彼方の時へ   作:くらうす

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いつも通り独自設定、解放多めでお送りします


よろしければ読んでやって下さるとありがたいです




ウェルダン本城所属、マーファ攻略軍

 

ウェルダン本城を発したマーファ攻略軍は、マーファの西に存在するウェルダン大森林を通過し、マーファ城を視認出来る距離まで迫った

 

 

マーファ攻略軍に所属するものは大半がアクスファイター、或いはハンターである

 

例外として、指揮官で上級職のセイジであるベルグ。その取り巻きは傭兵であり、ソードファイターであった

 

 

マーファ攻略軍に所属しているガルノフはウェルダン軍に所属して4年程経つベテランであった

 

彼は命令とはいえ、マーファに攻め入る事には賛成しかねていた

 

彼のみならず、攻略軍の一部にはそういった意見が存在している

 

 

元々、先王バトゥ王が崩御した際にガンドルフ、キンボイス両王子を差し置いてジャムカ王子が新王に即位したことに不満があった

 

確かにジャムカ王子は他の二人に比べて聡明。とは言われてきたが、このウェルダンにおいては腕利きである事も重視されてきた

 

ジャムカ王子はアーチャーであり、弓を得意とする

が、弓ならば上級職のウォーリアであるガンドルフもキンボイス両王子も使えるのだから。加えてキンボイス王子はジャムカ王子よりも弓に長けている。ガンドルフ王子はキンボイス、ジャムカ二人を纏めて相手にしても勝ちきれる腕前だ

 

キンボイス王子は戦いにて才を発揮する人物であった。日頃から「跡継ぎ?ガンドルフの兄貴なら大丈夫だろうよ」と後継者争いには興味を持たなかった。ジャムカ王子とて「兄上(ガンドルフ)ならば問題ないだろうし、何かあっても兄貴(キンボイス)と支える」と言っていた筈である

 

なお、ガンドルフ王子が『粗暴』等と言われているのはウェルダン本城の一部であり、ジュダと最近姿の見えないサンディマが怪しい。と個人的にガルノフは思っていた

 

本来ならば、ガンドルフ、キンボイス、ジャムカを集めて王を決めるべきで無いのか?

そういった意見も存在している

 

が、ジュダはグランベルが攻めて来ている状況での停滞は危険。とし、ジャムカ王子を新王に定めた

が、即位式等は行われずそのままマーファ攻略に移ったのだ

 

今回のマーファ攻略とて王に即位したジャムカ王子は一切姿を見せず、宰相になったジュダが采配したとも聞いている

 

ガンドルフ、キンボイス両王子が先王バトゥ王を弑逆した。と噂が流れたが、二人とも遠く離れたジェノアに居るのだろう

どうすれば、バトゥ王を殺せるのやら

 

 

 

ガルノフは最近ウェルダン本城付近の町が幾つか賊によって壊滅した。と攻略軍の陣中にて仲間から聞いた。ウェルダン本城の傍にいた山賊、湖賊は討伐した筈であり、少なくとも大規模な賊は存在しない筈である

だから、短時間で町を壊滅させる事は無理筋だ。加えて町を襲撃されたならば、ウェルダン本城にも急報が届く様になっており、これすら無かったのはどう見てもおかしい

 

 

『何かがおかしい』これがウェルダンに長く仕えているベテラン達の総意だった

 

 

 

 

 

マーファ攻略軍はマーファ城より半日程の距離を取って夜営を行う事とし、翌日よりマーファ城攻略を始める事を指揮官のベルグは命じた

 

 

マーファ攻略軍の陣中の片隅にガルノフを始め、10人程が集まっていた

 

「やっぱり、おかしい。何でマーファ城に降伏勧告をしない」

男の一人は話す

 

「ガンドルフの罪は明らか。反逆者は誅さねばならない。ましてや、新王ジャムカの恩情等かける訳にはいかぬ。だったか」

 

「はっ。よく言うぜ。ガンドルフ王子はキンボイス王子と共にウェルダンの為に戦って来たのは、他ならぬ俺達が良く知ってる

それをあのいけ好かないジュダの腰巾着ごときに否定される謂れはねぇよ」

 

皆が同意する

 

 

現在のウェルダン宰相ジュダはウェルダンに来て僅か程にしかならない

 

