試製・転生請負トラッカー日月抄~撥ね殺すのがお仕事DEATH~【一般版】 作:珍歩意地郎_四五四五
それから、また一苦労だったんだコレが。
うしろの座席を使い、この女子高生の全身を執拗に拘束しているベルトを解き、黒革の包みから彼女を脱出させる。あのバカぢからのヤクザどもめ。思いっきり拘束したらしくて、ベルトひとつ緩めるのもひと苦労だ。おかげでキャビンの中、汗まみれになっちまう。
相変わらず目隠しと
「いいか?――これから目隠しを取るが、サワぐなよ?」
「……」
「キミを拉致ろうとしていたヤクザはもういない」
「……」
「危ないトコだったんだぞ?とにかく暴れないでくれ。オレは――キミの味方だ」
「……」
「 分 か っ た の か !? 」
返事がないことにイラついたオレは、思わず彼女の全頭マスクに幾つもついた用途不明な金属の輪をつかみ、革にピッチリと包み込まれた彼女の頭を手荒にゆすってやる。
首輪につけられた金具が鳴り、猿轡に犯される
「ったく!――ヤクの売人なんかとカラむから、こんなコトになるんだ!」
腹立たしい手つきでオレは彼女の眼をキツく覆っていた目隠しをとった。
少女はしばらくまぶしそうにパチパチしてあたりを見回していたが、やがて顔面をまるごと覆う革製のマスクごしにコッチを見る。
――へぇ……。
涙目ではあるものの、思いのほかキレイな眼をしたヤツだった。
売人と関係するぐらいの生意気な牝ガキだ。先だって見た汚い言葉づかいから、もっとスレっからしな、ヒネた目つきを想像していたんだが。
全頭マスクうしろの編み上げを苦労してほどき、顔面にピッチリと貼り付いていた黒革を取り去ってみると、こもった汗に茶髪をベッタリと張り付かせる、ゲッソリと疲れた顔があらわれた。
うすく化粧でもしていたのか、ファンデやアイメイクが酷いことに。つけ
学校の生活指導から何か言われないのかね?
あるいは最近の生徒不足から、入学志願者に嫌われないよう、あまり校則はキビしくできないのか……?
などと、そんな考えをウロウロとめぐらすオレの顔を、ボール状の猿轡をベルトできびしく留められた少女は、ジッと見つめていた。まるでこちらの顔を記憶し、あとで警察にタレこもうとする算段をするようにも見えて。
オレはヘクサスから回収してきた生徒手帳を手にした。
よく見れば有名なお嬢様学校のものじゃないか。
中を開いてみれば、裏のビニール部にアメックスのゴールド・カードが挟まっている。当然ファミリーカードだが、やはりイイとこ出の娘なんだろうなとオレは判断する。と、少女を見れば、彼女の目は一瞬、オレの手にするカードにとまるが、スネたような顔ですぐに視線はそらされた。
生徒手帳の写真と本人を見くらべる。
写真の中の少女は女子高生だが、いま目の前でふてくされるのはセンター街でたむろする“まーん”といった印象。
「
年長者の威厳をこめて、オレは相手に向かい合う。
「高校生にしちゃ、ずいぶんアブない橋を渡ったな」
「……」
「いいか?世の中には見なくてもいい闇があるんだ」
「……」
「カネにつられてその世界に踏み込めば、後もどりはできないぞ?」
「……
オレはため息をついた。
「取ってもいいが、騒いだりするなよ?」
「……」
「分かったのかね?」
ようやくコクリ、うなづく少女。
猿轡からのび、後頭部で留められた細いベルトの金具を、これも苦労して取り去る。
少女の口には大きすぎる黒い球をようやく吐き出させたとき、タラリ、よだれが淫猥な調子で紅いセーラー・スカーフに垂れた。
「はうぅぅ……おうちひゃヘンいはっひゃっはぉお……」
舌を固められていたためか、ロレツが回っていない。
おっぱいを菱形に
ムリもない。あの変態ヤクザにハメられた性具を取り去った今は、ノーパンなのだ。
うしろ手にした拘束を解いて、少女はようやく自由となった。
自分のほおをさすり、相変わらず巻かれた首輪を気にする風。
