試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【一般版】 作:珍歩意地郎_四五四五
18禁版と違い問題部分を削除してありますが、嫌いな方はこの話をスルーして下さい。
それから二日間、混乱した戦闘が続いた。
結果として、補給線をもたない暴動側は火炎放射器の燃料も尽き、態勢を立て直した王宮側に徐々に押されてゆく。
最終的に火薬塔は暴動側に占拠されたものの、おそらく敏感な触発性のパウダーを
井戸上の防爆塔に貯蔵されていた95tものアンモナルが威力を発揮し、耐圧魔法にシールドされていたとはいえ三千戸以上の建屋が全半壊し、王宮のメイン・タワーが崩壊することとなった。
そこからは、鎮圧がとんとん拍子に進む。
ウラで糸を引いていた黒幕も明らかになり、枢機議員と軍の一部が逮捕され、獄につながれた。
四日後、辺境の砂漠をテリトリーとする風虎騎士団の関与も判明し、全土に捜索隊が展開される。
厄介なのは統率者を失って王都の四方に散った獣人たちで、あちこちの家屋に侵入し、
五日目になると各所で掃討戦が本格化されるようになった。
叛徒が立てこもった建築物を建物ごと爆砕・崩壊させる対パルチザン戦法が功を奏し、しらみつぶしに平定は進んでゆく。
反徒に対する王都側一般市民の怒りは収まらなかった。
街灯に、標識に。
家を壊され、あるいは家族を殺された憎しみに駆られる群集が、暴徒の残党を捕縛するや生きたまま吊るし、ノコギリで、あるいはスコップで、ハンマーで追い回す。
首が、腕が、王都の至るところで転がり、王都は憎悪と腐臭に満たされた。
どうやら目星が付きかけた七日目の午後。
先日、スヴォヴォダ曹長の応援が間一髪間に合った伝令班ニキティ伍長が包帯だらけの姿で、部下に指示を飛ばすオレのところに近づくと、
「隊長――お話が……」
「なんだ!ココで言え」
届いた報告書に目を落としながら別動班の隊長たちに指示を飛ばしていたオレは思わず語気荒く叫んだ。
「そのぅ……未確認情報なのですが」
「だからナンだ!」
「
一瞬、ニキティの報告に作戦室が静まった。
その場にいた全員の注目が、自分に集まるのをオレは感じる。
「……そうか」
「隊長のお屋敷も、リディツェ村でしたよね」
これも満身創痍姿の副長が歩み寄ってきた。
今回この男もよく頑張ったと、半分に引き裂かれた心の片方で思う。
この騒乱でずいぶんと成長したようだ 将来は“龍”の隊長としても、十分にやってゆけるだろう。そう、たとえオレが居なくとも……。
隊長、とこの男は一拍おいたあと、
「ここは……もう大丈夫です。装備改変を終えた長距離強行偵察隊が一個小隊、出動待ちです。彼らに行かせましょう」
「いや。彼等には、東の橋で孤立している近衛第三分隊の支援にいってもらう」
疲労に麻痺した心の中で、幸いにも言葉は平然と出た。
そう、まるで他人事のように。
「隊長――!」
「いまは状況中だ。私情を
沈鬱な雰囲気が作戦室を支配した。
王宮の治安が回復すると、街に秩序が急速にもどってゆく。
“5月動乱”(のちにこう命名された)に加担し、その後行方をくらました重要人物にたいする捜索命令も、年若い王に変わって摂政である筆頭枢機卿の名において発布される。そこには“操虎隊”隊長の名も記されていた。
結局、あとを副長や補佐に任せ、単身自分の屋敷がある村に帰ったのは、村襲撃の報告があってから二日後のことだ。
隊員の随行をことわり、単騎で戻ったのは理由があった。
もし、家族に何かあったら、そのときは自分もただでは置かない。
隊長であるオレが居なくなっても、もう“龍”は盤石だろう。
今回の動乱は、はからずも隊員全員を火のように鍛え上げた結果となった。
道を進むと焦土作戦でみたような光景が、あちこちで繰り広げられていた。