しかも、バトゥ王の側近サンディマの知人。それだけの人間がウェルダン城内でデカイ顔をしていたのだ

 

その側に仕えていたベルグに対する信用等なかった

 

 

「皆の不満はわかる。が、あんなでもこの軍の指揮官だ

ろう

戦場では何があるか分からん。といえども、奴が周りのソードファイターどもを離すとは思わんが」

ガルノフも不満を隠そうとしなかった

 

「マーファにはガンドルフ王子はおられない

今は副官が指揮を取ってるらしいな」

 

「トラフか

やべぇな」

皆が顔をしかめた

 

 

 

『マーファの狂犬』トラフ

元は賊に滅ぼされた村の出身でガンドルフ王子により保護された

その恩を返すべく、ありとあらゆる手管を使い、マーファを発展させた

出自のせいか、賊等の敵対者には厳しくあたり、賊討伐を任せれば殲滅以外を認めなかった。それにより、ガンドルフ王子とは自然と役割分担出来ており『飴と鞭』になっていたが

 

ガンドルフ王子に対して泥を投げつけるかのような今回の一件。まともに終わるとは思えなかった

 

 

 

「今だから言うが、俺はマーファ城所属の人間だ」

男が特大の爆弾を落とした

 

「「何ぃっ!」」

 

「声を落とせよ

で、トラフとは連絡を取った」

男は気にせずに話を続ける

 

「マジかよ」

 

「トラフの坊主が言うには『ガンドルフ王子に中傷がウェルダンにあるならば、何らかの動きはあるでしょうから、貴方を派遣します』だと

んで、話半分で来てから半年も経たずにコレだ」

男が呆れる様に言う

 

「色々と言いたいが、向こうは何を言ってんだ」

 

「マーファ軍は野戦を挑み、本隊は敗走

こっちが追撃した所で、伏兵と別働隊でベルグを強襲する

同時に敗走している本隊もベルグの本陣を突く」

 

「殺意しかねぇな」

 

「やることは決まったな」

 

「気付かれない様にしながら、ベルグの取り巻きのソードファイターを個別に撃破する。だな」

 

「しかし、ベルグの野郎は高レベルのセイジだ

魔法は厄介だぜ」

 

皆の懸念通り、ベルグが『セイジ』であることが問題である

 

マーファ攻略軍はベルグさえ殺せば問題無くガルノフ達、ベテランで掌握出来る

取り巻きのソードファイターは、ハンターで封殺すれば良い。距離を取り続ける限りソードファイターでは何も出来ない。万一詰められたなら、自分達が肉壁になる

 

 

だが、高レベルの魔道士であるベルグには通用しづらいだろう

魔法は詠唱さえ出来れば距離は関係ない

厳密には弓が届く範囲まではカバー出来る。が一般的には正しい

 

 

「おいおい。『狂犬』が其れを考慮しないと思うか?

アイツの牙はジュダに向いているんだ

魔道士対策はしてる」

マーファに所属している男が言う

 

「大丈夫、なんだな」

 

「大丈夫だろうよ」

 

 

 

その後、彼等はマーファ攻略軍を密かに掌握するべく動きはじめた

 

 

 

 

 

同時刻、マーファ城中庭

 

「って訳でガンドルフ王子に弓引くジュダとその一派は殺す」

トラフは話を纏めた

 

「ただ、犠牲は多大なものになる

死にたく無いもの、戦いたく無いものは」

 

「おいおい、トラフの坊主。なめんなよ

俺達がそんな臆病者に見えんのか?

なぁ、皆?」

トラフの言葉を遮る

 

歓声が上がる

 

 

彼等は馬鹿みたいな自分達を助けてくれたガンドルフ王子が好きだった

 

無法者?無骨?だからどうした?