そして、きびしくクビられていたオッパイが痛むのか、しばらく少女は自分の胸をサワサワと揉んでいたが、やがて舌のしびれはとれたのか、ブスッと
「あ~ぁ、バカ見ちゃった!」
ペッタリと張り付いた髪を何度も気にしつつ、
「まァ、ったくアイツらったら……手加減知らないんだから!」
その言い草にカッ!と火のついたオレは、おもわず勢いにまかせ怒鳴った。
「自業自得だ――あほが!」
そしてできるだけ冷たい目でにらみつけ、
「キミみたいな女子高生が、ヘンなトコに首突っ込むからだ!」
「……そんなこと言ったって」
それに対し、ふてくされたような顔で反抗的な態度をしめす少女。
「アタシだって、いろいろ欲しいモノはあるんだモン!」
「シャブでも取り扱ってたのか?それでいくら稼いだ?」
意外にも、この言葉が少女の反抗心を倍化させる。
「アタシがヤクの売人ですって!?――ちょっとオジさん!」
「オジさんとは何だ!」
いよいよ切れかかったオレの勢いに、ようやく少女は少し気おされたらしかった。
「……ナニよ」
「オジさんじゃない、
「は!?」
今度は一転、愛液臭いこのクソ女はバカにしたような目で、
「アンタ
「貴様!誰が
「だれが“お兄さん”だっての!づーづーしいわね!」
「なんだと?助けた人間い向かって!恩知らずめ!」
「ハン、かりにワタシが拉致られても、チャンとウチの者がバックアップに回るわよ!」
「どうだか!ヤク漬けにされて海外に売り飛ばされるのがオチだろ」
「そうなるまえにアタシのパパが何とかするってンの!」
少女は見下した眼つきで、大きな胸を反らす。
「どうだかな」
へっ、とオレは相変わらず制服に首輪姿のノーパン女を横目にして、
「ヤクの売人とツルむようなアホ娘じゃ、親も縁キリたがってンじゃないか?」
平手が飛んできた。
狭いキャビンの中だ。オレは難なくその攻撃をよけると、相手の首輪に下がる引き手を掴み、もやは年上の威厳などかなぐり捨て、グイとこちらのほうに少女を寄せた。
「餓鬼がイキがってるとな、そのうち火傷するぜ……!」
ニラみつけると彼女は頬をふくらませ、そっぽを向く。
オレは首輪を放し、キャビンに取っ散らかった妖しげな拘束具を片づけはじめた。
彼女の身体をギッチリと包んでいた、ズシリと重い革袋を持ち上げたとき、ポケットに入っていたA5サイズのラミネート紙を見つけた。
なんだ?と一読して、オレは絶句する。
――性奴の手引き(ご注意!梱包を解く前にお読みください)――
・お買い求めいただいた性奴隷(以下本品と呼称します)は催眠音声による洗脳、
および調教馴致により、主人に対し従順に仕上げてございます。
・本品は最初に見た人物を自分の主人と認定するよう刷り込みがしてございますので
目隠しの除去には細心の心配りをお願いいたします。
・開梱後、本品に対し口腔奉仕、および性器と肛門に
飼い主様への認識は思考に強制ロックされ、以後は解けません。
・月に一度(最低でも半年に一度)の定期メンテナンスを推奨いたします。
当該時点において、本品に対し再洗脳・および健康診断を実施いたします。
(※性技の馴致は別途料金にて申し受けます。ご希望の方はご相談下さい)
・本品に対する強制認識コマンドは『メス豚“ボニー”○○をしろ』となります。
(○○内はお買い上げ頂いたお客様のご希望とする行為です)
※注:頻繁にこのコマンドが必要な場合は再洗脳・調教の必要がございます。
お買い上げの店舗にてご相談ください。
なお本品は――
読んでゆくうちに頭がクラクラしてきた。
オレは少女が今まで頭に装着されていたヘッドフォン、そこから流れる大音量の怪しげな文句に思い当たった。もうすでに目の前の女子高生は、主人の言う事なら何でも聞く性具に洗脳されてしまったのだろうか。
オレは「ホラよ」とパウチされた紙をこの蓮っ葉な女子高生に渡し、
「一歩間違えれば……オマエもこうされてたかもな?」
少女は気のない手つきで受け取ったが、読んでゆくうちにつれ顔色が変わっていった。
