彼方の時へ   作:くらうす

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新年明けましておめでとうございます

この様な作品を読んでいただき感謝しております

本年も宜しくお願いいたします



今回も独自設定がかなり入っておりますので御注意ください


光を求めて

 

 

トラキアが半島統一の夢をグランベルによるアルスター地方攻略によって阻まれた事により、トラキアの悲願であるトラキア半島統一は事実上不可能となった

 

しかし、ここでグランベル王国摂政アルヴィスはトラキア国王トラバントに対して1つの提案を行う

 

現在グランベル側フリージ新公爵ブルームにより平定したのがレンスター地方で押さえているアルスター、コノート、マンスターである

 

この内トラキア領ミーズ北部に位置するマンスターをトラキアに割譲しようとの事だ(注1)

 

 

勿論、タダでその様な提案をするアルヴィスではない

 

その見返りとして、トラキアとの同盟並び各種交易を国家間で執り行う事を求めた

 

 

 

現在の大陸におけるグランベル王国に明確な敵対行為をとっているのはいない。が、準敵対国としてシレジアとレンスターが存在する

 

シレジアは言うまでもないが、以外にもレンスターとは直接矛を交えていない。とはいえ、現在レンスター王国の指導者となったリーフ王子の父親キュアンは反逆者シグルドの親友

 

更にキュアンの妻のエスリンはシグルドの妹である

 

シグルドはリーフ王子にとって叔父にあたるのだ

 

間違いなく反感を持っていようし、そうでなければ困るのだが

 

レンスターの暴発を誘発する。その為に態々メルゲンからアルスター一帯を抑えたのである

 

 

シレジアだろうとレンスターだろうと単体でならグランベルの国力を持ってすれば敵ではない

それどころか、各公爵軍でも事足りる

 

とはいえ、面倒なのはシレジアとレンスターが連携してしまう事である。両国共に主力を喪失しているとはいえ、未だ無視し得ない戦力を有しているのが実情であるからだ

 

シレジアは先の内乱で主力の天馬騎士団が壊滅したといっても、その予備部隊は健在

加えてシレジア特有の風魔道士団のダメージは先の内乱においても、最小限に抑えられていた

 

これは偏にザクソン候ダッカーが内乱の後、シレジアの軍事力低下によるグランベルの介入を憂慮した為に風魔道士団の動員をしなかった事が理由であった(注2)

 

 

レンスターは主力槍騎士団『ランスリッター』こそイードでのトラキアとの戦闘とマンスター近郊の戦いにおいて壊滅した。が、それでも従騎士とそれを教導する一部の正騎士が残存していた(注3)

 

 

双方とも軍事力の低下はあるものの、決定的な戦力瓦解とまではいっていなかったのである

 

 

 

 

懸念事項として、両国は直接国境を接していないとはいっても、両国の間にはグランベルへの隔意を隠そうともしないイザークがある

 

現在はグランベル領土。といっても鎮定には未だ時を要する

 

新公爵であるダナン公爵が鎮定を急いでこそいるものの、シグルドの一件にてドズル公爵軍もまた尋常ならざる被害を被っている

加えて新公爵ダナンはスワンチカを先代ほどに扱えないのも痛かった

 

 

それに加えてイザークは尚武の国であり、平民レベルなら大陸全土の国家の中で最も実力は高い

更にドズル側は斧を主体し、イザーク側は剣を主体とする

 

一定以上の力量があれば、然程に問題にならない通称『三竦み』も一般兵レベルであれば作用する為にドズル側はイザーク側に対して不利となっていた(注4)

 

 

他国では山賊や盗賊に殺されるが、彼の国では逆に賊が狩られる側に立つことも珍しくはない。とはイザークの平民の実力を示すものであったのも不利に働く

 

 

 

加えて面倒極まるのは既に虫の息となっているマリクル王子がイザーク全土における焦土戦術を行った事であり、これによりイザークの国民は正規軍にも抵抗する術を身につけてしまっていた

 

 

 

これがゲリラ的活動に留まるならばまだどうにか対応出きるが、土地勘のないグランベルでは長期戦になることは間違いない。勿論グランベルが圧倒的戦力を投入するならば、勝てるだろう。だが、そこまでするほどの価値をイザークに見いだせるかと問われたならば、イザーク方面軍指揮官ダナンやアルヴィスはあると断言できない

 

これがレンスターやアグストリアならばまだ大規模動員もあり得なくもないのだが

 

