□■天地・功刀家近郊 【閻魔】御剣刹那
「えぇー! 【
「うむ。あやつは今武者修行の旅に出ており、この天地には居らぬ。何時戻ってくるとも知れぬ故、残念だがお引き取り願おう」
此処は修羅の島国とも呼ばれる国、天地。
その中でも功刀家という大名が統治
大名が統治する領地の一部とはいえ、その端にある村の一つでしかない此処に見るべき物はない……筈であったのだが。
今、そこで二人の人物が圧し合い問答をしているのであった。
一人は、天地が誇る武芸者達の頂点の一人。
超級職、【閻魔】に就く壮年の男性、御剣刹那だ。
一軒家を背に問答をしているもう一人を宥めすかし確りと説明し、穏便にこの場を収めようとしている所だ。
【閻魔】――【岡引】系統の超級職であり、西の【
だが、この功刀領はここ最近起こった“事件”……とある〈UBM〉
それこそ、大名本人すらも決して軽くない傷を負う事となり、現在も尚その統治機能には大きなダメージを受けたままとなっている。
それ故に治安の悪化を予期し彼が此処に派遣されているのだった。
そして――もう一つ。
ジョブ特性の影響もあり、天地の超級職の中でも穏健派であった彼の
かの【勇者】が居た頃は引っ切り無しに挑戦者が奇襲夜討ち朝駆けも上等とばかりに殺到していたのだが、流石に当人が居ない今となってはそれもなくなる…………
……筈だが、それを知らない者や興味関心で見物しに来る者はそれでも定期的に表れて来るし、その相手の道徳心次第ではそんな空き家の一軒家が荒らされる事も考え得る。
故にこうして定期的に見回りを行い――そして、今そんな輩の一人であろう、家の前で困惑している少年を見つけたのだった。
そう、少年。
問答をしていたもう一人は、このかつて【勇者】が居た地を訪ねてきた一人の少年だった。
<マスター>としてはそう珍しくもない美麗な中性的な容姿をしており、この天地では物珍しい金髪碧眼に――そして、チグハグな
衣服の基調は純白なれど、
刹那は、その様な装いをする者がどういう者か……知っていた。いや、
天地では、その様な者が非常に多いのだから。
容姿に気を配ったり統一感を出し魅力を増すのではなく――ただの
即ち――
まだ齢にして10にも届かないであろうその少年。
言葉遣いや態度はそこらに居る武芸者を志望している少年少女らと変わらぬ小生意気な物でしかない。
だが、その装備から感じる力が、隙のなさが、そして何より――その総身より感じ取れる圧倒的な
(確か……<マスター>は性別も年齢も関係ないのだったか。羨ましい事だ)
それにしても彼の場合はその振る舞いから、外見と内面の乖離は見られないが――だとしても、そうでないとしても、刹那のやる事は変わらない。
「そも、貴殿は何用で此処に、【勇者】の居所へ来たのだ? 内容次第では拙僧が承るが――」
「えっ本当っ!? それなら――当然、【勇者】の下を訪ねる理由なんて一つしかないよねっ!」
そう――例え相手が誰だったとしても、それは変わらない。
即ち――
「僕、【勇者】様と一度全力で戦ってみたかったんだよね! でも居ないのなら仕方ないから……おじさん――僕と野試合しようか!!」
【勇者】の不在を狙う不届き者に、武芸者の頂点の力を見せてやる事だ――――
◇◆
◆◇
そして、二人は一軒家から離れ、人里から離れ……人気のなければ障害物もない平原に出る。
向かい合って立ち、戦意を高め――
「おじさん、“棺桶”の用意は出来てる?」
「ふっ、ほざけよ。当然だ、使うつもりはないがな」
言葉と共に、刹那は黒い【アイテムボックス】を、対する少年は左手の甲を――<マスター>の証たる<エンブリオ>の紋章を見せた。
真円の中に描かれた十字架の紋章。それが彼の<エンブリオ>を象徴する物だった。
「ふふーん、どうかなー? こう見えて僕、かなり強いよ?」
「ああ、そうであろうな。――その靴、先の動乱の〈UBM〉の特典武具であろうが。油断なぞできる筈もなし」
「おおー、やっぱり分かるもんなんだねー……でも、それくらいは出来てくれないと、僕も楽しめない、かな」
準備は整い、用意は整い、言葉の応酬も交わして――どちらともなく、武器を。それぞれ長刀と直剣を構える。
それと同時に、大気が荒れる程に二人の魔力がその場に露わにされる――何方も、上級職の域に収まらぬ超級職の魔力量に相応しい暴力的な魔力の高まり。
最後の言葉に――
「――天地で野試合をするのは最後かもしれないからね。快勝させて貰うよ!」
「言ったな小童。ちぃとばかし骨まで溶かす
そして、立場も、年齢も何もかも違う二人がその相手の戦意ににやりと笑い。
「――【征夷大将軍】様が傍勤め、決闘ランキング10位、【閻魔】御剣刹那。いざ――――」
「今は何処にも所属していない風来の<マスター>! 【剣鬼】の
「「尋常に――勝負!!」」
◇◆◇
◇◆◇
◇◆◇
□■【閻魔】御剣刹那
(こやつ、この力は――ッ!)