“性奴の手引き”とやらを持つ手がかすかにふるえて。
「なによ……コレ……女をバカにして……いったい……」
「わかったろ?ヤバいトコだったんだって」
彼女はしばらくそのパウチを見つめていたが、やがて唇をかみしめ、両手でグシャグシャにしてしまう。ようやく分かったか、とオレも口調をやわらげて、
「ワルいコタぁ言わねぇ。あんまり無茶をするなってコトさ」
ぶぉぉぉぉ!!!ふぉ、ぶぉぉぉぉと、このとき空気清浄機が節をつけてうなった。
ピンときたオレは、イヤホンを耳に付ける。
とたんに『マイケル』と【SAI】の声。
『ハヤいとこ、この子をどこかの洗車機にでも突っ込みましょうよ。臭くてタマりません』
すると偶然、少女も同じように、
「この近くにラブホないかな……おフロ……入りたい」
「ラブホだぁ?」
「オジさ……お兄さん?とだったら……イイよ。カラダでお礼、払うから」
ケッ、とオレは鼻で嗤い、体をかがめて運転席へと移動した。
「餓鬼にそんなコトされるいわれはねェよ――待ってろ」
オレはエンジンをかけ、シフト・レバーを手荒に一速へ入れた。
しばらくトラックをトバし、愛液と汗と尿臭いこの少女を、トラッカーがよく使うコイン・シャワーへと連れてゆく。
シャワーから上がってきた彼女は、革拘束を抜け出した時とはちがい、こちらがアレっと思えるほど雰囲気を変えていた。公平に見ても、美少女と言えるくらいになっている。着替えとしてクリーニングしておいた予備の作業用ツナギを貸すと、その後はコンビニに向かってトラックを走らせ、パンツや靴下などを買わせる。
『――ねえマイケル』
コンビニのトイレで彼女が着替えをしているあいだ、オレが今後の轢殺予定をチェックしていると【SAI】が話しかけてきた。
『あの子、どうするつもりデス?』
「あぁ?あとは家まで送り届けてオワリさ……いや、タクシーで放り投げるってのもアリだな。どうせ金持ちの娘だし」
なんだツマらない、と【SAI】の不満そうな声
『じゃぁ――ラブホには行かないんですね?』
「はぁ?当たり前だっつーの!」
『マイケル……怒らないで聞いてくださいよ?』
【SAI】は用心深く前フリをすると、
『話に聞く例のくそビッ……いえ、奥さんに去られてマイケルはときどき情緒不安定になりますから、いっそあの娘などを配偶者にするのがイイと思うのですが……』
はぁ!?とオレはさすがに驚いた。
「バカ言え。コッチだって選ぶ権利があるんだ――それに、まだ十代じゃないか」
『愛に年齢差は関係ありません(キリッ』
――あ、こいつ……。
また妙なドラマでも観やがったなとオレはピンときた。
本当に【SAI】の学習能力には舌をまく。もしメロドラマにハマったとしたら、このトラックはどんな殺し方をするんだろうか……。
「おまたせぇ!」
女子高生がコンビニから出てきて助手席に乗り込んだ。
「――ハイこれ」
彼女はコンビニ袋をガサつかせ、オレに缶コーヒーを差し出し、自分はプシュっ、と“お嬢様聖水”のタブを開ける。
ついでにコロンも買ったらしい。
愛液臭かった彼女の身体からは、女子高生らしいうっすらレモンの香りが。
「よぅし――じゃ行くか」
「なになに?ドコ連れてってくれるの?」
「安い作業着を売ってる店だ。お前のためにな」
「え~作業着ぃ~?さげポヨ~」
ワクテカで顔を輝かせていた彼女は一転ションボリ。そして「ヤダそんなダサいの」と、お嬢様聖水を飲みながらツン、とそっぽを向く。
「贅沢ヌカすな。貧乏なオレが買ってやろうってんだ」
「作業着ねぇ……」
そこで何を思ったか、顔色をまた輝かせてコチラを向くと、
「そうだ!ね?場所ぉ言うから、ソコに連れてってよ!」
「なんだぁ?またラブホとかいうんじゃないだろうな?」
「ちっがうわよ!――それともナニ?やっぱわたしを姦りたい?」
「はぁ!?」
「オジさ……お兄さんならイイわよ?割とマジで」
「……キミは誰とでもそんなことをしてるのか」