燃やされた家。
破壊された板橋。
一つの井戸の周りでは、毒を投げ込まれたものか、周囲で住人たちが断末魔の苦悶もそのままに息絶えていた。
カラスが騒々しい。
腕らしきものを奪いあう野犬の群れ。
死の静寂。ハエの羽音。そして――なにより死臭……。
うすくたなびく煙の他に動くものが絶えた光景の中で、思い出したように藪から突き出る硬直した腕や脚……。
遠征先ならいざ知らず、王都でこのような光景を目にしようとは、夢にも思わなかった。
一軒の門前では、幼いモノを含めた家の者が全員、首を吊られた状態で並べられていた。
腹を“七の字”に切り裂かれ、腸が地面にまで垂れて。そこを逃げ出したらしい豚の一群がキーキーと頭をぶつけあいながら貪っている。争う気配はない。みんなそこらに散らばる死体で満腹らしい。これではまるでカロの銅版画か、ゴヤのエッチングの再現だ。
――カロ?ゴヤ?誰だっけ……。
ふと浮かんだ人名……思い出せない。
リディツェ村の近くまで来たとき、絶望は深まった。
あちこちで焼き討ちされた家々。
荒らされた畑。
そこかしこに群がるカラス。
焦げ臭い気配が立ち込める村にはいると、その思いは強まった。
その臭気のなかに混じるのは、明らかに人の焼けるにおい。
斬られた首が、いくつも街路樹の幹に、まるで大きな果実のようにブラさがって。
一軒の家の前では、人が倒れていた。
オレは馬を降り、近づく。
まだ息があるのか、微かにからだを動かして。
「――!!!」
よく見ればアルネェのお上さんじゃないか。
大きな角の片方は根元から叩き折られ、血膿にハエがたかっている。
オレは大柄なお上さんの身体をようやくのことで仰向けにする。
「おかみサン!――アルネェのお上さん!」
身体をゆすられ、この哀れな水牛属は薄目をあけると、ヒィィィッ、と叫び出した。
「許して……もうユルしてへぇぇぇえぇえええ!!」
「おかみさん!――おかみさんオレだ!!シーアの亭主だ!!」
ようやく彼女は我に返ったらしい。
殴られたとみえる腫れた顔に涙を浮かべて、
「隊長サン?――隊長サン……遅かった、オソかったよゥ!」
「お上さんの家の者はどうした!?サヤ坊は?ご亭主は!」
アルネェのお上さんは震える手で井戸をしめした。
そしてワナワナとブ厚いくちびるを震わせ、
「あと二日、いえあと一日早かったら……」
ゴメンナサイ、ゴメンナサイと呟くお上さんを、荒れ果てた家に運んで休ませたとき、サフィーとも仲の良かった水牛属の子供が、無残にも囲炉裏の自在鉤にかけられた大鍋の中煮られ、息絶えているのがみえた。
オレは五体をバラバラにされた食い残しの胴体を大鍋から引き上げ、できるだけ原型に近い形で板の間にならべてやると敷布でおおってやり、自分は再び馬上の人となる。
打ち壊された教会。
略奪され、ガランとした商店。
黒い血だまりをかたわらに、そこかしこで散らばる死体。
お上さんの言った通り、まだ一日ほどしかたってないと見え、腐敗の兆候が少ない。
オレは大通りを曲がり、自分の屋敷へと続く道に入る。
やがて、彼方に見慣れた形が見えてきた。
思わず一度、馬の脚を止めてしまう。
あぶみに載った足のヒザ頭が不覚にもすこし震えて。
――いや……大丈夫だ。館を出るときに、実家に逃げろとシーアに言っておいたじゃないか。
妻の趣味で緑にあふれた館。
ぱっと見に、被害は無いように見えた。
よかった……これなら、あとは館を修繕する追加ローンの心配をするだけでいい。
だが、門代わりの生垣をくぐった時……。
最初は、全裸の人形がぶら下がっているのかと思った。
オレは下馬して、その物体に近づく。
物干し用の竿の先端が尖らされ、そこに肛門から口まで、
【自主規制】
※ここでは主人公の娘の無残な死にざまが記されます。
娘の
