彼方の時へ   作:くらうす

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何時も通りの捏造乱舞ですが、それでも宜しければどうぞ


心の在処

ウェルダン侵攻に始まる一連の騒動を民衆はいつしか『グランベル動乱』と呼び始めた

 

 

バーハラの悲劇や獅子王エルトシャンの悲劇等は民衆の同情を集め、民衆も関心を持つ事になる

 

しかし、この動乱を利用していた者達について民衆がその存在を知るのは、アルヴィスとディアドラの息子ユリウスが五歳になる時まで待たなければならなかった

 

 

 

 

一連の動乱にて最大の利益を享受していたロプト教団であったが、動乱初期に当時の指導者がクベリウスにより始末されていたのは以前も語った

 

このため、ロプト教団は影響力を伸ばしていたマンフロイと指導者粛清の犯人であるクベリウスによる二頭体制がひかれる事となった

 

 

 

だが、そのクベリウスもシレジア内乱の少し前に消息を絶っており、バーハラの悲劇の後にマンフロイがロプト教団のトップ『大司教』の地位を獲得することになる

 

 

 

 

大司教とはロプト帝国建国の功労者にして、主神ロプトゥスを顕現させた大司教ガレが就いていた地位であり、教団においてもその地位は神聖視されていたものである

 

主神ロプトゥスの代行者としての側面を持つこの地位にマンフロイが就く事に不満を持つ者も多くいた。が、司教クラスには主神ロプトゥス復活の為のクベリウスとマンフロイによる策謀の一部を知らされた為に、彼等はマンフロイの功績と共に大司教就任を認める他なかった

 

 

 

だが、教団内においての穏健派は主神ロプトゥスの顕現によるロプト教団の暴走やマンフロイの専横を憂慮している者も少なからず存在していた

 

 

 

 

 

 

ロプト狩りから逃れてロプト教団の総本山である、イード神殿へと来たクトゥーゾフはその少数の一人であった

 

 

 

彼と共にイードまで逃れて来た者達の中でも総本山、正確にはマンフロイの力を借りて報復すべしと主張するものも其なりにはいた

 

 

だが、殆んどの者達は疲れていたのだ

 

やれ、ロプト教徒だ、ブラギ教徒

しかし皆同じ人間であるはず

 

 

それに主神ロプトゥスは既に滅んでいる以上、いつまでも報復の繰り返しでは埒があかない

 

絶対数で劣るロプト教徒が何れは滅ぼされるのが目に見えていた

 

 

 

 

だが、血に酔った者や頑なにロプトゥスの復活を目指そうとする者達は彼等を背信者と呼ぶ

 

 

 

故に彼等はロプト教徒でありながらも、共存を目指しながらロプト教徒の中に潜んでいた

 

 

 

 

 

そしてクトゥーゾフはそんな派閥のリーダーとされていた。クトゥーゾフはイードに逃れるまで孤軍奮闘し、何とかたどり着いた

 

 

 

技量はマンフロイや亡くなったクベリウス程ではないが、ウェルダンにて戦死したジュダやサンディマよりは上と言われている程の魔法の使い手だった

 

 

 

新参者の為に未だに地位は司祭ではあるが、司教になるのも時間の問題である

 

 

 

 

 

 

もしも、クトゥーゾフ程の力量がある人物像が司教になれば、事の次第によっては一つの拠点を与えられる事も有り得る

 

 

そうすれば穏健派は拠点を手に入れる事が出来、共存の道を模索できるとクトゥーゾフと彼等穏健派は信じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェルダンの傭兵、ドノバンは宿の自室で酒を飲んでいた

 

 

 

「あの姫さん、大丈夫かねぇ」

 

ドノバンはイザークにて別れたエーディンを心配していた

 

 

山賊に襲われそうになっていたエーディン達を見つけたのは全くの偶然であった

 

 

ザクソン付近でシグルドの父バイロンと一時的に共闘したが、シグルド軍が来た為に即座に離脱したのだ

 

 

 

確かにエーディン個人には思うところはないどころか、亡きガンドルフ王子の遺命もあるために助けよう

 

 

だが、シグルド軍に対しては仮にガンドルフ、キンボイス両名の遺命があったとしても、ドノバンはとてもでは無いが、助ける気にはならない

 