 

 

皆で酒をかっ食らい、馬鹿騒ぎして、目の前の坊主にガンドルフ王子と説教されて、最後にはまた馬鹿騒ぎ

 

それでよかった。それだけが彼等の望みなのだ

 

それを奪おうとするなら、例え相手が王族だろうが、グランベルだろうが、最後まで『抗う』

 

それが、我々マーファの『意地』だ

愛すべきガンドルフ王子の護るこの地を何人にも渡さない

 

死ぬことは怖い。誰でもそうだ

 

だが、それでも譲れないものがある。それだけだ

 

 

 

 

「言うまでも無し、か」

トラフは一人呟く

 

恐らく目の前で歓声を上げているもの達のほとんどが生きて帰れまい

 

そして、自分も

 

 

それで良い

 

元々無かった命だ

こんな人間を助けてくれたガンドルフ王子の為ならば惜しむ理由がない

 

 

 

「アリウス司祭殿。宜しくお願いします」

傍らにいる司祭へと声をかけた

 

「私に如何ほどの事が出来るかは分かりませんが、微力ながら力を尽くしましょう」

 

 

 

 

アリウス司祭。もといクベリウス司教は正直、感心していた

 

彼等の士気の高さと、その使命感に

 

 

 

旅の司祭と身分を偽りマーファに来たクベリウスは本来ならば、傍観に徹するつもりだった。マーファに来た理由は『精霊の森』を実際に確認するついでであった

 

森の人間は避難するつもりはないことを確認した。しかし、あまりにも戦いが続くならばそれも危うい

だから様子を見にきた

 

が、気が変わった

元よりジュダは始末せねばならないが、多少手間ではある。まぁ多少なので良い

 

が、戦場をこれ以上拡大させられるのも困る

 

 

 

既にシグルド率いるグランベル軍はジェノアを制圧している

ここでマーファが失陥すれば、ガンドルフとキンボイスは根なし草となり、グランベル軍のマーファまで侵攻する理由が弱くなる

 

ここはマーファ軍に力を貸し、攻略軍を撃退してもらう。そこにガンドルフ、キンボイスが合流すれば恐らくウェルダン本城へと兵を向ける

 

シグルド達グランベル軍は、それを追撃するべくマーファまで深入りする理由になろう

 

 

そうなれば、アグストリアでハイラインのエリオットがエバンスに侵攻する

当然シグルドには対応出来ない。

仮に陥落するならグランベルは奪還に動くし、陥落しなくととグランベルがアグストリアを敵視しよう

 

 

戦火が残る限り、我々ロプト教団の影を追うことは難しくなる

 

他国間の連携が取れなければ複数の国で暗躍する我々を認識出来はしまい

 

クベリウスは一人嗤った

 

 

 

 

 

更に同時刻ジェノア城にて

 

ジェノア城はシグルド達グランベル軍により制圧された

 

キンボイス王子の拠点である以上は当然の措置である

 

 

 

「シグルド様。城下にてまた暴動が」

オイフェが疲れた様に言う

 

「またか。アレクとノイッシュを向かわせてくれ」

シグルドも疲れはてていた

 

 

シグルドから言わせれば『反逆者』キンボイス王子の拠点である以上は放置出来ない

 

が、ジェノアの人間から見ればシグルド達は『侵略者』にしか見えず、キンボイス王子に親しみを覚えている領民には受け入れられていない

 

ジェノア城とて侍女や小姓等は全て逃げており、シグルド達の負担は増大していた

 

更にドズルのレックス公子は、付き合い切れない。とエーディンの無事を確認するなりエバンスへ戻った

 

レックス公子からすれば、エーディン公女が戻った以上、ウェルダンへの侵攻に意味を見出だせなかった

 

 

 

キュアン王子と妻のエスリン、それに従騎士のフィンはイザーク王女アイラと、王子シャナンの元に居る

 

グランベルに対して不信感を露にするアイラ王女とシャナン王子に話の出来る人間は他に居なかった

 

 

解放されたエーディン公女は沈痛な面持ちであり、側にはユングウィの従騎士ミデェールとヴェルトマーのアゼル公子がいる

 

エーディン公女はガンドルフ王子と道中に話をしていたからか、ウェルダンへの侵攻は否定的であり、従騎士ミデェールはそれに従わねばならない

 

アゼル公子はガンドルフ王子を倒すべき。と説いているが、エーディン公女は一切同意しない

 

 

故にシグルドが動かせるのは自身の配下のアレク、ノイッシュ、アーダン、オイフェのみとなる

 

が、オイフェはまだ幼く、騎士の受勲も受けていない為に動かせない

 

アーダンは念のためにエバンスの守備を命じている

 

 

結果、アレクとノイッシュが治安維持に掛かりきりとなったのだ

 

 

 

「ガンドルフ、キンボイス両王子は兵を纏めてマーファ城へと向かったそうですが」

オイフェは言いにくそうに切り出す

 

