最初が1月頃、そして3月頃、5月頃、7月頃、9月頃と来て今話は11月頃スタートです。
つまりそういう事です。
□■皇都郊外・<叡智の三角>本拠地 【
11月某日。
皇国クランランキング一位、<叡智の三角>。
その本拠地――クランハウスは皇国の首都ヴァンデルヘイムの郊外の広大な土地を使って建てられた巨大な研究設備兼工廠だ。
周囲にも多くの空き地を抱え、新兵器の試験やTYPE:キャッスルの<マスター>のメンバーが円滑に利用できる様何重にも配慮されている。
内部には部門別に分けられた複数の研究室が立ち並び、更に広間や会議室、談話室に娯楽室、各種資材が収められた【アイテムボックス】が敷き詰められた倉庫に食堂、事務室まで多種多様な居室が設けられている。
各々の施設の規模も機能性も非常に高く、流石はクランランキングのトップランカーのクランハウスだと感心される事も少なくない。
……尤も、最初から此処まで立派なクランハウスだった訳ではないのだが、それはさておき。
そんな御立派な<叡智の三角>のクランハウスであるが、当然ではあるが内部には居住施設も存在する。
ティアンのサポートメンバーの為に、リアルの時間もこっちの時間も気にせず作業を止めない様なクランメンバー達の為に、そして、クランオーナーやサブオーナーと言ったクランの中でも重要な位置を占める者達専用の個室も設けられている。
この大きなクランを纏める責任ある立場にして、多くの機密情報を扱う者であるが故に――かどうかはともかく。
その<叡智の三角>の個室の一つ――クランオーナー、Mr.フランクリンは自らの私室で数多の紙の資料、そして自筆のノートを見比べ唸っていた。
「これとこれとこれを組み合わせれば……行けるかしらね? 本来であればオカルトを持ち込むのなんてナンセンスだけども、まぁ
彼が見ていた資料は以前作成した“歌うエンジン”の資料、皇国の<Wiki編纂部>からそれと比較する為に高値を払って取り寄せた天地の絡繰り人形やレジェンダリアの精霊人形に関する資料、そして死霊術に関連する資料――だけではなく。
――今まで数多の
……元より、この資料を手に入れるのはクラン、<叡智の三角>としても当初より抱いていた夢だった。
当時の限られた情報だけであっても、もし動力炉を作成する事ができればできる事は無限に広がっていく――そう思っていたからだ。
しかし……やっとの思いで実際に得られた動力炉に関する資料は穴開きばかり――ではなく。
今の時代の技術者達ではティアンであろうと<マスター>であろうと全く理解できないブラックボックスの部分が大量にあったのだ。
可能な限りの解読と出来得る限りの再現を試みても……実験は失敗に終わった。
非常に重要な部品が足りないかの様に……まるで起動する事もなく、クランの皆と、ついでに皇国のお偉いさん方と一緒に肩を落としたものだ。
その後何度かの追試を経て、現時点では再現は不可能だと結論付けられてこの資料も仕舞われておいたのだが――
「いやぁ、やっぱりこれを思い付くのは間違いなく変態でしょう――精神的エネルギーをリソース的観点から見てそれを動力にしよう、だなんて」
――――怨念動力構想。
仮称としてそう銘打たれたそれは、
――そして、それを発展させた機体の開発研究を行う許可を求める嘆願書だった。
死霊術師系統が扱う魂より発せられる負の精神的エネルギー。
死霊術師系統はそれを爆薬にしたり物理エネルギーに変換したりする事が可能であり……それを応用する事で機械の動力にする事も可能であろう、という事はフランクリンも理解できた。
……しかし、その上でその難易度が非常に高いであろう事も。
マジンギア――<
その名前が示す通り、ドライフ皇国で主に使用される機械技術や<叡智の三角>が使うそれらと“魔法”と言うのは不可分な存在だ。
動力を魔力で補っている以上それも当然の事だろう。
それ故にこの<叡智の三角>に所属している彼らは当然魔法に関しても熟知しており、その上でこの魔法と言う存在の奥深さに関しても重々承知なのであった。
機械技術系以外の魔法系統のジョブに就いている者も珍しくない。
そんなクランのオーナーであり、本人も【大教授】という研究専門の超級職に就いているMr.フランクリンはその最たる者だ。
だからこそ、技術的な問題、魔法的な問題、怨念と言う存在の持つ特質からなる問題etcetc――この構想を実現させる為には多くの問題点がある事が予想出来てしまう。
勿論、彼の想像が全てではなく、幸運にもやり遂げられる可能性も無きにしも非ずだが……それでも、知識があり、常識的に考えればその可能性が低い事は火を見るよりも明らかだった。
――――
「ふふふ、<マスター>は常識の外にある存在だ――なんて言ったのは何処の誰だったっけねぇ」
無限の可能性を謳う<マスター>の可能性の卵――<エンブリオ>。
それを以て常識を覆す事が出来る程の超人であるからこその、<マスター>だと嘯く者も居る程に。
そう――出来るのだ。適した<エンブリオ>があれば。
その構想が抱える多くの問題を解決できる<エンブリオ>さえあれば……解決できるのだ!