彼等はウェルダンの敵なのだから

 

 

 

 

 

その後ドノバンはグランベルを避け、イザークに向かう途上でエーディンに再会した

 

そして、ティルナノグとやらでエーディン達と別れた

 

 

だが、イザークの辺境とてグランベルの公爵家の娘であるエーディンには辛い環境だろうとも思っている

 

 

勿論グランベルに比べて不便であることもそうだが、彼女はユングウィの人間であることが何よりの問題だろう

 

 

 

 

グランベルの亡きクルト王子によるイザーク遠征

 

この主力を担っていたのが当時のユングウィ公爵とシグルドの父親バイロンだったと聞く

 

イザークの民に取っては先王マナナン、現王マリクルの敵といえるのだ

 

 

更にイザークの友好国であったシレジア内乱における虐殺劇をおこなったのもまたユングウィ公爵の軍勢だった

 

 

 

つまりはイザークにとってユングウィ公爵家は許しがたい怨敵なのだ

 

 

 

 

後、イザークのシャナン王子もいたようだが、ドノバンは無視していた

 

話す事もないからだ

 

好きか嫌いで語るならば好ましい人物だろうが、今のイザークの民に受け入れられるかは別の話である

 

 

 

「さて、どうすっかねぇ」

 

ドノバンは自身のこれからについて考え始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドノバンによる援護の甲斐あってイザークの僻地ティルナノグへと到着したエーディン達であったが、ドノバンが心配する以上に彼女達は苦労する事となる

 

 

現在建設中の拠点であるティルナノグではありとあらゆる物が不足気味であった

 

これはティルナノグ自体が元々クベリウスの計画が失敗した際の避難場所としての性質を持たされていた事による弊害だった

 

 

 

 

クベリウスやマンフロイといった高位のダークビショップはワープやリワープの杖を自在に行使出来る

 

態々面倒な行商や商隊に頼らずとも、自分で必要な物は輸送できる。僻地であろうが、考慮する必要性など無かった

 

寧ろ機密性を考えるならば僻地の方が都合が良かったとすら言えただろう

 

 

それ故に、あくまで集積していた物は食糧や建材といった大量に消費する物がメインであり、残りの不足分はクベリウスの表向きの顔である商人アリウスとして買い付け、司教クラスを動員して輸送させる予定であった

 

 

 

 

だが、幸か不幸かクベリウスの目論みは成功した為にティルナノグに物資と少数の管理者だけが残った

 

 

少数の人間であれば贅沢をしない限りは食い繋げるだけの備蓄があったのだが、彼等はそこを一つの拠点としようとした為に消費は加速した

 

 

 

そしてイザーク全土を利用したマリクル王子によるゲリラ戦術によりイザーク自体が物資に窮する事になる

 

結果、故郷を捨てた者達の一部がティルナノグにたどり着き、拠点化が進む一方で消費も加速する事になった

 

 

 

そんな状況下でエーディン達はティルナノグに到着した訳である

 

 

 

エーディン達の内訳は子供がシャナンとオイフェ。大人の女性がエーディン、ラケシス、シルヴィア。幼児がセリス、スカサハ、ラクチェ、アーサー、ティニー、ファバル、パティ、リーンにコープルである

 

 

バランスが悪い上に働き手としてカウント出来るのはシルヴィア一人という有り様であった

 

 

 

 

イザークにエーディン達を逃したシグルドとアイラとしては短期間の予定であったし、シャナンにとっては生国である以上問題ないと判断していた

 

 

 

 

 

しかし、シグルドは勿論、アイラですらもイザーク国民の感情についての考えが足りていなかったのだ

 

 

 

イザークは尚武の気質を持つ国家であり、戦争となれば王族が先陣をきって戦うのが通例であった

 

勿論、その為に王族は過酷ともいえる鍛練を自身に課しイザークの奥義たる『流星剣』に磨きをかける事を求められていた

 

 

だが、グランベルによるイザーク攻撃の際に当時の王マナナンは交渉に赴き殺害。マリクル王子はその後のイザークを率いたのに対して、王女アイラとシャナン王子は何処へと逃れていた

 

それでもイザークが混乱する前に帰国するか、シグルド軍がシレジアに滞在したときに帰国すれば民衆とて納得しただろう

 