ダレとでも、ってワケじゃないわよ!と少女は不満げにほおをふくらませつつ、
「チャンと相手は選ぶわ?オジ……お兄さん、ワリとイケメンだし」
オレはふたたびため息をついて、エンジンを始動させる。
「わァった、わァった……ンで、ドコへ連れてけって?」
トラックが向かった先は、オレにはなじみのない、なかばブティックも兼ねた高級婦人服店だった。店に目立った看板もないことから、特定層の顧客を相手にする超・高級店らしい。
ドアベルを鳴らして中に入ると、洗練された服を着た数名の店員が一斉にこちらを向き、その中のひとりが、
「まぁお嬢様……いらっしゃいませ」
わが女子高生は勝手知ったる調子で店内をズンズン歩いてゆくと、
「マダム居る?メイクのリフレッシュ頼みたいんだけど」
最初に声をかけた、売り場のチーフと見えるギリギリ二十代とも見える女性が、
「店長はただいま外商にでておりまして。宜しければ……わたくしが」
「そぉ?じゃぁお願い。それと服も一式見繕って――あと靴も」
化粧担当とともに店の個人ブースに消えながら彼女は、
「オジさまは、そこで待ってて。ケイちゃん?オジさまに何かお飲み物を」
それまでとは打って変わり、なにか王女然として尊大にふるまう。
慣れない婦人用品店で居場所のないオレは、トラックに戻って彼女を待とうとしたのだが、これで出鼻をくじかれた。
仕方なく店の片隅にある華やいだティー・ラウンジで、若い女性店員のヒソヒソとした好奇な視線にさらされつつ、手持ち無沙汰に「婦人画報」など読むオレなのだった……なさけない。
「――ご親戚の方ですか?」
そんなこちらを気遣ったか、チーフと同じぐらいの年代な女性店員が話しかけてくる。ほっといてくれと言うわけにもいかず、オレはこわばった笑みを浮かべるしかない。
営業マン時代に培った外交的な雰囲気をよみがえらそうと努力しながら、
「あいつ――いや、あの子。よくここを利用するのかね?」
えぇ、と女性店員は洗練された接客用の笑顔をうかべ、
「ご家族でご利用いただいております。奥様と美香子さまのお姉さまには、とくに」
なんとなくポツリ、ポツリと世間話をするうちに、たまたま音楽のことで盛り上がり、ソフロニツキーとアシュケナージではどちらが上かということで声高に議論をするハメになる。
ややあって、
「もーナニ話しているの?オジさま!」
シャッ!と更衣ブースのカーテンが開く音。
足首にストラップのついた高いハイヒールを履きこなし、ひとりの女性が
まぁ♪と女店長の声。
オレも思わず唸ってしまう。
まぎれもなく、ひとりの淑女がそこには居た。
革の拘束から助け出されたときの惨めな面影はみじんもない。
品よく刷かれた化粧と、調えられた髪型。上品なクリーム色のブラウスと、茶系のタイト・スカート。エルメスのスカーフを、ちょっとしたアクセントに使って。
生意気にもモデル立ちして微笑とともに出てきた彼女は、ひかえめに言ってもチョッとしたものだった。読モなどはもちろん、そこいら辺のグラビアアイドルなどでは遠く及ばないだろう。
――なるほど……腐ってもイイとこ出のお嬢さん、ってワケだ。
だが「いい叔父さんで良かったですね?」とチーフ店員から言われた時、あろうことかこのバカ女は、
「オジサンじゃないの――わたしの“ご主人さま”よ?」
と、クソアホにも言い放った時は、背中にヒヤ汗が流れたが。
そのうえ、
「アタシは、ご主人様のメス――」
「うぉっほ!げへげへ!!」
あやうくオレは咳払いで何とかごまかす。
これは“事案”では?という微妙な表情が店員たちの顔に浮かびかける前に、オレはさりげなく支払いをうながした。
「では――お会計はコチラになります」
なぜかチーフは、いわくつきの我が女子高生ではなくオレのほうに向かい、銀の盆にのせた会計明細を上品な笑みで差し出した。
――え”!?ちょっ!!!!???
オレは少女を見るが、彼女はそ知らぬ顔で店に陳列されたバーキンを手にとり、ステッチの見事さを眺める風……。