「しかし、マーファはウェルダンが制圧する

それが決まっている以上、動けないだろう」

シグルドも苦虫を噛み潰した様に言う

 

 

 

何故、キンボイス王子に心服しているジェノアにてその情報が出たかと言えば

 

『早く出ていけ』

 

これに尽きた

 

 

そしてジェノアの住民はマーファが負けるとは欠片にも思っていなかった

 

 

 

シグルド達はマーファ攻略軍の敗北を知るまで窮屈な思いをする事になる

 

 

 

 

 

 

マーファ軍出撃の報を受け、マーファ攻略軍指揮官ベルグはほくそ笑んだ

城攻めは手間がかかる。が、敵は打って出た上に自軍より少ない。容易く撃破出来る。そう確信した

 

念のために取り巻きのソードファイターの半数を前線に回し早期の撃破を狙った

 

相対するマーファ軍はトラフ自身が率いていた

犠牲の最も多くなるのは此処である以上、トラフなりの責任の取り方であった

「敵の勢いが強い。全軍退け!」

トラフは叫んだ

 

「坊主!」

 

次の瞬間トラフはソードファイターに切られていた

 

「糞野郎が!」

周囲のハンター達がソードファイターを針鼠にした

 

「構うな、退け!」

トラフは重傷を負いながらも尚も叫ぶ

 

指揮官は此処だ。さぁ、殺しに来い

そう言わんばかりに

 

 

 

暫くして、マーファ軍は後退を始めた

ベルグは追撃を命じ、更にソードファイターを動かした

 

自身の周囲には20人いた者が3人程になっていたが、勝ちが見えている以上は考慮するに値しなかった

 

 

 

 

歓声が響く

 

本陣の至近にある崖の下から敵が襲い掛かって来た

 

ベルグは護衛していた兵と取り巻きを全て其方に向けた。

成る程、多少は知恵の回る者もいたのだろう。

 

ベルグにはこの時点では余裕があった

 

 

が、別方向から弓が飛んできた

ベルグは魔法で叩きおとしながら、魔力で障壁を展開した

確かにベルグはこの瞬間は一人であった

が、高レベルの自分を殺すには魔力の障壁を突破する事が最低条件になる

 

出来る訳がない。更に邪魔者の居ない為に魔法で凪ぎ払う事も出来る。ベルグは鼻で笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間までは

 

 

 

 

 

ベルグは突然自分の魔力が消えた事に混乱した

 

が、敵は待ってくれない

 

「が、は

な、何が」

ベルグはあっさりと死んだ

 

 

 

 

 

少し離れた崖の上に人影があった

 

「阿呆。幾ら強くとも我々魔道士は魔力ありき

其れを封じられば唯の案山子よ」

そう溢したクベリウスは杖を下ろした

 

「しかし、大したものだ。こんな片田舎で『コレ』を見ようとは」

感慨深そうに手の中にある杖を見つめた

 

 

『サイレスの魔杖』

相手の魔力よりも使用者の魔力が勝る場合に相手の魔力を封じ込める杖

『魔道士殺し』とも呼ばれる非常に稀少な品である

 

 

グランベルはおろかクベリウスが属するロプト教団にすらも手に入れれないモノである

 

「何処で手に入れたか聞きたかったものだ」

クベリウスはそう呟くと、魔法で何処かへ転移していった

 

 

 

 

 

マーファ軍は戦力の七割を失いながらも、マーファ攻略軍を撃退。しかし指揮官トラフを喪うという大打撃をうけた

 

その後マーファ攻略軍を掌握し臨時指揮官になったガルノフはマーファ軍に降伏

 

その翌日にガンドルフ、キンボイス両王子がマーファへ到着した

 

 

 

 

ガンドルフ、キンボイス両王子は連名で宰相ジュダの専横を非難

 

ジュダ討伐の為にウェルダン攻略軍を率いてマーファを出た

 

 

 

 

その翌日、ジェノア城よりシグルド率いるグランベル軍がウェルダンのジャムカ王救援の為に出撃した

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェルダンの動乱は佳境を迎えようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジナルキャラはあまり入れたく無いが、居ないと表現が難しくなる

まあ、大体が使い捨てになるのですが

今回も読んでくださりありがとうございます

子供世代のオリキャラは?

  • あり
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