 

 

更に面倒な事この上ないが、最悪前述の両国と結びつき兼ねない

 

 

そうなれば、グランベルは其方のみの対処に忙殺されるだろう

 

トラキアと対立した場合、主力を残しているトラキアを相手取る事は不可能といえた

 

仮に勝利したとても被害は甚大なものになる

 

故にこそ、領土割譲という餌を与えてまでトラキアとの同盟を纏めねばならなかった

 

 

 

間違いなく国内の貴族から反発が出るだろうが、その程度にかける余裕もない

 

 

 

それにトラキアの主力は竜騎士である

 

機動力では騎馬中心のグランベル軍が如何に工夫しようともどうにもならない

 

戦い方はある。焦土戦術

 

だがそれは明らかにグランベルの国力を落とす戦術である以上無意味であろう

 

 

そも、天険の要害であるトラキア地方を平定するなどというのは愚か者の妄言でしかないと、アルヴィスとヴァハは判断していた

 

 

 

仮にもしも平定出来たとしても、グランベル本国レベルの経済力を持たせようとすれば、どれだけの時と金を要するか考えたくもなかったのだ

 

 

 

 

 

 

それ故の同盟である

 

同盟ならばトラキアはラバント達トラキア首脳に任せれば良いし、問題があればグランベルも協力する事でトラキアにおけるグランベルの影響力も増すだろう

 

 

トラキアとしても既にウェルダンとアグストリア、イザークを併合したグランベルと争うのは避けるであろう

 

故にこの同盟の成功は間違いないと判断されていた

 

 

この判断はトラキアとの交易の提案が大きく影響していた

 

 

トラキアは傭兵を生業としており、トラキア国内の産業は貧弱である

 

元々山岳地帯が国土の8割程を占めるトラキアであり、数少ない平地も敵国であるレンスター領アルスターの南方、トラキア領ルテキア。このアルスター、ルテキアの中間にある。ここにトラキアでは宝石よりも貴重な農業地帯が存在する

 

 

だが、敵国からの侵攻を常に警戒せねばならない関係上大規模な農業とはなり得なかった

 

結果、トラキア国内の食糧をまかなうには少なすぎたのである

 

 

シレジア内乱まではイードの商人、アリウスが自身の商会をもってトラキアに食糧を納入していたが、それも内乱後には途絶えてしまっている

 

 

敵国、レンスターが最も距離は近いが当然食糧の融通など出来る筈もなく、イザークはレンスターが邪魔である

。シレジアも同様であり、グランベルはアズムールやシアルフィのバイロン等の抵抗で今までは公の交易は出来ていなかった

 

ウェルダンとアグストリアは友好関係といえたが、然りとてグランベルの影響を無視できなかった

 

 

 

 

 

グランベルにおいてレンスターとトラキアの関係は長い間議論されていた

 

 

バイロンやレプトール等が存命中においても幾度も議論が重ねられていたのだ

 

 

バイロン、リング、クロードは親レンスター。レプトール、ランゴバルドは干渉すべきでないと主張していた

 

 

多数派の原理によりグランベルは親レンスター政策を取っていた。エスリンとキュアンの婚約はその一環

 

 

親レンスター派の主張はレンスターが『騎士道』を重んじるというのが根拠であった

 

レプトールは当時、これを「見地の足らぬ者ばかりよ」と嘆いたとされる

 

 

元よりレンスターはトラキアより豊穣なレンスター地方が独立したものであって、トラキア半島の正統な国家はあくまでもトラキア王国だった

 

搾取されていたが故にレンスターは独立したというが、トラキアの国土を見ればわかる

 

 

北部の豊穣なレンスター地方と南部の峻険なトラキア地方

 

トラキア地方の発展は建国以来の宿願といえたが、元手がいるのは必然である

 

その元手をレンスターに求めるのはトラキアにとっては必然であり、当然といえた

 

 

 

 

 

トラキア建国の父、竜騎士ダインは嘗て奴隷であったとされる。

 

 

だが、彼は妹のノヴァと共にダーナにて古代竜族から力を授かり、暗黒神ロプトゥスの討伐に貢献した

 

言ってしまえば、政治の素人であったのだ

 

しかも与えられたのは発展するにも障害の多いトラキア半島

 

それでもどうにかしようと足掻いたが、彼と彼女の不幸はダインにはトラキア地方出身の人間が多く従い、レンスター地方に派遣されたノヴァには当然レンスター地方出身の人間が集まってしまった

