者すらも、完全にそう思っていた。

 

 だが……仮に、その〈UBM〉担当が、イベント担当か、あるいは雑用担当の管理者にかの〈UBM〉について相談していれば、あるいは今から起きる事件の概略は大きく違う物となっていただろう。

 

 そう、魔法スキルなどなくとも……<アーキタイプ・システム>の補助がなくとも、己の実力と技量、そして魔力(MP)のみで術を行使していた前例の存在を知っていれば――――

 

 

 

 

 ……また、これは余談ではあるが。

 かの七番目のアルコーン――それは、とある一つの世界において世界最強の力を誇っていた魔術師、()()()()()()()()()()()と呼ばれる一人の人物から分かたれた存在である。

 絶対なる不死性は完膚なきまでに破壊され、強力な現実改変能力は失われ、サーキックとしての能力は僅かにしか残っていない。

 

 しかし。

 〈UBM〉担当が注目したのは肉体、魔力的能力の増生の方ではなく――このモンスターの知性(・・)であった。

 それは、即ち――

 

 

 

 

『……████████(さぁ、はじめよう)

 

 【アルコーン・セプテム】は何事か、判読できない言葉を呟き……そして、魔力(MP)を、技力(SP)を……予め細工しておいたリソース(経験値)で未知の術式を編み込んで――

 

 

『――〖限界突破(レベルアップ)〗』

 

 

 いとも容易くレベル100の壁を突破した。

 新たな段階(準インフィニットクラス)に至った【アルコーン・セプテム】が得た能力は……超限定的な次元操作(・・・・)の能力。

 それは、固有スキルとして……データ的に言ってしまえば、異次元より力を引き込み、HP・MP・SPを自動回復し続け、そして経験値(リソース)を自動的に獲得し続けると言う物。

 一般的なプレイヤー(<マスター>)が見れば「《神食の理》の亜種強化版かな?」と思う程度の物だがその真意は――

 

 

███████(やはり、来るか)██████(魔女の使徒め)

 

 地中より這い出て……血と死の染みついたこの地、旧ルニングス公爵領より、遥か地平線の先を見据えてそう言葉を零す。

 自らを狙っているのがこの世界で“魔法最強”と呼ばれる存在である事は知っていながらも、その力を知っていながらも……全く臆する様子はない。今まで全ての敵対者から逃げ隠れしてきた者と同じモンスターとは思えないくらいに。

 何故なら――事此処に至り、自らの力を秘匿する必要もなくなったから。

 この世界、殆どの者が<アーキタイプ・システム>という補助輪がなければ魔導の神髄を行使できない未熟者だと断じた上で……己が(・・)()()()()だと理解しているから(・・・・・・・・・・)――――!

 

 

 数百億を超える膨大に過ぎる生命力(HP)を誇り、数十億と言う規格外の魔力(MP)から異世界の術理を行使する異形の〈UBM〉――<イレギュラー>、【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】。

 にくにくしき魔神が、声無き咆哮を上げて世界に覇を唱えんとした瞬間だった。

 

 

 

 ――――〖神食の理〗を成し遂げんとする為に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

『KETERKETERKETERKETERKETER――――!』

 

 

『██████████████████――――――』

 

 

 

「おい、どうしたんだ、やめろぉぉぉお――!?」

 

「な、なんだこいつは――〈UBM〉かっ!? こんな時に……!」

 

 

 

 

 異なる場所に同時期に、現れたるは超常を越えんとする化物……<イレギュラー>。

 

 甚大なる被害を齎し続ける怪異を前に――<マスター>よ、手を取り合い奮い立て!