辺り一面を数百枚もの【符】が舞い踊る。
火炎が巻き起こる。
銃弾が、刃が交差し接近し敵手の胴体を切り捨て――
戦いは激化し、しかし……何も状況は好転しない。
《影分身の術》の分身を斬り捨てた所で再度使用すればいくらでも復活するそれと相対するのが何と不毛な事か――しかし、それを無視する事も叶わない。
敵手の少年――ジーニアスの、四体の分身。
剣を構えた本体と、
それを理解してか本体は防御や回避に専念し、こちらに消耗を強いていく構えだ。
「言葉の割にッ、随分消極的じゃないか……!」
「あっはっは、おじさんの一撃が直撃したら僕なんか一撃で吹っ飛んじゃうかもしれないからねー!」
――耐久力だってEND型超級職並にはある癖に、良く言う!
刹那は――既にジーニアスのステータスを
それを為すのは彼が所持する特典武具の一つ、【天眼鏡 カイケガン】。
相手のジョブやステータス等を看破し、幻覚すらも見通し真実の姿を映し出す魔力と、不壊の力の込められた
しかし――
――殆ど見る意味が無かったな、と。
そして、ある意味納得したのだ。――あの
話には、他の武芸者達との噂話程度には……彼の存在を知っていた。
だが実際に見ればそれは――――
ジーニアス
レベル:100 (合計レベル:1000)――――――――
異常――この世界の常識からすれば、異常に過ぎるジョブ欄。
そしてステータスも、常識には合わず、ジョブに見合った物……話に聞く<エンブリオ>によるステータス補正もあるのか、非常に高い物となっていた。
超級職にも至らずにそれだけのステータスを得ると言うのはそれだけ脅威であった。
そもそも、上級職が――それも、下級職を内包したそれが10個と言うのは、見ているだけで
――やはり……
全く違うジョブスキル同士を組み合わせ
四体の影分身に分割された五分の一のステータス――それですらも、カンストした武芸者と同等以上の実力を発揮するその異能も。
白兵戦闘に当然の様に魔法を組み合わせ、意識外から真正面から望外の一撃を放つその力も。
分身達との連携、それ以前に分身同士が
そして何より、あり得ない筈の数多のジョブ達――
それと相対した天地の上位武芸者であれば、誰もが思うだろう。記憶に新しく、そして鮮明に残っている彼らが誇る強敵の事を。
そう、眼前の少年、ジーニアスが持つ力は彼らが知るそれとほぼ同一の物なのだ。
――――【
「さながら――“小勇者”って所か……!」
「
何せ、ジーニアスが頻繁に野試合をしていたのは今から大分前……例の〈UBM〉の動乱が起こるよりも前の事。
彼の<エンブリオ>の――【至光天 アダムカドモン】の必殺スキルを習得するよりも前の事だったからだ。
当時はそれこそステータスも今と比べ半分程度しかなくスキルも比べようがない程に貧弱な有り様。
むしろ、その様な状況であっても【勇者】を想起させ噂話として話題になる程度には善戦していたのは偏に――
だが、そもそもからして……確かに相似点こそ幾つもあるとは言え、彼の【アダムカドモン】の持つ固有スキルと【勇者】の固有スキルは全くの別物だ。
【勇者】の固有スキル《
それを必殺スキル――《
奇しくも【アダムカドモン】の能力特性は全能と……そして、昇華。
後者の方に――ジョブの昇華の方にリソースを傾けて発現させた結果として、【勇者】の物にはまるで敵わない物となっている。
