彼方の時へ   作:くらうす

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出来たので投稿します

いつも通り、捏造、改変がありますが、御容赦のほどを


血にまみれし道

ドズル公爵ランゴバルドは決して恵まれた境遇とはいえなかった

 

 

彼は先代のドズル公爵と側室の間に生まれ、兄を支えて生きる道を選ばねばならなかった

 

ランゴバルドの上には正室の息子二人がおり、ランゴバルドは順当にいけば一族としてドズル公爵家を支える未来が待っていた

 

 

ところがランゴバルドの父親は正室の三人目の息子、ランゴバルドからみれば別腹の弟に家督を継がせようと策謀した

 

当然ランゴバルドの兄二人は納得する筈もない

 

彼等が暗愚や凡愚ならば納得もしようがそうではなかった

 

更に兄二人につけられていた傅役の人間も納得出来る訳がなかった

 

 

 

 

長男は父親であるドズル公爵と口論の末に親である公爵により殺害された

 

だが、そのドズル公爵もまた、長男に心酔していた家臣により殺される事となった

 

予期せぬ状況により家督を継ぐこととなった次男にランゴバルドは全面的に協力した

既にドズル公爵家はボロボロとなっていたのた。これ以上の衰退はランゴバルドの望むところではなかった

 

 

だが、家督を継いだ次男は健康であったにも関わらず、僅か半年後には病死してしまう

 

次男に子供は居らず、ドズル公爵家は三男のランゴバルドか四男の正室の第三子にするかで意見が割れる事となってしまう

 

バーハラ王家の若き頃の国王アズムールよりは家督継承についての沙汰はなく、ランゴバルドの弟は家督継承に前向きであった

 

ここで問題となったのは、ランゴバルドは側室の息子ながらも斧騎士ネールの直系の証たる聖痕を所持していた事であった

 

 

亡くなったランゴバルドの父も兄二人も持っておらぬそれをランゴバルドのみが宿していたのである

 

確かに側室の息子であるランゴバルドだが、間違いなく斧騎士ネールの血を色濃く遺していた

 

幾ら正室の第三子といえどもこの事実は覆せず、彼はランゴバルドの暗殺を画策した

 

死んでしまえばたとえ直系だろうと意味が無いと踏んだのだ

 

 

ところがこの暗殺は成功せず、ランゴバルドを支持する者達のみならず中立を守っていた者達すらランゴバルドの弟を見放した

 

そこで同じく家督争いの芽のあったフリージ公爵家へとランゴバルドの弟は支援と承認を求めたのだ

 

フリージもまた、家督を争っておりレプトール相手に互角に争っていたレプトールの兄はこれを快諾。ランゴバルドは不利な状況へと陥るかと思われた

 

 

だが、ここに待ったをかけたのがグランベル近衛隊長にしてヴェルトマー公爵の地位にあったヴィクトル公爵であった

 

彼はフリージ公爵家における家督争いを国王アズムールの裁可を以てレプトールにフリージ公爵の地位を与える事で収めた

 

 

これにより、ランゴバルドの弟は折角の反撃の機会を失うばかりか、レプトールより自身の障害と見なされランゴバルドの支持を表明されてしまう

 

ランゴバルドは話し合いによる解決を望むも相手方の武力蜂起により、已む無く弟を討ち果たす事になった

 

 

 

 

 

 

 

ランゴバルドのそれからの人生はグランベルの武断派の急先鋒としてトラキアを始めとする外征、国内における鎮圧等を率先してこなしていくこととなった

 

 

 

 

 

「どうした?かかってこぬか?」

 

 

 

 

その様な人生の大半を戦場で過ごしてきたランゴバルドとシグルド達では文字通り、『場数が違う』のである

 

 

誇張でも何でもなく、ランゴバルド一人でグラオリッター総員を相手どれる正しく怪物なのである

 

 

 

 

「ちっ」

 

動けなくは無いものの深手を負ったレックスは自身の浅はかさを呪う

 

レックスにとってランゴバルドはレプトールと共にグランベルを脅かす政治の化物であった

 

だが、スレーター等はランゴバルドの事を「あの方の本領は政治ではなく、戦場」と言っていたのを今更ながらに思い出したのだ

 

エーディンとクロードによる治療により多少は動ける様になった身体を動かして、レックスはランゴバルドに立ち向かう

 

 

「ほぉ?少しは打たれ強くなったようだな」

 

ランゴバルドが意外そうな声をあげる

 

「レックス!無茶だよ、そんな身体で」

 

「アンタ、そんな身体でどうするのよ?」

 

アゼルとティルテュはレックスに言葉こそ違うが心配の声をかける

 

「アゼル、ティルテュ。頼みがある」

 

レックスは二人に話しかけた

 

 

 

 

 

 

 

ランゴバルドはわからない程度に眼を細めた

 

 

あのプライドだけは一丁前の馬鹿息子も、ようやく人を頼る事を覚えたか、と

 

熱くなるのが恥とでも言わんかの様に、常に冷静であろうと振る舞う。そして人とも距離を取り続ける

 