 

 

 

「オい。お前、この前王国で暴れてタ皇国の<超級>だろウ? まさカこれモ――」

「ち、違――私は不審者でも犯人でもないです――っ!?」

 

 

 

「チぃッ! あれ(・・)はお前のとこの不始末なんじゃねェのかぁ!?」

「ふん、一体どれだけ昔の事を話しているのだか。今はそんな事を言っている場合では――ッ!?」

 

 

 

 

「……不味いぞ! 感染者(・・・)が増えてきやがった。戦線が崩壊する――ッ!?」

「ク――四の五ヲ言ってられル状況じゃねエ。敵じゃなイなラ手ヲ貸セ、“脳髄喰らい”!」

「ええ、勿論です…………手早く終わらせられそうには、ありませんがね――」

 

 

 

 幾度となく続く衝突と撤退、犠牲の下に――脅威の敵(<イレギュラー>)の能力は丸裸にされてゆく。

 

 ……だが、しかし。それはこの世界、<Infinite Dendrogram>では、()()()()()()という意味では全くないのだった――!

 

 

 

『〖魔術拡散化(マジックブラスト)〗――〖原子分解(ディスインテグレイト)〗』 

「なぁ……あれって削れているのか?」

「れている訳ないだろう! あの防御魔法が見えないのか!? 必殺スキルか奥義クラスか――或いは、()()()じゃなきゃまともに徹らねえんだよッ!!」

 

 

 

「「「こうたる なとる 緋色の鳥よ ひくいよみくい せきとおれ――――」」」

「うっそだろ、()()()ぇ!? 逃げろ逃げろ、()()()()()()()おお――!!」

「永遠に無敵モードとかちょっと酷過ぎやしないですかねぇ!?」

「それでも、それでも迅羽さんならなんとかしてくれる……!」

 

 

 

「――そうだ、それで良い。我らだけではどの道あれは斃せんだろうよ。だが、こうしてその総力と屍を以て足を止めるくらいの事は出来るものだ」

「癪だが、仕方ねえ。これほどの相手を倒せるのは――」

 

 

 

「そう、災厄の如き敵手を倒せるとするならば……相応しい相手が――<超級(スペリオル)>の準備が必要だからな……!」

 

 

 

 

 

 規格外に勝てるのは、当然規格外のみ。

 

 僅かな時を経て……相応しき役者達が揃い踏みする――――

 

 

 

 

「――《無双之戦神(バルドル)》」

『――《■■■■■(レヴィアタン)》』

「《月面除算結界・薄明》」

「本当は対【大賢者】【地神】用だったんだけどねぇ……行っておいで、【KMS(キングサイズ・マギジェルス・スライム)】君!」

「まさかこういう形で働く事になるとはね……《愛する者達へ(ケリドウェン)》――MP供与三千万」

「今聞き捨てならない事が聞こえた気がするんだけど……まぁ緊急事態だ。不問にしよう、《エターナル・ソウル・ジェイル》!」

「《ソウルクラッシュ》――ッ!!」

 

 

 

 

 

 ――――斯くして、悪虐の魔神は滅びゆく事となる。

 

 かの者を送った誰かの思惑通りに、異邦より飛来せし魔の神性はその望みを叶える事なく僅かな波紋すら残さず消え去り果てた。

 

 

 そして、もう一柱も――――――――

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

「……どうやら、漸く皇族の方々もお集まりになったみたいですね?」 

 

 

 

「オい。条件ハ伝えテ、ちゃんト要求は呑んダんだかラさっサと教えろヨ――()()()()()()()()()()()とやラをサ」

 

 

 

「何……? 貴様、それは一体どういう事だ!」

 

 

 

「理解できませんでしたか? それとも頭が固いんでしょうか。つまりは――――」

 

 

 

 

 

「簡単に終わらせられるけど後味が最高に悪い方法か、それとも苦労した上で外様の、“脳髄喰らい”の私に大事な国民を預けて賭けに出るか……さぁ、選んでもらいましょうか――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 Episode End…………?

