彼方の時へ   作:くらうす

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入院していたのでとりあえず投稿します


昏い光の中で

国王アズムールより執権に任命されたアルヴィスは国内の鎮定を急ぐ事となる

 

 

幸いにして今は亡きレプトールとランゴバルドによってアルヴィスに従わない者達の勢力は目に見えて低下しており、現状ではアルヴィスの障害となり得る勢力は存在していない

 

 

だが、執権になったとてアルヴィスがこれから行おうとする政治は今までのグランベルにおける政治とは大きく異なるものであり、また既得権等も大いに絡んでくる事が予想された

 

 

 

そこでアルヴィスは現在も少なからず残っている国王派の更なる弱体化を進めるべく、側近のヴァハと話し合う事とした

 

 

 

 

「では閣下はこれからの政策に彼奴らはついてこれぬとお考えで?」

 

「恐らくはな」

 

 

 

既得権とは彼等にしてみれば最早当たり前のものであり、当然の権利の様に錯覚しているだろう

 

 

特に奴隷関係の権益はかなりのものであり、それをアルヴィスが取り上げるとなれば、彼等は間違いなく病床のアズムール陛下に進言するだろう

 

 

陛下とて急進的な政策に全面的な賛成をするとはアルヴィスは元より、ヴァハですらも思っていない

 

 

 

更にシグルドの一件により半ば強引に併合した旧ウェルダンとアグストリア。そして旧イザーク

 

 

これ等の併合は陛下とて容易に許可するとは思えなかった

 

 

 

だが、アルヴィス達からすれば上記の三國を放置するなど論外でしかない

 

 

ウェルダンは前王ジャムカを国民の一部が殺害し、結果として混乱をもたらした

 

グランベルが領有していたジェノアにまで混乱が及びかねなかった以上、混乱の早期鎮定は当然の話だった

 

 

仮にウェルダンを国家として残すとして、王族の絶えたウェルダンを誰が統治するのか?

 

ジャムカ王の父親バトゥは勿論、兄であったガンドルフならば出来なくはない。キンボイスとて補佐があれば出来るだろう

 

だからこそ、彼等の生存を認める訳にはいかなかったのだ

 

 

では、他に適任がいるのかと問われるならばアルヴィスは分からないと答える他ない

 

 

 

そもそも、ウェルダンは纏まりに欠ける訳でないが、決して治めやすい土地でなければ、国民性でもないのだ

 

 

確かに自然は豊かだ。特に森林地帯の面積は大陸屈指であろう

 

だが、その割には食糧自給率はそこまで高くはないのだ

 

更にウェルダンの中心に大きな湖があり、これがウェルダン国内の円滑な輸送の妨げとなっている

しかもその湖がアグストリアとの国境線の一部ともなっているのだから、面倒なことこの上なかった

 

 

アルヴィスが進めている戸籍管理の為には、人の行き来をある程度把握する必要がある

 

となれば仮にウェルダンとアグストリアが今まで通りに他国同士の場合、国境線でもある湖上にも常に目を光らせる必要が出てくる

 

一応グランベルとて海上戦力を有しているが、あくまでも小規模であり、以前の様に非常時でなければ運用出来るものではない

 

騎士に比べて補充、拡充が容易ではないのだから

 

 

 

では戸籍管理を止めれば良いかと言われた場合、アルヴィスは同意出来ない

 

貧富の差が酷い理由の一つは人口の偏りだとアルヴィスは考えていた

 

何を行うにせよ、人は必要である。畑などの作業には相応の人数が必要であり、そこから人が居なくなれば生産力の低下に繋がるのは当たり前である

 

 

だが、生活が苦しくなると彼等は家族を奴隷として売り払う事で何とか凌ごうとする

 

これでは生産力が上がる筈もない

 

 

奴隷制の廃止の理由の一つはここにある

 

 

 

戸籍として管理すれば奴隷として人が流出するのも把握出来る

 

受け皿である奴隷というものが無くなれば、流出を押さえられるだろう

 

 

勿論、それ相応の支援策を併せて行う事が必須であるが

 

 

 

 

 

更に奴隷制の廃止には戦争の抑止という理由もある

 

 

戦争の理由は勿論様々だが、一つに略奪目的というものもあるのだ

 

 

財産や食糧を奪うのみでなく、人を拐う事でそれを奴隷として売り払い利益を得る

 

その様な無法も罷り通るのが現状なのだ

 

 

 

 

 

現在大陸に存在する国家はグランベルの他にシレジア、レンスター、トラキアである

 

この内シレジア、レンスターとグランベルは敵対している

 

だが、トラキアとは武力衝突した事実はない

 

 

 

アグストリアではシャガール側にトラキア軍がいたのは事実だが、彼等はアグストリアに反逆したエルトシャン率いるシルベール勢を始末したに過ぎない

 

更にイード砂漠ではシグルド達の救援に向かっていたキュアン王子率いるランスリッターを殲滅しただけであり、どちらかと言えば反逆者であるシグルドの敵であると言えなくもない

 

 

ならば、ある程度の支援と引き換えにトラキアとの同盟をするべきだとアルヴィスは考えていた

 

 

その支援の結果、トラキアとレンスターの戦闘が激化したとしてもアルヴィスは構わなかった

 

 

 

現在は放置することになるが、シレジアもレンスターも近いうちに消えてもらう事になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンスターではキュアン王子とその妻エスリン、更にアルテナを喪った事のショックからようやく国王は持ち直した

 

そして、トラキアのあまりにタイミングが良い介入が実はアルスター領主からの密告であった事を突き止めた国王はアルスター討伐の兵を挙げる事になった

 

正騎士達は国王を諌めるも、強引に兵をアルスターへと進めた

 

 

 

アルスターにおける戦闘は凄惨を極め、アルスター領主は元より領民ですらも一部が殺害される事になった

 

更にアルスターの背後にいたトラキアへの討伐を強行したレンスター国王であったが、アルスター南部からトラキア領ルテキアへのルートはトラキア軍の宿将ハンニバルにより封鎖されており、レンスター側は抑えの兵を残し東方マンスターへと転進する事になった

 

山間部にあるマンスターを南下、トラキア領ミーズへと迫るレンスター軍であったが、マンスター付近に監視網をひいていたトラキア軍に捕捉されていた

 

 

トラキア軍はミーズ城のマイコフ将軍の献策により、東西の山脈に身を潜め、レンスターのミーズ攻撃に合わせて東西より挟撃。更にミーズからも逆撃を仕掛けた

 

これにより、主力であった騎士団は半壊。決死隊として殿を残し、国王以下レンスター軍は撤退しようとした

 

 

だが、トラキア王トラバントは自身の近衛と共にミーズでの戦闘の隙をついてマンスター付近へと着陣。

マンスター至近にまで撤退したレンスター残存軍を文字通り殲滅した

 

 

これにより、トラキアは長年の宿願であったトラキア半島統一を目前としたが

 

 

 

 

 

 

 

 

アルスターからの避難民を受け入れたメルゲンより急報を受け、アルヴィスは直ちにメルゲンに駐留する軍勢をアルスターへと派遣し、後詰めとしてブルーム達フリージ公爵軍を投入した

 

 

これにより、レンスターが支配していたアルスターはグランベルにより占領される事になる

 

 

 

その報告を受けたトラバントは苦渋の決断、撤退を選ばざるをえなかった

 

 

 

 

 

ここにトラキア半島の状況は一変することとなる




幕間はもう少しだけ続くんじゃよ

子世代のカップリングについて

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