 

 

トラキア王国繁栄の為にレンスターからの富を王国の為に使おうとする王国側。レンスター地方の為にレンスターの富を使おうとするレンスター側の軋轢は必至であった訳だ

 

 

結果、ノヴァは周囲に担がれてレンスター王国を建国した訳である

 

 

当然だが、トラキアとレンスターの経済に対する政策も異なる

 

輸出する品目の多いレンスターはそれで外貨を稼げる

だが、トラキアに輸出ものは余りにも少なかった

 

 

故にこそ、トラキアは傭兵稼業を生業とせざるをえなかった

 

 

 

だが、これによりレンスターに対し、トラキアは『野蛮』との負のイメージが定着してしまっていた

 

 

結果、レンスターは『騎士の国』、トラキアは『傭兵の国』とされてしまう

 

 

 

 

 

このイメージにバイロン達は引っ張られてしまったわけだ

 

まぁ、レプトールの様に他国の歴史を深く調べる事の方が当時としては異質といえたわけだが

 

 

 

 

 

このイメージはバイロン達の没後も長らく続く事になり、これが払底されるには更に20年以上の時を要する事になる

 

 

 

 

 

そのトラキアでは

 

 

 

「アルスターへは侵攻されぬ、と?」

 

「そうだ」

 

トラキア本城にて今後のトラキアの為の話し合いがもたれていた

 

「ルテキア城主としましては、トラバント陛下のお考えに賛同します」

 

トラバントの発言に怪訝そうにするハンニバル将軍と賛意を示すルテキア城主ディスラーであった

 

「ハンニバル殿の発言も懸念は理解できます

ですが、国境ルテキアを預かる者として申し上げるならば、現状でのグランベルとの対立に意味があるとは思えませぬ

仮にグランベルが侵攻してきた場合、我々の貴重な農地を失う覚悟が必要かと」

 

「凌げぬか」

 

ディスラーの弱気とも取れる発言にもトラバントは動じずに呟く

 

「一度であるならば不可能ではありますまい

なれど、二度三度押し寄せられては如何ともし難いかと」

 

ディスラーとてトラキアの将である

主命とあれば、万難を排して抵抗しよう

 

だが、それにより守るべき祖国を失うならば例え臆病者の謗りを受けようとも否定する

 

それがトラキアの将として役割であるとディスラーは確信していた

 

そして

 

 

「ディスラーの言うことには正当性がある」

 

 

 

我らが主君はその程度の事も解らぬ御方でないとディスラーは信じていたのだ

 

 

 

「では」

 

「やむを得ぬ

トラキア半島の統一は我らが宿願なれど、トラキアを滅ぼしては先立った者達に申し訳がたたぬ。皆屈辱とは思うが今は忍従の時と思え」

 

「「ははっ!」」

 

トラバントは手を握りしめ、血を流しながらもハンニバルとディスラーに命じた

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上」

 

軍議の終わったトラバントは息子アリオーンに呼び止められた

 

「アリオーンか。どうした?

騎竜の訓練は終わったのか?」

 

アリオーンに問いかける

 

「はい、パヒヨンよりは既に基本は出来ていると言われました」

 

アリオーンはトラキアの次代を担う者として既に竜騎士としての訓練に明け暮れていた

 

流石は王族というべきか、トラバントの息子アリオーンもまた非凡なセンスを持ち、未だ十歳にもならぬ身で飛竜を自在に操っていた

 

「結構

して何だ?」

 

「アルスターを諦めるとの事ですが」

 

「今のお前に発言権などない

そのくらい解らぬか?」

 

「しかし!」

 

「くどい!」

 

アルスターの事を発言しようとするアリオーンをトラバントは一喝した

 

「貴様は未だ半人前にすらなっておらぬ

その貴様がトラキアの何を知るというのか!

恥を知れ!

 

トラバントはアリオーンをそう一喝するとその場を去った

 

「父上」

 

アリオーンは一人呟いた

 

 

 

 

 

 

その暫く後にグランベルよりマンスター割譲と交易の提案を受けたトラバントはアルヴィスの思惑にのることとなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が光輝く未来を求める

 

 

果たして手にはいるものは

 




幕間ももう少しで終わります


後は少し年代を跳ばす事に相成りますが、御容赦の程お願い申し上げます

子世代のカップリングについて

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