 




ステータスが更新されました――――

【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】
種族:エレメント
主な能力:精神世界展開・感染
最終到達レベル:122
発生:認定型
作成者:[削除済み]
備考:三形態を有する無理ゲーの権化。しかも同時に存在できる。
 その正体にして第三形態である本体は“人”にのみ感染し得る精神系状態異常、【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】。当然の権利の様に発症者を操る能力がある。
 感染者からHPSPMPを徴収し、そして感染者によってダメージを受ける/感染者にダメージを与える事により状態異常判定を行われ際限なく感染していく。
 また、第二形態時の【エゴ・フレイドー】からの攻撃でダメ―ジを受けても感染する。
 この状態異常がこの〈UBM〉の本体である為、結論を言えばこの状態異常に掛かっている者が一人も居なくなった上で存在を維持する為のMPが尽きる事で完全に消滅する。

 第二形態は感染者から徴収したコスト等を使用して展開される 精神世界及びその精神世界で形成され存在する【エゴ・フレイドー】。
 凶悪になって諸々の制限が取っ払われた【ドリームランド】。意思を持たない者は入れない状態で神話級ステータスと感染者が保有するスキルも使用できる【エゴ・フレイドー】と殴り合いが出来るぞ!
 ただし本体ではないので基本的にはどれだけ攻撃してもすぐに感染者から徴収したコストで再生する。
 ダメージを受けたら精神世界現実世界で共に【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】に感染する。
 感染者が0になった後は残った魔力を振り絞って極小規模のこの精神世界を展開し感染者を生み出すしかなくなる。

 第一形態は現実世界に出現する赤き紅き朱き魔鳥の絵姿、質量を持った幻影。
 スペック上は第二形態の物と同じだが現実上の感染者達と連携する事も出来る。
 全形態がその存在を維持するのに魔力や技力を消費する為、緊急時には三形態の中で最も切り捨てられやすい。
 しかし、通常時は精神世界を展開する際はこの第一形態を基点として安定と負担の軽減を担っている為無用と言う訳でもない。

 討伐するのに一番簡単な方法は感染者を広域殲滅攻撃で皆殺しにした上でその攻撃を行った殲滅者も“自害”する事。
 少しでも生存者を増やす為には状態異常である【精神赫鳥 エゴ・フレイドー】の感染者を一人残らず治療していく必要がある。……ダメージを喰らったらアウトな状況で、暴れ回る無数の感染者を相手に特化型超級職レベルの精神系状態異常治療を行い続けられるのなら、だが。
 
 
【腫智肉輪 アルコーン・セプテム】
種族:キメラ
主な能力:神食・肉体の増生・次元操作
最終到達レベル:287
発生:認定型
作成者:█████・███
備考:にくにくしい肉塊の〈UBM〉。
 非常に長期間続けてきた《神食の理》のお陰で経験値(リソース)もHPMPSPも膨大な値を蓄えていたにくい奴。
 多分高い知性があった上ですら異世界魔術が使えなかったら神話級最弱のまま【地神】に狩られていた事だろう。
 正直に言ってその脅威は9割は異世界の術理であるが、逆に言えば1割程度は触腕群とSTRによる攻撃も脅威と成り得る。
 自動回復が割合回復で無く固定回復だったお陰で普通に継続的な圧倒的火力で削り切るのが最適解。
 数百憶を削り切れる火力なんて早々ないから平気平気(フラグ)。
 迷った時は、異世界へ! 大体財団と教会とイオンの不始末。
 

SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja

SCP-3000「アナンタシェーシャ」
http://ja.scp-wiki.net/scp-3000
SCP-444-JP「█████[アクセス不許可]」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-444-jp
Tale「緋色の鳥よ」
http://scp-jp.wikidot.com/locker-s-tales-red-scarlet-crimson
SCP-610「にくにくしいもの」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-610
SCP-2217「鎚と鑕」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2217
サーキシズム・ハブ
http://scp-jp.wikidot.com/sarkicism-hub
O5司令部書類
http://scp-jp.wikidot.com/o5-command-dossier

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