だが、悲しいかな。<叡智の三角>は技術屋達のクラン。
怨念に関する物、怨念や、或いは精神を制御できる類の<エンブリオ>を持つ<マスター>は所属している訳がないのだった――――たった一人を、除いては。
「――オーナー? 戦闘斑のマスター、只今参上しました。何か御用でしょうか……?」
「待っていたよぉ。入ってきて頂戴」
そして、今しがた呼び出したのが、その要の<マスター>――マスターだ。
世にも珍しい無垢なる記憶喪失の<マスター>――
――そう、精神に関する<エンブリオ>を持ち、その上で怨念に関連する特典武具、【囚獄胎海 デイヴァーボース】を所持する、実にこの計画にぴったりな子なのであった!
「ふふ、ふふふふふふふふ――――」
「あの、オーナー。笑い声が少し所じゃなく怖いんですけどっ」
この子が居れば……完成するだろう。
勿論、この子の協力があったとしてもその道は生半可な物ではない。他にも幾つもの障害や問題が待ち受けているのだ。
だが、彼はかの嘆願をしてきた者達を――このクランの皆を信じていた。
――
「なぁに、君には少しばかり協力して貰いたいだけさぁ。そう、この――」
そこまで言って切り、そしてマスターの前に一枚の紙を差し出した。
そこに書いてあるのは前述の通りの怨念動力構想。
――――と言う
「愛と勇気を糧として動くスーパー★ロボットのテストパイロット兼正式パイロット第一号にねぇ!」
そう、仮に
否、ない!! ある筈がない!!!!
――先にも言った通り、それは決して容易い事ではないし、短い道程でもない。
数多の失敗が、幾つもの障害が彼ら、彼女らを襲い掛かるだろう。
しかし――しかし、彼らは決してその様な事では諦めない。
何故なら、
この物語は、きっと、多分、おそらく……後に世界に覇を唱えし傑作となる機体の物語、その序章である――――――――
「どういう事なんです――!!??」
◇◆
◆◇
◇◆
そして始まる新機体を巡る開発者達の闘いの日々。
その障害は多く、パイロット候補のマスターの前に立ち塞がる――
「【
「そう、正の精神エネルギーを制御するのに必要になるだろうからねぇ。ああ、それと此れ等、以前から待望されてた奴隷の【獣戦鬼】と【高位技師】と【高位操縦士】とそこそこ強かったらしいカンストのティアン達と――新鮮でもない生贄だよぉ!」
「わぁい。頑張りますー!」
新たな
しかし――彼らに待ち受ける問題とはこの計画だけの事ではなかった!
「【三極竜 グローリア】を模した機体? このオーバースペックに動力炉付きで作っていいのか!?」
「待て、今月だけでもうメンバー専用機を4機分予定が入ってるんだぞ!? 明らかに時間も機材も人員も足りない!」
「うおおおおどれも造りたい、造りたいぞ――!!」
迫る納期! 増える仕事! 足りぬ身体!
遅々として進まぬ作業に、時には非技術職まで動員して仕事をこなす日々。
「小麦色~!」「ふっ、馬鹿め……格好良い機体と言ったら†黒色†に決まっておろうが!」
「ええっ!? 紅白色が主人公の証じゃないのかい!?」「朱く塗らねえのか!?」
「待て待て待て、機能的には保護色が一番だって」「派手にするならやっぱり虹色でしょー!」
「何を騒いでいるのかと思えば……一番の色はメタリックシルバーだって何で分からないのかねぇ!?」
「オーナーが裏切りやがったー!?」「ふぁっ〇! クソ紛らわしい名前してやがる癖にッ!」
「これがオーナー特権と言う物だぁねぇ……って今理不尽に怒られなかったぁ!?」
「あのー、注文は【グローリア】と同じ黄金色なんですけど……皆さん、聞いてます?」
踊る会議、不和が齎す暗雲。
しかし、そんな状況でも彼らは決して前に進むのを止めはしなかった!