それでも、上級職が最大12個も取れて、更に全能の能力特性からなる全ステータスに対する高い補正と固有スキルによる全種強化が合わされば、まだその上級職のジョブ枠を殆ど埋めていない【勇者】に比肩し得るステータスとなるのだが。
しかし、だからと言って【アダムカドモン】が全ての枠を埋めきった【勇者】の下位互換なのかと言えば――そうではない。
その<エンブリオ>が持つスキル制限解除の固有スキル、《
そして何より――神の似姿を冠する名を持つ<エンブリオ>それ自体が、その銘、特性の最大の発露が現れる必殺スキルの為の物。
《
だが、それも今戦っている二人にとっては関係のない事。
今重要なのは、
風属性魔法によって撒き散らされた数多の【符】からは数多の【符】の存在その物によって多くの欠点が相殺された、光速の光属性魔法が――不可避のレーザーが連射され。
分身達は隙を見せれば合体魔法によって分身とは思えぬ程の超威力の魔法を用い、隙を見せなくても己の才覚で造り出したオリジナルスキルによる銃撃――《ハイブリッド・バレット》による痛撃が絶え間無く放たれる。
そもそも本体が剣だけではなく、蛇腹剣に槌に双剣にと手を変え品を変え、そのどれもが達人級の技量で挑みにかかってくるし、かと思えば【高位結界術師】による多重防御結界によって一度の直撃も許しはしない構えだ。
勿論、刹那も――天地にその名を馳せる超級職、【閻魔】もただそれを座して放置していた訳ではない。
【閻魔】は物理系、魔法系のステータスが共に伸びるタイプ――所謂物魔両刀型の超級職だ。
直接罪人と対峙するからか物理戦闘にも適性があり、そして罪人を焼き尽くす火属性と闇属性の複合属性魔法も使用できる。
更に、【審判王】と同様に罪人に対して有効な固有スキルを複数持つ、こちらも万能型と言える超級職だった。
しかし……【閻魔】は相応に複雑ではあれど、当然ではあるが【勇者】程に埒外なリソースを保有している訳ではない。
多くのスキルを習得し、適正も有する代わりに平均的に伸びるそのステータスの上昇値は高くなく、壮年に達し高めに高めたそのジョブレベルは天地の超級職の中でも上位に位置する――が、それでもそのステータスはジーニアスのそれに比べ若干劣る程度。
特に――特典武具で強化されていると思われる超威力の回避不可能な光速を誇る光属性魔法が厄介だ。
周囲を舞う【符】から放たれるそれは僅かな前兆しかなく、常に全力の魔法障壁を張り巡らさなければ対処できない。
それを欠かせば一瞬後には肌が焼け溶け、次の瞬間には全身を貫通している事だろうから……
「そもそも、【符】から放つのは【陰陽師】の魔法で分身が行えるのは影者の
「それが僕の力だからね――っと隙ありぃ!」
「――チィッ!」
突出した影分身が移動スキルを――《縮地》の類を使用して突っ込んでくる。
と思えば、本体がふと腕を振り――刹那が直上に飛び上がって回避した直後、分身が真っ二つになった。
そこには何もなかった筈だったのだが……【カイケガン】を通してみれば、そうではないと理解できる。
隠蔽スキルによって隠された
「――覇ァ!!」
空中での防御代わりに、全周に黒炎を放射。
滞空中での一瞬の静止に――その間隙に、首から下げたアミュレットを、アクセサリーを握り潰す。
そのアクセサリーの名は――【紫竜玉 ドラグリーラ】。
装備者に多大な
――これを相手に長期戦は出来んな。ならばこのまま――仕留める!