 

だが、アイラ王女は戻らず、シャナン王子のみが戻った

 

 

しかも忌むべきグランベルのシグルド軍にアイラ王女は参加していたのだ

 

 

イザークを攻撃したバイロンの息子の軍に、である

 

 

 

しかもアイラ王女は結局バーハラにてシグルド軍のままに死亡しているとの噂が出回っていた

 

 

 

幾ら王子とてシャナンに向けるイザーク国民の視線は好意的とは言えなかった

 

 

 

 

同道していたオイフェもシグルド軍の軍師見習いであり、シグルドの従騎士であった

 

ティルナノグについて暫くした頃にシグルド達を非難していた人間に反論したことにより、オイフェの素性が判明してしまい、オイフェも好意的に見られなくなった

 

 

 

 

エーディンについてはドノバンが懸念していた通りである。ティルナノグに避難してきた元イザーク兵の一人がエーディンという名前に反応し、そこからエーディンの素性が明らかとなった

 

 

エーディンの人柄のお陰で致命的な事にはならなかったが、良くて普通といった所であった

 

 

 

 

ではラケシスはどうかというと、彼女はエルトシャンの妹でありながらも、経験が不足していた為に未だにプリンセスのままであった

 

 

今でも積極的に動く事はあまりない為に忙しく動き回っているエーディン、シルヴィアと比較され良い感情を持たれなかった

 

 

 

 

シルヴィアは元々旅の踊り子であった為か、人の感情にも敏感であり、また溶け込むのも非常に巧かった

 

働き者で愛嬌もある上に子持ちである。しかも踊り子としての実力も高かった為に娯楽の少ないティルナノグにおいては重宝される事となり、結果辛うじてエーディン達の生活を守る事に成功していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼女達の努力を嘲笑うかの様な出来事が少し後に起きる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病床の国王アズムールに代わり執権としてグランベルを治める事となったアルヴィスは幾つかの法令を出すことになる

 

 

先ずは戸籍の設定

 

今までは転居も自由であったが、その拠点における責任者を任命し、責任者に管理させる事とした

 

 

これは税の管理の為と同時に、次の法令の為の措置でもある

 

 

 

奴隷制の廃止である

 

 

このユグドラル大陸において奴隷制は未だに存在しており、奴隷商人なども数多く存在していた

 

 

貧困に喘ぐ地域においては奴隷として家族を売りに出す事は一般的であり、アルヴィスはこれを禁じた

 

 

 

同時に剣奴といった闘技場に縛られる奴隷も禁止とし、違反したものには厳罰を以て当たる事も併せて布告した

 

 

 

 

 

 

だが、大陸における奴隷制は最早慣例と化しており、幾らグランベル執権とはいえ、一斉に禁止しきれるとはアルヴィスも考えていなかった

 

 

故にアルヴィスは二年の猶予期間を与え、猶予期間の後に奴隷制廃止を施行する事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これにより、奴隷商人達は今後の身の振り方を考える一方、奴隷を今の内に扱えるだけ扱おうとする者達も現れてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティルナノグにおいて、エーディン達が如何に努力をしようとも幼児を沢山抱える以上は身内以外も頼らざるをえないのは当然といえた

 

 

幸いにして、シルヴィアやエーディンは何とか近所付き合いも慣れて来た為かセリス達の面倒を見ようとしてくれる者も増えてきた

 

 

 

 

 

 

だが、その一方でティルナノグに避難してくる人間は増え続けており、エーディン達に憎悪の視線を密かに向けている者達も増え続けていた

 

 

 

避難してくる人間の殆んどは故郷の集落から追い出されたりしてきた者であり、資金的に豊かな者は極一部であった

 

 

 

 

 

この頃にはイザーク南部のリボーに父ランゴバルドの跡を継ぎ新たにドズル公爵となった、レックスの兄でもあるダナンが入った

 

マリクル王子が病床の身となった事でリボーの族長が単独でグランベルに降伏したのである

 

 

 

だが、ダナンはイザーク遠征の原因であるリボーの族長一族を許さず、一族郎党族滅とした

 

 

更に配下のシュミットにはドズル本国にいる長男ブリアンの補佐とランゴバルドの代で壊滅したグラオリッターの再建を命じた

 