なぜなら新鮮な血の臭いを別のところから嗅ぎつけたからだ。そこにはまぎれもなくオークの獣臭が混じっている。
今は全身が血の復讐を叫び、悲しみなどは思考の端にもうかばない。
あるのは敵を狩る特殊戦闘団員としての本能。
そして戦闘に敗北する
戦闘モードに入った俺は剣の鯉口を切ると、冷静に、全身で気配を探りながらゆっくりと歩みを運んだ。厩には、馬匹はおらずもぬけの空になっていた。そのまえをゆっくりと過ぎ、そして納屋の前までやってくる。
ここは馬用の寝藁や飼料、それに修理が必要な馬具などを保管しておく場所だった。普段あまりひとけのあるような場所ではない。
そっとオレは音のしないように扉を押し開く。
メンテナンスをサボっていた家僕がいたのか、蝶番がイイイイイ……と鳴きながら動いてゆき――そして、中の惨状を平行四辺形な陽光の中にあらわとする。
二人のオークが、妙な形で息絶えていた。
干し肉をめぐって争っていたところを殺されたのか、互いに肉を咥えたまま白目をむいて、乾草のうえにのけ反って。
互いのノドから流れ出た血が、濃く臭う。
血が、ちっとも黒ずんではおらず新鮮だ。
死体を剣の先で突いてみる。まだ十分弾力があり、突いた端から鮮血が流れる。
――してみると、まだどこかに潜んでいるのか。
オレは斥候兵の動きで自分の足音と気配を殺し、裏口から館の中に入る。
外見からは分からなかったが、邸内は
食糧庫は見る影もなく荒らされていた。
娘が結婚の暁に開封をしようと熟成させていた火酒。
大きなハムの原木や、白カビを生やした大きなチーズ。
遠征時に分捕ってきた
屋敷の中に入り、それまで抜いていた長剣を納め、代わりに得物を脇差へと変えて見慣れない室内となった部屋の中をすすむ。
打ち砕かれたイスや
大壺や食器はことごとく割られ、銀器をまとめて溶かそうとした形跡すらある。
床にぶちまけられたワインの饐えた臭い。あるいは飲みすぎて吐きもどした汚物。
代々の肖像画は刃物で切りつけられた跡が無残に残り、客間のシャンデリアは落下して。
妻とさんざん悩んで購入した逸品だったのに。
引きはがされ、敷物代わりにされたタペストリー。
そこには――血と、精液の気配。
娘はここで犯されたのだろうか。
頭を乱暴に動かして幼い口をつかわれた時に抜けたとみえる赤毛のひと房が目につく。
つぎ次の広間を開けたると――すべての答えがあった。
【自主規制】
さきほど納屋で見たオークを殺した者たちの仕業か、いずれも頭部を鈍器のようなもので殴られたらしい。頑丈そうな頭蓋骨がベッコリと盛大に陥没している。
イラマチオをしていたオークを、音のしないよう足で
【自主規制】
※ここでは主人公の妻の無残な姿が記されます。
つい先ほどまで、乱暴が行われていたらしい。
死骸に硬直はきておらず、ハエもたかっていない。
妻が、娘の死にざまを見せられながら暴行されたことは、容易に想像できた。
しかし涙のあとすら精液に犯され、いまは分からない。
なぜ、逃げなかったのか。
実家のある村まで逃げていれば、こんなことにはならなかっただろうに。
――あるいはこの屋敷を守ろうとしたのか。ならばせめて娘だけでも……。
しかし、ここまで来てもオレの心は乾燥したように乱れなかった。
それどころか警報が、オレの全身をピリピリと刺激して止まない。
――まだ……いる。
廊下をしずかに進むと、閉じた扉の下から流れ出た血が固まった場所があった。
そっと扉をあけると、ものすごい腐敗臭。
積み重なった死体の中で、見覚えのある老家令のベストがチラッと見えて。
してみると、オークどもはしばらくオレの屋敷を占拠していたらしい。
ここに
オレは墓所を鎖すように、扉をしめた。
やがて家族専用の居間にやってきたとき、だらしなくソファーに足を投げ出す
闘いにそなえ、脇差を逆手に持ちかえるまもなく、
「よゥ――遅かったな……」
見知った