冷静であることは重要たが、人間は感情の生き物なのだ

 

それを忘れているかの様に振る舞うならば、人の理解は決して得られない

 

それに人は集団の中で生きる生き物なのだ。独りで出来る事などたかが知れている

 

 

やっとそれが解ったのであろう

 

(ふ、アルヴィスの弟とレプトールの娘には感謝しても仕切れぬな)

 

 

ランゴバルドは人知れず口角をあげた

 

 

 

 

 

 

 

「遺言はすんだか?」

 

「さてな」

 

ランゴバルドの確認にレックスは軽く答える

 

「行くぜっ!」

 

レックスは一人で斬りかかる

 

「意味があるまいと解らぬか、この戯け者が!」

 

ランゴバルドは斧を振り上げた

 

「エルファイアー!」「トロン!」

 

「なにっ!」

 

アゼルとティルテュが狙ったのはランゴバルドが振り上げた斧であった

 

「親父!」

 

ランゴバルドの斧は外れ、レックスの斧が眼前へと迫る

 

 

 

 

 

 

「見事だ○○○」

 

ランゴバルドは自身に吸い込まれる斧を見てそう呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

リューベック城主の間、そこにはドズル公爵ランゴバルドが横たわっていた

 

 

「何だよ、それ」

 

レックスは父親の亡骸を見て呟く

 

 

 

レックスは今までランゴバルドから「戯け」だ「愚か者」、「未熟者」と呼ばれてきた

 

 

 

だが、確かに聞いたのだ。父親の命を奪おうとした瞬間に

 

 

 

 

 

 

「見事だ息子よ」

 

 

 

初めて息子と呼ばれたのに、何も出来なかった無力さにレックスはアゼルとティルテュの前にも関わらず、涙をこぼした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リューベックにてシグルドたちがグラオリッターと交戦していた頃、リューベックからイード砂漠を挟んで反対側にある一団がいた

 

 

「エスリン、約束通りだ。君はこのままレンスターへと戻るんだ」

 

「でも、キュアン」

 

「分かってくれ、エスリン

君だけじゃない、アルテナもいるんだ。聞き分けてくれ」

 

レンスター騎士団『ランスリッター』とレンスター王子キュアン、その妻エスリンであった

 

エスリン以外はシグルド達の救援の為にグランベルへと向かう事になっていた

 

エスリンはその見送りであった

 

 

 

 

だが

 

 

「申し上げます!南方より竜騎士団が!」

 

警戒していた騎士が報告する

 

「トラキアだと!

馬鹿な、早すぎる!」

 

 

 

キュアンやレンスター国王は知らなかったが、アグストリアのシルベールにおけるクロスナイツ討伐の報奨として、シルベールにおける略奪行為を許可されていた

 

更にイード商人アリウスがトラキア王国に多数の食糧や武器等を提供したこともあり、トラキア王国の軍事力はレンスター上層部の想定以上のものとなっていた

 

それにより、レンスター国内のトラキアと隣接する領主達は負担を強いられる事となった

 

だが、レンスター本国に支援を要請するもキュアン王子によるシグルド支援の兵を出す為に満足な支援を受けれなかった

 

 

それにより、不満を高めたレンスター王国南部のアルスター領主はトラキアと独自に関係改善へと動き出した

 

勿論、レンスター本国にはわからないように

 

 

それにより、アルスターとトラキアの境界付近にトラキアの竜騎士の駐屯する拠点が密かに造営された。幸いにしてアルスター南部は森林地帯、レンスター本国から秘匿するなど容易であった

 

この拠点より南方のルテキア経由でトラキア本国へと速やかに連絡を送れる体制を構築した

 

この方式もまたイード商人アリウスによる発案であったが、ここでは割愛させて頂く

 

 

この連絡方式により、レンスター本国からのシグルド支援の兵が出たことをトラキアは僅かな時間で知ることが出来たのである

 

 

 

 

この様な事情によりレンスター側の予期せぬ状況になることとなったのである

 

 

 

なお、トラキア出撃の報を遅れて察知したレンスター国王は増援を出そうとするも、トラキアとの国境のマンスター領主より

 

『トラキア領ミーズにおいてトラキア軍が集結しつつあり。指揮官はハンニバル』

 

との報告を受け、レンスター国王は迂闊に兵を動かせなくなってしまった

 

 

 

 

 

 

 

「やむを得ん、イード砂漠を渡る!