 

 

 

 

 

 

この様な事もあり、傍目には生活に不自由していない様に見えるエーディン達への新しくティルナノグに来た者達からの不満は高まっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事である

 

 

偶々セリス達の面倒を見ていた女性陣が少し目を離した隙にティニーの行方が分からなくなったのだ

 

 

 

 

 

 

エーディン達は勿論、ティルナノグの者達も必死に捜索するも遂にティニーの行方は不明のままとなってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯人は最近ティルナノグに来たばかりの破落戸であり、貧乏な生活から薄紫色という珍しい髪の色をしたティニーを拐ったのだ

 

その珍しい髪の色から奴隷商人に高く売れると判断しての事だった

 

 

その男は無事に奴隷商人にティニーを売り渡し、大金を手にいれた

 

 

そして、彼はその資金を元に、とある地方の領主となるのだが、それはまた別の機会に語ろうと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーハラの悲劇に見舞われながらも、夫アゼルの決死の援護により、生家に戻ったティルテュだったが、彼女の今の状況は正に『針のむしろ』であった

 

 

兄であり、現在のフリージ公爵となったブルームはティルテュに対して遠慮がちではあるがキチンと対応してくれている

 

甥のイシュトーと姪のイシュタルもティルテュに変わらず接してくれていた

 

恐らくイシュトーは事情を理解しているにも関わらずである

 

 

妹のエスニャも複雑そうではあったが、それでもティルテュはまだ救われていた

 

 

 

 

だが、兄の妻であるヒルダは事ある毎にティルテュを非難してくる

 

 

元々、トラキア出身でありながらも魔法の才に恵まれていたヒルダは故郷では役立たず扱いで奴隷に落とされた過去を持つ

 

それを偶々レプトールが拾い上げ、目を掛けたのだ

 

 

ヒルダは実子であるブルームやティルテュ、エスニャ以上にレプトールを敬愛しており、ブルームとの身分違いの恋愛に悩んでいた

 

だが、レプトールはそのブルームとヒルダの仲を許し、あろうことか友人であるランゴバルド卿同席の元での結婚式を挙げさせた

 

 

 

 

「平民どころか、 元奴隷とは。卿の考えは解らぬな」

 

「ふん、平民?奴隷?貴族?

知らぬな。才ある者を使わねばならぬ時代ではないかと私は思っているが、卿は違うのか?」

 

 

 

結婚式の後でこの様な会話をヒルダは聞いてしまっていた

 

義父は自分を認めてくれている

 

ならばその期待に恥ずかしくない人間であろうとヒルダはその時に改めて誓ったのだ

 

 

 

 

だが、その敬愛する義父をよりにもよって実子であるティルテュが討ったとティルテュの口から聞かされた時、ヒルダは夫ブルームの制止がなければあの女を殺していただろう

 

 

 

 

 

(自分の父親を討つ?

あの方がどれだけの苦労をしていたのかも知らない奴が?)

 

 

夫ブルームとて平静を装ってはいるが、妹であるティルテュに対して複雑な心境であることは間違いない

 

バーハラの悲劇の主犯である執権アルヴィスは最愛の弟アゼルを喪っている

 

その原因があの女と知られ、あの女を匿っていると知られればフリージ家の存続すら危うくなりかねない

 

 

 

 

(ブルーム、アンタは出来ないし、しない方が良い

汚れ役が何だ。義父は汚れ役を引き受けて汚名を着たままにあの世に行ったんだ

ティルテュ、悪いとは言わないし、済まないとも言わないさ

恨むならアタシだけを恨むんだね)

 

ヒルダは密かに決意を固めた

 

 

 

 

 

 

 

それから僅か数日後、ティルテュは行方不明となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良き者、悪しき者

 

その心を全て巻き込みながらも時代は進む

 

 

 

 

 

 

光と闇

 

その結末を迎える為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幕間は続くよ、もう少しー


とりあえず、子世代の準備しないと



ドノバンとヒルダについては申し訳ない

クトゥーゾフについては拙作とややリンクしております


御一読下さり、ありがとうございます

アンケートを実施致しますので宜しければご協力下さると幸いです

子世代のカップリングについて

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