己の技量で再現した、【魔法剣士】系統の《魔力放出》にも似た魔力噴出による超推進力。
それにより中空から直接ジーニアス目掛けて突撃を慣行し、その命を――
「――くっ!?」
前面に集中させた多重防御結界。
それにより一度目の突撃が受け切られる。
【閻魔】の固有スキル《地獄の主》――相手の総討伐カウント数が高ければ高い程与えるダメージに補正を与えるパッシブスキル――の効果により強化されたその一撃は、ただの一振りでジーニアスの展開した防御結界の殆どを破り捨てる。
続く次撃によってその身体をも――
「させない――よっ! イグニスッ!」
『応とも。――確りと
しかし、その次撃が放たれる前に――声が聞こえた。
二人しか居ないこの場所で、他に声を発する物など…………居た。
その声の発生源は――ジーニアスの右手の甲。
<エンブリオ>のある左手ではなく――【ジュエル】のある右手の甲が僅かに光を放っていて――――
「『《
【ジュエル】が光輝いたかと思った次の瞬間――ジーニアスが空を飛んだ。
背部には刹那の放つ黒炎と対を為すかの如く白炎が吹き出し推進力となり――その推進力全てを制御し、超高速で自在で空中で動き回る術を得ていた。
優に超音速に達している速度で持って飛び上がり……そのまま空中で弧を描き、今後は自分から刹那の方へ――突貫してくる!
――いやいや、炎属性魔法を使えるジョブなんて無かったであろうに――しかし、此方に来るのならば願ったり叶ったりというもの……!
長刀を正眼に構え、……刀身に黒炎を凝縮して集中させて纏わせ、次こそは一撃を以て斬り捨てると言う意気を放っていた。
それを阻止せんと周囲の【符】から数多の光線が部位を集中させて突き刺さるが……【ドラグリーラ】の力によって高められた魔力による障壁を打ち破るには至らない。
ただ全身に魔力を漲らせ、
「――なぁんて、ただで攻略させるつもりは毛頭ないんだよっ!」
――――閃光。虚を突いて放たれたそれは【
だが、刹那も然る者。数瞬の後に常通りの視界を取り戻し――舌打ちする。
――やってくれる……!
取り戻した視界には――上空に数十を超える程に数を増やしたジーニアスの姿が映し出されていた。
同じ顔をして、同じ武器を持ち、同じ様に刹那の方を見やり――同時に落下してきていた。
更にはそれぞれが霊紙で作られた新たな【符】を――【陰陽師】の式神を顕現させ、式神をも用いた追撃の構えを取る。
――《幻惑》――だけじゃない。式神を媒介に光属性魔法で幻像を作りだしただけなのも混ざっているのか!
一瞬だけ【カイケガン】で幻術の確認を行い、そして直ぐに無意味さに気付く。
ただそこに光が像を結んでいるだけで視覚に移るそれは、システム的には幻覚とは判定されない。
「偽・多重影分身の術ってね! いっくよー!』
――式神が作りだしているだけの幻を黒炎で焼き払うか?
――否、あれは【陰陽頭】も使っていたねちっこい復讐呪詛が含まれた呪毒の【符】の式神だろう。纏めて焼き払えばダメージと
一瞬の自身の中での問答。
数多に増殖したジーニアスの幻像への対処にその一瞬だけ思考を割き――不要と断じる。
そして一瞬の後。
――――追突。
数多のジーニアスの幻像と一体の実像と、そして刹那とが激突。
――そして、当然の様に刹那はジーニアスの本体を斬り捨てた。
天地で長年過ごす修羅の一人である刹那にとって、何のヒントもなく本体と分身を見分ける事など造作もない事だった。
【カイケガン】がなくとも、その前から彼は【閻魔】。天地の修羅だったのだから。
そして。
「その手も――知っている!」
確かに先程斬り捨てた――直前に転移……式神との《キャスリング》で逃げられたジーニアスの次善の攻撃を斬り返す刃で受け切った。
その手は――【勇者】草薙刀理も使っていた緊急手段。
当然、天地の上位武芸者……所謂修羅勢には既知の一手。予見できない訳がなく。
「くぅ――《降魔》ぁ!]