今ならば、奴等の追撃を振り切れる筈だ

エスリン、君も来てくれ」

 

キュアンはエスリンを連れてイード砂漠を渡る決断をした

 

 

これは幾らトラキアとてまさか主力の竜騎士団を動員しているとは想像していなかった為である

 

 

とはいえ、この判断を軽率とキュアンを一概に責める事は出来ない

 

 

 

 

トラキアという国家は単独で見るならば、ユグドラル大陸の中でもシレジアと並ぶ脆弱な経済基盤を持つ国家である

 

 

 

それでもシレジアは隣国のイザークと同盟を結んでおり、アグストリアとも友好的な関係を結んでいた

 

シレジアは魔道書を国内で生産できる事により、それを対価として外貨を稼ぎ、その外貨で食糧等を輸入出来ていることにより、辛うじて経済を維持していた

 

 

だがトラキアは隣国のレンスターとは常に緊張状態であり、休戦協定により国家間の取引は制限されていた

それに加えて外貨を稼ぐ手段は傭兵業が主であり、国内の男の消耗にも繋がってしまう

 

そして、産業としても国内での消費を賄うのがやっとであり、下手すると傭兵先で武器を貸与する事すらあったほどである

 

 

 

 

この様な国家が遠くアグストリアまで遠征した上に、エルトシャン率いるシルベール勢と交戦したのである

 

トラキアの懐事情とエルトシャンの指揮官としての実力を知っているキュアンとしては、トラキア側にも甚大な被害が出たと思ったとして、誰が責められようか

 

 

計算違いとしては、エルトシャンの行動を危惧した元ハイライン候ボルドーと元マッキリー候クレメントがトラキア側にナイトキラーを大量に用意したことであった訳だが

 

更にトラキア国王トラバント自身がシャガールの要請によって動いたのも理由となろう

 

 

これにより、キュアンの予想を裏切り、エルトシャン率いるシルベール勢に対し、トラバント率いるトラキア軍は斬首戦術を敢行

 

指揮官エルトシャンをトラバントが討ち取る事で虐殺の様相をていする事となった

 

 

だが、この情報は『何故か』シグルド達やキュアン達の耳に入る事はなかった

 

 

結果、シルベール勢を破ったトラバント率いるトラキア軍の損害は殆んどなく、それからは只管に訓練に明け暮れたのだ

 

 

 

キュアンの想定より遥かにトラキア軍自体の実力は向上していたのである

 

 

 

 

 

 

「キュアン様、振り切れません!」

 

ランスリッターの最後尾にいる騎士は叫んだ

 

「ちっ!予想より手強い。総員、迎撃せよ!」

 

キュアンは自軍が不利になることを承知の上で迎撃を指示した

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、キュアンめようやく逃げ切れぬと判断したか」

 

「陛下、お気をつけを」

 

「案ずるなパピヨン。ここは戦場。油断はせぬ」

 

「恐れながら、アグストリアではその油断で陛下は手傷を負われました

陛下に何かあれば、我等は生きておられませぬ

くれぐれもご自重くださいますよう」

 

トラバントはエルトシャンとの一騎討ちの際に軽くない手傷を負った

 

その事をパピヨンは咎めているのだ

 

「やれやれ、貴様といいハンニバルといい。俺は子供か?」

 

「失礼ながら、まだアリオーン様の方が物わかりはようございます」

 

パピヨンの言うアリオーンとはトラバントの息子である

 

まだ幼い身ながらも竜騎士となるべく努力を重ねている幼子であった

 

「まぁよかろう。では往くぞ皆!」

 

トラキアの竜が牙を剥く

 

 

 

 

 

「かかってこい、ハイエナども!このゲイボルグを恐れぬならな!」

 

キュアンは大声を出しながら、トラキア兵の注意を引いた

 

キュアンの想定を遥かに上回るトラキア兵の実力にナイトキラーの組み合わせは悪夢といえた

 

 

 

 

『騎士殺し』ことナイトキラー。原理は不明だか、騎馬に乗る騎士に対して絶大な威力を発揮する

 

俗説では騎士に怨みを持つ、ロプト教徒があらゆる呪いを以て作り出した呪われた槍とも謂われる

 

 

それをトラキア軍は全員に装備させているのだから如何なランスリッターとても不利は否めない

 

一人、また一人と倒れていく

 

 

だからこそ、キュアンは一人奮戦する。被害を抑える為に。愛する妻を守る為に

 

 

 

 

 

「陛下、これを」

 

パピヨンは赤子をトラバントに差し出した

 

「赤子だと?」

 

「は、キュアンの妻、エスリンかと思われる女性が守っていたと」

 

「ふむ」

 

トラバントは手元にあるゲイボルグを見た

 

 

 

 

 

 

 

キュアンは配下を全て失いながらも最後まで奮戦した

 

 

だが、疲れはてているキュアンではトラバントの相手がつとまるはずもなく、トラバントによって討たれた

 

そして、キュアンの持つゲイボルグを回収したのである

 

 

 

 

 

「目的は達した。退くぞ」

 

「はっ!」

 

トラバント率いるトラキア軍はトラキアへの帰路についた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイロン、スレーター、アンドレイ、ランゴバルド、エスリン、キュアン

 

 

多数の犠牲と云う名の血を以て道は拓かれる

 

 

 

 

 

その道は何処へ続くのか、まだわからない

 

 




キュアンとエスリンの最期は別に描写しますのでご了承下さい


本作においてトラキアは其処までグランベルの言うことを聞くつもりはありません

あくまで、トラキアは独立国ですので

子供世代のオリキャラは?

  • あり
  • なし
  • どちらでも
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