アグストリア諸侯連合王都アグスティ
シャガールは執務室にてマンフロイより事の子細を報告されていた
「ふむ。エバンスはシグルド公子率いるシアルフィ軍により陥落
尚も進軍の気配あり。か』
シャガールは呟いた
「その様ですな。加えて他のグランベル諸公の動きと致しましては、フリージ、ドズル、ユングウィは合同演習として我がアグストリアとの国境付近に展開しておりまする。ヴェルトマー、エッダには表だった動きは見られませぬな」
マンフロイは補足した
「元は友好関係にあったウェルダンとの同盟を一方的に破棄したグランベルにこそ非がある
グランベルの国土を回復したのならば、ウェルダンとの交渉の席を設けるべきだろうに
諸公の援軍もないならばなおのこと」
シャガールから言わせれば、同盟破棄される前のウェルダンに非は無かった。今回のグランベル侵攻は報復であったはず
この一件でウェルダンの武威は示せた。その上でグランベルの領土を返還し、再び同盟を結ぶ
些か被害を受けたユングウィ公爵家の遺恨は残ろうが、イザーク遠征等に随行して所領を空けたのは他ならぬユングウィ公爵なのだからその程度は飲み込まなければならないだろう。たとえ愛娘を喪おうとも
仮にその交渉で
我がアグストリアが調停者として呼ばれるならば、シャガールに損はない
実際にグランベル、ウェルダンの交渉ならば地理的な要因からもアグストリアの立ち会いが必要なのは明らかなのだから
ところが、シアルフィのシグルド公子が兵を起こした
これだけならば、問題にならなかった。が、何の冗談か妹のエスリンの嫁ぎ先のレンスター、その王子のキュアンと従騎士。更にはヴェルトマーのアゼル公子とドズルのレックス公子が参陣し、結果としてユングウィを奪還せしめ、更にエバンスすらも奪還したのだ
シャガールからすれば驚天動地と言えた。マンフロイに念のための確認すらさせた程だったのだ。
そしてこの上ウェルダンへの侵攻を意図しているような動きを見せているとの事
アグストリア諸侯はほとんどがシグルド公子を警戒している中で、何を血迷ったのか、ノディオンのエルトシャンはエバンスのシグルド公子へと赴いたらしい
確かにエルトシャンはシグルド、キュアンと親友とは聞いている。が、それは私人としてであり、公人としての振る舞いでは無い筈なのだが
結果、唯でさえ父イムカに近侍していたにも関わらず、他の諸侯との関係に力を入れていなかったエルトシャンは孤立していた
当初は隣のハイラインのボルドーはエルトシャンに対する援護として、息子のエリオットとエルトシャンの妹、ラケシスとの見合いを提案した。若いエルトシャンの後ろ楯となろうとしたのだ
別に見合いした後で断るも自由である。それをどうこう言う積もりもなく、息子のエリオットが何と言っても取り合う必要はない。そうした上でのボルドーとシャガールの提案なのだった
しかし、エルトシャンは見合い自体を拒否した。エルトシャンの妻、グラーニェはラケシスを説得したが実らず、エルトシャンは妹の意思を尊重して見合いを断った
これによりボルドーはエルトシャンを見捨てたと言えよう。幾ら戦で華々しく活躍しようが、民衆から支持されようが諸侯で孤立するなら最期には破滅しかないのだから
シャガールもエルトシャンに対して期待しなくなっていった
今アグストリア諸侯でエルトシャンに最も好意的な人物はマッキリーのクレメント司祭だが、良く言っても中立であり、エルトシャンの立場の悪さが良くわかる
「あの小僧は除かねばならんか」
シャガールは万一に備えてエルトシャンの排斥も視野に入れはじめていた
同時刻、イード神殿には10人前後の来客があった
聞けば彼等はウェルダンの隠れ里に住んでいたが、一向に生活面で安定しない為にイードまできたというのだ
現在のイードの纏め役をこなしているクベリウスは配下のモノより報告を聞いていた
「ウェルダンから、か。よし、会って話そう。直ぐに代表だけ連れてきてくれ」
クベリウスは即決した
「はい」
配下のモノはそれのみを言い、退室した
それは爬虫類を思わせる金色の双眸と色を抜いた様な白い肌を持っていた
こんな作品をよんで下さっている皆様には感謝しております
次回は人物紹介となります
子供世代のオリキャラは?
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どちらでも