「《煉獄の業火》よ――!!」
鍔迫り合いの状態のまま――魔法をぶつけ合う。
だが、しかし……ジーニアスは【祓魔師】の奥義ではあれ、放っているのはただの強化されただけの純粋魔力であるのに対し、刹那のそれは超級職【閻魔】の奥義たる炎獄。
それも【ドラグリーラ】によって強化された全身から放たれる闇を孕んだ魔炎は、ジーニアスに耐えられる物ではなく…………
……数秒と経たずににそのHPを全損させ、その身体を光の塵に変えるのだった――――――――
◇◆◆
◆◇◇
衝撃。
……次の瞬間。
衝撃と共に刹那は――
流れる様な動きで、対応できない程の
「――ッ! ……ふぅ」
咄嗟に反応しようとするが……それは叶わず。
それも当然。直前まで確かに鍔迫り合いをしながら全力で奥義である魔法を行使し終えた直後なのだ――
ああそうだ。この結末も分かっていたのだ――閃光による目潰しをされたその時だろう、との予想も立てて。
何故なら、この手は――やはりかつて【勇者】も使っていた手の一つ。それを更に悪辣に改造した物であろうから。
「……本当に、貴殿らはこういう事ばかり覚えやがって。相対する拙僧らの事も考えて欲しい物だ」
「名付けて裏・影分身の術、なんてねー……兎も角、僕の大勝利ぃ、だね! 超級職の人に勝てた、やったー!」
刹那の愚痴も何処吹く風とばかりに喜びはしゃぐジーニアスに、再度ため息をつく。
“小勇者”とは言うが、戦闘面以外は本当にあの【勇者】とは大違いだ、と。
だが、己は敗者であり……ジーニアスが勝者、即ち強者だったのだ。
【勇者】と同様に――或いは、まだ上級職を殆ど埋めれていない刀理であれば良い勝負が出来るかもしれない程に。
そういえば――噂によれば、ジーニアスはこの後天地を出て旅をする予定なのだという事を聞いた事があった。
ならば、もしかしたら……その“勝負”が実現される時が来るかもしれないと考え、僅かに苦笑する。
きっと、その戦いは他ではもう見られない程に珍しい物になる筈だから。
――或いは、それを勘案して敗者としての勝者への供物を提供するのも良いかもしれぬな。
負けたからには――思考を切り替え晴々とした面持ちで内心でそう呟く。
……自身が若人であるジーニアスに負けたという事に思う事が無い訳ではない。
だが……しかし、それも一つの
思えば、彼だけではなく【■■神】を始め他にも天地で名を馳せ始めている<マスター>は増え続けている。
ならば……
――この“小勇者”に自身の戦いを預けてみても良いかもしれぬ、な。
御剣刹那は敗北の味を噛みしめながら……旅に出た且つての
そう思ったのだった――――
…………End
ステータスが更新されました――――
名称:【至光天 アダムカドモン】
<マスター>:ジーニアス
TYPE:ボディ
能力特性:全能・昇華
スキル:《光天使の身体》《全主相応》《全主権限》《全主恩寵》《天上の意を叶える者》
モチーフ:神の似姿にして神に最も近いと言われる存在、“アダムカドモン”
紋章:真円の中に描かれた十字架
備考:種族:天使の身体に置換するTYPE:ボディの<エンブリオ>。
偶然かそれとも必然か、【勇者】の物に非常に近しい固有スキルを持つ<エンブリオ>。
全種強化の《全主相応》と種族置換と天使に相応しい耐性獲得の《光天使の身体》を除けば本当に互換性能。その最終目的は…………
……尤も、実際は第六形態である現時点では【勇者】の《万能》にはまるで太刀打ちできない。100個ずつとかちょっと桁が二つくらい違います……
話を聞くだけで興味を刺激されまくり、天地を出る前に【勇者】の居所へ突撃したのが今回の話の発端だったんだとか。
もしかしたら天地での野試合の勝率が低かった(低くない)のは【勇者】の仕業だったのでは……? これは居ても立っても居られる訳がないのだった!
ちなみに、ボディの特性として補正のマイナスが挙げられるが、【アダムカドモン】はその特性上常人より劣る面があってはならないとの思いでステータスにマイナス補正は存在しない。
――と思いきや、《光天使の身体》によって闇属性耐性が極限まで下がっている。
その為、刹那との戦いで火と闇の複合属性魔法を防御結界を張らずに直撃していたら超級職の魔法と言う事もあり、連射するタイプの牽制の魔法であっても傷痍系状態異常を免れない程度のダメージを受けていた。
一歩間違えていたら普通にそのまま負けていてもおかしくない悪相性だったのを快勝したのはきっとジーニアス自身の才覚と成長した実力のお陰であろう。
ちなみに、この後御剣氏に相性の非常に良い有用なジョブを教えて貰う事になるのだがそれはきっと