『むむむ。精神エネルギーの扱いは繊細に過ぎます……既存の素材じゃ
「マナタイトでも足りないのですか!? それならもう、後は……」
「ぱんどーろー!」
「なるほど、今現在国から卸されている【アムニール】を少量拝借すれば――」
「ちょぉい! 特殊素材なら【パンデモニウム】で作るから流石にそれはやめて欲しいけどねぇ!?」
「マスターさんの戦法を考えれば既存の武装よりはこの……グランバロア産の【水鉄砲】なんか良いんじゃないかしら」
「とりあえず白兵格闘用に操作性を重点――機体に乗っててもあの拳法って使えるんですかね?」
「勿論――使えますともっ。財団神拳に不可能はありませんっ」
「
完成に近づく新たなる機体。
ならば後は
――皇国内乱。皇国全体を揺るがす一大トラブルに見舞われながらも、それは共に頂きへと近付いて行く――
『【機械王】の子飼いもこの程度かぁ! ――な、にぃ!?』
「近付きすぎでしょう。《
「――――《
「サスガニクセンシテシマッタナ……マスター、ソチラハ?」
「【装甲操縦士】系統の超級職の【
[どれもこれも超級職かそれに準じてるから特務兵ってのは厄介なんだよねぇ……それとマスターちゃんに報告だよぉ。残念ながらこっちには【超操縦士】は来てなかったみたい]
「それは残念です。ところでオーナー、やっぱり機体の魔法防御も重要みたいです……」
そうして、幾星霜の苦労の末に……新たなる力、新たなる機体が完成する時が来る――
「魔力伝導系良し、各部接続良し、機装展開良し、機体スキル発動良し……!」
「《所有契約》良し、《強化改造》良し《コネクティング・ブースト》良し――よぅし、発進だぁ!」
『――了解。【クリアー・メモリー】発進します!』
『Ssyurruuaaaaaaaaaaaaa――――!!』
小型の【マーシャルⅡ】……否、超改良型【マーシャル】。
白兵戦兼特殊用途機体。【心神】の力で制御された正の精神エネルギーを動力として駆動する夢の機体。
【
素であっても純竜級に近い
勿論その強度も通常の【マーシャル】とは一線を画す物であり、更に<叡智の三角>の他メンバーの<エンブリオ>の強化も受けし特殊機体。
……AR・I・CAがクランを脱退した事もあり、きっとこの機体とそのパイロットであるマスターはこれからの<叡智の三角>の戦闘斑の主力として活躍していくだろうと、誰もが想像したのだった――――――――
◇◆
◆◇
◇◆
そして、その想像は――実現する。
この後、直ぐに。
そう、皇国内乱が終息したその直ぐ後に――――
「皇国の未来の為、私達の未来の為に――我が国はアルター王国に対し宣戦布告致します」
「――戦争を、始めましょう――――」
To Be Continued…………
追記:資料10106-JP-ε
担当職員名:アイスバーグ博士
<マスター>名:蒼狗
創出結果:
特性:絶対零度
備考:小型の氷山の様な形状をしたSCP-10106-JP-Cです。
内部空間は展開直後が最高気温の約-50℃であり、展開後時間経過により気温が下がっていきます。
それに伴い外部にも強烈な冷気が吹き出され、更に内部空間では熱量を生じさせる行動は全て失敗に終わります。
利用者本人及び本人が許可した人物はこの冷気の影響を受けず、そして利用者本人はそれ以外でも常時冷気に対する耐性が与えられます。
……進化が遅く、未だ第四形態な事もありますが氷室としての使い道しかないのはどうしたら良いのでしょうか。
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja
SCP-3000「アナンタシェーシャ」
http://ja.scp-wiki.net/scp-3000
SCP-426「私はトースター」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-426
SCP-191「サイボーグの少女」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-191
“アイスバーグ”の人事ファイル
http://scp-jp.wikidot.com/iceberg-personnel-file